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第一章
第1話:追放劇
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「エンドラ公爵家令嬢ユリア、貴女を不敬罪で追放します。
何か申し開きする事はありますか?」
「追放されるのは仕方ありませんが、私を襲った強姦未遂犯はどうなるのです。
今まで多くの貴族令嬢を王太子の権力を使って襲い、社交界に出られないような悪行を重ねた卑劣漢はどうなるのです、裁判長!」
「……証拠不十分で無罪です」
「この国も、裁判所も、王家も腐っていますね。
今までから悪い噂が大陸中に広まっていましたが、これで止めでしょう。
これでレジネル王家は大陸中から忌み嫌われることになりますね」
「ユリア嬢、これは裁判長ではなく、個人としての言葉なのだが、もう少し発言には気を付けた方がいい。
この世の中は善意と正義だけでできているわけではない。
どうしようもない、悪意と欲望に満ちているのだ。
この国にわずかに残る良識のお陰で拾った命、無駄に捨てる事はない」
「分かりました、以後口を慎むことにします。
ですが、すでに大陸中に悪い噂が広まっているのではありませんか」
もう私の言葉に裁判長は返事をしてくれませんでした。
すでに十分言い過ぎていて、身の危険を思い出したのでしょう。
この国の司法を司る建前の裁判長も、王家や有力貴族には逆らえないのです。
法を守る気もない、兵力を持った王侯貴族が相手では、裁判に正義は期待できない、とても不公平な国、それが私の生まれたレジネル王国です。
でも、それも今日までで、私は追放刑となってこの国を追い出されます。
この国から出て行けるのはとてもうれしい事で、望むところなのですが、王家の権力に負けて追い出されるというのは、かなり腹が立ちます。
とは言っても、私には抵抗する術などありません。
前世の知識と経験があるとはいっても、私は武闘派ではなく研究派なのです。
法が護られ秩序が整った国でしか、私の力は発揮できないのです。
そのためには、この大陸で一番法と秩序が護られている、セント・クルシー皇国に行かなければいけませんが、果たして無事に辿り着けるか……
私を襲って強酸を顔にかけられ、二目と見られない醜い顔になった王太子とその取り巻きの屑どもが、私に復讐しようと待ち構えているでしょう。
実家のエンドラ公爵家は、父の後妻のビエンナと、義妹のシャロンに乗っ取られていてあてにできません。
この状態で無事にセント・クルシー皇国に行くには至難の業です。
私が使えるのは、この時の事を考えて貯めていた隠し金と秘薬だけです。
前世の知識と経験、この世界の知識と不思議な現象、それを研究して創り出した秘薬がどこまで効果があるのか?
「ミャァアアア!」
「ごめんなさい、金虎、貴女がいてくれたわね」
私が研究開発した秘薬、魔獣を手懐ける魔法の薬。
そのお陰で仲良くなれたとても可愛く美しい黄金の虎。
この子が護ってくれるのなら、生きてセント・クルシー皇国に辿り着けるかもしれない。
何か申し開きする事はありますか?」
「追放されるのは仕方ありませんが、私を襲った強姦未遂犯はどうなるのです。
今まで多くの貴族令嬢を王太子の権力を使って襲い、社交界に出られないような悪行を重ねた卑劣漢はどうなるのです、裁判長!」
「……証拠不十分で無罪です」
「この国も、裁判所も、王家も腐っていますね。
今までから悪い噂が大陸中に広まっていましたが、これで止めでしょう。
これでレジネル王家は大陸中から忌み嫌われることになりますね」
「ユリア嬢、これは裁判長ではなく、個人としての言葉なのだが、もう少し発言には気を付けた方がいい。
この世の中は善意と正義だけでできているわけではない。
どうしようもない、悪意と欲望に満ちているのだ。
この国にわずかに残る良識のお陰で拾った命、無駄に捨てる事はない」
「分かりました、以後口を慎むことにします。
ですが、すでに大陸中に悪い噂が広まっているのではありませんか」
もう私の言葉に裁判長は返事をしてくれませんでした。
すでに十分言い過ぎていて、身の危険を思い出したのでしょう。
この国の司法を司る建前の裁判長も、王家や有力貴族には逆らえないのです。
法を守る気もない、兵力を持った王侯貴族が相手では、裁判に正義は期待できない、とても不公平な国、それが私の生まれたレジネル王国です。
でも、それも今日までで、私は追放刑となってこの国を追い出されます。
この国から出て行けるのはとてもうれしい事で、望むところなのですが、王家の権力に負けて追い出されるというのは、かなり腹が立ちます。
とは言っても、私には抵抗する術などありません。
前世の知識と経験があるとはいっても、私は武闘派ではなく研究派なのです。
法が護られ秩序が整った国でしか、私の力は発揮できないのです。
そのためには、この大陸で一番法と秩序が護られている、セント・クルシー皇国に行かなければいけませんが、果たして無事に辿り着けるか……
私を襲って強酸を顔にかけられ、二目と見られない醜い顔になった王太子とその取り巻きの屑どもが、私に復讐しようと待ち構えているでしょう。
実家のエンドラ公爵家は、父の後妻のビエンナと、義妹のシャロンに乗っ取られていてあてにできません。
この状態で無事にセント・クルシー皇国に行くには至難の業です。
私が使えるのは、この時の事を考えて貯めていた隠し金と秘薬だけです。
前世の知識と経験、この世界の知識と不思議な現象、それを研究して創り出した秘薬がどこまで効果があるのか?
「ミャァアアア!」
「ごめんなさい、金虎、貴女がいてくれたわね」
私が研究開発した秘薬、魔獣を手懐ける魔法の薬。
そのお陰で仲良くなれたとても可愛く美しい黄金の虎。
この子が護ってくれるのなら、生きてセント・クルシー皇国に辿り着けるかもしれない。
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