皇帝の14男ですが、皇位争いの暗殺や謀殺から生き延びて、何とか貧乏辺境伯家に婿入りできました。前世知識と魔力でスローライフしたい。

克全

文字の大きさ
上 下
46 / 111
第1章

第46話:言い訳と慣れ合い

しおりを挟む
神歴1817年皇歴213年5月30日アバコーン辺境伯領・ロジャー皇子視点

「殿下、本当に貴男は、いつもいつも、とんでもない事をしでかしてくださる!」

 キャバン辺境伯領を出発して12日、バカン辺境伯領にいたスレッガー叔父上が迎えに来てくれた。

「わざわざ迎えに来なくても良かったのだぞ」

「そんな訳にはいかないでしょうが。
 殿下の事ですから、大丈夫だと分かっていますが、そう言えるのは私だけですよ。
 アントニオ殿やウッディ殿にそんな余裕はありません。
 それでなくても、影武者を使って、守役や護衛騎士に内緒で抜け出しているんですよ、分かっていますか?!」

「分かっている、怒るな」

「怒るなと言われても無理です、私だけは知っていたんだろうと、護衛騎士の同僚たちに詰め寄られる中で、同僚を抑えて私だけ迎えに来たんですよ。
 それがどれだけ大変だったか、分かっているんですか?!」

「分かっている、あらゆる言い訳をして1人で来てくれたのだろう?」

「ええ、ええ、ええ、山ほど愚にもつかない言い訳をさせてもらいましたよ。
『本当に何も知らなかった』と大ウソをつきましたよ。
『もしかしたらキャバン辺境伯領にいる殿下の方が影武者かもしれない』とか。
『アントニオ殿が行ったら向こうが本物だとバレて狙われるかもしれない』とか。
『こっちの殿下が本当に本物だから守ってもらわないと困る』とか。
 もう、嫌われるような言い訳を山のように口にして、1人で迎えに来たんですよ」

「叔父上ならそれくらいやってくれると信じていた。
 感状は書いてあるから受け取ってくれ、これは褒美の100万ペクーニアだ」

「やれ、やれ、殿下にはかないませんね。
 ですが感状や金で誤魔化せるのはこれが最後ですよ」

「残念だが、それは皇都の選帝侯たちしだいだ。
 連中がこの罪まで償わずに誤魔化すようなら、本気で戦いの準備をする事になる。
 そうなると、これからも護衛騎士たちを騙さないといけなくなる」

「まだまだ苦労が絶えないんですか、参りますね」

「アバコーン辺境伯家の領地家宰には話をつけている。
 明日からフォリスト・ウルフダンジョンに潜る事になっている。
 叔父上には、俺が新たに増し抱えた連中を指揮してもらう」

「その間にまた軍資金を稼ぎ、アバコーン辺境伯家を味方につける気ですか?」

「ああ、アバコーン辺境伯家は、今の皇帝よりも皇室嫡流に近い皇室の分家だ。
 臣籍降下しているから皇位継承権は与えられていないが、皇室や皇国の非常時には、諸侯王に成れる特別な家だ、味方につけおいて損はない」

「確か、初代がとんでもない遺言を残しているのでしたよね?」

「ああ『皇室を裏切るような言動するようなら、当主の命令であろうと従うな』
『アバコーン辺境伯家の家臣なら、当主よりも皇帝に忠誠を尽くせ』
 そういうアバコーン辺境伯家に迷惑な遺言を残している」

「皇帝に忠誠を尽くせと言うのが、そんなに迷惑な遺言ですか?」

「今の愚かな皇帝の命令を、それなりの当主であるアバコーン辺境伯よりも優先しなければいけないのだぞ、迷惑以外の何物でもないだろう」

「そうですね、そう言われて迷惑なのがよく分かりました」

「皇国からダンジョンを含む大領地を与えられたが、アバコーン辺境伯もバカン辺境伯領ほどではないがモンスター災害が多い。
 雪による不作凶作にも、何度も襲われている。
 金を大量に落とす滞在をしてやれば、領地にいる家臣たちの心が買える。
 下品で露骨な手だが、最も効果的な方法だ」

「わかりました、確かにアバコーン辺境伯家を味方に取り込むのは大きいです。
 殿下が新たに召し抱えた連中も、早急に鍛える必要がある。
 ですが大丈夫ですか、武術訓練なんて受けた事のない平民ばかりでしょう?」

「最初は、防具でガチガチに固めて1階だけを巡回してくれ。
 滞在中に2階に行けなくても良い。
 1番の目的は、アバコーン辺境伯家にお金を落とす事だ」
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

26番目の王子に転生しました。今生こそは健康に大地を駆け回れる身体に成りたいです。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー。男はずっと我慢の人生を歩んできた。先天的なファロー四徴症という心疾患によって、物心つく前に大手術をしなければいけなかった。手術は成功したものの、術後の遺残症や続発症により厳しい運動制限や生活習慣制限を課せられる人生だった。激しい運動どころか、体育の授業すら見学するしかなかった。大好きな犬や猫を飼いたくても、「人獣共通感染症」や怪我が怖くてペットが飼えなかった。その分勉強に打ち込み、色々な資格を散り、知識も蓄えることはできた。それでも、自分が本当に欲しいものは全て諦めなければいいけない人生だった。だが、気が付けば異世界に転生していた。代償のような異世界の人生を思いっきり楽しもうと考えながら7年の月日が過ぎて……

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

処理中です...