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第二章「恋愛」
50話
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「アシュラムの旦那。
ここでなら本音が話せるだろ。
正直なところを聞かせてくれないか」
「そうだな。
皆の実力も分かったし、そろそろ大丈夫だろう。
率直に聞くが、皆も水精霊の加護を受けているのだろう」
「旦那もそうか。
そうだろうな。
そうでなければ、ここの水精霊に選ばれるはずがないよな。
でも俺はちょっと違うんだ。
水ではなく酒の精霊なんだ」
アシュラム達は、王城に入ってから皆で話し合った。
最初に口火を切ったのは、王都で軽口を叩いていたジミーだった。
そこで確認されたのは、アシュラムと九人の従者は、それぞれが地元で水精霊の加護を受けた者だという事だった。
だが一つ、カチュア姫と大きく違う事があった。
それは加護する水精霊の性格だった。
栄養豊富な濁った水の沼を護る水精霊は、多くの生物を慈しんでいる。
多くの水草や生物と共生する大河を護る水精霊は、美しい水質だが心が広い。
オアシスの水精霊のように潔癖すぎたりしないのだ。
もっとも、同じ水分でもアルコールを含む酒の精霊は異質過ぎる気もする。
「では聞こう。
お前達を守護する水精霊は、ここをどうしたいと思っているんだ?」
「俺の水精霊は、ここに新たな沼を作りたいと思っている」
「私の水精霊は、オアシスの水を川にしたいと思ってるそうよ」
「俺の水精霊も池を作りたいと言っている。
アシュラム殿の水精霊はどうしたいと思っているんだ」
朴訥なアシュラムは、話すのが苦手だが、それでも分かり易く話した。
それによると、この砂漠地帯に新たな湖沼を創り出し、その全てを川でつなぎたいというモノだった。
もしそれが出来れば、今迄よりも多くの生き物が住み暮らすことが出来る。
偏狭偏屈なサライダオアシスの水精霊とは、交友を止めようと言い切ったのだ。
だがその為には、もっと身体強化をする必要があった。
今の身体能力では、使える水精霊の力も限られている。
今のままでは、新たな河川湖沼を創り出したくても、サライダオアシスの水精霊に邪魔されてしまう。
そう話し合ったアシュラム達は、力を合わせてドラゴニュートを斃した。
徐々に身体強化が増強されるアシュラム達は、段々幼体のドラゴニュートなら簡単に斃せるようになっていった。
だが無理に王城地区の奥深くにはいかなかった。
堅実確実に身体強化を重ねた。
時々現れる成体のドラゴニュートも斃せるようになっていた。
本来なら火竜のシャーロットが現れてもおかしくない強さにまで身体強化が進んでいた。
だがそれでもシャーロットは現れなかった。
彼女には彼女の事情があった。
ここでなら本音が話せるだろ。
正直なところを聞かせてくれないか」
「そうだな。
皆の実力も分かったし、そろそろ大丈夫だろう。
率直に聞くが、皆も水精霊の加護を受けているのだろう」
「旦那もそうか。
そうだろうな。
そうでなければ、ここの水精霊に選ばれるはずがないよな。
でも俺はちょっと違うんだ。
水ではなく酒の精霊なんだ」
アシュラム達は、王城に入ってから皆で話し合った。
最初に口火を切ったのは、王都で軽口を叩いていたジミーだった。
そこで確認されたのは、アシュラムと九人の従者は、それぞれが地元で水精霊の加護を受けた者だという事だった。
だが一つ、カチュア姫と大きく違う事があった。
それは加護する水精霊の性格だった。
栄養豊富な濁った水の沼を護る水精霊は、多くの生物を慈しんでいる。
多くの水草や生物と共生する大河を護る水精霊は、美しい水質だが心が広い。
オアシスの水精霊のように潔癖すぎたりしないのだ。
もっとも、同じ水分でもアルコールを含む酒の精霊は異質過ぎる気もする。
「では聞こう。
お前達を守護する水精霊は、ここをどうしたいと思っているんだ?」
「俺の水精霊は、ここに新たな沼を作りたいと思っている」
「私の水精霊は、オアシスの水を川にしたいと思ってるそうよ」
「俺の水精霊も池を作りたいと言っている。
アシュラム殿の水精霊はどうしたいと思っているんだ」
朴訥なアシュラムは、話すのが苦手だが、それでも分かり易く話した。
それによると、この砂漠地帯に新たな湖沼を創り出し、その全てを川でつなぎたいというモノだった。
もしそれが出来れば、今迄よりも多くの生き物が住み暮らすことが出来る。
偏狭偏屈なサライダオアシスの水精霊とは、交友を止めようと言い切ったのだ。
だがその為には、もっと身体強化をする必要があった。
今の身体能力では、使える水精霊の力も限られている。
今のままでは、新たな河川湖沼を創り出したくても、サライダオアシスの水精霊に邪魔されてしまう。
そう話し合ったアシュラム達は、力を合わせてドラゴニュートを斃した。
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だが無理に王城地区の奥深くにはいかなかった。
堅実確実に身体強化を重ねた。
時々現れる成体のドラゴニュートも斃せるようになっていた。
本来なら火竜のシャーロットが現れてもおかしくない強さにまで身体強化が進んでいた。
だがそれでもシャーロットは現れなかった。
彼女には彼女の事情があった。
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