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「では、これはどうだ!
 ロントリム公爵家令嬢マリア。
 お前はステラ嬢を傷つけることを諫めた侍女を殺したであろう!
 その事はステラ嬢が確かに見たと証言しておる。
 この事実は動かしがたいぞ!」

「やれ、やれ。
 本当に愚かですね。
 だから、さっきから言っているでしょう。
 三人で神明裁判をすれば全て明らかになるのです。
 なんなら聖女の力で、侍女の魂を召還して、真実を話させましょうか?
 それを拒む方が、脛に傷があり隠し事がある事など、馬鹿で屑で不公平な王太子でも分かっているでしょう。
 それでも無理矢理に私だけを処刑しまします?
 でもそれはそれで面白いかもしれませんね。
 ここにいる全貴族士族を含めて、この国の腐れ果てた姿が隣国に知れ渡ります。
 特に王太子の愚かさが鮮明になるでしょう。
 他の王子達や王弟達に、王太子討伐のよい口実を与える事でしょう」

 私はいい加減イライラが頂点に達してしまいました。
 言葉遣いが乱暴になってしまいました。
 でも内容は大切な事です。
 言葉遣いに怒っていた王太子も、自分がどれほど危険な事に首を突っ込んでいるか、ようやく理解したようです。
 ですかもう今更の話です。

 最初は高みの見物を決め込んでいた貴族院の役員達も、内乱や周辺国の侵攻を招くとようやく理解して、慌てて王太子を諫めだしました。
 ですが王太子は意固地になったようです。
 まあ、意固地になるように、わざと汚い言葉を使って王太子を罵ったのです。

 ギネス公爵ウィリアムが王太子に何かをささやいています。
 昨日の私との談合内容を教えているのでしょう。
 私が普通の貴族なら、多くの利権が手に入るであろうこの勝負を逃げたりしませんが、私は養女で貴族ではありません。
 できりだけ早く自由になりたいのです。
 談合の内容で手を打ってあげましょう。

「ロントリム公爵家令嬢マリア。
 真偽のほどは定かではないものの、多くの訴えをされたことは、聖女に相応しくない汚点である。
 そのような者に聖女の地位を与えておくわけにはいかない。
 聖女の地位を剥奪し、追放刑とする。
 不服はあるか」

「いえ、不服などありません。
 むしろ清々しました。
 このような腐った国から出られる事、こんなに喜ばしい事はありません。
 聖女を追放し、神の祝福を失った国がどうなるか、高みの見物をさせていただきますので、精々足搔いてください。
 腐りきった塵どもは、とっとと滅びやがれ!」

 私は捨て台詞を残して王宮から出て行きました。
 王城にある馬車を失敬して、自分から進んで荒野に向かいました。
 誰も追ってきませんでした。
 王子達や王弟達を殺す方が優先なのかもしれませんね。
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