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第1章

第26話:地下街道と大貴族の侵攻

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 ガニラス王国歴二七三年五月二九日
 ミノル・タナカ城の周囲にある魔境
 田中実視点

 地上の街道創りも面白かったが、地下道創りも意外と面白かった。
 見晴らしは悪いが、暗闇の恐怖に不安に打ち勝つと達成感がる。

 地上とは違う困難も多く、その分色々と考えて工夫しなければいけないので、それが面白かった。

 最初にぶつかった問題が、地下の明かり問題だった。
 アニメやラノベでよく使われる解決策は、光魔術とヒカリゴケだった。

 だがこの世界では、人間は光の神々に嫌われているから光る魔術がない。
 次のヒカリゴケだが、暗闇で十分な光を放つ苔や植物は存在しなかった。

 かがり火を使うと地下街道の酸素がなくなってしまう。
 少しだけ考えたが、全部神様に丸投げすればいいと割り切った。
 だから、地上の街道や城を創る時に根返りさせた木々を回収した。

「遠く大八島国にて地上世界を成り立たせる国之常立神よ
 国常立尊、国底立尊、国常立尊、国狭立尊、国狭槌尊、葉木国尊よ。
 多くの意味名を持ち空間を司る国之常立神よ。
 御身を慕う者に力を御貸し下さい。
 どうか多くの物の時を止めて保管する力を授けてください。
 根返りさせた木々を保管させてください。
 神像を創るのに必要な木々を保管させてください。
 神々が神像創りに使いたいと思われる木々を保管させてください。
 御身を敬い信じる者の願いを御聞き届けください、無限袋」

 俺は木々を無限袋に入れて地下街道の入り口に向かった。

「遠く大八島国にて地上世界を成り立たせる国之常立神よ
 国常立尊、国底立尊、国常立尊、国狭立尊、国狭槌尊、葉木国尊よ。
 多くの意味名を持ち空間を司る国之常立神よ。
 御身を慕う者に力を御貸し下さい。
 保管してくださった数多くの物の内、木々だけ出してください。
 神像を創るのに必要な木々だけ出してください。
 神々が望まれる木々だけを出してください。
 無限袋から出す時に、地下街道にきれいに並べてください。
 御身を敬い信じる者の願いを御聞き届けください、取り出し」

 神々の御力で創る事ができた地下街道に大木と巨木が並ぶ。
 縄文杉や大王杉よりも小さな木は一本もない。
 丁度地下道に入る太さと曲がりの木々が並んでいるのが、妙に可笑しい。

「遠く大八島国に暮らされている全ての神々に希い願い奉る。
 遠く蝦夷地に暮らされている全ての神々に希い奉る。
 特に石を司る石土毘古神と石巣比売神に希い奉る。
 木を司る久久能智神と五十猛神に希い奉る。
 粘土と埴輪を司る波邇夜須毘古神に希い奉る。
 鉱山を司る金山彦神と金山毘売神に希い奉る。
 製鉄と鍛冶を司る天目一箇神に希い奉る。
 鋳物と金属加工を司る神伊斯許理度売命に希い奉る。
 勾玉を司る玉祖命に希い奉る。
 鍛冶と鋳造を司る天之御影命に希い奉る。
 御身を慕う者に力を御貸し下さい。
 御身を慕う者に神像を創らせたまえ。
 木像、石像、埴輪像、砂像、銅像、乾漆像、鉄筋コンクリート像など、考えられる全ての材料で神像を創らせたまえ。
 大八島国と蝦夷地に暮らしておられる全ての神々が望まれる、ありとあらゆる神像を、御身を慕う者に創らせたまえ。
 御身らに加えて、志那都比古神、国之常立神、建御雷之男神、淤加美神、天迦久神、大山津見神、ニドムカムイ、天御中主神、高皇産霊神、神皇産霊神、伊邪那岐神、伊邪那美神、大物主神、猿田毘古神、道祖神、石土毘古神、石巣比売神、久久能智神、五十猛神、波邇夜須毘古神、金山彦神、金山毘売神、天目一箇神、鋳神伊斯許理度売命、玉祖命、天之御影命、瓊瓊杵尊、大地主神、産土大神の望まれる神像を創らせたまえ。
 御身を敬い信じる者の願いを御聞き届けください、守護神像」

 一度完成したと思っていた地下街道の側面が削られていく。
 崩落しないようにしているのか、間隔を空けた一列に並ぶ守護神像群だ。

 立体的な神像の間にある壁面には、神々の壁画が描かれている。
 いや、壁面だけではない、天上一面にも神々の壁画が描かれている。

 立ち並ぶ立体的な神像は、神々の好みによって違っている。
 木像、石像、埴輪像、砂像、銅像、乾漆像、鉄筋コンクリート像など多彩だが、一番多いのが、外から持ち込んだ木々を材料にした木像なのが不思議だ。

「遠く大八島国に暮らされている全ての神々に希い奉る。
 遠く蝦夷地に暮らされている全ての神々に希い奉る。
 特にこれまで御力を御貸し下さった神々に希い奉る。
 風を司る志那都比古神、地上世界を成り立たせる国之常立神、雷と剣と相撲を司る建御雷之男神、水と雨雪を司る淤加美神、矢よりも速く駆ける天迦久神、山と森を司る大山津見神、森を司るニドムカムイ、天地宇宙創造の神である天御中主神、男女産霊の神で生成力を持たれる神でもある高皇産霊神、生成力を我々人間の形とした御祖神である神皇産霊神、国生みと神生みの男神である伊邪那岐神、天津神の命により創造活動の殆どを司り冥界も司る女神である伊邪那美神、五穀豊穣と厄除けと国の守護神である大物主神、道を司る猿田毘古神、村を守り子孫を繁栄させ旅の安全を守る道祖神、石を司る石土毘古神と石巣比売神、木を司る久久能智神と五十猛神、粘土と埴輪を司る波邇夜須毘古神、鉱山を司る金山彦神と金山毘売神、製鉄と鍛冶を司る天目一箇神、鋳物と金属加工を司る神伊斯許理度売命、勾玉を司る玉祖命、鍛冶と鋳造を司る天之御影命。
 御身を慕う者に力を御貸し下さい。
 御身の形代、神像に力を止まらせてください。
 善良な者を守り、悪しき者を罰する力をこの世界に止まらせてください。
 御身を敬い信じる者の願いを御聞き届けください、守護結界」

 神々は欲深な俺に願いを快く聞き届けて下さった。
 神像と壁画が適度に光り輝き、地下街道内を明るく照らしている。

 立体的な神像の奥から新鮮な空気が優しく吹き出している。
 地上につながる空気取り入れ縦穴からの空気と、神通力で二酸化炭素を酸素に変えた空気の、二種が吹き出している。

 たったこれだけの事と言ったら不敬だが、そう思ってしまうくらい簡単に神々の御力を地上に留めおけたのに、たくさん祝福された。

 一度地下街道を創るだけで十回も祝福される。
 神像を創るだけで十回も祝福される。
 神々の御力を地上に留めるだけで十回も祝福される。

 一日中魔獣やドラゴンを斃しても一度も祝福されないのに、地下道と神像を創り神通力を御貸しいただくだけで、合計三十回も祝福されるのだ。
 つい不敬な事を思ってしまうのもしかたがない。

 不老不死の為のダンジョンアタックが安全確実にできるように、地下道創りで福福上げする事に熱中してしまった。

 余りにも熱中してしまって、ルイジャイアンの館で朝食と夕食を食べる時以外は、睡眠時間も削って地下街道を創っていた。

 初日にエマヌイユ・ディアマンティス街を遥かに越える地下街道を創った。
 王都や主要なダンジョン都市に地下街道で行けるように、地下街道を伸ばした。
 直通だけでなく、主要ダンジョン都市を繋ぐ環状地下街道も創った。

 余りにも熱中していたので、祝福が軽く千回を越えていた。
 ルイジャイアンとアドリアが敵対している事も忘れていた。
 だが、地下街道を創り始めて二十日後に、愚か者が現れた。

「ミノル、アドリアが援軍を連れて来やがった。
 王国で宮中伯を務めるアポストリディス卿に、俺が勝手に街道を封鎖していると訴え、有力な騎士団を持つパラスケボプロス侯爵を味方に加えやがった」

「攻め込んで来ると言うなら遠慮なく皆殺しにするが、何か問題はあるか?」
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