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第一章
第16話:商売
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転移9日目:山本光司(ミーツ)視点
俺は新領主の権限で商売ができるようになった。
しかも本来なら商売が禁止されている商店街以外の場所でだ。
新領主が直々にやって来て許可を与えたのだから、誰も文句は言えない。
と言っても、商店街から離れ過ぎている訳ではない。
商店街から住宅街に変わった境目の場所で店を開いたのだ。
そこに住む家族を領主権限で一時的に追い出して……
俺だって好きでやったわけではない。
そうしなければ、大行列ができて他の商人達に迷惑を掛けると思ったからだ。
これまで読んだラノベでは大抵そうなっていたから、きっと大行列が起きる。
「マイルズ、今直ぐ公式な計りを用意してくれ。
これから売る商品は、領主の責任をもって正確な量り売りをする。
それが1番信用を得られる方法だ」
俺の知る地球の史実では、不正な計りを使って暴利を得た商人や領主がいた。
確かにそんな方法を使えば、一時的には暴利を貪れる。
だが騙されたと知った者達は、2度と俺と商売しなくなるだろう。
引き続き商売をしようとする者は、俺が不正をしている前提で価格交渉をする。
あるいは自分の後ろ盾になっている権力者を使って賠償を求めて来る。
権力者の中にはいきなり戦争に持ち込む者もいるだろう。
「分かった、大魔術師殿がそこまで言うのなら、俺の名を使てもらおう」
そう言われなくても最初からその心算だったよ。
俺はマイルズから辺境伯家御用達の看板をもらった。
正確には脅し取ったのだが、そんな事は他の誰にも分からない。
脅しはしたが、俺に利があるだけではない。
俺の商品が他に類を見ない貴重な物だったら、マイルズの評判も上がるのだ。
実利としても、商人が集まれば集まるほど入城料も商業税も手に入る。
「この薬草の小売り相場はいくらだ?」
俺はマイルズから話しを聞いて値付けしていった。
「興奮草は10g銀貨10枚(10万円)くらいになります」
「だったら相場の1割くらい安く売る事にする」
「本当にそれでいいのですか?
これほど品質の良い薬草など滅多にないですぞ。
小売りなら5割増し、いえ、倍の値段をつけても買う者はいます」
「それでは俺から買っても転売し難いではないか。
マイルズは多くの商人を集めてロアノークを栄えさせたいのだろう?
だったら商人が転売しても利が得られる値段で売らなければだめだ」
「うっ、そうか、そうですか、ありがとうございます」
「安く売る代わりに、値引き交渉は一切しない。
長く値引き交渉の相手をさせられたら、多くの商人の相手ができない。
ロアノークに来た全ての商人に買ってもらう。
持ち金全てをロアノークに落としていってもらう。
そのためにはしつこい商人を追い払う人間が必要だ。
屈強な軍人か警備隊員を、商人を追い払うために集めてくれ」
「分かった、今直ぐ人相が悪くて体の大きい奴を集めさせます。
だがそんな事をしたら、商人の印象が悪くなるのではありませんか?」
「やかましい、俺に任せておけ、そんな事よりこの薬草の小売り相場はいくらだ?」
「幻覚草も10g銀貨10枚(10万円)だ」
俺はお坊ちゃま育ちのマイルズの言葉を鵜呑みにした訳ではない。
マイルズが集めてくれた護衛役や警備役からも商店街の相場を聞いた。
もちろんバカ天使にも価格情報を集めさせた。
「取り扱い商品」薬草
媚薬草:10g銀貨9枚(9万円)
興奮草:10g銀貨9枚(9万円)
幻覚草:10g銀貨9枚(9万円)
目薬草:10g銀貨9枚(9万円)
妊娠草:10g銀貨10枚(10万円)
麻酔草:10g銀貨12枚(12万円)
嘔吐草:10g銀貨18枚(18万円)
筋肉草:10g銀貨36枚(36万円)
回復草:10g銀貨45枚(45万円)
解毒草:10g銀貨45枚(45万円)から金貨2枚(200万円)
「取り扱い商品」調味料
塩 :100g銅貨3枚(300円)
砂糖 :100g銀貨12枚(12万円)
黒胡椒:100g銀貨120枚(120万円)
「取り扱い商品」食品
ラビット :10kg :銀貨1枚(1万円)
フォックス:10kg :銀貨1枚(1万円)
ウルフ :50kg :銀貨5枚(5万円)
ディア :100kg:銀貨10枚(10万円)
ボア :500kg:銀貨50枚(50万円)
薬草は森林を破壊した時に収納したモノを選別して売りに出した。
塩は並塩1660円(25kg)を100袋買って用意した。
砂糖は上白糖6180円(1kg×20袋)を100個買って用意した。
粒黒胡椒2505円(1kg)を1000袋を買って用意した。
「売ってくれ、砂糖を売ってくれ、あるだけ全部売ってくれ!」
門番と警備隊が流した噂によって客が殺到殺到した。
屈強な警備隊が完全武装して護っていなかったら、領主権限で強制的に借りた石造りの家が破壊されていた。
それくらいの勢いで商人や住民が殺到した。
1万人以上の領民が住むロアノークだが、その全員が集まったのかと思うくらいの人間が大挙して押し寄せてきた。
可哀想なのは儲かると思って遠い港町から塩や砂糖、胡椒を持ち込んだ商人だ。
だが俺は非情過ぎる値段を付けたわけではない。
この都市の小売価格から1割引いただけだ。
商人達も利益が少なくなるが、値引けない価格ではない。
ただ、商品の品質、精製度合いが桁外れに違う。
日本基準の精製をしている商品が、中世基準の1割引きで買えるのだ。
砂混じりで色も悪く雑味も多い塩や砂糖だと、5割引きしないと売れないだろう。
うん、やっぱり俺は性格が悪いな。
「砂糖を10kg買う、だから1割引きで売ってくれ!」
そう言って店頭で粘ろうとする商人もいる。
そんな商人は屈強な警備隊員によって即刻排除される。
相手をしていると待っている商人達が暴れ出してしまうし、待っている客まで値引き交渉を始める。
それだけではなく、先に値引きを諦めて買った客が文句を言いに戻ってくる。
過去の事例を参考にすれば、現金掛け値なしが1番の商売だ。
これから定価を上げる事もあれば下げる事もあるだろう。
特に砂糖、塩、黒胡椒は徐々に定価を下げていくが、初日から値引く必要はない!
「10kgだ塩を10kg売ってくれ!
村でみんなが塩を待っているんだ!」
「俺もだ、俺も塩を買うから10kg置いておいてくれ!」
「砂糖を100g買うから、塩10kgを残しておいてくれ!」
列の後方に並んでいる奴が必死で声をあげている。
この世界では売り切れ御免が常識のようだ。
日本みたいに、全ての客に公平に売れなかったと言って、謝る必要はない。
「この解毒草をあるだけ売ってくれ」
「あるだけと言われれば、10kg以上あるぞ。
総額で金貨4万5000枚だが、持っているように見えないぞ。
冷やかしで言っているのなら警備隊につまみださせるぞ?!」
「そんなにあるのか?
全部見本と同じ品質なのか?!」
「辺境伯御用達の看板をあげて、警備隊にまで護られているのだ。
辺境伯の面目を潰すようなマネをするはずがないだろう。
良く確かめてみろ、この通りだ」
俺は山菜を塩漬けする心算で買った壺から出すふりをして、亜空間から赤解毒草を1kg取り出してやった。
「こんな高品質で丁寧に選抜された赤解毒草が、駆け引きせずに10g銀貨50枚で買えるのか?!
魔晶石と魔石が混じるが、2kg売ってくれ!」
「駄目だ、お前が値段交渉せずに買えると喜んでいただろう。
魔晶石や魔石の品質をいちいち鑑定している時間はない。
買い手が売り手の決めた貨幣を用意するのがマナーだろう。
手持ちの金貨か銀貨で買える範囲だけ売ってやる。
これ以上四の五の言ったら放り出すぞ!」
「待ってくれ、分かった、銀貨と金貨あるだけで950g売ってくれ。
手持ちの魔晶石と魔石を換金してからもう一度来る。
だから赤解毒草を残しておいてくれ!」
「残り9kgはあるが、売れていたら運がなかったと思ってくれ」
「いつまで喋っていやがるんだ!
買い終わったのならサッサとどけ!
みんな待ちかねているのだぞ!」
薬草はあらゆる種類がたくさん売れた。
商人にはそれぞれお得意様がいて、欲しい薬草がばらけているようだ。
ただ、俺の薬草が売れた分、冒険者の直接持ち込みやギルドの薬草は売れ残った。
単価的には値引きすれば売れない訳ではないのだが、品質がばらつき過ぎだった。
俺は亜空間にしまう時に厳格に品質分けされているから、自分達で偽物や痛んだ部分を選別しなくていい。
偶然偽物が混じったり、不可抗力で痛んだ薬草が混じったりするのはしかたがないが、騙してやろうと意識的に偽物を混ぜる冒険者もいる。
痛んだ物が混じっていると、新鮮な薬草まで悪くなるから、商人は血眼になって薬草の品質をチェックし、厳しく値段を決める。
その点俺が売っている薬草なら、得意先に持ち込めば直ぐに加工できる。
よほど未熟な薬剤師でない限り、高品質な薬に加工できて高値で売れる。
だからこそ1日で金貨173枚、銀貨6万5124枚も売れたのだ。
調味料に関しても、俺が想像していた以上に売れた。
ここが商機と判断した商人が多かったのだろう。
塩、砂糖、粒黒胡椒を資金一杯買い込んで、得意先に持ち込むのだろう。
真っ白に精製され、砂1粒も混じっていない塩と砂糖だ、売れない訳がない。
粒黒胡椒に関しては、思っていたほどぼろ儲けはできなかった。
元々超高額商品なので、他の商人も品質管理を厳格に行っていた。
何より超高額商品過ぎて買える人間が極端に少ない。
だがそれでもこの世界は貧富の差が極端に大きい。
粒黒胡椒は値崩れの恐れも低く換金性も高いので、それなりには売れてくれた。
塩が買った量のほぼ半分、1200kg売れて銀貨360枚(360万円)
砂糖も買った量のほぼ半分、1000kg売れて銀貨12万枚(12億円)
黒胡椒は10kgくらいしか売れず、銀貨1万2000枚(1億2000万)
本当は端数もあるのだが、計算が面倒で途中で止めてしまった。
実は盗難対策もあって、全部亜空間に放り込んだのだ。
もしかしたら計算間違いがあるかもしれないが、気にしない。
あまりにも忙し過ぎて、商品が売れた数も手に入れた貨幣の数も、後で合算で分かればいいと思ってしまったのだ。
唯一気にしたのは、売上金を入れる亜空間を分けて、薬草、調味料、食品の種類分けをすることだった。
だから調味料部門の売り上げが金貨984枚(9億8400万円)銀貨4万5267枚(4億2336万円)だと分かっている。
食品部門としたのは狩った魔獣、獣、鳥類だが、薬草や調味料に比べれば単価が極端に低く、気を入れて売る気になれなかった。
他の商人が売っているモノに比べて優れている点もない。
あるとすれば数が多い事だけだが、それは逆に値崩れを起こす危険がある。
だから結局、看板に書いてあるだけで積極的に売らなかった。
集まった客の中には、冷やしで食品を見てやろうという者もいたかもしれない。
だが、薬草と調味料を前にして殺気立つ連中が後ろにいるので、冷やかせない。
当人も2度と手に入らないかもしれない高精製調味料を優先したのだろう。
「大魔術師殿、ありがとう、本当にありがとうございます。
これほどの高品質商品を扱ってくれたら、今後も商人が集まってくれます。
商人も、何も持ち込まずにロアノークやって来る事はありません。
何か売れる商品を持ち込んで、片道分の利益を出そうとするはずです。
大魔術師殿が商売を続けてくれる限り、ロアノークは商業都市に成れます」
「お前に礼を言われる筋合いではない。
貸しを確実に回収するためには、ロアノークに寂れてもらっては困るのだ。
それに、お前の家族と貴族を高値で売るためにも、ロアノークには商業都市として発展してもらわなくては困る」
「……分かっています、それで、父上達をいつ引き渡せばいいですか?」
「多数の犯罪者の管理などできない。
お前が引き続き牢屋で管理しておいてくれ。
死なさずに生かしておく費用はちゃんと渡すから、明細を作って請求しろ」
「……本当に私に預けて管理させる心算ですか?」
「嫌なら別にかまわない。
人手が足らなくて偶然被害者の家族や友人を管理人に雇ってしまうかもしれない。
彼らが貴族達への恨みをこらえきれず殺してしまったとしても、俺には彼らを罰する事ができないだろう」
「分かりました、私が責任をもって牢屋に閉じ込めておきます。
念のために聞いておきますが、家族や貴族達が競売にかけられた時、私を含めた貴族達の親戚が競り落としたらどうするのですか?」
「俺を怒らせても良い、俺と正面から戦う覚悟ができたのなら、そうすればいい。
ロアノークに残っている、被害者の家族や友人達にどう思われてもいいと思うのなら、領主であるお前が何をしようが構わない。
念のために言っておくが、俺が世話しているネイという幼女は、魔境で独り取り残されて生きていたのを助けたのだ。
どのような理由と状況があって、魔境で幼女独りが生きていくことになったのだろうな?!」
「……父の悪政で捨てられる事になったから、強盗冒険者達を野放しにしていたから、村や商人が襲われて子供だけが生き延びたと言われるのですか?」
「さあな、言葉も話せなくなっていた、こんな幼い子に何を聞いても分からない。
だが、この子を助ける事になった俺が、原因となった者を忌み嫌うのは当然だ。
まして俺自身が殺されそうになったのだ。
元凶を助けると言うのなら、俺に喧嘩を売るのと同じだ。
その覚悟があるのなら、好きにするがいい」
「……分かりました、覚悟を決めてお世話させていただきます」
別にマイルズが何を基準に判断しても行動してもかまわない。
この世界で拠点になる場所を確保できて、人材と資金を手に入れられたらいい。
ロアノークでは引き籠れないと思ったら、他に拠点を移せばいいだけだ。
問題はネイに対する責任だけだ。
ネイに領主として君臨するだけの責任感と胆力があり、領主の地位を望むなら、マイルズを排除してロアノークを手に入れてやる。
だが、幼女のネイがそう判断できるようになるまで待てない。
もっと早く引き籠って暮らしたい。
そのためには、ネイを世話してくれる信頼できる人間が必要だ。
忠誠心で任せられる人間でなくてもいい。
俺に対する恐怖心で絶対裏切らない世話役でも構わない。
そのどちらかを手に入れる最速の方法となると……
俺は新領主の権限で商売ができるようになった。
しかも本来なら商売が禁止されている商店街以外の場所でだ。
新領主が直々にやって来て許可を与えたのだから、誰も文句は言えない。
と言っても、商店街から離れ過ぎている訳ではない。
商店街から住宅街に変わった境目の場所で店を開いたのだ。
そこに住む家族を領主権限で一時的に追い出して……
俺だって好きでやったわけではない。
そうしなければ、大行列ができて他の商人達に迷惑を掛けると思ったからだ。
これまで読んだラノベでは大抵そうなっていたから、きっと大行列が起きる。
「マイルズ、今直ぐ公式な計りを用意してくれ。
これから売る商品は、領主の責任をもって正確な量り売りをする。
それが1番信用を得られる方法だ」
俺の知る地球の史実では、不正な計りを使って暴利を得た商人や領主がいた。
確かにそんな方法を使えば、一時的には暴利を貪れる。
だが騙されたと知った者達は、2度と俺と商売しなくなるだろう。
引き続き商売をしようとする者は、俺が不正をしている前提で価格交渉をする。
あるいは自分の後ろ盾になっている権力者を使って賠償を求めて来る。
権力者の中にはいきなり戦争に持ち込む者もいるだろう。
「分かった、大魔術師殿がそこまで言うのなら、俺の名を使てもらおう」
そう言われなくても最初からその心算だったよ。
俺はマイルズから辺境伯家御用達の看板をもらった。
正確には脅し取ったのだが、そんな事は他の誰にも分からない。
脅しはしたが、俺に利があるだけではない。
俺の商品が他に類を見ない貴重な物だったら、マイルズの評判も上がるのだ。
実利としても、商人が集まれば集まるほど入城料も商業税も手に入る。
「この薬草の小売り相場はいくらだ?」
俺はマイルズから話しを聞いて値付けしていった。
「興奮草は10g銀貨10枚(10万円)くらいになります」
「だったら相場の1割くらい安く売る事にする」
「本当にそれでいいのですか?
これほど品質の良い薬草など滅多にないですぞ。
小売りなら5割増し、いえ、倍の値段をつけても買う者はいます」
「それでは俺から買っても転売し難いではないか。
マイルズは多くの商人を集めてロアノークを栄えさせたいのだろう?
だったら商人が転売しても利が得られる値段で売らなければだめだ」
「うっ、そうか、そうですか、ありがとうございます」
「安く売る代わりに、値引き交渉は一切しない。
長く値引き交渉の相手をさせられたら、多くの商人の相手ができない。
ロアノークに来た全ての商人に買ってもらう。
持ち金全てをロアノークに落としていってもらう。
そのためにはしつこい商人を追い払う人間が必要だ。
屈強な軍人か警備隊員を、商人を追い払うために集めてくれ」
「分かった、今直ぐ人相が悪くて体の大きい奴を集めさせます。
だがそんな事をしたら、商人の印象が悪くなるのではありませんか?」
「やかましい、俺に任せておけ、そんな事よりこの薬草の小売り相場はいくらだ?」
「幻覚草も10g銀貨10枚(10万円)だ」
俺はお坊ちゃま育ちのマイルズの言葉を鵜呑みにした訳ではない。
マイルズが集めてくれた護衛役や警備役からも商店街の相場を聞いた。
もちろんバカ天使にも価格情報を集めさせた。
「取り扱い商品」薬草
媚薬草:10g銀貨9枚(9万円)
興奮草:10g銀貨9枚(9万円)
幻覚草:10g銀貨9枚(9万円)
目薬草:10g銀貨9枚(9万円)
妊娠草:10g銀貨10枚(10万円)
麻酔草:10g銀貨12枚(12万円)
嘔吐草:10g銀貨18枚(18万円)
筋肉草:10g銀貨36枚(36万円)
回復草:10g銀貨45枚(45万円)
解毒草:10g銀貨45枚(45万円)から金貨2枚(200万円)
「取り扱い商品」調味料
塩 :100g銅貨3枚(300円)
砂糖 :100g銀貨12枚(12万円)
黒胡椒:100g銀貨120枚(120万円)
「取り扱い商品」食品
ラビット :10kg :銀貨1枚(1万円)
フォックス:10kg :銀貨1枚(1万円)
ウルフ :50kg :銀貨5枚(5万円)
ディア :100kg:銀貨10枚(10万円)
ボア :500kg:銀貨50枚(50万円)
薬草は森林を破壊した時に収納したモノを選別して売りに出した。
塩は並塩1660円(25kg)を100袋買って用意した。
砂糖は上白糖6180円(1kg×20袋)を100個買って用意した。
粒黒胡椒2505円(1kg)を1000袋を買って用意した。
「売ってくれ、砂糖を売ってくれ、あるだけ全部売ってくれ!」
門番と警備隊が流した噂によって客が殺到殺到した。
屈強な警備隊が完全武装して護っていなかったら、領主権限で強制的に借りた石造りの家が破壊されていた。
それくらいの勢いで商人や住民が殺到した。
1万人以上の領民が住むロアノークだが、その全員が集まったのかと思うくらいの人間が大挙して押し寄せてきた。
可哀想なのは儲かると思って遠い港町から塩や砂糖、胡椒を持ち込んだ商人だ。
だが俺は非情過ぎる値段を付けたわけではない。
この都市の小売価格から1割引いただけだ。
商人達も利益が少なくなるが、値引けない価格ではない。
ただ、商品の品質、精製度合いが桁外れに違う。
日本基準の精製をしている商品が、中世基準の1割引きで買えるのだ。
砂混じりで色も悪く雑味も多い塩や砂糖だと、5割引きしないと売れないだろう。
うん、やっぱり俺は性格が悪いな。
「砂糖を10kg買う、だから1割引きで売ってくれ!」
そう言って店頭で粘ろうとする商人もいる。
そんな商人は屈強な警備隊員によって即刻排除される。
相手をしていると待っている商人達が暴れ出してしまうし、待っている客まで値引き交渉を始める。
それだけではなく、先に値引きを諦めて買った客が文句を言いに戻ってくる。
過去の事例を参考にすれば、現金掛け値なしが1番の商売だ。
これから定価を上げる事もあれば下げる事もあるだろう。
特に砂糖、塩、黒胡椒は徐々に定価を下げていくが、初日から値引く必要はない!
「10kgだ塩を10kg売ってくれ!
村でみんなが塩を待っているんだ!」
「俺もだ、俺も塩を買うから10kg置いておいてくれ!」
「砂糖を100g買うから、塩10kgを残しておいてくれ!」
列の後方に並んでいる奴が必死で声をあげている。
この世界では売り切れ御免が常識のようだ。
日本みたいに、全ての客に公平に売れなかったと言って、謝る必要はない。
「この解毒草をあるだけ売ってくれ」
「あるだけと言われれば、10kg以上あるぞ。
総額で金貨4万5000枚だが、持っているように見えないぞ。
冷やかしで言っているのなら警備隊につまみださせるぞ?!」
「そんなにあるのか?
全部見本と同じ品質なのか?!」
「辺境伯御用達の看板をあげて、警備隊にまで護られているのだ。
辺境伯の面目を潰すようなマネをするはずがないだろう。
良く確かめてみろ、この通りだ」
俺は山菜を塩漬けする心算で買った壺から出すふりをして、亜空間から赤解毒草を1kg取り出してやった。
「こんな高品質で丁寧に選抜された赤解毒草が、駆け引きせずに10g銀貨50枚で買えるのか?!
魔晶石と魔石が混じるが、2kg売ってくれ!」
「駄目だ、お前が値段交渉せずに買えると喜んでいただろう。
魔晶石や魔石の品質をいちいち鑑定している時間はない。
買い手が売り手の決めた貨幣を用意するのがマナーだろう。
手持ちの金貨か銀貨で買える範囲だけ売ってやる。
これ以上四の五の言ったら放り出すぞ!」
「待ってくれ、分かった、銀貨と金貨あるだけで950g売ってくれ。
手持ちの魔晶石と魔石を換金してからもう一度来る。
だから赤解毒草を残しておいてくれ!」
「残り9kgはあるが、売れていたら運がなかったと思ってくれ」
「いつまで喋っていやがるんだ!
買い終わったのならサッサとどけ!
みんな待ちかねているのだぞ!」
薬草はあらゆる種類がたくさん売れた。
商人にはそれぞれお得意様がいて、欲しい薬草がばらけているようだ。
ただ、俺の薬草が売れた分、冒険者の直接持ち込みやギルドの薬草は売れ残った。
単価的には値引きすれば売れない訳ではないのだが、品質がばらつき過ぎだった。
俺は亜空間にしまう時に厳格に品質分けされているから、自分達で偽物や痛んだ部分を選別しなくていい。
偶然偽物が混じったり、不可抗力で痛んだ薬草が混じったりするのはしかたがないが、騙してやろうと意識的に偽物を混ぜる冒険者もいる。
痛んだ物が混じっていると、新鮮な薬草まで悪くなるから、商人は血眼になって薬草の品質をチェックし、厳しく値段を決める。
その点俺が売っている薬草なら、得意先に持ち込めば直ぐに加工できる。
よほど未熟な薬剤師でない限り、高品質な薬に加工できて高値で売れる。
だからこそ1日で金貨173枚、銀貨6万5124枚も売れたのだ。
調味料に関しても、俺が想像していた以上に売れた。
ここが商機と判断した商人が多かったのだろう。
塩、砂糖、粒黒胡椒を資金一杯買い込んで、得意先に持ち込むのだろう。
真っ白に精製され、砂1粒も混じっていない塩と砂糖だ、売れない訳がない。
粒黒胡椒に関しては、思っていたほどぼろ儲けはできなかった。
元々超高額商品なので、他の商人も品質管理を厳格に行っていた。
何より超高額商品過ぎて買える人間が極端に少ない。
だがそれでもこの世界は貧富の差が極端に大きい。
粒黒胡椒は値崩れの恐れも低く換金性も高いので、それなりには売れてくれた。
塩が買った量のほぼ半分、1200kg売れて銀貨360枚(360万円)
砂糖も買った量のほぼ半分、1000kg売れて銀貨12万枚(12億円)
黒胡椒は10kgくらいしか売れず、銀貨1万2000枚(1億2000万)
本当は端数もあるのだが、計算が面倒で途中で止めてしまった。
実は盗難対策もあって、全部亜空間に放り込んだのだ。
もしかしたら計算間違いがあるかもしれないが、気にしない。
あまりにも忙し過ぎて、商品が売れた数も手に入れた貨幣の数も、後で合算で分かればいいと思ってしまったのだ。
唯一気にしたのは、売上金を入れる亜空間を分けて、薬草、調味料、食品の種類分けをすることだった。
だから調味料部門の売り上げが金貨984枚(9億8400万円)銀貨4万5267枚(4億2336万円)だと分かっている。
食品部門としたのは狩った魔獣、獣、鳥類だが、薬草や調味料に比べれば単価が極端に低く、気を入れて売る気になれなかった。
他の商人が売っているモノに比べて優れている点もない。
あるとすれば数が多い事だけだが、それは逆に値崩れを起こす危険がある。
だから結局、看板に書いてあるだけで積極的に売らなかった。
集まった客の中には、冷やしで食品を見てやろうという者もいたかもしれない。
だが、薬草と調味料を前にして殺気立つ連中が後ろにいるので、冷やかせない。
当人も2度と手に入らないかもしれない高精製調味料を優先したのだろう。
「大魔術師殿、ありがとう、本当にありがとうございます。
これほどの高品質商品を扱ってくれたら、今後も商人が集まってくれます。
商人も、何も持ち込まずにロアノークやって来る事はありません。
何か売れる商品を持ち込んで、片道分の利益を出そうとするはずです。
大魔術師殿が商売を続けてくれる限り、ロアノークは商業都市に成れます」
「お前に礼を言われる筋合いではない。
貸しを確実に回収するためには、ロアノークに寂れてもらっては困るのだ。
それに、お前の家族と貴族を高値で売るためにも、ロアノークには商業都市として発展してもらわなくては困る」
「……分かっています、それで、父上達をいつ引き渡せばいいですか?」
「多数の犯罪者の管理などできない。
お前が引き続き牢屋で管理しておいてくれ。
死なさずに生かしておく費用はちゃんと渡すから、明細を作って請求しろ」
「……本当に私に預けて管理させる心算ですか?」
「嫌なら別にかまわない。
人手が足らなくて偶然被害者の家族や友人を管理人に雇ってしまうかもしれない。
彼らが貴族達への恨みをこらえきれず殺してしまったとしても、俺には彼らを罰する事ができないだろう」
「分かりました、私が責任をもって牢屋に閉じ込めておきます。
念のために聞いておきますが、家族や貴族達が競売にかけられた時、私を含めた貴族達の親戚が競り落としたらどうするのですか?」
「俺を怒らせても良い、俺と正面から戦う覚悟ができたのなら、そうすればいい。
ロアノークに残っている、被害者の家族や友人達にどう思われてもいいと思うのなら、領主であるお前が何をしようが構わない。
念のために言っておくが、俺が世話しているネイという幼女は、魔境で独り取り残されて生きていたのを助けたのだ。
どのような理由と状況があって、魔境で幼女独りが生きていくことになったのだろうな?!」
「……父の悪政で捨てられる事になったから、強盗冒険者達を野放しにしていたから、村や商人が襲われて子供だけが生き延びたと言われるのですか?」
「さあな、言葉も話せなくなっていた、こんな幼い子に何を聞いても分からない。
だが、この子を助ける事になった俺が、原因となった者を忌み嫌うのは当然だ。
まして俺自身が殺されそうになったのだ。
元凶を助けると言うのなら、俺に喧嘩を売るのと同じだ。
その覚悟があるのなら、好きにするがいい」
「……分かりました、覚悟を決めてお世話させていただきます」
別にマイルズが何を基準に判断しても行動してもかまわない。
この世界で拠点になる場所を確保できて、人材と資金を手に入れられたらいい。
ロアノークでは引き籠れないと思ったら、他に拠点を移せばいいだけだ。
問題はネイに対する責任だけだ。
ネイに領主として君臨するだけの責任感と胆力があり、領主の地位を望むなら、マイルズを排除してロアノークを手に入れてやる。
だが、幼女のネイがそう判断できるようになるまで待てない。
もっと早く引き籠って暮らしたい。
そのためには、ネイを世話してくれる信頼できる人間が必要だ。
忠誠心で任せられる人間でなくてもいい。
俺に対する恐怖心で絶対裏切らない世話役でも構わない。
そのどちらかを手に入れる最速の方法となると……
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厘/りん
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ある休日、家族でお昼ご飯を食べていたらいきなり異世界へ転移した。俺(長男)カケルは日本と全く違う異世界に動揺していたが、父と母の様子がおかしかった。なぜか、やけに落ち着いている。問い詰めると、もともと父は異世界人だった(らしい)。信じられない!
☆第4回次世代ファンタジーカップ
142位でした。ありがとう御座いました。
★Nolaノベルさん•なろうさんに編集して掲載中。
目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し
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突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。
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異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
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エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
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日々、異世界などの妄想をする、アラフォーのテツ。
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『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
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HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
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転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
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辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
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