上 下
14 / 20
宮廷抗争編

13話

しおりを挟む
「さて、朕はまだ耄碌しておらんぞ!
 ルーカスに皇位を譲るのは、ゴンサロのような分を弁えぬ愚か者が増えたから、上皇となって成敗してやろうと思ったからじゃ。
 だがそれでは皇帝の権威が低下し、上皇が皇帝に成り代わるだけだと気がついた。
 よって朕の隠居とルーカスへの皇位の譲位は中止じゃ。
 だがルーカスに権力を集めることは当初の予定通り行う。
 今までの皇太子に加え、丞相の地位を与え、司徒・司空・太尉の上位とする。
 さらに今までの皇太子領に加え、ガイルランド領を与え王に封じる」

 皇帝陛下のお言葉に圧倒されます。
 皇国はヴェイン王国と違って盤石な体制だと思っていたのですが、そうではないのかもしれません。
 それとも、盤石な体制を維持するために、実害がでる前にてこ入れしようとされておられるのでしょうか?

 どちらにしても、ルーカス様は今まで以上に力を持たれることになります。
 今までは皇帝陛下の権威と力を背景にした、皇太子としての力でした。
 ですがこれからは、皇太子としての力に加えて、ガイルランドの王としての権威と戦力を保有することになります。
 皇国に入る前に勉強した知識では、ガイルランド地方の総生産力は三千万石だったはずです。

 三千万石の国が防衛戦争に動員できる戦力は、百五十万兵にも及びます。
 長期外征に動員できる兵力は三十万兵です。
 この数はヴェイン王国の三倍です。
 豊かな地方とはいえ、皇国の一地方がヴェイン王国の三倍の国力を誇るのです。
 
 だからといってヴェイン王国が弱小国というわけではありません。
 周辺国の中では平均的な国力を誇っています。
 辺境の小国の中には、生産力が百万石に満たない国もあります。
 国王を自称してはいませんが、どこにも臣従していない独立独歩の地方領主の中には、十万石程度の領主もいるのです。

「それとだ!
 朕はまだ耳も眼も達者なのだ。
 諸侯の中に、聞こえよがしにイザベラに悪口陰口を叩いていた者がいる事、この耳で聞きこの眼で見ておる。
 その者の顔は覚えておるし、名も分かっておる。
 反省しているのなら、朕に処断される前に謹慎せよ。
 家族や一門の中に悪口陰口を口にした者がいるのなら、その者を処分したうえで、皇太子妃イザベラに詫びを入れよ。
 さもなくばゴンサロどうよう朕直々に処断してくれる!」

 ああ、皇帝陛下が私をかばってくださっているのでしょうか?
 それとも私に敵意や憎しみが向くように仕向けられておられるのでしょうか?
 何とも判断に困ります。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に仕立てあげられて婚約破棄の上に処刑までされて破滅しましたが、時間を巻き戻してやり直し、逆転します。

しろいるか
恋愛
王子との許婚で、幸せを約束されていたセシル。だが、没落した貴族の娘で、侍女として引き取ったシェリーの魔の手により悪役令嬢にさせられ、婚約破棄された上に処刑までされてしまう。悲しみと悔しさの中、セシルは自分自身の行いによって救ってきた魂の結晶、天使によって助け出され、時間を巻き戻してもらう。 次々に襲い掛かるシェリーの策略を切り抜け、セシルは自分の幸せを掴んでいく。そして憎しみに囚われたシェリーは……。 破滅させられた不幸な少女のやり直し短編ストーリー。人を呪わば穴二つ。

失恋した聖騎士に「今にも死にそうだから新しい恋がしたい」と、強力で即効性のある惚れ薬を依頼されたので作った。ら、それを私の目の前で飲んだ。

山法師
恋愛
 ベルガー領アンドレアスの街に店を構える、魔法使いのメアリー。彼女は、常連客の一人である、聖騎士のディアンから、 「失恋したんだ。もう、今にも死にそうで、新たに恋に縋るしか、乗り切る道を思い描けない」  だから、自分で飲むための、惚れ薬を作ってくれないか。  そんな依頼を受け、作ったそれを渡したら、 「何やってんですか?!」  メアリーの目の前で、ディアンは惚れ薬を飲んだ。  ◇◇◇◇◇  ※他サイトにも投稿しています。

義母たちの策略で悪役令嬢にされたばかりか、家ごと乗っ取られて奴隷にされた私、神様に拾われました。

しろいるか
恋愛
子爵家の経済支援も含めて婚約した私。でも、気付けばあれこれ難癖をつけられ、悪役令嬢のレッテルを貼られてしまい、婚約破棄。あげく、実家をすべて乗っ取られてしまう。家族は処刑され、私は義母や義妹の奴隷にまで貶められた。そんなある日、伯爵家との婚約が決まったのを機に、不要となった私は神様の生け贄に捧げられてしまう。 でもそこで出会った神様は、とても優しくて──。 どん底まで落とされた少女がただ幸せになって、義母たちが自滅していく物語。

クズな義妹に婚約者を寝取られた悪役令嬢は、ショックのあまり前世の記憶を思い出し、死亡イベントを回避します。

無名 -ムメイ-
恋愛
クズな義妹に婚約者を寝取られ、自殺にまで追い込まれた悪役令嬢に転生したので、迫りくる死亡イベントを回避して、義妹にざまぁしてやります。 7話で完結。

悪役令嬢より取り巻き令嬢の方が問題あると思います

恋愛
両親と死別し、孤児院暮らしの平民だったシャーリーはクリフォード男爵家の養女として引き取られた。丁度その頃市井では男爵家など貴族に引き取られた少女が王子や公爵令息など、高貴な身分の男性と恋に落ちて幸せになる小説が流行っていた。シャーリーは自分もそうなるのではないかとつい夢見てしまう。しかし、夜会でコンプトン侯爵令嬢ベアトリスと出会う。シャーリーはベアトリスにマナーや所作など色々と注意されてしまう。シャーリーは彼女を小説に出て来る悪役令嬢みたいだと思った。しかし、それが違うということにシャーリーはすぐに気付く。ベアトリスはシャーリーが嘲笑の的にならないようマナーや所作を教えてくれていたのだ。 (あれ? ベアトリス様って実はもしかして良い人?) シャーリーはそう思い、ベアトリスと交流を深めることにしてみた。 しかしそんな中、シャーリーはあるベアトリスの取り巻きであるチェスター伯爵令嬢カレンからネチネチと嫌味を言われるようになる。カレンは平民だったシャーリーを気に入らないらしい。更に、他の令嬢への嫌がらせの罪をベアトリスに着せて彼女を社交界から追放しようともしていた。彼女はベアトリスも気に入らないらしい。それに気付いたシャーリーは怒り狂う。 「私に色々良くしてくださったベアトリス様に冤罪をかけようとするなんて許せない!」 シャーリーは仲良くなったテヴァルー子爵令息ヴィンセント、ベアトリスの婚約者であるモールバラ公爵令息アイザック、ベアトリスの弟であるキースと共に、ベアトリスを救う計画を立て始めた。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。 ジャンルは恋愛メインではありませんが、アルファポリスでは当てはまるジャンルが恋愛しかありませんでした。

悪役令嬢は婚約破棄され、転生ヒロインは逆ハーを狙って断罪されました。

まなま
恋愛
悪役令嬢は婚約破棄され、転生ヒロインは逆ハーを狙って断罪されました。 様々な思惑に巻き込まれた可哀想な皇太子に胸を痛めるモブの公爵令嬢。 少しでも心が休まれば、とそっと彼に話し掛ける。 果たして彼は本当に落ち込んでいたのか? それとも、銀のうさぎが罠にかかるのを待っていたのか……?

【完結】お父様。私、悪役令嬢なんですって。何ですかそれって。

紅月
恋愛
小説家になろうで書いていたものを加筆、訂正したリメイク版です。 「何故、私の娘が処刑されなければならないんだ」 最愛の娘が冤罪で処刑された。 時を巻き戻し、復讐を誓う家族。 娘は前と違う人生を歩み、家族は元凶へ復讐の手を伸ばすが、巻き戻す前と違う展開のため様々な事が見えてきた。

姉妹同然に育った幼馴染に裏切られて悪役令嬢にされた私、地方領主の嫁からやり直します

しろいるか
恋愛
第一王子との婚約が決まり、王室で暮らしていた私。でも、幼馴染で姉妹同然に育ってきた使用人に裏切られ、私は王子から婚約解消を叩きつけられ、王室からも追い出されてしまった。 失意のうち、私は遠い縁戚の地方領主に引き取られる。 そこで知らされたのは、裏切った使用人についての真実だった……! 悪役令嬢にされた少女が挑む、やり直しストーリー。

処理中です...