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第1章

第59話:家臣の役職

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神歴1817年皇歴213年7月7日バカン辺境伯家領都領城:ロジャー皇子視点

 ここ数日で急速に家臣の役割が決まった。
 得意不得意、好き嫌いも考えて、俺の将来の展望に合わせた役目が作られ、家臣が割り振られていく。

「今日からお前たちは殿下の後宮担当の犯罪者奴隷だ。
 力仕事専門だから、色目を使っても今の境遇からは抜け出せないぞ。
 もっとも、殿下はまだ5歳だから、誰が何をやっても無意味だがな!」

 スレッガー叔父上が嫌がらせのような事を言っている。
 10家一味の家族で犯罪者奴隷にされた女に、後宮の重労働をさせるのだろう。

 俺の寝床になった、領城の別宮に人工池を造るのだから大変だ。
 それも5種の貝で試した12パターンに合わせて、12個の大きな養殖池を急いで造るのだから、これまで以上に働かせるだろう。

「スレッガー叔父上、後宮で働かせる事になっている家臣にもやらせろ。
 この実験だけは成功させたい、できるだけ多くの人を使って急いでやらせろ」

「はっ!」

 俺が始めた義務教育の影響で、バカン辺境伯家に代々仕えていて、今も処分されることなく仕えている者は、親兄弟が同時に仕える事になった。

 200年の平和で、家臣に分け与える領地もお金も無くなった皇国や貴族家では、よほどの権力者でないと家族の1人しか働けない。

 親が働いている間は、子供が40歳になろうと50歳になろうと、主君のためには働けない。

 例外は武者修行という名目でダンジョンや魔境に入る事だ。
 これなら将来家を継ぐ時のために実戦経験を積んでいると言える。

 次男三男も、長男に何かあった時のために実戦経験を積んでいると言って、貴族家や士族家に籍に残したままダンジョンや魔境に入れる。

 こういう言い訳が使えるからこそ、ゴート子爵家に仕える極貧徒士家が、子弟を奴隷のように働かせる事もできていた。

 貴族家の子供はともかく、下級の騎士家や徒士家の子弟なら、命懸けで稼いだ金を親兄弟に奪われないように、籍を抜いて平民になった方が良い。

 話は横道にそれてしまったが、バカン辺境伯家ではなく、俺個人の私兵としてなら、家臣が激減したバカン辺境伯領で騎士や徒士として仕官できる。

 親子同時どころか、兄弟姉妹8人でも同時に仕官できる。
 もちろん忠誠を尽くすと誓ってもらわないといけないが、いくらでも仕事がある。

 読み書き計算を教えられる者は、老若男女関係なく徒士としで働いてもらう。
 心から忠誠を誓う女なら、淡水真珠養殖の手伝いをさせたいので、後宮の徒士として働いてもらう

 ある程度の武力があって忠誠を誓うなら、老若男女関係なく徒士団に仕官できて、大森林での狩りや採集、放棄耕作地の再開拓で働いてもらう。

 つまり成人を迎えていて忠誠を誓う者は、バカン辺境伯家の譜代家臣なら、家族全員が新しい家を興して当主になれるのだ!

「農業用溜池と用水路を造るのに、犯罪者奴隷の男を全員使え。
 魚と貝を養殖できたら、冷害やモンスター災害があっても飢えないで済む」

「「「「「はい!」」」」」

「徒士団は今日も大森林に入って魔樹を切り出せ。
 領都の城壁外に水濠を築くが、その内側に魔樹の防壁を造る。
 水濠でも魚や貝を養殖して冷害やモンスター災害に備える。
 水濠と魔樹防壁があれば、これまで以上にモンスター災害を防げる。
 餌の少ない冬に、はぐれモンスターが人を狙って来るのだろう?
 冬までに、大森林側だけでも水濠と魔樹防壁を完成させるぞ!」

「「「「「おう!」」」」

 大森林の魔樹や魔草は、伐採しても直ぐ生えてくると聞いたが、本当だった。
 もし不要な魔樹や魔草の根を全て取り除けるなら、こちらが手に入れたい魔樹や魔草だけを大量栽培できるが、そんな事が本当にできるのだろうか?

 それと、超巨大フキも毎日元の大きさまで再生するなら、無理に和紙をすかなくても、パピルスよりも上質な2枚フキ紙を必要なだけ作れる。
 さて、どうしたものだろう、和紙作りはやめるか?
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