上 下
55 / 82

会談2

しおりを挟む
「我々犯罪者奴隷は、どのような仕事を与えられるのですか?」
「基本は遊牧と農作業だ」
「遊牧でございますか? 農作業は分かりますが、遊牧などやったことがないのですが」
「遊牧は、やったことのある先輩奴隷が教えてくれる。それに最初は城の中の放牧地で練習するから大丈夫だ」
「そうですか、それはありがたい事です。それで、あの」
「なんだ、はっきり言え」
「はい。あの、家族は、妻や子供達は、どのような仕事が与えられるのでしょうか」
「同じだ。御前達と一緒で、遊牧と農業をしてもらう」
「それだけでいいのですか?!」
「いや、万が一の場合は戦ってもらう」
「そう、ですか。そうですよね。そんな都合のいい話はないですよね。それで何時戦うのでしょうか」
「相手次第だな」
「相手でございますか?」
「そうだ」
「やはり相手は、イマーン王国ですよね」
「そうだな。今のところ攻撃してくるのはイマーン王国だけのはずだ」
「あの、相手次第という事は、殿様から攻撃はされないのですか」
「場合によればこちらから攻撃するかもしれないが、その場合も御前達を参加させることはない」
「え? 本当でございますか?!」
「本当だ。元は同じ国の人間だった者同士が、何の恨みも理由もないのに、殺し合うのは不幸な事だからな」
「ありがとうございます」
「だがだ、余が留守の間にイマーン王国軍が攻め込んできた場合は、ここを護る為に戦ってもらう」
「はい! 必ずここを護り切って見せます」
「そうか。それと子供達だが、冒険者になれるように狩りの訓練と勉強をしてもらう」
「え?!」
「不思議なのか?」
「奴隷に勉強を教えて下さるのですか!?」
「当然だろう。身代金を稼いでもらう心算なのだから、稼げるように投資するのは当然だ。まあ、投資した分も身代金に上乗せるから、余の損にはならんよ」
「ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます!」
「子供達にはしっかりと、勉学と訓練に励むように教えるのだ。身に付けた技術や知識は、子や孫に伝えることが出来る。そうなれば、御前の子孫はもう奴隷にさせられることはないだろう」
「ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます!」
「すっかり食事が冷めてしまったな。温め直してもらうか?」
「いえ、冷めても十分美味しいので、このままでも大丈夫でございます」
「そうか。まあ代わり映えしない料理だ。毎日同じような、銅級の魔獣や魔蟲を食べる事になるから、美味しく食べられるのなら何よりだ」
「え?!」
「なんだ?」
「あの、これは、殿様が一緒に食べられるので、特別な料理なのではないのですか?」
「余が特別に誰かをもてなすのなら、玉鋼級か白銀級の魔獣料理を出す。今回は御前達との最初で最後の会談になるかもしれないから、御前達がこれから一生食べるであろう料理を一緒に食べたのだ」
「これが、我々が一生食べることの出来る料理なのですか!」
「イマーン王国ではどうだったか知らないが、魔境に近いアリステラ王国の村では、耕す必要も実るまで世話をする必要もない、魔獣や魔蟲の方が安いのだ」
「なんと!」
「それに魔獣や魔蟲は、魔法の袋を持っていなければ日持ちがしない。干しても燻製にしても傷む可能性がある。だが麦や米などの穀物は、手を加えれば三十年は保存が可能だ。だから軍事用に利用され、備蓄も行われるから高価なのだ」
「そう、なのですか。魔境に行けば、幾らでも食料が手に入るのですか」
「ただし、人を喰い殺す恐ろしい魔獣や魔蟲と戦い勝たねばならない。魔獣や魔蟲に勝てる力と技、そして知識を身に付けることが最低条件だ」
「分かりました。子供達には何が何でも冒険者になってもらいます。その為の訓練と勉強は、私達親が必ずやらせますので、どうか、見捨てないでください」
「そうか。決して見捨てないぞ。それに、余は御前達に期待しているぞ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ@10シリーズ書籍化
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

前世は悪神でしたので今世は商人として慎ましく生きたいと思います

八神 凪
ファンタジー
 平凡な商人の息子として生まれたレオスは、無限収納できるカバンを持つという理由で、悪逆非道な大魔王を倒すべく旅をしている勇者パーティに半ば拉致されるように同行させられてしまう。  いよいよ大魔王との決戦。しかし大魔王の力は脅威で、勇者も苦戦しあわや全滅かというその時、レオスは前世が悪神であったことを思い出す――  そしてめでたく大魔王を倒したものの「商人が大魔王を倒したというのはちょっと……」という理由で、功績を与えられず、お金と骨董品をいくつか貰うことで決着する。だが、そのお金は勇者装備を押し付けられ巻き上げられる始末に……  「はあ……とりあえず家に帰ろう……この力がバレたらどうなるか分からないし、なるべく目立たず、ひっそりしないとね……」  悪神の力を取り戻した彼は無事、実家へ帰ることができるのか?  八神 凪、作家人生二周年記念作、始動!  ※表紙絵は「茜328」様からいただいたファンアートを使用させていただきました! 素敵なイラストをありがとうございます!

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

処理中です...