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会談2
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「我々犯罪者奴隷は、どのような仕事を与えられるのですか?」
「基本は遊牧と農作業だ」
「遊牧でございますか? 農作業は分かりますが、遊牧などやったことがないのですが」
「遊牧は、やったことのある先輩奴隷が教えてくれる。それに最初は城の中の放牧地で練習するから大丈夫だ」
「そうですか、それはありがたい事です。それで、あの」
「なんだ、はっきり言え」
「はい。あの、家族は、妻や子供達は、どのような仕事が与えられるのでしょうか」
「同じだ。御前達と一緒で、遊牧と農業をしてもらう」
「それだけでいいのですか?!」
「いや、万が一の場合は戦ってもらう」
「そう、ですか。そうですよね。そんな都合のいい話はないですよね。それで何時戦うのでしょうか」
「相手次第だな」
「相手でございますか?」
「そうだ」
「やはり相手は、イマーン王国ですよね」
「そうだな。今のところ攻撃してくるのはイマーン王国だけのはずだ」
「あの、相手次第という事は、殿様から攻撃はされないのですか」
「場合によればこちらから攻撃するかもしれないが、その場合も御前達を参加させることはない」
「え? 本当でございますか?!」
「本当だ。元は同じ国の人間だった者同士が、何の恨みも理由もないのに、殺し合うのは不幸な事だからな」
「ありがとうございます」
「だがだ、余が留守の間にイマーン王国軍が攻め込んできた場合は、ここを護る為に戦ってもらう」
「はい! 必ずここを護り切って見せます」
「そうか。それと子供達だが、冒険者になれるように狩りの訓練と勉強をしてもらう」
「え?!」
「不思議なのか?」
「奴隷に勉強を教えて下さるのですか!?」
「当然だろう。身代金を稼いでもらう心算なのだから、稼げるように投資するのは当然だ。まあ、投資した分も身代金に上乗せるから、余の損にはならんよ」
「ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます!」
「子供達にはしっかりと、勉学と訓練に励むように教えるのだ。身に付けた技術や知識は、子や孫に伝えることが出来る。そうなれば、御前の子孫はもう奴隷にさせられることはないだろう」
「ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます!」
「すっかり食事が冷めてしまったな。温め直してもらうか?」
「いえ、冷めても十分美味しいので、このままでも大丈夫でございます」
「そうか。まあ代わり映えしない料理だ。毎日同じような、銅級の魔獣や魔蟲を食べる事になるから、美味しく食べられるのなら何よりだ」
「え?!」
「なんだ?」
「あの、これは、殿様が一緒に食べられるので、特別な料理なのではないのですか?」
「余が特別に誰かをもてなすのなら、玉鋼級か白銀級の魔獣料理を出す。今回は御前達との最初で最後の会談になるかもしれないから、御前達がこれから一生食べるであろう料理を一緒に食べたのだ」
「これが、我々が一生食べることの出来る料理なのですか!」
「イマーン王国ではどうだったか知らないが、魔境に近いアリステラ王国の村では、耕す必要も実るまで世話をする必要もない、魔獣や魔蟲の方が安いのだ」
「なんと!」
「それに魔獣や魔蟲は、魔法の袋を持っていなければ日持ちがしない。干しても燻製にしても傷む可能性がある。だが麦や米などの穀物は、手を加えれば三十年は保存が可能だ。だから軍事用に利用され、備蓄も行われるから高価なのだ」
「そう、なのですか。魔境に行けば、幾らでも食料が手に入るのですか」
「ただし、人を喰い殺す恐ろしい魔獣や魔蟲と戦い勝たねばならない。魔獣や魔蟲に勝てる力と技、そして知識を身に付けることが最低条件だ」
「分かりました。子供達には何が何でも冒険者になってもらいます。その為の訓練と勉強は、私達親が必ずやらせますので、どうか、見捨てないでください」
「そうか。決して見捨てないぞ。それに、余は御前達に期待しているぞ」
「基本は遊牧と農作業だ」
「遊牧でございますか? 農作業は分かりますが、遊牧などやったことがないのですが」
「遊牧は、やったことのある先輩奴隷が教えてくれる。それに最初は城の中の放牧地で練習するから大丈夫だ」
「そうですか、それはありがたい事です。それで、あの」
「なんだ、はっきり言え」
「はい。あの、家族は、妻や子供達は、どのような仕事が与えられるのでしょうか」
「同じだ。御前達と一緒で、遊牧と農業をしてもらう」
「それだけでいいのですか?!」
「いや、万が一の場合は戦ってもらう」
「そう、ですか。そうですよね。そんな都合のいい話はないですよね。それで何時戦うのでしょうか」
「相手次第だな」
「相手でございますか?」
「そうだ」
「やはり相手は、イマーン王国ですよね」
「そうだな。今のところ攻撃してくるのはイマーン王国だけのはずだ」
「あの、相手次第という事は、殿様から攻撃はされないのですか」
「場合によればこちらから攻撃するかもしれないが、その場合も御前達を参加させることはない」
「え? 本当でございますか?!」
「本当だ。元は同じ国の人間だった者同士が、何の恨みも理由もないのに、殺し合うのは不幸な事だからな」
「ありがとうございます」
「だがだ、余が留守の間にイマーン王国軍が攻め込んできた場合は、ここを護る為に戦ってもらう」
「はい! 必ずここを護り切って見せます」
「そうか。それと子供達だが、冒険者になれるように狩りの訓練と勉強をしてもらう」
「え?!」
「不思議なのか?」
「奴隷に勉強を教えて下さるのですか!?」
「当然だろう。身代金を稼いでもらう心算なのだから、稼げるように投資するのは当然だ。まあ、投資した分も身代金に上乗せるから、余の損にはならんよ」
「ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます!」
「子供達にはしっかりと、勉学と訓練に励むように教えるのだ。身に付けた技術や知識は、子や孫に伝えることが出来る。そうなれば、御前の子孫はもう奴隷にさせられることはないだろう」
「ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます!」
「すっかり食事が冷めてしまったな。温め直してもらうか?」
「いえ、冷めても十分美味しいので、このままでも大丈夫でございます」
「そうか。まあ代わり映えしない料理だ。毎日同じような、銅級の魔獣や魔蟲を食べる事になるから、美味しく食べられるのなら何よりだ」
「え?!」
「なんだ?」
「あの、これは、殿様が一緒に食べられるので、特別な料理なのではないのですか?」
「余が特別に誰かをもてなすのなら、玉鋼級か白銀級の魔獣料理を出す。今回は御前達との最初で最後の会談になるかもしれないから、御前達がこれから一生食べるであろう料理を一緒に食べたのだ」
「これが、我々が一生食べることの出来る料理なのですか!」
「イマーン王国ではどうだったか知らないが、魔境に近いアリステラ王国の村では、耕す必要も実るまで世話をする必要もない、魔獣や魔蟲の方が安いのだ」
「なんと!」
「それに魔獣や魔蟲は、魔法の袋を持っていなければ日持ちがしない。干しても燻製にしても傷む可能性がある。だが麦や米などの穀物は、手を加えれば三十年は保存が可能だ。だから軍事用に利用され、備蓄も行われるから高価なのだ」
「そう、なのですか。魔境に行けば、幾らでも食料が手に入るのですか」
「ただし、人を喰い殺す恐ろしい魔獣や魔蟲と戦い勝たねばならない。魔獣や魔蟲に勝てる力と技、そして知識を身に付けることが最低条件だ」
「分かりました。子供達には何が何でも冒険者になってもらいます。その為の訓練と勉強は、私達親が必ずやらせますので、どうか、見捨てないでください」
「そうか。決して見捨てないぞ。それに、余は御前達に期待しているぞ」
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