死にたくない、若返りたい、人生やり直したい、還暦親父の異世界チート無双冒険譚

克全

文字の大きさ
15 / 53
第1章

第7話:アンデット

しおりを挟む
 ガニラス王国歴二七三年五月五日
 ルイジャイアン・パッタージ騎士領
 田中実視点

 俺達は急いで鐘がならされている防壁長屋の方に向かった。
 パッタージ騎士家の人達は、今回は俺を案内する義務がないので、とんでもない速さで行ってしまった。

 俺が老人だから遅れるのではなく、神の祝福による体力差だろう。
 異世界に転移できる場所を探しあてるまでに、随分と色んな場所に行った。

 神隠しや天狗隠しの伝承がある場所は、基本的に人里から離れた場所にある。
 何度も荷物を持って山頂などに登っていたので、自分の体力は分かっている。
 還暦前にふさわしい体力しかなかったのに、驚くほど速く走れている。

 領主一族の足元にも及ばないが、自分としては感動に打ち震えるほど速い。
 ヴィオレッタの話では、五回は祝福を受けるくらいの狼を殺しているそうだ。

「どのような状況なのですか?」

 自分では十分満足できる速さで防壁長屋の上に来られたが、領主一族よりは遅れてしまっていたので、ルイジャイアンに状況を教えてもらう事にした。

「最悪だ、アンデットが襲って来た」

「アンデットというのは、死んだモノが蘇ったモンスターですか?」

「そうだ、普通は骨まで喰われるからアンデットにはならない。
 アンデットが発生するのは、ネクロマンサーが意識的に創った場合が多い。
 次に多いのが、火葬して骨を砕くという常識を守らない奴がいた場合だ」

 うっわ、アンデットが発生する世界では、葬り方の常識が怖い!
 だが、確かに、土葬した家族がゾンビになって襲ってきたら嫌だよな。
 焼いただけだとスケルトンになってしまうから、骨を砕くしかないか……

「今回は、滅多にない事だが、最悪の状態だ」

「何がどう最悪なのですか?」

「さっきも言ったが、魔境で死んだモノは骨まで喰われるのが普通だ」

「今そう言われていましたね」

「魔境で食べられずにアンデットになるモノは、どんなモノだと思う?」

「皮がとんでもなく硬くて食べられない魔獣。
 皮や肉は食べられたけれど、骨が硬すぎて食べられなかった魔獣。
 皮や肉に強い毒があって食べられなかった魔獣。
 あまりにも巨大すぎて、食べ切られる前にアンデットになるような魔獣。
 パッと思いつくのはそれくらいですが……」

「ミノル殿が思いついた魔獣がアンデットとなって襲って来たのだ。
 魔境の魔獣でも食べられないような連中を、何とかして撃退しなければならん」

「この世界には、アンデットを斃す魔術はないのですか?」

「以前は有ったそうなのだが、今は使えなくなった」

「この世界は、神々の加護を得られるから魔術が使えるのですね?」

「……そうだ」

「もしかして、光の神と癒しの神が人族を見捨てられたのですか?」

「はっきりとした事は分からないが、その可能性は高い」

「この世界には数多くの神がおられて、同じ効果の魔術でも、加護を与えて下さる神々によって威力が違うのですね?」

「神々の祝福の多さによる違いも大きいが、その考えで間違っていない」

「それでは、光を司る神様たちと癒しを司る神様たち、その全員から人族が見捨てられた事になりますが?」

「認めたくないが、その通りだ」

 この世界、結構とんでもないことになっている。

「ないモノはしかたありません、他に撃退する方法はあるのですか?」

「アンデットは陽の光に弱い。
 強大なアンデットを滅するのは時間がかかるが、耐え忍べば何とかなる」

「あんな強大なアンデットを防げるのですか?」

 動きは早くないが、とんでもなく巨大なモノが近づいてくる。
 老眼と近眼なので、眼鏡と双眼鏡を使ってようやく見ているが、でかすぎる!

 アフリカゾウを二回りも三回りも大きくしたような猪が近づいてくる。
 あんな巨大な猪に突撃されたら、木製の防壁など紙のように破られるぞ!

 それだけでも時間稼ぎが不可能に思えるのに、猪と同じくらい巨大な熊までいる。
 ヒグマやホッキョクグマでも五百キロくらいだぞ! 
 象より三回りも大きいなら、十トンはあるぞ!

「馬に乗れる者は我に続け!」

「「「「「おう!」」」」」

 命懸けの決意が伝わってくるルイジャイアンが命じ、周りの兵士が答える。
 決死の突撃をする気なのは聞かなくても分かる、分かるが、聞かずにはおれない。

「ちょっと待ってくれ、何をする気だ?」

「見たらわかるだろう?!
 アンデットを挑発して村とは違う方向に誘導するのだ!」

「ちょっとだけ待ってくれ、試したい事がある!」

「別世界の客人の言葉でも聞けない事はある。
 試したい事があるなら好きに試してくれ。
 私は領主としてなすべき事をやる!」

 ルイジャイアンはそう言うと防壁長屋から下りて行った。
 急いでやらないと、出さなくてもいい死傷者を出す事になってしまう。

「遠く黄泉国にて死者を統べる黄泉津大神よ
 ここに御身の支配から逃れた者がいます。
 どうかお迎えください。
 御身を敬い信じる者の願いを御聞き届けください、魂送」

 とっさの事で、日本の神で光や癒しを司る方を思い浮かべられなかった。
 焦っていたからだが、ちょっと恥ずかしい。
 だが、その代わりに思い浮かべた神は、我ながらタイムリーだと思う。

 アンデットが、天国にも地獄にも行けない魂が操るモンスターなら、この世界の天国でも地獄でもない、日本の黄泉国に送ってやればいい。

 これで効果がなければ……そうだ、天照大御神なら光を司っている。
 癒しの神は……少彦名大神、大己貴大神、足手荒神だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...