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10話

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 少々恥ずかしいことですが、少し食べ過ぎてしまいました。
 でもそれも仕方ないと思うのです。
 あまりに美味し過ぎるのです。
 これほど美味しい食事をしたのは生まれて初めてです。
 それを食べ過ぎないようにするなんて不可能です。

 最初に飲んだオレンジジュースも、最初に食べた白パンも美味しかったですが、次に飲んだ乳が至高の味でした!
 乳の次にハクちゃんが出してくれたのが、ほっぺが落ちそうになるくらい美味しいオリーブでした。
 
 オリーブを一つ食べ終える頃には、食卓の上には新しい白パンと新しいオリーブ、二つの杯には乳とジュースが入れられていました。
 いつ置いてくれたのか分かりません!
 ハクちゃんの力なら簡単な事なのでしょう。
 なぜこのようなことができるかなんて、考えても仕方がありません。
 ハクちゃんが私のために用意してくれた、それだけ分かっていれば十分です。

 新しいジュースの色は透明に近かったので、最初は水かと思いました。
 でも違いました。
 とても甘くて少し酸味があって旨み一杯のアップルジュースでした!
 乳は先ほどとはまた違う甘みと旨みがありました。
 嫌な獣の臭いがないので、何の乳かまでは分かりませんでしたが、一杯目とは違うのだけは分かりました。
 結局美味し過ぎて食べ過ぎてしまったのです。

「わん。
 わん、わんわん!」

 少し苦しいお腹を無意識にさすっていると、ハクちゃんが私を呼びます。
 何か訴えたい事があるのか、すごく真剣です。
 ハクちゃんの言っていることが全て理解してあげられないことがつらいです。
 それでも、何とか少しでも理解してあげたいと、真剣に聞きます。
 どうやら私に外に行こうと訴えているようです。

「わん。
 わん、わんわん!」

 私が家の外に出ようとすると、とてもうれしそうに飛び跳ねています。
 もう犬ではなく魔獣であると頭では分かってはいるのですが、あまりの可愛らしさに実感が伴いません。
 でも、誘われれば一緒に外で遊びたくなります。
 安全だと分かった家からでてしまいます。
 一晩過ごしただけなのに、何の違和感もなく自分の家だと思っています。

 外にでると、あれだけ歩き難かった森が、家の周りだけ広場になっていました。
 ハクちゃんと駆け回るのに何の問題もない、気持ちのいい草原です、
 歩く邪魔になるような丈の長い草ではなく、自由に駆け回るのに足を取られることのない、丈の短い草が生えているのです。

「わん。
 わん、わんわん!」

 何も考えず、ただ夢中になってハクちゃんと駆け回りました。
 魔境なのに、一匹の魔獣も現れません。
 ハクちゃんを追いかけると、どんどん草原が広がっていきます。
 これもハクちゃんのお陰なのでしょうか?
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