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第2章
第105話:古代飛翔竜
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神歴1818年皇歴214年10月11日帝国北部大山脈裾野:ロジャー皇子視点
大山脈に入植していた連中を急いで帝国領に避難させた。
贈賄罪で入植させた皇国士族からみると、朝令暮改のような避難命令だ。
文句を言う奴は放置して魔獣や魔蟲の餌にしたいのだが、古代飛翔竜を始めとした飛竜族に誠意を見せるには、人間は1人残らず退去させないといけない。
それに、使い魔に地獄の痛みで責められた贈賄犯はとても素直だった。
全く文句を言わずに急いで逃げ出している。
連中も一応皇国士族だから、大山脈を始めとした魔境の怖さは知っている。
罰として大山脈に入植させられたが、逃げられるものなら、一刻も早く逃げたかったのだろう。
アントニオ総司令官が帝国騎士団や徒士団を使ってやっているのは、大山脈から逃げてきた連中を北部で迎える準備だ。
数十万人の避難民を迎え入れるのは並大抵の事ではない。
食糧は何とかなっても住む場所は簡単に造れない。
行軍で野営する騎士団や徒士団のテントや天幕を流用するくらいだ。
俺がいなくなったのを好機と捉え、皇帝と皇父に賄賂を贈った皇国士族。
俺が帝王に勅命として出させた奴隷解放令に逆らった帝国貴族と士族。
同じく勅命に逆らった奴隷商人を始めとした平民が続々と逃げて来る。
俺は誰もいなくなった大山脈の開拓村を巡って食糧を回収する。
村々に備蓄されていた食糧を選んで回収するのではない。
亜空間を創り出して村の家を基礎ごと回収した。
前世で読んだり観たりした魔術は全て再現できないか試している。
その中には惑星に匹敵する広大な亜空間を創り出す魔術があった。
大山脈にある村を保管するくらいなら簡単だった。
まだ収穫されていない、実り豊かな耕作地を見たら惜しくなった。
全部亜空間に保管できれば、また1年分の食糧を備蓄できる。
大好きな食べる事を作業にしてまで、作り続けてきた魔力には余裕がある。
もしトンネル造りを再開できたとしても、あの魔術は大した魔力を必要としない。
周囲の魔力を利用する事ができるから、魔力的な負担なくトンネルが造れる。
問題は古代飛翔竜と敵対した時だが……
少しだけ考えて、戦う魔力よりも食糧の確保を優先した。
使い魔や民を餓死させるほど罪深い事はない。
古代飛翔竜との戦いを避けなければいけないのなら、土下座すればいい。
などと考えながら、大山脈の裾野にある村と耕作地を巡っている間に時が過ぎ、とんでもない魔力量を持った存在が山頂から降りてきた。
前回の老飛竜など、この魔力量に比べれば惑星と小石くらい差がある。
その存在の周囲には、老飛竜以上の魔力量を持った存在も数多く感じる。
中央の存在が強大過ぎて霞んでしまうが、そいつらの1体でも人間に敵意をもってしまったら、人間など簡単に滅ぼされてしまうだろう。
覚悟を決めなければいけない。
誇りや矜持など、守るべき民の命に比べたら取るに足らないモノだ。
古代飛翔竜だけなら、差し違える覚悟があれば勝てるかもしれないが、それでは残った飛竜族に民が殺されてしまう。
「待たせてしまったようだな」
俺が覚悟を決めている間に古代飛翔竜が目の前にやってきた。
俺と同じマッハ10で飛んできたはずなのに、周囲に何の衝撃も与えていない。
防御魔術を展開して周囲を守りながら飛んでいたのか?
「いえ、とんでもございません、卑小な人間ごときの為に御動座していただき、感謝の言葉もございません」
俺が礼儀正しく古代飛翔竜を迎えると、一気に機嫌が悪くなった。
「……常々言って聞かせているだろう。
誇り高き竜族ともあろう者が、人を恐れさせるようなマネをするなと!
強者が弱者をいたぶるほど醜悪な姿はないと!」
古代飛翔竜が俺を脅かしに来た老飛竜たちを厳しく叱責した。
言葉自体はそれほど厳しくないが、込められている魔力がとんでもない。
老飛竜や壮飛竜だから耐えられているが、人間なら1km離れていても即死だ。
「もう、しわけ、ございま、せん」
息も絶え絶えという姿で老飛竜と壮飛竜が詫びているが、言葉を発する事ができているのは老飛竜だけで、壮飛竜は地に這っている。
「人間、直撃ではないにしても、朕の殺気を悠々と耐えるとは只者ではないな?」
「民を守るために努力してきただけでございます」
「隠すな、お前の魂はこの世界の者とは少し違っている。
無理矢理召喚された者か、世界の狭間を抜けて紛れ込んでしまった転生者だな?」
「さすが古代飛翔竜様です、私は前世の記憶を持つ転生者です」
「なるほど、そういう事なら朕に匹敵する魔力を持っているのも分かる。
それで、お前はこの世界を支配する気なのか?」
「とんでもありません、そんな気苦労の多い事は絶対にしません。
持って生まれた立場に責任があるので、その範囲で民を守るだけです。
それに、どれほどの魔力があろうと、神々に匹敵される古代種の方々には絶対に勝てないでしょう?」
「それだけの魔力があれば、絶対に勝てないと言う事はないだろうが、守るべき民が戦いに巻き込まれて死に絶えるのは確かだな」
「なれば土下座してでも古代種の方々との戦いは回避します。
その前提でお聞きさせていただきますが、大山脈の裾野を開拓するのは飛竜族の方々の怒りを買うのでしょうか?」
「そのようなことはない、裾野程度なら気にも留めぬ。
そうだな、人族が魔境と呼んでいる場所から10kmくらいなら入っても良いぞ」
「有り難き幸せでございます。
もう1つお聞きさせていただきますが、トンネルは何故駄目なのでしょうか?」
「お前の使っている魔術は、魔力と魔素の流れを変えてしまう。
地の底から湧き出す魔力は飛竜族の食糧だ、奪う事は許さん」
「では、私の魔力だけでトンネルを造る事は許して頂けますか?」
「トンネルを掘る事で魔力の流れが変わってしまうから許さん」
「良く理解できました、トンネルは諦めさせていただきます。
念のために確認させていただきますが、私が大山脈を越えて皇国と帝国を移動する事は許して頂けるのでしょうか?」
大山脈に入植していた連中を急いで帝国領に避難させた。
贈賄罪で入植させた皇国士族からみると、朝令暮改のような避難命令だ。
文句を言う奴は放置して魔獣や魔蟲の餌にしたいのだが、古代飛翔竜を始めとした飛竜族に誠意を見せるには、人間は1人残らず退去させないといけない。
それに、使い魔に地獄の痛みで責められた贈賄犯はとても素直だった。
全く文句を言わずに急いで逃げ出している。
連中も一応皇国士族だから、大山脈を始めとした魔境の怖さは知っている。
罰として大山脈に入植させられたが、逃げられるものなら、一刻も早く逃げたかったのだろう。
アントニオ総司令官が帝国騎士団や徒士団を使ってやっているのは、大山脈から逃げてきた連中を北部で迎える準備だ。
数十万人の避難民を迎え入れるのは並大抵の事ではない。
食糧は何とかなっても住む場所は簡単に造れない。
行軍で野営する騎士団や徒士団のテントや天幕を流用するくらいだ。
俺がいなくなったのを好機と捉え、皇帝と皇父に賄賂を贈った皇国士族。
俺が帝王に勅命として出させた奴隷解放令に逆らった帝国貴族と士族。
同じく勅命に逆らった奴隷商人を始めとした平民が続々と逃げて来る。
俺は誰もいなくなった大山脈の開拓村を巡って食糧を回収する。
村々に備蓄されていた食糧を選んで回収するのではない。
亜空間を創り出して村の家を基礎ごと回収した。
前世で読んだり観たりした魔術は全て再現できないか試している。
その中には惑星に匹敵する広大な亜空間を創り出す魔術があった。
大山脈にある村を保管するくらいなら簡単だった。
まだ収穫されていない、実り豊かな耕作地を見たら惜しくなった。
全部亜空間に保管できれば、また1年分の食糧を備蓄できる。
大好きな食べる事を作業にしてまで、作り続けてきた魔力には余裕がある。
もしトンネル造りを再開できたとしても、あの魔術は大した魔力を必要としない。
周囲の魔力を利用する事ができるから、魔力的な負担なくトンネルが造れる。
問題は古代飛翔竜と敵対した時だが……
少しだけ考えて、戦う魔力よりも食糧の確保を優先した。
使い魔や民を餓死させるほど罪深い事はない。
古代飛翔竜との戦いを避けなければいけないのなら、土下座すればいい。
などと考えながら、大山脈の裾野にある村と耕作地を巡っている間に時が過ぎ、とんでもない魔力量を持った存在が山頂から降りてきた。
前回の老飛竜など、この魔力量に比べれば惑星と小石くらい差がある。
その存在の周囲には、老飛竜以上の魔力量を持った存在も数多く感じる。
中央の存在が強大過ぎて霞んでしまうが、そいつらの1体でも人間に敵意をもってしまったら、人間など簡単に滅ぼされてしまうだろう。
覚悟を決めなければいけない。
誇りや矜持など、守るべき民の命に比べたら取るに足らないモノだ。
古代飛翔竜だけなら、差し違える覚悟があれば勝てるかもしれないが、それでは残った飛竜族に民が殺されてしまう。
「待たせてしまったようだな」
俺が覚悟を決めている間に古代飛翔竜が目の前にやってきた。
俺と同じマッハ10で飛んできたはずなのに、周囲に何の衝撃も与えていない。
防御魔術を展開して周囲を守りながら飛んでいたのか?
「いえ、とんでもございません、卑小な人間ごときの為に御動座していただき、感謝の言葉もございません」
俺が礼儀正しく古代飛翔竜を迎えると、一気に機嫌が悪くなった。
「……常々言って聞かせているだろう。
誇り高き竜族ともあろう者が、人を恐れさせるようなマネをするなと!
強者が弱者をいたぶるほど醜悪な姿はないと!」
古代飛翔竜が俺を脅かしに来た老飛竜たちを厳しく叱責した。
言葉自体はそれほど厳しくないが、込められている魔力がとんでもない。
老飛竜や壮飛竜だから耐えられているが、人間なら1km離れていても即死だ。
「もう、しわけ、ございま、せん」
息も絶え絶えという姿で老飛竜と壮飛竜が詫びているが、言葉を発する事ができているのは老飛竜だけで、壮飛竜は地に這っている。
「人間、直撃ではないにしても、朕の殺気を悠々と耐えるとは只者ではないな?」
「民を守るために努力してきただけでございます」
「隠すな、お前の魂はこの世界の者とは少し違っている。
無理矢理召喚された者か、世界の狭間を抜けて紛れ込んでしまった転生者だな?」
「さすが古代飛翔竜様です、私は前世の記憶を持つ転生者です」
「なるほど、そういう事なら朕に匹敵する魔力を持っているのも分かる。
それで、お前はこの世界を支配する気なのか?」
「とんでもありません、そんな気苦労の多い事は絶対にしません。
持って生まれた立場に責任があるので、その範囲で民を守るだけです。
それに、どれほどの魔力があろうと、神々に匹敵される古代種の方々には絶対に勝てないでしょう?」
「それだけの魔力があれば、絶対に勝てないと言う事はないだろうが、守るべき民が戦いに巻き込まれて死に絶えるのは確かだな」
「なれば土下座してでも古代種の方々との戦いは回避します。
その前提でお聞きさせていただきますが、大山脈の裾野を開拓するのは飛竜族の方々の怒りを買うのでしょうか?」
「そのようなことはない、裾野程度なら気にも留めぬ。
そうだな、人族が魔境と呼んでいる場所から10kmくらいなら入っても良いぞ」
「有り難き幸せでございます。
もう1つお聞きさせていただきますが、トンネルは何故駄目なのでしょうか?」
「お前の使っている魔術は、魔力と魔素の流れを変えてしまう。
地の底から湧き出す魔力は飛竜族の食糧だ、奪う事は許さん」
「では、私の魔力だけでトンネルを造る事は許して頂けますか?」
「トンネルを掘る事で魔力の流れが変わってしまうから許さん」
「良く理解できました、トンネルは諦めさせていただきます。
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