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第一章

第25話:敵襲

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転移18日目:山本光司(ミーツ)視点

 俺が思っていた以上に順調に生活ができている。
 この城塞都市ロアノークを簡単に放り出せないくらい順調だった。
 俺が嫌になっても、ここで生まれ育った者達の心情を考えてしまうのだ。

 想定外だったのは、ひねくれていると思っていた孤児達が凄く純朴だった事。
 全員がアビゲイルを中心とした寡婦達を凄く慕った。
 寡婦達の子供と兄弟姉妹のように仲良く勉学に励んでいる。

 マイルズが粘り強く俺の試練に耐えている。
 何度も性根を試しているのだが、暴発する事なく領主の役目をこなしている。
 監禁している家族や貴族に温情をかける素振りもない。

 最初はマイルズに依怙贔屓を頼んだ串焼き商人達も予想以上に行儀が良い。
 盗みや手抜きをすると思っていたのだが、まじめに働いている。
 まだわずか5日の事だから断言できないが、今のところはとても勤勉だ。

 彼らが解体も串打ちも料理もしてくれるから、売れる量の5倍は蓄えられる。
 奉天市場に保管してあるから、何時でも売れる。
 今のところは余裕があるから売っていないが、これで安心して奉天市場を使える。

 城砦都市ロアノーク内は、薬草と調味料がひと通り行き渡っている。
 商人達の仕入れもほぼ終わり、得意先が消費するまでは一定数が売れるだけだ。
 それでも結構な金額がこの5日間で売れていた。

「13日目売り上げ」
金貨21枚(2100万円)銀貨4783枚(4783万円)となった。
金貨96枚(9600万円)銀貨3698枚(3698万円)となった。
銀貨41枚(41万円)銅貨7283枚(72万8300円)となった。
給与:銅貨2110枚(21万1000円)

「14日目売り上げ」
金貨19枚(1900万円)銀貨4156枚(4156万円)となった。
金貨94枚(9400万円)銀貨3581枚(3581万円)となった。
銀貨40枚(40万円)銅貨7718枚(77万1800円)となった。
給与:銅貨2160枚(21万6000円)

「15日目売り上げ」
金貨17枚(1700万円)銀貨4016枚(4016万円)となった。
金貨92枚(9200万円)銀貨3325枚(3325万円)となった。
銀貨39枚(39万円)銅貨8089枚(80万8900円)となった。
給与:銅貨2260枚(22万6000円)

「16日目売り上げ」
金貨17枚(1700万円)銀貨4002枚(4002万円)となった。
金貨91枚(9100万円)銀貨3235枚(3235万円)となった。
銀貨38枚(38万円)銅貨8579枚(85万7900円)となった。
給与:銅貨2260枚(22万6000円)

「17日目売り上げ」
金貨16枚(1600万円)銀貨3895枚(3895万円)となった。
金貨90枚(9000万円)銀貨3303枚(3303万円)となった。
銀貨38枚(38万円)銅貨9094枚(90万9400円)となった。
給与:銅貨2260枚(22万6000円)

 そんな何時もの日常が今日もやってくる。
 寡婦や孤児が育つまで俺自身で薬草と調味料の販売を続けるか?
 それとも領主のマイルズに押し付けて引き籠るか考えていた時。

「大魔術師様!
 オースティン伯爵領の軍勢が攻め寄せてきます。
 領境を越えて、我が辺境伯家の村を襲い悪逆非道の限りを尽くしています!」

 この世界に送られて十日少ししか経っていないのに、忙し過ぎるぞ!

「同じ国王に仕える伯爵が、上位の辺境伯領に襲いかかる。
 そのような非道が許されるのか?」

「オースティン伯爵は、勘当された私が、辺境伯である父に対して謀叛を起こしたと言い立てて、今回の侵攻を正当化しようとしています。
 父達が処分した貴族の親族に加え、私が捕らえ幽閉している親族も、私の事を非難して侵攻軍に加わっています」

「本気で親族の仇を討つ気なのか?」

「敵討ちは単なる大義名分です。
 オースティン伯爵は辺境伯領を併合したいのです。
 辺境伯の爵位が欲しいだけなのです。
 他の者達は、豊かな辺境伯領で強奪がしたいのです。
 その証拠に、領民となるはずの村を襲っています。
 女子供を捕らえて激しい強姦を加え、奴隷として私財にしています」

「それで、そんな報告を俺にする意味は何だ?」

「できれば助けていただきたいのです。
 捕らえられた人々を助け出して欲しいのです。
 私は自分の力の無さ、無能さを思い知らされました。
 オースティン伯爵が侵攻して来ても、軍を出して戦う事しかできません。
 確実に勝てるかどうかも分からず、捕らえられた人々も助けられません。
 ですが大魔術師様なら、オースティン伯爵軍を討ち払い、人々を助けられます。
 辺境伯の地位を譲らせていただきますから、どうかお助け下さい」

 俺の左脚につかまっているネイの手に力が入る。
 見たくないけどしかたがない、恐る恐るネイを見るとすがるような目をしている。
 その目が助けてあげてと言っているように見えてしまう。

 店に行く前で、その場にいたから、一緒に話を聞く形になった寡婦と孤児達。
 彼らの目は見間違いようがない。
 助けてあげてくださいと強く訴えて来る。

「俺の力を過信し過ぎるな!
 単に皆殺しにしてくれというのなら、相手次第でできなわけではない。
 だが、人質を助けてくれと言われたら、難しい。
 破壊力の強い魔術を遠くから放つだけではすまないのだぞ」

「……オースティン伯爵軍を皆殺しにする事なら出来るのですね?」

「ああ、俺の魔術に抵抗できる者がいない限り、無差別攻撃はできる」

「捕らわれている人々がいない所を狙って、攻撃魔術を放って頂けますか?」

「俺の攻撃魔術は直径50メートルは軽く超えている。
 できるだけ範囲を狭めようとしても限界がある。
 絶対に捕らえられている人々を巻き込まないとは断言できない」

「それでも、やってやれない事はないのですよね?!」

「俺だけに戦えと言うのではないだろうな?!」

「そんな恥さらしな事とは申しません。
 私も領主軍を率いて出陣します。
 大魔術師様がオースティン伯爵軍を蹴散らしてくださったスキに、捕らえられている領民を救い出します」

「マイルズがそこまで覚悟を決めているのならしかたがない。
 使用人達の期待に満ちた視線が痛すぎる。
 仕方がないから手伝ってやるが、やると決めたらグズグズさせないぞ!
 今直ぐ全軍出撃ができるようにしろ!」

「はい、直ちに!」

「ネイはここで待っていなさい」

「いや、いく!」

 今度また置いて行ったら今以上に甘えたになるか、恨まれるかだな……
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