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第1章
第46話:言い訳と慣れ合い
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神歴1817年皇歴213年5月30日アバコーン辺境伯領・ロジャー皇子視点
「殿下、本当に貴男は、いつもいつも、とんでもない事をしでかしてくださる!」
キャバン辺境伯領を出発して12日、バカン辺境伯領にいたスレッガー叔父上が迎えに来てくれた。
「わざわざ迎えに来なくても良かったのだぞ」
「そんな訳にはいかないでしょうが。
殿下の事ですから、大丈夫だと分かっていますが、そう言えるのは私だけですよ。
アントニオ殿やウッディ殿にそんな余裕はありません。
それでなくても、影武者を使って、守役や護衛騎士に内緒で抜け出しているんですよ、分かっていますか?!」
「分かっている、怒るな」
「怒るなと言われても無理です、私だけは知っていたんだろうと、護衛騎士の同僚たちに詰め寄られる中で、同僚を抑えて私だけ迎えに来たんですよ。
それがどれだけ大変だったか、分かっているんですか?!」
「分かっている、あらゆる言い訳をして1人で来てくれたのだろう?」
「ええ、ええ、ええ、山ほど愚にもつかない言い訳をさせてもらいましたよ。
『本当に何も知らなかった』と大ウソをつきましたよ。
『もしかしたらキャバン辺境伯領にいる殿下の方が影武者かもしれない』とか。
『アントニオ殿が行ったら向こうが本物だとバレて狙われるかもしれない』とか。
『こっちの殿下が本当に本物だから守ってもらわないと困る』とか。
もう、嫌われるような言い訳を山のように口にして、1人で迎えに来たんですよ」
「叔父上ならそれくらいやってくれると信じていた。
感状は書いてあるから受け取ってくれ、これは褒美の100万ペクーニアだ」
「やれ、やれ、殿下にはかないませんね。
ですが感状や金で誤魔化せるのはこれが最後ですよ」
「残念だが、それは皇都の選帝侯たちしだいだ。
連中がこの罪まで償わずに誤魔化すようなら、本気で戦いの準備をする事になる。
そうなると、これからも護衛騎士たちを騙さないといけなくなる」
「まだまだ苦労が絶えないんですか、参りますね」
「アバコーン辺境伯家の領地家宰には話をつけている。
明日からフォリスト・ウルフダンジョンに潜る事になっている。
叔父上には、俺が新たに増し抱えた連中を指揮してもらう」
「その間にまた軍資金を稼ぎ、アバコーン辺境伯家を味方につける気ですか?」
「ああ、アバコーン辺境伯家は、今の皇帝よりも皇室嫡流に近い皇室の分家だ。
臣籍降下しているから皇位継承権は与えられていないが、皇室や皇国の非常時には、諸侯王に成れる特別な家だ、味方につけおいて損はない」
「確か、初代がとんでもない遺言を残しているのでしたよね?」
「ああ『皇室を裏切るような言動するようなら、当主の命令であろうと従うな』
『アバコーン辺境伯家の家臣なら、当主よりも皇帝に忠誠を尽くせ』
そういうアバコーン辺境伯家に迷惑な遺言を残している」
「皇帝に忠誠を尽くせと言うのが、そんなに迷惑な遺言ですか?」
「今の愚かな皇帝の命令を、それなりの当主であるアバコーン辺境伯よりも優先しなければいけないのだぞ、迷惑以外の何物でもないだろう」
「そうですね、そう言われて迷惑なのがよく分かりました」
「皇国からダンジョンを含む大領地を与えられたが、アバコーン辺境伯もバカン辺境伯領ほどではないがモンスター災害が多い。
雪による不作凶作にも、何度も襲われている。
金を大量に落とす滞在をしてやれば、領地にいる家臣たちの心が買える。
下品で露骨な手だが、最も効果的な方法だ」
「わかりました、確かにアバコーン辺境伯家を味方に取り込むのは大きいです。
殿下が新たに召し抱えた連中も、早急に鍛える必要がある。
ですが大丈夫ですか、武術訓練なんて受けた事のない平民ばかりでしょう?」
「最初は、防具でガチガチに固めて1階だけを巡回してくれ。
滞在中に2階に行けなくても良い。
1番の目的は、アバコーン辺境伯家にお金を落とす事だ」
「殿下、本当に貴男は、いつもいつも、とんでもない事をしでかしてくださる!」
キャバン辺境伯領を出発して12日、バカン辺境伯領にいたスレッガー叔父上が迎えに来てくれた。
「わざわざ迎えに来なくても良かったのだぞ」
「そんな訳にはいかないでしょうが。
殿下の事ですから、大丈夫だと分かっていますが、そう言えるのは私だけですよ。
アントニオ殿やウッディ殿にそんな余裕はありません。
それでなくても、影武者を使って、守役や護衛騎士に内緒で抜け出しているんですよ、分かっていますか?!」
「分かっている、怒るな」
「怒るなと言われても無理です、私だけは知っていたんだろうと、護衛騎士の同僚たちに詰め寄られる中で、同僚を抑えて私だけ迎えに来たんですよ。
それがどれだけ大変だったか、分かっているんですか?!」
「分かっている、あらゆる言い訳をして1人で来てくれたのだろう?」
「ええ、ええ、ええ、山ほど愚にもつかない言い訳をさせてもらいましたよ。
『本当に何も知らなかった』と大ウソをつきましたよ。
『もしかしたらキャバン辺境伯領にいる殿下の方が影武者かもしれない』とか。
『アントニオ殿が行ったら向こうが本物だとバレて狙われるかもしれない』とか。
『こっちの殿下が本当に本物だから守ってもらわないと困る』とか。
もう、嫌われるような言い訳を山のように口にして、1人で迎えに来たんですよ」
「叔父上ならそれくらいやってくれると信じていた。
感状は書いてあるから受け取ってくれ、これは褒美の100万ペクーニアだ」
「やれ、やれ、殿下にはかないませんね。
ですが感状や金で誤魔化せるのはこれが最後ですよ」
「残念だが、それは皇都の選帝侯たちしだいだ。
連中がこの罪まで償わずに誤魔化すようなら、本気で戦いの準備をする事になる。
そうなると、これからも護衛騎士たちを騙さないといけなくなる」
「まだまだ苦労が絶えないんですか、参りますね」
「アバコーン辺境伯家の領地家宰には話をつけている。
明日からフォリスト・ウルフダンジョンに潜る事になっている。
叔父上には、俺が新たに増し抱えた連中を指揮してもらう」
「その間にまた軍資金を稼ぎ、アバコーン辺境伯家を味方につける気ですか?」
「ああ、アバコーン辺境伯家は、今の皇帝よりも皇室嫡流に近い皇室の分家だ。
臣籍降下しているから皇位継承権は与えられていないが、皇室や皇国の非常時には、諸侯王に成れる特別な家だ、味方につけおいて損はない」
「確か、初代がとんでもない遺言を残しているのでしたよね?」
「ああ『皇室を裏切るような言動するようなら、当主の命令であろうと従うな』
『アバコーン辺境伯家の家臣なら、当主よりも皇帝に忠誠を尽くせ』
そういうアバコーン辺境伯家に迷惑な遺言を残している」
「皇帝に忠誠を尽くせと言うのが、そんなに迷惑な遺言ですか?」
「今の愚かな皇帝の命令を、それなりの当主であるアバコーン辺境伯よりも優先しなければいけないのだぞ、迷惑以外の何物でもないだろう」
「そうですね、そう言われて迷惑なのがよく分かりました」
「皇国からダンジョンを含む大領地を与えられたが、アバコーン辺境伯もバカン辺境伯領ほどではないがモンスター災害が多い。
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「わかりました、確かにアバコーン辺境伯家を味方に取り込むのは大きいです。
殿下が新たに召し抱えた連中も、早急に鍛える必要がある。
ですが大丈夫ですか、武術訓練なんて受けた事のない平民ばかりでしょう?」
「最初は、防具でガチガチに固めて1階だけを巡回してくれ。
滞在中に2階に行けなくても良い。
1番の目的は、アバコーン辺境伯家にお金を落とす事だ」
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