130 / 138
第三章:天下統一
第123話:連鎖反応3
しおりを挟む
天文十八年(1550)4月2日:越中富山城三ノ丸政所:俺視点
「阿波の国人、三好孫次郎長慶でございます。
この度は降伏臣従を認めて下さり、感謝の言葉もございません」
「同じく阿波の国人、三好彦次郎之虎でございます。
降伏臣従を認めて下さりました事、心から感謝しております」
「淡路の国人、安宅神太郎冬康でございます。
生け捕りになった身なのに、五百貫もの領地を認めて下さった事、心から感謝しております」
「讃岐の国人、十河孫六郎一存でございます。
降伏臣従を認めて下さり、心から感謝しております」
「阿波の国人、三好孫四郎長逸でございます。
一門の末席の身にもかかわらず、五百貫もの領地を認めて下さり、心から感謝しております」
三好家の一族一門が揃って降伏臣従してくれた。
前世から同情していたので、本当に良かった。
できれば皆殺しにはしたくなかったのだ。
降伏するか誇りのために死ぬか、兄弟間で激論があったそうだ。
特に三好長慶と三好之虎が激しく言い争ったそうだ。
最後は、兄二人が争うのも見過ごしては亡父に顔向けできないと言う、安宅冬康と十河一存の言葉に、三好之虎が冷静さを取り戻したそうだ。
嫡男の三好長慶が一番重圧を受けただろうが、兄を支える立場だった三好之虎も、幼くして父を亡くす事がどれだけ大変なのか思い知っている。
自分が誇りのために戦い死んだら、兄弟も責任を問われて殺されるかもしれない。
幼い甥も殺されてしまうかもしれない。
自分の誇りの為に、兄だけならともかく本家の跡取りまで巻き込むかもしれない。
子供だけ許されたとしても、全ての一門衆を失った幼子が苦労する。
苦労するどころか、生きて行ける保証がない。
苦労するのは甥だけではない、一族一門衆全てを巻き込むかもしれないのだ。
弟二人に諫められ、激昂していた心が落ち着き、一族一門の女子供まで皆殺しにさせる訳にはいかないと、冷静になる事で考えられるようになったそうだ。
「良く誇りを抑えて厳しい条件を受け入れて降伏してくれた。
五百貫の領地しか認めないのが、どれほど厳しいかは分かっている。
だが、足利のように家臣に力を与える訳にはいかない。
そんな事をすれば、また乱世になってしまう。
それに、北条相模守にも言ったが、天下を握れるほどの才覚を持つ者に、領地や兵力を与える訳にはいかない。
三好兄弟には天下を握れるだけの才覚がある。
一人だけでも天下を握れる者が四人もそろっているのだ、厳しく接するしかない」
「我ら兄弟を高く評していただき、感激に身が打ち震えています。
臣従したばかりの身で聞くのは失礼だとは思いますが、北条相模守殿に武功を挙げる機会を与えられたと聞きます。
我ら兄弟にも刻を置いた後で与えてくださるのでしょうか?」
「与える、刻を置く事なく与える。
ただし、日乃本の中ではない、唐天竺での話だ」
「唐天竺でございますか?」
「先ほども言ったように、日乃本の乱世を終わらせる事が一番大切だ。
日乃本はこのまま兵を進めれば確実に平定できる。
問題は、天竺の倍以上も遠い南蛮から攻め込んで来ている者共だ。
その話を聞いていたからこそ、俺に降伏したのであろう?」
俺は笑顔を浮かべながら三好長慶に聞いた。
「はい、殿と北条相模守殿の話は噂で聞いていました。
噂が本当なら、例え全ての領地を召し上げられても、武功を挙げて領地を取り戻す機会があると思っていました」
密偵衆を使って全国に噂を広めた甲斐があった。
「俺が譜代の家臣達に言っている事も知っていたのだな?」
「はい、どれほど武功を挙げた譜代衆でも、一国以上は与えないと断言されている事は、噂で知っておりました。
確か、九州を譜代衆に分け与えられるのですね?」
「その通りだ、九州と蝦夷地を武功ある者に与える予定だ。
だがそれでは、これから家臣になる者にはほとんど機会がない。
だから南蛮人が押領した南方の地に攻め込み、その地を褒美に与える気だ。
ただ南方には、独特の疫病がある。
猖獗を極める疫病は、俺の神通力でも払えない。
南蛮人の刃だけでなく、疫病に殺される事もある。
それでも構わないのなら、武功に応じて南方に領地を与える。
日乃本以外で良いのなら、一国までの制限はない。
上野や上総に匹敵する大国であろうと、何カ国でも褒美に与えよう」
「有り難き幸せでございます」
「もう南方の国を褒美でもらった気でいるのか?」
「殿に天下を握れるだけの才覚があると言っていただいているのです。
たとえ相手が天竺の何倍も遠い所から攻め込んで来る強者であろうと、兄弟力を合わせて戦えば、必ず勝てると思っております」
三好長慶の言葉を聞いて、三人の弟達が涙を流さんばかりに感動している。
弟達だけでなく、三好長逸を筆頭とした一門衆も決意を新たにしている。
中には本家や宗家から独立を画策していた者もいるだろうが、俺の言葉と四兄弟の絆に心が動いたのだろう。
「ただし、さっきも言ったが、俺は三好四兄弟を心から警戒している。
無条件に力を与える気はない」
「どのような条件なのでしょうか?」
「三好の下に付きたくないと言う者は指揮下に入れない。
阿波細川家とその譜代だけでなく、三好一門でも余の直臣にする。
三好彦次郎、安宅神太郎、十河孫六郎の弟達も、三好孫四郎を始めとした一門衆も、代々の譜代衆も全て俺の直臣で三好本家の家臣ではない」
「はい、その覚悟はできております。
殿から預かった兵だけで南蛮人を討ち取り南方の領地を切り取る覚悟です」
「良き覚悟だ、何時でも戦船に乗って南方に行けるように準備せよ」
「阿波の国人、三好孫次郎長慶でございます。
この度は降伏臣従を認めて下さり、感謝の言葉もございません」
「同じく阿波の国人、三好彦次郎之虎でございます。
降伏臣従を認めて下さりました事、心から感謝しております」
「淡路の国人、安宅神太郎冬康でございます。
生け捕りになった身なのに、五百貫もの領地を認めて下さった事、心から感謝しております」
「讃岐の国人、十河孫六郎一存でございます。
降伏臣従を認めて下さり、心から感謝しております」
「阿波の国人、三好孫四郎長逸でございます。
一門の末席の身にもかかわらず、五百貫もの領地を認めて下さり、心から感謝しております」
三好家の一族一門が揃って降伏臣従してくれた。
前世から同情していたので、本当に良かった。
できれば皆殺しにはしたくなかったのだ。
降伏するか誇りのために死ぬか、兄弟間で激論があったそうだ。
特に三好長慶と三好之虎が激しく言い争ったそうだ。
最後は、兄二人が争うのも見過ごしては亡父に顔向けできないと言う、安宅冬康と十河一存の言葉に、三好之虎が冷静さを取り戻したそうだ。
嫡男の三好長慶が一番重圧を受けただろうが、兄を支える立場だった三好之虎も、幼くして父を亡くす事がどれだけ大変なのか思い知っている。
自分が誇りのために戦い死んだら、兄弟も責任を問われて殺されるかもしれない。
幼い甥も殺されてしまうかもしれない。
自分の誇りの為に、兄だけならともかく本家の跡取りまで巻き込むかもしれない。
子供だけ許されたとしても、全ての一門衆を失った幼子が苦労する。
苦労するどころか、生きて行ける保証がない。
苦労するのは甥だけではない、一族一門衆全てを巻き込むかもしれないのだ。
弟二人に諫められ、激昂していた心が落ち着き、一族一門の女子供まで皆殺しにさせる訳にはいかないと、冷静になる事で考えられるようになったそうだ。
「良く誇りを抑えて厳しい条件を受け入れて降伏してくれた。
五百貫の領地しか認めないのが、どれほど厳しいかは分かっている。
だが、足利のように家臣に力を与える訳にはいかない。
そんな事をすれば、また乱世になってしまう。
それに、北条相模守にも言ったが、天下を握れるほどの才覚を持つ者に、領地や兵力を与える訳にはいかない。
三好兄弟には天下を握れるだけの才覚がある。
一人だけでも天下を握れる者が四人もそろっているのだ、厳しく接するしかない」
「我ら兄弟を高く評していただき、感激に身が打ち震えています。
臣従したばかりの身で聞くのは失礼だとは思いますが、北条相模守殿に武功を挙げる機会を与えられたと聞きます。
我ら兄弟にも刻を置いた後で与えてくださるのでしょうか?」
「与える、刻を置く事なく与える。
ただし、日乃本の中ではない、唐天竺での話だ」
「唐天竺でございますか?」
「先ほども言ったように、日乃本の乱世を終わらせる事が一番大切だ。
日乃本はこのまま兵を進めれば確実に平定できる。
問題は、天竺の倍以上も遠い南蛮から攻め込んで来ている者共だ。
その話を聞いていたからこそ、俺に降伏したのであろう?」
俺は笑顔を浮かべながら三好長慶に聞いた。
「はい、殿と北条相模守殿の話は噂で聞いていました。
噂が本当なら、例え全ての領地を召し上げられても、武功を挙げて領地を取り戻す機会があると思っていました」
密偵衆を使って全国に噂を広めた甲斐があった。
「俺が譜代の家臣達に言っている事も知っていたのだな?」
「はい、どれほど武功を挙げた譜代衆でも、一国以上は与えないと断言されている事は、噂で知っておりました。
確か、九州を譜代衆に分け与えられるのですね?」
「その通りだ、九州と蝦夷地を武功ある者に与える予定だ。
だがそれでは、これから家臣になる者にはほとんど機会がない。
だから南蛮人が押領した南方の地に攻め込み、その地を褒美に与える気だ。
ただ南方には、独特の疫病がある。
猖獗を極める疫病は、俺の神通力でも払えない。
南蛮人の刃だけでなく、疫病に殺される事もある。
それでも構わないのなら、武功に応じて南方に領地を与える。
日乃本以外で良いのなら、一国までの制限はない。
上野や上総に匹敵する大国であろうと、何カ国でも褒美に与えよう」
「有り難き幸せでございます」
「もう南方の国を褒美でもらった気でいるのか?」
「殿に天下を握れるだけの才覚があると言っていただいているのです。
たとえ相手が天竺の何倍も遠い所から攻め込んで来る強者であろうと、兄弟力を合わせて戦えば、必ず勝てると思っております」
三好長慶の言葉を聞いて、三人の弟達が涙を流さんばかりに感動している。
弟達だけでなく、三好長逸を筆頭とした一門衆も決意を新たにしている。
中には本家や宗家から独立を画策していた者もいるだろうが、俺の言葉と四兄弟の絆に心が動いたのだろう。
「ただし、さっきも言ったが、俺は三好四兄弟を心から警戒している。
無条件に力を与える気はない」
「どのような条件なのでしょうか?」
「三好の下に付きたくないと言う者は指揮下に入れない。
阿波細川家とその譜代だけでなく、三好一門でも余の直臣にする。
三好彦次郎、安宅神太郎、十河孫六郎の弟達も、三好孫四郎を始めとした一門衆も、代々の譜代衆も全て俺の直臣で三好本家の家臣ではない」
「はい、その覚悟はできております。
殿から預かった兵だけで南蛮人を討ち取り南方の領地を切り取る覚悟です」
「良き覚悟だ、何時でも戦船に乗って南方に行けるように準備せよ」
20
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説


劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
武田義信に転生したので、父親の武田信玄に殺されないように、努力してみた。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
アルファポリス第2回歴史時代小説大賞・読者賞受賞作
原因不明だが、武田義信に生まれ変わってしまった。血も涙もない父親、武田信玄に殺されるなんて真平御免、深く静かに天下統一を目指します。

どーも、反逆のオッサンです
わか
ファンタジー
簡単なあらすじ オッサン異世界転移する。 少し詳しいあらすじ 異世界転移したオッサン...能力はスマホ。森の中に転移したオッサンがスマホを駆使して普通の生活に向けひたむきに行動するお話。 この小説は、小説家になろう様、カクヨム様にて同時投稿しております。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる