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第二章

第28話:美女ハーフエルフ

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 俺の前に現れたのは絶世の美女だった。
 身長は165cmくらいの長身スレンダーな美女だった。

 だが何より特徴的だったのは雰囲気だ。
 美人なのに幸せそうではないのだ。
 常に不幸にまとわりつかれている雰囲気を醸し出しているのだ。

「俺は女の色香に騙されるほど愚かではない」

「そんな事を申されないで、どうか兄を開放してください。
 兄を開放してくださるのなら、この身をどのようにしてくださっても構いません」

「やめなさい、自分を粗末にしてはいけない!」

「いいのです、もうっ散々人間に穢された身です。
 これ以上穢れようがないほど穢し尽くされてしまっています。
 兄の命が助かるのなら、こんな身体など、どうなってもいいのです」

「おい、こら、ぼけ、いいかげんにしろ!
 そんな言い方をしたら、俺の方が悪人みたいだろうが!
 何も悪い事をしていない俺の寝込みを、集団で襲ってきたのはお前の兄だ!
 殺人未遂の極悪人を捕まえただけなのに、悪人扱いするな、ぼけ!」

「申し訳ありません、全て兄達が悪いのです。
 その罪は私の身体で償わせていただきます。
 ですから、兄達を開放してください、お願いします!」

「馬鹿にするな!
 何かの代償に女の身体を要求などするか!
 お前達と同じだと思うな!
 どうせ家族が奴隷にされた正当な復讐だとか言って、人間の女を襲った事があるのだろうが!」

 俺が厳しく言い放ち睨みつけると、半数の混血エルフが目を背けた。
 俺が自白魔術をかけた影響が残っているのだろう。

 これでよく分かった、混血エルフだけが被害者ではない。
 混血エルフも人間と同じように下劣な加害者なのだ!

「申し訳ありません、私達だけが被害者でない事はよく知っています。
 兄達が私の事を理由に、悪逆非道な事をしているのは知っていました。
 絶対に許されない悪魔の所業で、私と同じ地獄の苦しみを味わわれた女性達に、死んでお詫びしようと何度思ったか分かりません。
 それでも、死ぬ事もできず、兄達を止める事もできませんでした。
 そんな卑怯な私です、気にされず嬲り者にされてください」

「じゃかましいわ!
 何度同じ事を言わせる!
 俺はお前の兄達とは違うのだ!
 被害を受けたからと言って、加害者以外の女性に代償を求めたりはしない!
 こんな腐れ外道共と同列に扱うな!」

「冒険者の御方。
 若い衆に助ける価値がないのはよく分かった。
 こいつらが行っていた悪行を見抜けず、放置していた罪は必ず償う。
 悪行の報いは、死をもって償わせる。
 だが、村に残される女子供の事を考えてやってくれ。
 何ならこいつらをここで皆殺しにしてくれても構わない。
 その代わり、人里への案内は私にさせてくれないか?」

「俺は疑り深い性格なんだ。
 被害者を演じて悪行を積み重ねる連中を信用するほど馬鹿じゃない。
 それに、こいつらを簡単に殺せるわけがないだろう。
 被害者でもない俺やお前がこいつらを裁いても意味がない。
 こいつらに被害を受けた者か遺族を探し出して復讐させるのが筋だ」

「冒険者殿の申される事はもっともだと思う。
 マリアを慰み者にしないと言ったのを見れば、誇り高い人なのだろう。
 その誇りに免じて、もう一度だけ、女子供の事も考えてやってくれないか?
 こいつらが処刑されるのは当然だが、奴隷にされる女子供の事を考えてくれないだろうか?」

「女子供を含めた村の人達に、こいつらの犯した罪を知らせる。
 その上で、絶対に逃げられないようにして晒し者にする。
 家族や友人が助けようとしたら、そいつらも捕まっていないだけで、同じ罪を犯していたと断じて捕らえ晒し者にする。
 そういう条件でもよければ、密貿易商人の情報を村の中で教えてもらう」

「分かった、こいつらが犯した罪を償わされるのは当然の事だ。
 家族や友人が恥をかくのも、こいつらを野放しにしてきたのだから仕方がない。
 女子供が奴隷商人の犠牲にならずにすむのなら、どんな条件でも飲む心算だ」

「申し訳ありません、村長。
 私が兄達を止められなかったばかりに、このような事になってしまいました」

「気にするな、マリアが悪いのではない。
 マリアを奴隷にした者や、マリアを慰み者にした者、マリアを言い訳にして悪事を重ねたこ奴が悪のだ!
 さあ、村に戻ろう」
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