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第二章

第13話:平穏

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「聖女様、大きな鹿が狩れたよ」

 孤児の一人が獲物が狩れたことを嬉しそうに伝えにくる。 
 毎日獣が狩れるようになって、毎日お腹一杯肉が食べられるようになっているのに、それでも肉が食べられる事の喜びが減らない。
 いえ、一日三度の食事ができる事を、とても喜んでくれてる。
 食べられる喜びは、飢餓を経験した者からはそう簡単に失われないのでしょう。

 私が公国を建国した事で、辺境だった場所が首都部となりました。
 首都と呼ばず首都部と呼ぶのは、首都と呼ぶべき城や都市がないからです。
 多くの難民が集まり、人数の多い村はありますが、とても都市と呼べるようにモノではなく、切り倒した材木で組み立てた家しかありません。
 石造りの建物など、貧乏神殿の僅かな部分だけです。

 この貧乏な国でも、民は幸せに暮らしています。
 いえ、むしろ以前よりも豊かで安心な生活を手に入れています。
 王侯貴族がいなくなったことで、ほとんど税がいらないのです。
 わずかに支払うことになっているのが、聖女である私への寄進です。
 今までのように、収穫の七割八割を無理矢理奪うような事はありません。
 飢饉に備えて、一割を義倉に納めるだけです。

「ねえ、早く一緒に解体しようよ、作りたてのソーセージが一番美味しいんだよ」

 孤児達が続々と集まってきます。
 最近とみに私に近づくようになってきましたが、少々心配です。
 私の周りには見えない魔獣がたくさんいるので、彼らが孤児達を邪魔に思い、襲い傷つけないかと心配になってしまうのです。
 今のところは何の問題もありませんが、魔獣の機嫌など私にも分かりません。

「分かったわ、直ぐに用意しますから、先に行っていてください」

 私にできる事は、機嫌よくうれしそうにするくらいです。
 私が孤児達の誘いに喜んでいる姿を見せておけば、魔獣達が孤児達を無差別に襲う可能性は低くなります。
 私が少しでも嫌そうにしてしまうと、魔獣達が孤児達に敵意を向けるかもしれませんから、常に笑顔を絶やさずに機嫌よくしなけければいけません。

「聖女様、わざわざお運びありがとうございます。
 聖女様の使徒のお陰で子供達が飢えずにすんでおります。
 どうかこれからも宜しくお願い致します」

 神殿長がまるでしもべのような態度で接してくれます。
 最初は戸惑いましたが、最近ようやく慣れてきました。
 私が公国の建国を宣言した事で、公王として接してくれているのでしょう。
 流石に元将軍だっただけの事はあります。
 それに、私が孤児や小作人のために、魔獣を使って狩りをして食糧を確保している事を、心から感謝しているのですよう。

「神殿長、そろそろ軍隊が必要になると思うのですが、どう思いますか?」

 私は最近悩んでいたことを思い切って口にしました。
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