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第2章

第109話:労働力確保

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神歴1818年皇歴214年10月24日帝国南部交易湊:ロジャー皇子視点

 古代飛翔竜との交渉はとても有利に運ぶ事ができた。
 全ては愚かな飛竜族が暴走してくれたお陰だ。

 俺の相手にはならない老飛竜や成飛竜だが、普通に考えれば途轍もなく強い。
 退化して人間に使役されるような竜など束になってもかなわない。
 それどころか、逃げようとしても絶対に逃げられない。

 結果として、短期間に10万頭の草食退竜が手に入った。
 少しでも早く俺に利用される期間を終え、古代飛翔竜に先頭訓練を受けたい一心で、飛竜族は寝る間も惜しんで草食退竜を集めてくれた。

 結果、あおれほど文句を言っていた、人間に使役される竜を生み出す事になった。
 自業自得とはいえ、あまりの哀れさに涙が流れそうになった。

 同時に、その愚かさを嘲笑いたくなった。
 飛竜族の傲慢な態度に内心腹を立てていたのだと自覚した。

 いったん大山脈裾野の開拓地から離れさせた犯罪者たちだが、安全が確保できたので、また罰の重労働をさせないといけない。

 これまで貴族士族だと言って蔑んでいた、農業をやらせる。
 亜空間に収納していた村、家々は取り出して住めるようにしてやった。

 成長途中だった農地は亜空間に保管したままにしておいた。
 新たに大地を魔術で耕して1から穀物を育てさせた。

 古代飛翔竜に許可されたトンネル造りだが、途中で止めたので、1本目と2本目は少し場所をずらして3本目と同じ20車線で造りなおした。

 これで俺が領主をやっているバカン辺境伯家が損をする事がなくなった。
 中央部のトンネルに近い領地の方が、交易に有利な気はするが、それは帝国の東側にある属国を栄えさせれば多少は補える。

 トンネルは1度造り始めたら何もしなくても勝手に造ってくれる。
 毎日術式が解除されていないか確認する必要はあるが、解除されていなければ魔力を与える必要もない。

 飛竜族が集めて来る草食退竜を受けとり、軍馬を扱った事のある貴族や士族、処罰として大山脈開拓地送りになっている者に渡す。

 そんな事をしている間に、前回よりも2日早く艦隊が戻ってきた。
 使い魔が皇国内を監視してくれているので、誰が何をしているか分かっている。
 特にハリソン皇父とハントリー侯爵家には厳しい見張りをつけてあった。

「よく無事に戻ってきてくれた。
 ハリソン皇父が押し付けた連中が邪魔だっただろう?」

「確かに名門風を吹かす連中は鼻につきましたが、殿下が指示してくださった使い魔が、陸を離れて直ぐに罰を与えてくださったので、前回よりも楽でした」

 前回の贈賄犯は、表向きは立身出世した事になっている。
 身分は士族のままだが、子爵家に匹敵する収穫量の土地を与えられ、統治に忙しくて皇国に戻れない事になっている。

 そのウワサは艦隊が皇国の戻る前から広く知られていた。
 俺が使い魔を使って広めたのだから間違いない。
 そのウワサを信じた愚か者が、ハリソン皇父に賄賂を贈って乗員となった。

 ジョージ皇帝は俺の怒りを知って後宮に籠って出て来なくなった。
 ハリソン皇父が好き勝手できるのもそのためだ。

 新しく選帝侯になった連中も、俺がいないのを良い事に、ハリソン皇父と組んで好き勝手始めた。

 少しでも知恵があるなら、ジョージ皇帝の恐怖に震える姿を見て、危険を察するのだろうが、全く危機感なく賄賂を受け取り艦隊に乗員を押し付ける。

 俺は、開拓地で強制労働させる贈賄犯を手に入れられると割り切っている。
 無能で欲深く役立たずな譜代貴族家を潰せるのも良い。

 同母の兄弟姉妹だけでなく、異母の兄弟姉妹を養子や嫁に出す家を手に入れられるのだから、大笑いしたいくらいだ。

「さて、船旅の間に自分たちの立場は嫌と言うほど理解したな?
 先代皇太子、ウィリアム殿下を毒殺して皇位を奪ったハリソンに賄賂を贈り、役職を手に入れたのだから同罪だ。
 今この場で斬首されるのを望むか、それとも犯罪者として死ぬまで農地で働くか?
 好きな方を選べ!」

「ハリソン皇父様に皇位簒奪の罪があると言うなら、ロジャー殿下も同罪ですぞ”!
 それでも厚顔無恥に我らを処罰すると申されるのか?!」

「ああ、そうだ、厚顔無恥に処罰してやるよ。
 毒殺されたウィリアム皇太子殿下、子供を全て殺されたジェームス皇帝陛下に詫びる方法は、ジョージとハリソンの罪を公にして罰するしかない。
 その上で、ウィリアム皇太子殿下が目指された、誇り高い騎士が治める皇国を作り上げるしかないと思っている。
 その為には、賄賂を贈って役職を買うような奴は消し去らないといけない。
 さあ、早く決めろ、この場で死ぬか、農民になっても生き延びるか?!」

「「「「「ギャオオオオオ」」」」」

 俺が血と魔力を与えて進化させた、いや、先祖返りした草食退竜が雄叫びをあげて、4000人の皇国貴族を脅迫する。

 元々大型の草食退竜だったが、今では純血種大地竜の若竜くらいの戦闘力と知能を持つ、俺の使い魔になっている。

 同じように先祖返りした草食退竜が1000頭もいて、俺の護衛騎士はもちろん、護衛騎士の家臣の騎竜になってくれている。

 何度もの血と魔力を分け与えて使い魔にする実験を繰り返したが、1度も失敗する事無く先祖返りしている。

 今はまだ純血種大地竜しかいないが、できれば飛竜種の先祖がえりを生み出して空を駆ける騎竜を手に入れたいのだが、そうなると古代飛翔竜とケンカになるか?

「働きます、働かせていただきます、命だけは助けてください!」

 情けない、皇国貴族には命懸けで誇りを守る悪党すらいないのか!
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