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第三章:天下統一
第108話:謀略と暗殺
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天文十七年(1549)5月13日:越中富山城:俺視点
諜報衆の働きは俺の予想以上だった。
京に噂を広めて、二条摂関家と一条摂関家と血縁のある者が後継者として名乗り出ないように、両家を継ぐと名乗り出た者の家は祟られるという噂を流した。
祟られるというのが、俺の恨みを買って根切りにされという意味なのは、よほどの馬鹿でない限り分かる。
両摂関家は絶家となる事が決まった。
九条家と鷹司家が、摂関家は三家で十分と言ったからだ。
俺の怒りを買った近衛家も反対しなかった。
大臣に成れる家格なのになかなか成れない、清華家や大臣家は賛成した、
長く病床にあった鷹司家の忠冬が死んだ。
光子姉上は寡婦になったが、子供達がいるから寂しくないと言っていた。
後継者となった甥は大変だが、老齢の祖父、鷹司兼輔が後見している。
これまで富山の大内裏で権力を握っていた九条稙通だが、高齢になってから桃子姉上との間にもうけた子供を跡継ぎにして、後見人となっている。
俺に殺されるのを恐れた近衛稙家が京の朝廷を去ったので、鷹司兼輔が関白に復し、九条稙通が左大臣となって京の朝廷を差配している。
甥達が元服して十分役目が果たせるようになるまで、二人が京の朝廷を主導していくことになった。
二人は富山の大内裏で古式に則った朝廷行事を毎年全て行ってきた。
お金がなくて京の朝廷ではやらなくなった行事を全て行ってきた。
祖先の日記を見なければやれない京の公家や地下家とは経験が違っている。
それに二人だけで京に戻った訳ではない。
富山大内裏で配下としていた、公家と地下家も連れて京に戻った。
だから京に残っていた公家や地下家に頼らなくても朝廷行事ができた。
京に戻った二人が真っ先にやったのが、謀略の後始末だった。
清廉潔白な後奈良天皇には忌み嫌われたが、知った事ではない。
文句があるなら自分の手を血で染めてでも戦国の世を終わらせろ!
俺にために働いてくれるのは公家や地下家だけじゃない。
諜報衆も良く働いてくれている。
諜報衆が特に目立った活躍をしてくれたのは、安芸でだった。
吉川元春と小早川隆景の兄弟で殺し合うように、家臣を殺してくれた。
当人達は警戒しているし、側近も気合を入れて護衛している。
だから、その側近を狙って殺してくれた。
吉川元春と小早川隆景は一人に成らないが、側近の護衛は一人になる。
その時を狙って、吉川元春が信頼している側近を殺してくれた。
吉川元春から諱を貰うほど信頼されていた井上春忠を、小早川隆景から諱を貰うほど信頼されていた生口景守が殺して逃げた、事になっている。
実際には諜報衆が二人とも殺して、生口景守を埋めて隠したのだ。
短気な吉川元春は小早川隆景に詰め寄ったが、毛利元就が止めたそうだ。
流石というべきか、これが俺の謀略だと言って止めたそうだ。
本当に見抜いているのか、兄弟が争わないように俺のせいにしたのか、真実は分からないが、上手く止めた。
だが、諜報衆は一度失敗したからといって諦めるような者達ではない。
一度で駄目なら二度三度、十重二十重の罠を張って目的を達成する者達だ。
その後も吉川元春と小早川隆景が争うように家臣を殺し続けている。
毛利元就は繰り返し俺の罠だと言っているが、徐々に家中の雰囲気が悪くなっているそうだ。
家臣達からすれば、罠だと分かっているなら何とかしろという話だ。
良いように家臣を殺されて、何も手を打てない主君など頼りなくて仕えられない。
安芸の毛利が苦しんでいるのは、諜報衆の家臣殺しだけではない。
毛利元就が陶隆房と組んで主君の大内義隆を殺したと思っている、天野隆重、天野隆綱、野間隆実、平賀弘保らが繰り返し毛利領を襲っている。
彼らを討伐しようとすると、安芸守護代で岩国を支配している弘中隆包や、石見国守護代の問田隆盛が大軍を率いて安芸に攻め込んで来る。
周防の陶隆房は防戦一方なので、毛利元就を助ける余裕がない。
大内家の家臣だった者は、疑心暗鬼になっているので、まとまりがない。
その御陰で毛利家は滅ばずにすんでいる状態だが、徐々に財政が苦しくなり、家臣の忠誠心が低下しているのは間違いない。
尼子晴久は、叔父の尼子国久と新宮党を粛清した後始末に専念していた。
大内に内乱には手出しせず、完全な戦国大名となるために、領内の国人地侍への統制を強めていた。
やるなと思ったのは、尼子国久の娘である正室を殺して側室を迎えた事だ。
跡を継ぐ子供をもうける事と、正室に殺される事を警戒したのだろう。
戦国大名らしい冷酷非情な決断だった。
筑前国守護代の杉興運と豊前守護代の杉重矩は、大友家の攻勢に対抗するのに必死で、周防の陶隆房を攻めるような余裕がなかった。
大内、尼子、毛利に関しては俺の思い通りに動いていた。
誰かが力を伸ばすどころか、消耗して力を弱めている。
尼子は力をつけようとしているが、跡継ぎが生まれなければ何の意味もない。
代替わりの時に内部で争い滅ぶのは目に見えている。
石山本願寺に関しても、予定通り力を奪えている。
十万もの信徒を擁して籠城しているが、援軍もなく補給もできていない。
陸上だけでなく海上も封鎖しているので、備蓄を切り崩して凌いでいる状況だ。
十万もの人間を喰わせる食糧も膨大だが、安全な水の確保にも困っているそうだ。
河口にある中州なので、周囲を水に囲まれているが、完全な真水ではない。
塩分の摂取量が多過ぎると、腎臓を病む確率が高くなる。
いや、腎臓病以上に信徒達が苦しんでいるのが不潔な水による下痢だった。
限られた備蓄品の中で特に量が足りていないのが燃料だった。
安全な食事を作るには煮炊きをしなければいけない。
煮炊きをするための燃料、薪や炭が食糧や水よりも不足しているらしい。
十万もの信徒、石山本願寺内はその糞尿が溢れてしまっている。
石山本願寺を囲む河口に流すのだが、その水で煮炊きをするだけでなく、燃料が足らなくて生水のまま飲んでしまう。
衛生管理が杜撰なので、大腸菌などがついた手で料理を食べてしまう。
その影響で石山本願寺内では疫病が広まっているそうだ。
「殿、豊後の大猿源助から鳩が届きました」
伝書鳩係の側近が手紙を渡して来た。
『八郎と塩市丸の暗殺に成功』
諜報衆の働きは俺の予想以上だった。
京に噂を広めて、二条摂関家と一条摂関家と血縁のある者が後継者として名乗り出ないように、両家を継ぐと名乗り出た者の家は祟られるという噂を流した。
祟られるというのが、俺の恨みを買って根切りにされという意味なのは、よほどの馬鹿でない限り分かる。
両摂関家は絶家となる事が決まった。
九条家と鷹司家が、摂関家は三家で十分と言ったからだ。
俺の怒りを買った近衛家も反対しなかった。
大臣に成れる家格なのになかなか成れない、清華家や大臣家は賛成した、
長く病床にあった鷹司家の忠冬が死んだ。
光子姉上は寡婦になったが、子供達がいるから寂しくないと言っていた。
後継者となった甥は大変だが、老齢の祖父、鷹司兼輔が後見している。
これまで富山の大内裏で権力を握っていた九条稙通だが、高齢になってから桃子姉上との間にもうけた子供を跡継ぎにして、後見人となっている。
俺に殺されるのを恐れた近衛稙家が京の朝廷を去ったので、鷹司兼輔が関白に復し、九条稙通が左大臣となって京の朝廷を差配している。
甥達が元服して十分役目が果たせるようになるまで、二人が京の朝廷を主導していくことになった。
二人は富山の大内裏で古式に則った朝廷行事を毎年全て行ってきた。
お金がなくて京の朝廷ではやらなくなった行事を全て行ってきた。
祖先の日記を見なければやれない京の公家や地下家とは経験が違っている。
それに二人だけで京に戻った訳ではない。
富山大内裏で配下としていた、公家と地下家も連れて京に戻った。
だから京に残っていた公家や地下家に頼らなくても朝廷行事ができた。
京に戻った二人が真っ先にやったのが、謀略の後始末だった。
清廉潔白な後奈良天皇には忌み嫌われたが、知った事ではない。
文句があるなら自分の手を血で染めてでも戦国の世を終わらせろ!
俺にために働いてくれるのは公家や地下家だけじゃない。
諜報衆も良く働いてくれている。
諜報衆が特に目立った活躍をしてくれたのは、安芸でだった。
吉川元春と小早川隆景の兄弟で殺し合うように、家臣を殺してくれた。
当人達は警戒しているし、側近も気合を入れて護衛している。
だから、その側近を狙って殺してくれた。
吉川元春と小早川隆景は一人に成らないが、側近の護衛は一人になる。
その時を狙って、吉川元春が信頼している側近を殺してくれた。
吉川元春から諱を貰うほど信頼されていた井上春忠を、小早川隆景から諱を貰うほど信頼されていた生口景守が殺して逃げた、事になっている。
実際には諜報衆が二人とも殺して、生口景守を埋めて隠したのだ。
短気な吉川元春は小早川隆景に詰め寄ったが、毛利元就が止めたそうだ。
流石というべきか、これが俺の謀略だと言って止めたそうだ。
本当に見抜いているのか、兄弟が争わないように俺のせいにしたのか、真実は分からないが、上手く止めた。
だが、諜報衆は一度失敗したからといって諦めるような者達ではない。
一度で駄目なら二度三度、十重二十重の罠を張って目的を達成する者達だ。
その後も吉川元春と小早川隆景が争うように家臣を殺し続けている。
毛利元就は繰り返し俺の罠だと言っているが、徐々に家中の雰囲気が悪くなっているそうだ。
家臣達からすれば、罠だと分かっているなら何とかしろという話だ。
良いように家臣を殺されて、何も手を打てない主君など頼りなくて仕えられない。
安芸の毛利が苦しんでいるのは、諜報衆の家臣殺しだけではない。
毛利元就が陶隆房と組んで主君の大内義隆を殺したと思っている、天野隆重、天野隆綱、野間隆実、平賀弘保らが繰り返し毛利領を襲っている。
彼らを討伐しようとすると、安芸守護代で岩国を支配している弘中隆包や、石見国守護代の問田隆盛が大軍を率いて安芸に攻め込んで来る。
周防の陶隆房は防戦一方なので、毛利元就を助ける余裕がない。
大内家の家臣だった者は、疑心暗鬼になっているので、まとまりがない。
その御陰で毛利家は滅ばずにすんでいる状態だが、徐々に財政が苦しくなり、家臣の忠誠心が低下しているのは間違いない。
尼子晴久は、叔父の尼子国久と新宮党を粛清した後始末に専念していた。
大内に内乱には手出しせず、完全な戦国大名となるために、領内の国人地侍への統制を強めていた。
やるなと思ったのは、尼子国久の娘である正室を殺して側室を迎えた事だ。
跡を継ぐ子供をもうける事と、正室に殺される事を警戒したのだろう。
戦国大名らしい冷酷非情な決断だった。
筑前国守護代の杉興運と豊前守護代の杉重矩は、大友家の攻勢に対抗するのに必死で、周防の陶隆房を攻めるような余裕がなかった。
大内、尼子、毛利に関しては俺の思い通りに動いていた。
誰かが力を伸ばすどころか、消耗して力を弱めている。
尼子は力をつけようとしているが、跡継ぎが生まれなければ何の意味もない。
代替わりの時に内部で争い滅ぶのは目に見えている。
石山本願寺に関しても、予定通り力を奪えている。
十万もの信徒を擁して籠城しているが、援軍もなく補給もできていない。
陸上だけでなく海上も封鎖しているので、備蓄を切り崩して凌いでいる状況だ。
十万もの人間を喰わせる食糧も膨大だが、安全な水の確保にも困っているそうだ。
河口にある中州なので、周囲を水に囲まれているが、完全な真水ではない。
塩分の摂取量が多過ぎると、腎臓を病む確率が高くなる。
いや、腎臓病以上に信徒達が苦しんでいるのが不潔な水による下痢だった。
限られた備蓄品の中で特に量が足りていないのが燃料だった。
安全な食事を作るには煮炊きをしなければいけない。
煮炊きをするための燃料、薪や炭が食糧や水よりも不足しているらしい。
十万もの信徒、石山本願寺内はその糞尿が溢れてしまっている。
石山本願寺を囲む河口に流すのだが、その水で煮炊きをするだけでなく、燃料が足らなくて生水のまま飲んでしまう。
衛生管理が杜撰なので、大腸菌などがついた手で料理を食べてしまう。
その影響で石山本願寺内では疫病が広まっているそうだ。
「殿、豊後の大猿源助から鳩が届きました」
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