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第一章
第45話:閑話・君子豹変
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バレンシア王国暦243年12月8日:王城
「総登城の鐘をならせ!」
「「「「「はっ、総登城の鐘を鳴らせ!」」」」」
その日、暗愚の王として評判だった国王が豹変した。
心ある家臣から君側の奸と呼ばれ続けていた連中も、王の言葉を偽ることなくそのまま現場の騎士達に伝えた。
その最初の命令が、王国の貴族士族に対する総登城だった。
建国王が戦乱の世を平定してから200余年。
王都を灰燼に帰すような火事以外では叩かれ事のない鐘が叩かれた。
王都に常駐していた貴族士族は急いで登城した。
建前上は、役目で遠方にいる者以外は王都の外に出てはいけない。
奇襲を受けた時に備えて、即座に登城できる体制でいなければいけない。
常在戦場、即応態勢を取る前提で領地や役料を与えられてるのが貴族士族だ。
それなのに、総登城の鐘が鳴っているのに城に行けないのでは名誉にかかわる。
いや、領地や役料が没収されるだけでなく、処刑される事もある大罪だ。
「これより魔境の属性竜を討つ。
魔境の属性竜を討って王国の版図を広げる。
王国騎士団と徒士団は、各団長の指示に従い魔境に攻め込め。
貴族たちは好きにするがいい。
余と共に魔境を開放する気のある者だけついて来い」
普段の暗愚な態度が信じられない凛とした王者の風格だった。
君側の奸と呼ばれた連中の顔も引き締まっている。
全ての貴族と付き従う家宰は信じられない想いだった。
「我らは王家王国の剣でございます。
よろこんでお供させていただきます」
信じられない想い、絶対に何か裏があると思っていても、行くしかなかった。
魔境に行かなければ、後でどのような無理難題を押し付けられるか分からない。
下手をしたら家が潰されてしまうかもしれない。
家は潰されなくても、当主の座を傍流の分家に奪われるかもしれない。
当主交代を匂わされて、賄賂を要求されるかもしれない。
君側の奸たちがよく使う手だ。
「「「「「我々もお供させていただきます」」」」」
ほとんど全ての貴族が同じ思いだった。
家を守って子供に跡を継がせる。
貴族の1番大切な役目を果たすべく、暗愚の王と悪辣非道な君側の奸に隙を見せないように、慎重かつ大胆に行動しなければいけない。
貴族家の半数は当主が領地に戻っているので、王都には当主代理として先代か次代の当主がいる。
端的に言えば、領地に戻った当主に謀叛を起こさせないための人質だ。
彼らにとっても家を守る正念場であり、自分の力を示す好機でもある。
そんな彼らを支えるべく、王都に常駐している家宰が付き従っている。
「余の剣として戦う事を許す。
ただし、魔境の開放は一朝一夕にできる事ではない。
国中の魔境を開放するには、一兵も無駄に死傷させられない。
手柄に目がくらんで無理な攻めをする事は絶対に許さん」
暗愚の王や君側の奸がこれまでやってきたとは真逆の言葉だった。
全ての貴族や騎士団長は言葉だけだと思った。
実際には貴族軍や騎士団の損害など全く考えていないはずだと思った。
「まずは王国軍の先方を担う徒士団が魔境に向かえ。
向かう魔境は王城から1番近いダコタ魔境だ。
余の命令があるまで絶対に魔境に入ってはならない。
魔境の外で野戦陣地を造るのだ。
王国軍と貴族軍が駐屯できるだけの野戦陣地を造るのだ、分かったか!」
「「「「「はっ!」」」」」
急に視線を向けられた先方徒士団の団長たちは縮み上がった。
彼らの中にある国王の姿とは天と地ほどの差があった。
国王がこれほど指導力を発揮するとは考えもしていなかったのだ。
「内務大臣」
「はっ」
「無役の騎士や徒士で新たな騎士団と徒士団を編成せよ。
領地や士族手当をもらいながら、働かない士族など不要だ。
この総登城で顔を見せない者も含めて、士族として働けない家は潰せ。
新たに編成した騎士団徒士団は、至急速やかにダコタ魔境に向かわせろ」
「はっ、仰せのままに」
「総登城の鐘をならせ!」
「「「「「はっ、総登城の鐘を鳴らせ!」」」」」
その日、暗愚の王として評判だった国王が豹変した。
心ある家臣から君側の奸と呼ばれ続けていた連中も、王の言葉を偽ることなくそのまま現場の騎士達に伝えた。
その最初の命令が、王国の貴族士族に対する総登城だった。
建国王が戦乱の世を平定してから200余年。
王都を灰燼に帰すような火事以外では叩かれ事のない鐘が叩かれた。
王都に常駐していた貴族士族は急いで登城した。
建前上は、役目で遠方にいる者以外は王都の外に出てはいけない。
奇襲を受けた時に備えて、即座に登城できる体制でいなければいけない。
常在戦場、即応態勢を取る前提で領地や役料を与えられてるのが貴族士族だ。
それなのに、総登城の鐘が鳴っているのに城に行けないのでは名誉にかかわる。
いや、領地や役料が没収されるだけでなく、処刑される事もある大罪だ。
「これより魔境の属性竜を討つ。
魔境の属性竜を討って王国の版図を広げる。
王国騎士団と徒士団は、各団長の指示に従い魔境に攻め込め。
貴族たちは好きにするがいい。
余と共に魔境を開放する気のある者だけついて来い」
普段の暗愚な態度が信じられない凛とした王者の風格だった。
君側の奸と呼ばれた連中の顔も引き締まっている。
全ての貴族と付き従う家宰は信じられない想いだった。
「我らは王家王国の剣でございます。
よろこんでお供させていただきます」
信じられない想い、絶対に何か裏があると思っていても、行くしかなかった。
魔境に行かなければ、後でどのような無理難題を押し付けられるか分からない。
下手をしたら家が潰されてしまうかもしれない。
家は潰されなくても、当主の座を傍流の分家に奪われるかもしれない。
当主交代を匂わされて、賄賂を要求されるかもしれない。
君側の奸たちがよく使う手だ。
「「「「「我々もお供させていただきます」」」」」
ほとんど全ての貴族が同じ思いだった。
家を守って子供に跡を継がせる。
貴族の1番大切な役目を果たすべく、暗愚の王と悪辣非道な君側の奸に隙を見せないように、慎重かつ大胆に行動しなければいけない。
貴族家の半数は当主が領地に戻っているので、王都には当主代理として先代か次代の当主がいる。
端的に言えば、領地に戻った当主に謀叛を起こさせないための人質だ。
彼らにとっても家を守る正念場であり、自分の力を示す好機でもある。
そんな彼らを支えるべく、王都に常駐している家宰が付き従っている。
「余の剣として戦う事を許す。
ただし、魔境の開放は一朝一夕にできる事ではない。
国中の魔境を開放するには、一兵も無駄に死傷させられない。
手柄に目がくらんで無理な攻めをする事は絶対に許さん」
暗愚の王や君側の奸がこれまでやってきたとは真逆の言葉だった。
全ての貴族や騎士団長は言葉だけだと思った。
実際には貴族軍や騎士団の損害など全く考えていないはずだと思った。
「まずは王国軍の先方を担う徒士団が魔境に向かえ。
向かう魔境は王城から1番近いダコタ魔境だ。
余の命令があるまで絶対に魔境に入ってはならない。
魔境の外で野戦陣地を造るのだ。
王国軍と貴族軍が駐屯できるだけの野戦陣地を造るのだ、分かったか!」
「「「「「はっ!」」」」」
急に視線を向けられた先方徒士団の団長たちは縮み上がった。
彼らの中にある国王の姿とは天と地ほどの差があった。
国王がこれほど指導力を発揮するとは考えもしていなかったのだ。
「内務大臣」
「はっ」
「無役の騎士や徒士で新たな騎士団と徒士団を編成せよ。
領地や士族手当をもらいながら、働かない士族など不要だ。
この総登城で顔を見せない者も含めて、士族として働けない家は潰せ。
新たに編成した騎士団徒士団は、至急速やかにダコタ魔境に向かわせろ」
「はっ、仰せのままに」
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