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第一章
第38話:厳罰
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「カーツ殿、本当にこれほど厳しい罰が必要なのか。
当主や嫡男が謀叛に加わっていた家はしかたがないだろう。
だが、庶子や家臣が加わっていた程度の家まで潰して、一族一門全員を終身刑にして塔に閉じ込めるのは、いくらなんでも厳し過ぎるのではないか」
祖父が甘過ぎて吐き気がするような言葉を口にする。
辺境伯家の名誉をここまで地に落としておいて、まだ心を入れ替えていない。
前回は同情する余地もあると思ったが、間違いだった。
俺か考えていた最悪の可能性は、祖父の決断で回避できた可能性が高い。
自分や身内に甘過ぎたから、佞臣奸臣に付け入られたのだ。
アーサー様のように、自分の命すら捨てる覚悟があったら避けられたはずだ。
「辺境伯閣下がそう思われるのなら、私を辺境伯代理から解任して、また親政を取られて、辺境伯家を潰し人類を滅ぼされるがいい。
アーサー様や忠臣たちが命懸けで護られた人類を、愚かな出来損ないの子供や孫が滅ぼす、魔族どもの笑い者のなれるでしょう、よかったですね」
俺を爵位ではなく名前で呼んで、家族の情を訴えようとした祖父だが、俺がそれを受け入れず、祖父を爵位で呼び一族全員を馬鹿にした事でショックを受けたようだ。
それは祖父だけでなく、大叔父や大叔母、叔父や叔母たちも同じだった。
怒り狂って俺を罵ってくれれば、その方が踏ん切りがつく。
いや、罵られなくても断固とした態度を取るが、少なくとも胸を痛めなくてすむ。
「我が代理殿、大英雄アーサー様の名を穢さないために、アーサー様の子孫が愚かで欲深く人類を滅ぼしたと言われないために、厳罰が必要なのは分かった。
だが、人類を護るための戦力はどうするのだ。
分家やその一族一門まで処罰するとなると、戦える騎士や兵士がいなくなってしまうのではないか」
今度は戦力面から減刑を考慮しろというのか、糞爺。
そんな事を繰り返していたから、辺境伯家が腐ったのだろうが。
その程度も分からない愚者だから、こんな状況になっていたのだな。
もう何を言っても無駄だな、辺境伯家は見捨てるしかないな。
「では辺境伯閣下の好きにされたらいいのではありませんか。
私も好きにさせていただきますので、代理の役目は返上させていただきます」
俺はそういい捨てると、横にいてくれた義姉さんと一緒に城を出て行った。
糞爺は呆気に取られていたが、知った事じゃない。
俺の悪い予感は日に日に強くなっているのだ。
塔に幽閉いたはずの謀叛人共を、肉親の情を優先して開放するかもしれない糞爺がいる状況で、辺境伯領を守り切る自信はない。
無理な戦いで義姉さんや大切な家族を失う事は絶対に許容できない。
「カーツ様、本当によかったのですか」
義姉さんが心から心配して言葉をかけてくれる。
その優しい気持ちが、ささくれだった俺の心を癒してくれる。
そんな優しい義姉さんに無理な戦いをさせて、死なせるわけにはいかない。
俺が決断して、糞爺たちを捕らえて辺境伯の地位を継げば、どれほど犠牲をだしても家臣領民を護らなければいけない責任が生まれる。
その犠牲の中に、義姉さんや弟妹たちがいるだろう。
「ええ、これが一番いいのです。
あの場にいて本当の自分の気持ちが分かりました。
俺は自分が大切だと思っていない人のために戦う気にはなれないのです。
俺にとって本当に大切なのは辺境伯家ではありません。
義姉さんや弟妹たち、愛している人たちです。
俺が本当の家族だと思っている人たち以外のためには戦えません」
「うれしい、カーツ様」
当主や嫡男が謀叛に加わっていた家はしかたがないだろう。
だが、庶子や家臣が加わっていた程度の家まで潰して、一族一門全員を終身刑にして塔に閉じ込めるのは、いくらなんでも厳し過ぎるのではないか」
祖父が甘過ぎて吐き気がするような言葉を口にする。
辺境伯家の名誉をここまで地に落としておいて、まだ心を入れ替えていない。
前回は同情する余地もあると思ったが、間違いだった。
俺か考えていた最悪の可能性は、祖父の決断で回避できた可能性が高い。
自分や身内に甘過ぎたから、佞臣奸臣に付け入られたのだ。
アーサー様のように、自分の命すら捨てる覚悟があったら避けられたはずだ。
「辺境伯閣下がそう思われるのなら、私を辺境伯代理から解任して、また親政を取られて、辺境伯家を潰し人類を滅ぼされるがいい。
アーサー様や忠臣たちが命懸けで護られた人類を、愚かな出来損ないの子供や孫が滅ぼす、魔族どもの笑い者のなれるでしょう、よかったですね」
俺を爵位ではなく名前で呼んで、家族の情を訴えようとした祖父だが、俺がそれを受け入れず、祖父を爵位で呼び一族全員を馬鹿にした事でショックを受けたようだ。
それは祖父だけでなく、大叔父や大叔母、叔父や叔母たちも同じだった。
怒り狂って俺を罵ってくれれば、その方が踏ん切りがつく。
いや、罵られなくても断固とした態度を取るが、少なくとも胸を痛めなくてすむ。
「我が代理殿、大英雄アーサー様の名を穢さないために、アーサー様の子孫が愚かで欲深く人類を滅ぼしたと言われないために、厳罰が必要なのは分かった。
だが、人類を護るための戦力はどうするのだ。
分家やその一族一門まで処罰するとなると、戦える騎士や兵士がいなくなってしまうのではないか」
今度は戦力面から減刑を考慮しろというのか、糞爺。
そんな事を繰り返していたから、辺境伯家が腐ったのだろうが。
その程度も分からない愚者だから、こんな状況になっていたのだな。
もう何を言っても無駄だな、辺境伯家は見捨てるしかないな。
「では辺境伯閣下の好きにされたらいいのではありませんか。
私も好きにさせていただきますので、代理の役目は返上させていただきます」
俺はそういい捨てると、横にいてくれた義姉さんと一緒に城を出て行った。
糞爺は呆気に取られていたが、知った事じゃない。
俺の悪い予感は日に日に強くなっているのだ。
塔に幽閉いたはずの謀叛人共を、肉親の情を優先して開放するかもしれない糞爺がいる状況で、辺境伯領を守り切る自信はない。
無理な戦いで義姉さんや大切な家族を失う事は絶対に許容できない。
「カーツ様、本当によかったのですか」
義姉さんが心から心配して言葉をかけてくれる。
その優しい気持ちが、ささくれだった俺の心を癒してくれる。
そんな優しい義姉さんに無理な戦いをさせて、死なせるわけにはいかない。
俺が決断して、糞爺たちを捕らえて辺境伯の地位を継げば、どれほど犠牲をだしても家臣領民を護らなければいけない責任が生まれる。
その犠牲の中に、義姉さんや弟妹たちがいるだろう。
「ええ、これが一番いいのです。
あの場にいて本当の自分の気持ちが分かりました。
俺は自分が大切だと思っていない人のために戦う気にはなれないのです。
俺にとって本当に大切なのは辺境伯家ではありません。
義姉さんや弟妹たち、愛している人たちです。
俺が本当の家族だと思っている人たち以外のためには戦えません」
「うれしい、カーツ様」
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