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第二章「恋愛」

49話

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「アシュラム様。
 これがドラゴニュートの牙で作った短剣でございます。
 これがドラゴニュートの革と鱗で作ったスケイルメイルでございます。
 どうかこれらを御持ちになって下さい」

「有難き幸せでございます、カチュア姫。
 せっかくの御厚意ですので、遠慮なく御受けさせていただきます。
 今度はもっと深くまで探索して、成体のドラゴニュートを討ち取ってきます」

「無理はなされないでください」

 カチュア姫は幸せだった。
 アシュラム達が十数頭のドラゴニュートを斃し、無事に帰還したのだ。
 彼らが休息する間に、ドラゴニュートを素材にした武器や防具を完成させたのだ。
 アシュラムが装備する分を優先したが、従者達の装備も作られていた。
 弓矢を使う者には、ドラゴニュートの爪を使った鏃の矢を支給している。

 カチュア姫は知らなかったのだ。
 火竜がサライダ王国の裏切りを知りながら、怒りを抑えて我慢している事を。
 サライダ王国を逃げ出した勇者英雄達が、火竜の子種として王城に飼われている事を。
 身体強化された勇者英雄達を片親として、新たなドラゴニュートが産まれている事を。
 カチュア姫だけでなく、水精霊も知らなかったのだ。

 火竜は我慢を重ねて待っていた。
 アシュラムがドラゴニュートを斃して更に強くなることを。
 孫や子を斃されるのは腹だったしい事だが、もっと強い子種が欲しかった。
 今戦えばアシュラムは簡単に殺せる。
 少々身体強化を重ねることになっても、負ける心配などない。

 捕獲した勇者英雄達以上に強い者を育てなければ、強い子を産むことが出来ない。
 だから我慢した。
 怒り狂ってアシュラムを殺したい想いを抑え込んだ。
 その想いは、勇者英雄達との交尾で憂さ晴らしした。
 新たな卵を産むことで発散した。

「アシュラム様、どうかご無事で」

「心配しないでください。
 決して無理はしません。
 少しづつドラゴニュートを斃し、身体を強化します。
 必ず火竜が斃せると言う確信が持てるまでは、奥まで進みません。
 だから安心してください」

「でもよ、アシュラムの旦那。
 火竜もそれくらい気が付いてるんじゃないの。
 どうも嫌な予感がするんだよね」

「そうだな。
 俺もなんか嫌な予感がする
 俺達は火竜の手の中で踊らされているんじゃないのか。
 もっと別のやり方をした方がいいんじゃないのか」

 軽口が好きなクロエとジミーが、冗談のように真相を突いた事を口にした。
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