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第二章
第21話:本格的な拷問
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俺は軽く拷問した商売女に背中を向けた。
そうしないと女を殺す決断ができないからだ。
女子供相手に残虐非道な拷問をしておいて、よくそんな事を口にすると、地球の人権擁護家は俺を非難するだろう。
だが俺から言わせれば、あの女が先に数多くの旅人を騙したのだ。
奴隷として売られた人達は今どのような生活をしている?!
中には抵抗して殺された人もいるのだ。
そん被害者や被害者家族の事を考えれば、あの程度の拷問は者の数には入らない。
少なくとも、父親の捜索依頼料を捻出するために、自分を売春宿に売った娘さんの苦しみに比べたら、爪の先の垢にも劣る!
だから軽く拷問したし、殺した。
だが時間をかけ過ぎてしまったようだ。
ローグの機嫌がとても悪い。
「手緩いぞ」
「俺はローグほど厳しくはやれない」
「役立たずだな」
「これも役割分担だろう?
荒事や非道はローグの担当だ。
それでも最低限の事はやったぞ」
「分かったよ、俺様だけが汚れ仕事をさせられるのは嫌だったが、軽くとはいえ拷問をして女を殺してくれたのだ。
これ以上無理強いして怒らせる気はない。
後は俺様がやるから、そこで見ていろ」
そこからが見るのも聞くのも嫌な本格的な拷問の始まりだった。
悪漢ローグと仇名されるほどの男が本気で拷問するのだ。
その苛烈さは筆舌に尽くし難い。
最初に村長が拷問にかけられた。
ある程度の情報を吐かせたら、事実確認のために村の幹部も拷問にかけられる。
何故村長や幹部が既に捕らえられているのか?
それは俺がモタモタしている間に、ローグが商売女から聞き出していたからだ。
料理人の男も拷問にかけて、商売女が嘘をついていないか確認したからだ。
ローグはよほど拷問に最適な痛覚点を知っているのだろう。
或いは身に纏う雰囲気が恐怖感を増長させるのだろう。
ポイントを一ケ所針で突き刺すだけで自白させている。
中には我慢する者もいるが、骨を一本叩き砕くと次々と自白する。
自白させるのは被害者達の行方だけではない。
この村が密かに蓄えてきた金銀財宝の隠し場所も自白させる。
俺が軽く拷問をかけた女の言った事は嘘だった。
あの状態でも嘘をついていたのだ。
俺を殺して逃げ出す事を最後まで諦めていなかったのだ。
この村から丸一日歩き続けなければいけない山奥に、ちょっと考えられないほどの金銀財宝が蓄えられていた。
密貿易商人に無理矢理やらされていたとか、村が困窮して仕方がなく旅人を襲ったとか、全部嘘だった。
村人が普通に暮らすだけなら数百年はもつくらいの金銀財宝が蓄えられていた。
「ドラゴン、流石にこれ全部は運べんわ。
だからといって、残して行ったら必ず横取りされる。
砦の騎士や徒士はもちろん、街道沿いの村々から宝探しが殺到する。
俺様が持ちきれない分を亜空間魔術に保管してくれ」
「ローグが持ちきれない分だと、そんな話し飲めるか!」
「ああ、何言ってやがる?
ドラゴンがお宝全部持ち逃げしたら俺様は大損だぞ」
「俺がそんな卑怯なマネする訳がないだろう!
「ああ、そんな言葉、信じられる訳がないだろう!
一番高価でかさばらないお宝を、俺が持てるだけ持つ。
どうしても持ちきれない分を、ドラゴンが亜空間魔術で運ぶ。
それが一番公平に決まっているだろう!」
「だったらローグが持ち運べない分は全部俺の物だぞ」
「なんだと、山分けに決まっているだろう!」
「山分けと言うのなら、交互に価値のある物から取り合いだ。
先に価値のある物全てローグが取ると言うのは、俺の事を信じていないからだ。
同じように俺もローグの事を信じていない。
ローグの事だ、一旦手元に置いたお宝の幾つかをちょろまかすに決まっている」
「……ドラゴンだって亜空間魔術に入れたお宝をちょろまかすだろう!」
「そんな事は絶対しないが、ローグは信じないのだろう?」
「ああ、信じられないね」
「だったら、俺がローグを信じないのも分かるだろう。
ここで最後まで順番にお宝を分け合う。
俺の分は全部亜空間魔術で運ぶ。
ローグは持てるだけ持って、後はここに置ておけばいい。
何度かに分けて自分で運べばいい。
俺が信用できないのなら、俺の魔術を当てにするな。
魔術なしで公平に分けて、ローグの責任と実力で何とかしろ」
「……依頼者の親を助ける為に、一分一秒でも早く隣国に行きたいのではないか?」
「行きたいが、そのためにローグに利用されるのは嫌だ。
ローグに利用されるぐらいなら、依頼者にも被害者にも泣いてもらう。
さあ、どうする、ローグ」
「わかった、わかった、分かったよ、俺様の負けだ。
今直ぐここにある金銀財宝を全部亜空間に保管してくれ。
全てが終わってから公平に分ける、それでいいぞ」
「最初から素直にそう言え!」
本当に困った奴だ。
優しく情に脆いとこもあるのだが、とっさの時に欲望が出てしまう。
こちらが強気に出て抑え込み、冷静にさせたら引いてくれるのだが、こちらが弱気になって受け身になったら、そのままできる限り得をしようとする。
それくらいでなければ生きていけない環境で育ったのだろうが、日本生まれ日本育ちの俺には合わない。
常に緊張を強いられる相棒関係はできるだけ早く解消したい。
「何をグズグズしている。
親父さんを助け出して、娘さんを売春宿から助け出すと言ったのはお前だぞ?」
「やかましいわ!
余計な時間を使ったのはローグが欲張ったからだろう!」
そうしないと女を殺す決断ができないからだ。
女子供相手に残虐非道な拷問をしておいて、よくそんな事を口にすると、地球の人権擁護家は俺を非難するだろう。
だが俺から言わせれば、あの女が先に数多くの旅人を騙したのだ。
奴隷として売られた人達は今どのような生活をしている?!
中には抵抗して殺された人もいるのだ。
そん被害者や被害者家族の事を考えれば、あの程度の拷問は者の数には入らない。
少なくとも、父親の捜索依頼料を捻出するために、自分を売春宿に売った娘さんの苦しみに比べたら、爪の先の垢にも劣る!
だから軽く拷問したし、殺した。
だが時間をかけ過ぎてしまったようだ。
ローグの機嫌がとても悪い。
「手緩いぞ」
「俺はローグほど厳しくはやれない」
「役立たずだな」
「これも役割分担だろう?
荒事や非道はローグの担当だ。
それでも最低限の事はやったぞ」
「分かったよ、俺様だけが汚れ仕事をさせられるのは嫌だったが、軽くとはいえ拷問をして女を殺してくれたのだ。
これ以上無理強いして怒らせる気はない。
後は俺様がやるから、そこで見ていろ」
そこからが見るのも聞くのも嫌な本格的な拷問の始まりだった。
悪漢ローグと仇名されるほどの男が本気で拷問するのだ。
その苛烈さは筆舌に尽くし難い。
最初に村長が拷問にかけられた。
ある程度の情報を吐かせたら、事実確認のために村の幹部も拷問にかけられる。
何故村長や幹部が既に捕らえられているのか?
それは俺がモタモタしている間に、ローグが商売女から聞き出していたからだ。
料理人の男も拷問にかけて、商売女が嘘をついていないか確認したからだ。
ローグはよほど拷問に最適な痛覚点を知っているのだろう。
或いは身に纏う雰囲気が恐怖感を増長させるのだろう。
ポイントを一ケ所針で突き刺すだけで自白させている。
中には我慢する者もいるが、骨を一本叩き砕くと次々と自白する。
自白させるのは被害者達の行方だけではない。
この村が密かに蓄えてきた金銀財宝の隠し場所も自白させる。
俺が軽く拷問をかけた女の言った事は嘘だった。
あの状態でも嘘をついていたのだ。
俺を殺して逃げ出す事を最後まで諦めていなかったのだ。
この村から丸一日歩き続けなければいけない山奥に、ちょっと考えられないほどの金銀財宝が蓄えられていた。
密貿易商人に無理矢理やらされていたとか、村が困窮して仕方がなく旅人を襲ったとか、全部嘘だった。
村人が普通に暮らすだけなら数百年はもつくらいの金銀財宝が蓄えられていた。
「ドラゴン、流石にこれ全部は運べんわ。
だからといって、残して行ったら必ず横取りされる。
砦の騎士や徒士はもちろん、街道沿いの村々から宝探しが殺到する。
俺様が持ちきれない分を亜空間魔術に保管してくれ」
「ローグが持ちきれない分だと、そんな話し飲めるか!」
「ああ、何言ってやがる?
ドラゴンがお宝全部持ち逃げしたら俺様は大損だぞ」
「俺がそんな卑怯なマネする訳がないだろう!
「ああ、そんな言葉、信じられる訳がないだろう!
一番高価でかさばらないお宝を、俺が持てるだけ持つ。
どうしても持ちきれない分を、ドラゴンが亜空間魔術で運ぶ。
それが一番公平に決まっているだろう!」
「だったらローグが持ち運べない分は全部俺の物だぞ」
「なんだと、山分けに決まっているだろう!」
「山分けと言うのなら、交互に価値のある物から取り合いだ。
先に価値のある物全てローグが取ると言うのは、俺の事を信じていないからだ。
同じように俺もローグの事を信じていない。
ローグの事だ、一旦手元に置いたお宝の幾つかをちょろまかすに決まっている」
「……ドラゴンだって亜空間魔術に入れたお宝をちょろまかすだろう!」
「そんな事は絶対しないが、ローグは信じないのだろう?」
「ああ、信じられないね」
「だったら、俺がローグを信じないのも分かるだろう。
ここで最後まで順番にお宝を分け合う。
俺の分は全部亜空間魔術で運ぶ。
ローグは持てるだけ持って、後はここに置ておけばいい。
何度かに分けて自分で運べばいい。
俺が信用できないのなら、俺の魔術を当てにするな。
魔術なしで公平に分けて、ローグの責任と実力で何とかしろ」
「……依頼者の親を助ける為に、一分一秒でも早く隣国に行きたいのではないか?」
「行きたいが、そのためにローグに利用されるのは嫌だ。
ローグに利用されるぐらいなら、依頼者にも被害者にも泣いてもらう。
さあ、どうする、ローグ」
「わかった、わかった、分かったよ、俺様の負けだ。
今直ぐここにある金銀財宝を全部亜空間に保管してくれ。
全てが終わってから公平に分ける、それでいいぞ」
「最初から素直にそう言え!」
本当に困った奴だ。
優しく情に脆いとこもあるのだが、とっさの時に欲望が出てしまう。
こちらが強気に出て抑え込み、冷静にさせたら引いてくれるのだが、こちらが弱気になって受け身になったら、そのままできる限り得をしようとする。
それくらいでなければ生きていけない環境で育ったのだろうが、日本生まれ日本育ちの俺には合わない。
常に緊張を強いられる相棒関係はできるだけ早く解消したい。
「何をグズグズしている。
親父さんを助け出して、娘さんを売春宿から助け出すと言ったのはお前だぞ?」
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