16 / 45
第一章
第16話:エドワーズ子爵
しおりを挟む 翌日、キースはキラを胸に抱き、イオと共にワイトデ自治区へと向かった。
『移動』してしまうので、時間はかからない。
イオの屋敷の敷地内に『移動』してきて辺りを見回した。
数日前までは灰色に染まっていた町も、色を取り戻していた。
イオに聞くと、町中の灰は、風を扱える者が集めて袋に入れ、町外れに回収しているらしい。
そこから必要な分だけもらっていって、水捌けの悪い土地の土に混ぜて作物を作ったり、土嚢として使うらしい。
過去にもそうやって灰を利用して来たそうだ。
屋敷の中には入ると、領主、イオの両親がいて、お礼を言われた。
ここへ来てくれたおかげで、長引かず住民達も早く家に帰れる事になって、喜んでいると。
そしてチハヤに服を着替えされされ、彼らに連れられて、近くの社に来ていた。
そこはワイトデ自治区のアリミネ火山を祀る社。
そして、多くの人が集まりザワザワとしていたが、キースがキラを連れて姿を現すと、辺りはシーンと静まり返る。
キラは驚いたのか、キースの服にしがみついて離そうとはしない。
そんなところも可愛い…などと思っていると、イオに社の前に立つように言われ、こっそりと耳打ちされる。
「炎の結晶石をここで作って見せれるか?」
「…う~ん。どうだろう…」
キースは抱えていたキラを地面に降ろし、隣に座り込む。
「キラ、ギュウッて、熱を集めれる?」
キースが聞くとキラはじっとキースを見て、空を見上げた。
風が吹き始め、キラの頭上に集まり始める。
…始まった。
「イオ。炎の結晶石を冷やす場所はある?」
「社の池を使うと良い」
そう言って、イオは隣に有る池を視線で示す。
「お湯が涌き出ている池だから、冷たくはないが…」
無いよりはましだろう。
そんな会話をしているうちに、キラの頭上に炎の結晶石が赤くキラキラと輝いていた。
回りにいるもの達は、その美しさに見惚れている。
風が収まり、落ちてくる炎の結晶石をキースは風で包み込み、落下する場所をイオが言った池へと誘導する。
ポトンと音がして、水蒸気が舞い上がった。
辺り一面、真っ白な水蒸気に包まれ、しばらくすると次第に収まり、視界がもとに戻っていく。
イオが池に入り、炎の結晶石を拾ってきて、キラのもとへ持って来た。
そしてキラの前に膝を付いて、炎の結晶石を掲げた。
「キラ様。我らワイトデ自治区は、キラ様をアリミネ火山の守護竜としてお慕いいたします。どうぞ、お守りください」
イオがそう言うと、回りにいた人々も膝を付いて座り込み、頭を下げた。
ギュウッ!
キラがそう鳴くと、イオは微笑みキラの頭を撫でる。
「よろしく。キラ様」
キラは撫でられて気持ち良さそうに目を細める。
そして、社で宴会が始まった。
キラの前にいろんな食べ物が運ばれてきて、キラは興味深々に覗き込み、キースが食べるとキラも口を開けて催促する。
キースは少量づつ手のひらに乗せて、キラに食べさせていた。
…何でも食べるんだ。
そこへチハヤが近づいてくる。
「キラちゃん。美味しい?」
ギュウッ!
チハヤはニコニコ微笑んで、手のひらに果物を乗せてキラに食べさせてあげる。
「…お祭り騒ぎになっちゃったね」
ぽそりとチハヤが言ってくる。
「キラが認めてもらえれば良いよ。…でもこれが、後三回続くと思うと、そっちの方が気が重い…」
キースが苦笑いすると、その言葉にチハヤは笑った。
キラが炎の結晶石を作れるのは一日一個までだ。
その日の気温と、お腹の減り具合にもよる。
初めて炎の結晶石を作ったときは、お腹が減りすぎて貪るように作って食べていたらしい。
魔力の制御をするようになって、人族と同じ食べ物を食べるようになって、身体と魔力のバランスが取れるようになってきたようだ。
明日は熊族の町に行く。
賑やかな宴が終わり、イオの屋敷の客室でキラと一緒の部屋で眠った。
夜中に重くて目が覚めると、キースが眠るベッドの掛け布団の上に丸くなって、キラが眠っていた。
…キラは良い子だ。
キースは微笑みを浮かべて再び眠りについた。
『移動』してしまうので、時間はかからない。
イオの屋敷の敷地内に『移動』してきて辺りを見回した。
数日前までは灰色に染まっていた町も、色を取り戻していた。
イオに聞くと、町中の灰は、風を扱える者が集めて袋に入れ、町外れに回収しているらしい。
そこから必要な分だけもらっていって、水捌けの悪い土地の土に混ぜて作物を作ったり、土嚢として使うらしい。
過去にもそうやって灰を利用して来たそうだ。
屋敷の中には入ると、領主、イオの両親がいて、お礼を言われた。
ここへ来てくれたおかげで、長引かず住民達も早く家に帰れる事になって、喜んでいると。
そしてチハヤに服を着替えされされ、彼らに連れられて、近くの社に来ていた。
そこはワイトデ自治区のアリミネ火山を祀る社。
そして、多くの人が集まりザワザワとしていたが、キースがキラを連れて姿を現すと、辺りはシーンと静まり返る。
キラは驚いたのか、キースの服にしがみついて離そうとはしない。
そんなところも可愛い…などと思っていると、イオに社の前に立つように言われ、こっそりと耳打ちされる。
「炎の結晶石をここで作って見せれるか?」
「…う~ん。どうだろう…」
キースは抱えていたキラを地面に降ろし、隣に座り込む。
「キラ、ギュウッて、熱を集めれる?」
キースが聞くとキラはじっとキースを見て、空を見上げた。
風が吹き始め、キラの頭上に集まり始める。
…始まった。
「イオ。炎の結晶石を冷やす場所はある?」
「社の池を使うと良い」
そう言って、イオは隣に有る池を視線で示す。
「お湯が涌き出ている池だから、冷たくはないが…」
無いよりはましだろう。
そんな会話をしているうちに、キラの頭上に炎の結晶石が赤くキラキラと輝いていた。
回りにいるもの達は、その美しさに見惚れている。
風が収まり、落ちてくる炎の結晶石をキースは風で包み込み、落下する場所をイオが言った池へと誘導する。
ポトンと音がして、水蒸気が舞い上がった。
辺り一面、真っ白な水蒸気に包まれ、しばらくすると次第に収まり、視界がもとに戻っていく。
イオが池に入り、炎の結晶石を拾ってきて、キラのもとへ持って来た。
そしてキラの前に膝を付いて、炎の結晶石を掲げた。
「キラ様。我らワイトデ自治区は、キラ様をアリミネ火山の守護竜としてお慕いいたします。どうぞ、お守りください」
イオがそう言うと、回りにいた人々も膝を付いて座り込み、頭を下げた。
ギュウッ!
キラがそう鳴くと、イオは微笑みキラの頭を撫でる。
「よろしく。キラ様」
キラは撫でられて気持ち良さそうに目を細める。
そして、社で宴会が始まった。
キラの前にいろんな食べ物が運ばれてきて、キラは興味深々に覗き込み、キースが食べるとキラも口を開けて催促する。
キースは少量づつ手のひらに乗せて、キラに食べさせていた。
…何でも食べるんだ。
そこへチハヤが近づいてくる。
「キラちゃん。美味しい?」
ギュウッ!
チハヤはニコニコ微笑んで、手のひらに果物を乗せてキラに食べさせてあげる。
「…お祭り騒ぎになっちゃったね」
ぽそりとチハヤが言ってくる。
「キラが認めてもらえれば良いよ。…でもこれが、後三回続くと思うと、そっちの方が気が重い…」
キースが苦笑いすると、その言葉にチハヤは笑った。
キラが炎の結晶石を作れるのは一日一個までだ。
その日の気温と、お腹の減り具合にもよる。
初めて炎の結晶石を作ったときは、お腹が減りすぎて貪るように作って食べていたらしい。
魔力の制御をするようになって、人族と同じ食べ物を食べるようになって、身体と魔力のバランスが取れるようになってきたようだ。
明日は熊族の町に行く。
賑やかな宴が終わり、イオの屋敷の客室でキラと一緒の部屋で眠った。
夜中に重くて目が覚めると、キースが眠るベッドの掛け布団の上に丸くなって、キラが眠っていた。
…キラは良い子だ。
キースは微笑みを浮かべて再び眠りについた。
20
お気に入りに追加
143
あなたにおすすめの小説

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~
志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。
けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。
そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。
‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。
「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト)
前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した
生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ
魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する
ということで努力していくことにしました

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる