37 / 53
第1章
第29話:捕虜と脅迫状
しおりを挟む
ガニラス王国歴二七三年五月三〇日
ミノル・タナカ城
田中実視点
ルイジャイアンと捕虜の扱いを話してから二時間ほど後で、疫病神に御願いして敵の疫病を終わらせて頂いた。
ただ、終わらせる前に最後の止めを刺した。
水と雨雪を司る淤加美神に御願いして、豪雨を降らせて頂いた。
敵は痛覚が異常に敏感になっている状態で、豪雨に叩かれ続けるのだ。
その苦痛は想像を絶するものがあり、精も根も尽き果てる状態になっていた。
何より、下痢と嘔吐の汚れを洗い流してもらえたのが大きい。
糞尿まみれになって連中に近づくのも嫌だったから、もの凄く助かった。
鎧の上から全てを洗い流すほどの豪雨を降らせてくださった、淤加美神には心から御礼を言って感謝を捧げた。
抵抗する気力を失った敵を城内に入れるのには、人力が必要だった。
俺の魔術を使って運ぶのではなく、ルイジャイアンの家臣が運ぶ事で、敵にルイジャイアンの捕虜になった事を自覚させた。
特に思い知らせたかったのは、宮中伯が代理に寄こした宮中騎士とパラスケボプロス侯爵軍の指揮官とアドリア・アンドリュー騎士だ。
ルイジャイアンの家臣が五十人ずつ捕虜を担いでくる毎に、城壁内側の四階横穴に放りこみ、材木と土で創った扉で蓋をした。
アニメやラノベの幽閉室に有るような、食事を差し入れる小さな口と、捕虜がいる事を確認する小さな口の有る、頑丈な木製の扉で蓋をする。
木々を司る久久能智神と五十猛神、木工を司る彦狭知命と手置帆負神に御願いして、魔境の木々を圧縮強化合板にしていただき、横引の扉にしてもらった。
更に扉の表面に厚みのある神像彫刻を刻んでもらい、壁画よりは多く、立体的な神像よりは少ない、神通力を留めてもらった。
この世界の神から百度の祝福を頂いた者が、最強の攻撃魔術を放とうと、強化された身体で死力を尽くしたとしても、破壊する事にできない強固な扉だ。
全員を牢屋にした横穴に放り込み、体力を回復させるための麦粥を作って与え、三時間ほど休ませてから、ルイジャイアンが尋問を始めた。
「アドリア、お前がウソを言って宮中伯と侯爵を利用したのか?
それとも、宮中伯と侯爵がお前を利用して俺の村を奪おうとしたのか?
正直に言わないと、もう一度あの地獄の味合う事になる。
お前だけでなく、村に残っている家族も、あの地獄の苦痛を味合う事になる」
「……最初は、俺の野心でお前の村を手に入れる心算だった。
だが、この巨大な城があるのが分かって、アポストリディス宮中伯とパラスケボプロス侯爵が城を欲しがった。
この城があれば、魔境に独立王国を築く事も可能だ。
独立しなくても、この城を拠点にすれば、王国内の誰にも負けない。
その力を背景に、王国の政治を牛耳ろうとしたのだ。
俺もおこぼれで子爵にしてもらうはずだった……それが、なんなんだ!
あの力は何なんだ、どの神様に祝福されたらあんなことができるんだ!
ギャッフ」
アドリアは尋問の途中で激高して暴れ出そうとしたが、そんな体力はなかった。
ルイジャイアンに軽く殴られただけで昏倒してしまった。
ルイジャイアンは、家臣に命じてアドリアを元の牢屋に放り込んだ。
介抱は同じ牢屋にいるアドリアの家臣がやるだろう。
「アドリア・アンドリューが全て白状した、お前も正直に白状しろ。
アポストリディス宮中伯が、私利私欲で王国の政治を私したのだな。
嘘偽りを口にしたら、さっきの生き地獄をもう一度味わう事になるぞ!」
ルイジャイアンは宮中騎士にも激しい尋問を行った。
騎士とは言っても内政が専門の役人だ。
地方の領主舐められないように騎士の地位に就いているだけの文官だ。
そんな文官に、武闘派のルイジャイアンと争う力も根性もない。
前日と午前中の交渉で居丈高だったのは、王家の威を借りていたからできた事だ。
相手が王家の威光も恐れない武闘派だと分かれば、逆に平身低頭な態度になる。
まして二時間前に生き地獄のような激痛に苛まれたばかりだ。
もう一度あの激痛を与えると言われれば、嘘などつけない。
いや、嘘をついてでも激痛から逃れようとする、誇りも根性もない腐れ外道だ。
「アポストリディス宮中伯が悪いのです、私の地位では逆らえないのです。
辺境伯はパラスケボプロス侯爵と手を組んで、何の罪もないルイジャイアン・パッタージ殿から城と領地を奪おうとしたのです。
全部アポストリディス宮中伯とパラスケボプロス侯爵が悪いのです」
「それを国王陛下にも奏上できるか?
国王陛下に、アポストリディス宮中伯とパラスケボプロス侯爵の罪状を書いた告発状を奏上できるか?
できるなら、この城で騎士待遇の生活を保障する。
王都王城に戻ったら殺さるだろう、この城で守ってやる。
ただし、裏切らないように、神々の刻印を身体に刻む。
俺達を裏切ったら、あの激痛に襲われる刻印を刻む。
まあ、告発状を書かなければ、今直ぐあの痛みに苦しむ事になるがな」
「書きます、書きます、喜んで書かせていただきます。
ですから、もうあれだけは許してください。
もう一度あの痛みを味合うくらいなら、死んだ方がましです!」
「だったら今直ぐこの紙に告発文を書け」
宮中騎士は、告発文を書かせてから客室に案内した。
客室とは言っても、城壁内側にある横穴なのは牢屋と同じだ。
違うのは、四階から七階になり、雑居房だったのが個室になった事だ。
それに、個室と呼べるくらいには調度品が整っている。
城の警備をしてくれているルイジャイアンの家臣が過ごしやすいように、最低限の家具が揃っている。
「最後は侯爵軍の指揮官だ、連れて来い」
ルイジャイアンが家臣に命じた。
ミノル・タナカ城
田中実視点
ルイジャイアンと捕虜の扱いを話してから二時間ほど後で、疫病神に御願いして敵の疫病を終わらせて頂いた。
ただ、終わらせる前に最後の止めを刺した。
水と雨雪を司る淤加美神に御願いして、豪雨を降らせて頂いた。
敵は痛覚が異常に敏感になっている状態で、豪雨に叩かれ続けるのだ。
その苦痛は想像を絶するものがあり、精も根も尽き果てる状態になっていた。
何より、下痢と嘔吐の汚れを洗い流してもらえたのが大きい。
糞尿まみれになって連中に近づくのも嫌だったから、もの凄く助かった。
鎧の上から全てを洗い流すほどの豪雨を降らせてくださった、淤加美神には心から御礼を言って感謝を捧げた。
抵抗する気力を失った敵を城内に入れるのには、人力が必要だった。
俺の魔術を使って運ぶのではなく、ルイジャイアンの家臣が運ぶ事で、敵にルイジャイアンの捕虜になった事を自覚させた。
特に思い知らせたかったのは、宮中伯が代理に寄こした宮中騎士とパラスケボプロス侯爵軍の指揮官とアドリア・アンドリュー騎士だ。
ルイジャイアンの家臣が五十人ずつ捕虜を担いでくる毎に、城壁内側の四階横穴に放りこみ、材木と土で創った扉で蓋をした。
アニメやラノベの幽閉室に有るような、食事を差し入れる小さな口と、捕虜がいる事を確認する小さな口の有る、頑丈な木製の扉で蓋をする。
木々を司る久久能智神と五十猛神、木工を司る彦狭知命と手置帆負神に御願いして、魔境の木々を圧縮強化合板にしていただき、横引の扉にしてもらった。
更に扉の表面に厚みのある神像彫刻を刻んでもらい、壁画よりは多く、立体的な神像よりは少ない、神通力を留めてもらった。
この世界の神から百度の祝福を頂いた者が、最強の攻撃魔術を放とうと、強化された身体で死力を尽くしたとしても、破壊する事にできない強固な扉だ。
全員を牢屋にした横穴に放り込み、体力を回復させるための麦粥を作って与え、三時間ほど休ませてから、ルイジャイアンが尋問を始めた。
「アドリア、お前がウソを言って宮中伯と侯爵を利用したのか?
それとも、宮中伯と侯爵がお前を利用して俺の村を奪おうとしたのか?
正直に言わないと、もう一度あの地獄の味合う事になる。
お前だけでなく、村に残っている家族も、あの地獄の苦痛を味合う事になる」
「……最初は、俺の野心でお前の村を手に入れる心算だった。
だが、この巨大な城があるのが分かって、アポストリディス宮中伯とパラスケボプロス侯爵が城を欲しがった。
この城があれば、魔境に独立王国を築く事も可能だ。
独立しなくても、この城を拠点にすれば、王国内の誰にも負けない。
その力を背景に、王国の政治を牛耳ろうとしたのだ。
俺もおこぼれで子爵にしてもらうはずだった……それが、なんなんだ!
あの力は何なんだ、どの神様に祝福されたらあんなことができるんだ!
ギャッフ」
アドリアは尋問の途中で激高して暴れ出そうとしたが、そんな体力はなかった。
ルイジャイアンに軽く殴られただけで昏倒してしまった。
ルイジャイアンは、家臣に命じてアドリアを元の牢屋に放り込んだ。
介抱は同じ牢屋にいるアドリアの家臣がやるだろう。
「アドリア・アンドリューが全て白状した、お前も正直に白状しろ。
アポストリディス宮中伯が、私利私欲で王国の政治を私したのだな。
嘘偽りを口にしたら、さっきの生き地獄をもう一度味わう事になるぞ!」
ルイジャイアンは宮中騎士にも激しい尋問を行った。
騎士とは言っても内政が専門の役人だ。
地方の領主舐められないように騎士の地位に就いているだけの文官だ。
そんな文官に、武闘派のルイジャイアンと争う力も根性もない。
前日と午前中の交渉で居丈高だったのは、王家の威を借りていたからできた事だ。
相手が王家の威光も恐れない武闘派だと分かれば、逆に平身低頭な態度になる。
まして二時間前に生き地獄のような激痛に苛まれたばかりだ。
もう一度あの激痛を与えると言われれば、嘘などつけない。
いや、嘘をついてでも激痛から逃れようとする、誇りも根性もない腐れ外道だ。
「アポストリディス宮中伯が悪いのです、私の地位では逆らえないのです。
辺境伯はパラスケボプロス侯爵と手を組んで、何の罪もないルイジャイアン・パッタージ殿から城と領地を奪おうとしたのです。
全部アポストリディス宮中伯とパラスケボプロス侯爵が悪いのです」
「それを国王陛下にも奏上できるか?
国王陛下に、アポストリディス宮中伯とパラスケボプロス侯爵の罪状を書いた告発状を奏上できるか?
できるなら、この城で騎士待遇の生活を保障する。
王都王城に戻ったら殺さるだろう、この城で守ってやる。
ただし、裏切らないように、神々の刻印を身体に刻む。
俺達を裏切ったら、あの激痛に襲われる刻印を刻む。
まあ、告発状を書かなければ、今直ぐあの痛みに苦しむ事になるがな」
「書きます、書きます、喜んで書かせていただきます。
ですから、もうあれだけは許してください。
もう一度あの痛みを味合うくらいなら、死んだ方がましです!」
「だったら今直ぐこの紙に告発文を書け」
宮中騎士は、告発文を書かせてから客室に案内した。
客室とは言っても、城壁内側にある横穴なのは牢屋と同じだ。
違うのは、四階から七階になり、雑居房だったのが個室になった事だ。
それに、個室と呼べるくらいには調度品が整っている。
城の警備をしてくれているルイジャイアンの家臣が過ごしやすいように、最低限の家具が揃っている。
「最後は侯爵軍の指揮官だ、連れて来い」
ルイジャイアンが家臣に命じた。
21
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-
ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。
断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。
彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。
通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。
お惣菜お安いですよ?いかがです?
物語はまったり、のんびりと進みます。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~
みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】
事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。
神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。
作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。
「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。
※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる