皇帝の14男ですが、皇位争いの暗殺や謀殺から生き延びて、何とか貧乏辺境伯家に婿入りできました。前世知識と魔力でスローライフしたい。

克全

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第2章

第96話:各国の対応

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神歴1818年皇歴214年9月10日帝国帝都帝宮:ロジャー皇子視点

 東の愚王の所為で侵攻する事になった5万の将兵も、30秒で皆殺しになった。
 俺に褒められたい使い魔たちが殺戮を競ったからだ。

 前もって何処から来るか分かっているから、1体で1人しか殺せないと使い魔たちがぼやいていた。

 愚かな王に支配された国は可哀想だ。
 帝国もそうだったが、東西の隣国も同じように可哀想だ。
 もう少しマシな王が統治していたら、将兵は他国で屍をさらさずにすんだのだ。

 東西の王と王族には恐怖で眠れない日々を過ごしてもらうとして、問題は事情を詳しく書いた親書を使い魔に届けさせた、大陸各国の反応だ。

 2人の愚王と2つの王家を滅ぼすのは決まっているのだが、その影響で民が戦乱に巻き込まれて苦しむのは嫌なのだ。

 だから親書を送らせた使い魔を帰国させず、そのまま大陸各国がどのように動くのか探らせ続けている。

 ずっと見張らせている、潜伏と諜報に長けた使い魔がいてくれるが、手耳も目も手も多い方が良いので、残ってもらった。

 その多くが俺の血と魔力を分け与えた特別な使い魔たちなので、まるで自分の子供のような愛しさがある。

 皇国の戻る時に残すのを今から辛く感じてしまうのだが、帝国に残る解放奴隷の事が心配なので、我が子同然の使い魔を残していくしかない。

 古代飛翔竜さえいなければ、大山脈を飛び越える事ができる。
 マッハ10で駆ければ、背中合わせの皇国と帝国なんて同じ村の家も同然だ。
 本気でもっとレベルを上げて最強を目指すか?

 などと考えていると、愚王の西国と国境を接している、大陸南西部の1国から使い魔が映像と音声を伝えてくれる。

 他の使い魔たちとの繋がりを切って映像と音声を精密にする。
 俺の魔力を使う事で、偵察してくれている使い魔の負担を急いで減らさないと、魔力を使い果たして死んでしまう。
 
「これは本当だと思うか?」

 アステリア皇国が戦乱を終わらせるもっと前、前皇朝が大陸各国と交易していた頃から、5つの強国が覇を競っていたのが大陸南西部だ。

 その最東部に位置していた国が、俺に喧嘩を売って大損害を受けた愚王の国。
 俺がその愚行を大陸各国に親書で知らせたのだが、本当かどうか疑っている。

 先祖代々勝てなかった国を、俺がコテンパンに叩いたのが信じられない、信じたくない、ウソだと思いたいのだ。

「本当かどうかは調べさせないと分かりませんが、これは好機でございます」

 おそらく大臣であろう者が神妙に答えた。

「好機だと、お前はこのようないいかげんな手紙を信じるのか?!」

「陛下、真実から目を背けるのはお止めください!
 ロジャー皇子殿下は、この親書を一斉に大陸各国に届ける実力があるのです。
 あの強勢を誇った帝国を、一瞬で征服できる実力があるのです。
 その実力を認めず攻め込んだ国が、大損害を受けているのですぞ!」

「……分かった、お前がそこまで言うのなら調べが終わるまでは認めよう。
 だが、お前が調べて偽りだと分かったら謝ってもらうぞ」

「この親書が偽りなら幾らでも謝らせていただきます」

「そうか、それで好機というのはどういう事だ?」

「この親書が真実なら、ガスペル王国は5万もの兵を失った事になります。
 今攻め込めば簡単に滅ぼす事が可能でございます」

「ふむ、だが失ったのは東方方面軍と中央軍だけであろう。
 我が国との国境にいる西方方面軍や北方方面軍は健在だ。
 何の準備もなく攻め込んでは、我が国も大きな損害を受ける。
 その隙を他の国に突かれるのではないか?」

「はい、何の準備もせず、時期も考えずに攻め込んでは、手痛い反撃を喰います。
 なので、ロジャー皇子殿下が報復を行うのに合わせて攻め込むのです。
 この親書が真実なら、さほど間をおかずに報復すると思われます」

 予想通りに反応をしているが、まだ俺を舐め切っている。
 俺が隣国に報復するのを利用して、利益を得ようとする国を許すと思っている。
 帝国を支配下に置き西国に報復したら、俺が手一杯になると思っている。

『俺の獲物を横取りしようとしたら、お前を含めた王族を皆殺しにしてやる』と直ぐに書いて、最低限の体裁を整えて親書とし、使い魔に運んでもらった。

 前世のハトの飛行速度は160km弱、最速のハリオアマツバメで179kmくらいだが、俺の使い魔になった鳥は500kmくらいで飛べる。

 だから、帝都からミスラ王国の王都まで1時間もあれば親書を届けられる。
 今ミスラ王国の国王と大臣が話していた内容も書いて、大陸各国に俺の獲物には手を出すなと釘を刺しておこう。

 わざわざ隣国を占領統治する気などないが、他人にくれてやる気もない。
 人間の善性など信じていないが、善良な面があるのは知っている。
 俺の手で善性が踏み躙られる戦国乱世を作る気はない。

 さて、どうしたものだろう?
 報復のために、俺を舐める者が出ないように、俺が皇国に戻った後で解放奴隷が差別されないように、東西の隣国王家を滅ぼすのは確定だ。

 問題は、王家を滅ぼした東西の国が、今度は立場が入れ替わって隣国に攻め込まれて、民が塗炭の苦しみを味わう事だ。

 本気で防ごうと思うのなら俺の支配下に入れるしかない。
 だが、直接統治をすると大木に責任を背負わなければいけなくなる。
 それは嫌なので、他の方法を選ぶことになる。

 とは言っても、俺が統治する気が無いなら他人に任せるしかないのだが、心から信用できる家臣が少な過ぎるので、帝国から代官を派遣する事はできない。

 東西の国にいる有力貴族に任せる方法もあるが、そいつが悪政を行ったら俺の責任になるのでやりたくない。

 1つだけ間違いのない方法があるのだが……
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