13 / 21
第二章
第13話:平穏
しおりを挟む
「聖女様、大きな鹿が狩れたよ」
孤児の一人が獲物が狩れたことを嬉しそうに伝えにくる。
毎日獣が狩れるようになって、毎日お腹一杯肉が食べられるようになっているのに、それでも肉が食べられる事の喜びが減らない。
いえ、一日三度の食事ができる事を、とても喜んでくれてる。
食べられる喜びは、飢餓を経験した者からはそう簡単に失われないのでしょう。
私が公国を建国した事で、辺境だった場所が首都部となりました。
首都と呼ばず首都部と呼ぶのは、首都と呼ぶべき城や都市がないからです。
多くの難民が集まり、人数の多い村はありますが、とても都市と呼べるようにモノではなく、切り倒した材木で組み立てた家しかありません。
石造りの建物など、貧乏神殿の僅かな部分だけです。
この貧乏な国でも、民は幸せに暮らしています。
いえ、むしろ以前よりも豊かで安心な生活を手に入れています。
王侯貴族がいなくなったことで、ほとんど税がいらないのです。
わずかに支払うことになっているのが、聖女である私への寄進です。
今までのように、収穫の七割八割を無理矢理奪うような事はありません。
飢饉に備えて、一割を義倉に納めるだけです。
「ねえ、早く一緒に解体しようよ、作りたてのソーセージが一番美味しいんだよ」
孤児達が続々と集まってきます。
最近とみに私に近づくようになってきましたが、少々心配です。
私の周りには見えない魔獣がたくさんいるので、彼らが孤児達を邪魔に思い、襲い傷つけないかと心配になってしまうのです。
今のところは何の問題もありませんが、魔獣の機嫌など私にも分かりません。
「分かったわ、直ぐに用意しますから、先に行っていてください」
私にできる事は、機嫌よくうれしそうにするくらいです。
私が孤児達の誘いに喜んでいる姿を見せておけば、魔獣達が孤児達を無差別に襲う可能性は低くなります。
私が少しでも嫌そうにしてしまうと、魔獣達が孤児達に敵意を向けるかもしれませんから、常に笑顔を絶やさずに機嫌よくしなけければいけません。
「聖女様、わざわざお運びありがとうございます。
聖女様の使徒のお陰で子供達が飢えずにすんでおります。
どうかこれからも宜しくお願い致します」
神殿長がまるでしもべのような態度で接してくれます。
最初は戸惑いましたが、最近ようやく慣れてきました。
私が公国の建国を宣言した事で、公王として接してくれているのでしょう。
流石に元将軍だっただけの事はあります。
それに、私が孤児や小作人のために、魔獣を使って狩りをして食糧を確保している事を、心から感謝しているのですよう。
「神殿長、そろそろ軍隊が必要になると思うのですが、どう思いますか?」
私は最近悩んでいたことを思い切って口にしました。
孤児の一人が獲物が狩れたことを嬉しそうに伝えにくる。
毎日獣が狩れるようになって、毎日お腹一杯肉が食べられるようになっているのに、それでも肉が食べられる事の喜びが減らない。
いえ、一日三度の食事ができる事を、とても喜んでくれてる。
食べられる喜びは、飢餓を経験した者からはそう簡単に失われないのでしょう。
私が公国を建国した事で、辺境だった場所が首都部となりました。
首都と呼ばず首都部と呼ぶのは、首都と呼ぶべき城や都市がないからです。
多くの難民が集まり、人数の多い村はありますが、とても都市と呼べるようにモノではなく、切り倒した材木で組み立てた家しかありません。
石造りの建物など、貧乏神殿の僅かな部分だけです。
この貧乏な国でも、民は幸せに暮らしています。
いえ、むしろ以前よりも豊かで安心な生活を手に入れています。
王侯貴族がいなくなったことで、ほとんど税がいらないのです。
わずかに支払うことになっているのが、聖女である私への寄進です。
今までのように、収穫の七割八割を無理矢理奪うような事はありません。
飢饉に備えて、一割を義倉に納めるだけです。
「ねえ、早く一緒に解体しようよ、作りたてのソーセージが一番美味しいんだよ」
孤児達が続々と集まってきます。
最近とみに私に近づくようになってきましたが、少々心配です。
私の周りには見えない魔獣がたくさんいるので、彼らが孤児達を邪魔に思い、襲い傷つけないかと心配になってしまうのです。
今のところは何の問題もありませんが、魔獣の機嫌など私にも分かりません。
「分かったわ、直ぐに用意しますから、先に行っていてください」
私にできる事は、機嫌よくうれしそうにするくらいです。
私が孤児達の誘いに喜んでいる姿を見せておけば、魔獣達が孤児達を無差別に襲う可能性は低くなります。
私が少しでも嫌そうにしてしまうと、魔獣達が孤児達に敵意を向けるかもしれませんから、常に笑顔を絶やさずに機嫌よくしなけければいけません。
「聖女様、わざわざお運びありがとうございます。
聖女様の使徒のお陰で子供達が飢えずにすんでおります。
どうかこれからも宜しくお願い致します」
神殿長がまるでしもべのような態度で接してくれます。
最初は戸惑いましたが、最近ようやく慣れてきました。
私が公国の建国を宣言した事で、公王として接してくれているのでしょう。
流石に元将軍だっただけの事はあります。
それに、私が孤児や小作人のために、魔獣を使って狩りをして食糧を確保している事を、心から感謝しているのですよう。
「神殿長、そろそろ軍隊が必要になると思うのですが、どう思いますか?」
私は最近悩んでいたことを思い切って口にしました。
0
お気に入りに追加
822
あなたにおすすめの小説
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
冤罪により婚約破棄されて国外追放された王女は、隣国の王子に結婚を申し込まれました。
香取鞠里
恋愛
「マーガレット、お前は恥だ。この城から、いやこの王国から出ていけ!」
姉の吹き込んだ嘘により、婚約パーティーの日に婚約破棄と勘当、国外追放を受けたマーガレット。
「では、こうしましょう。マーガレット、きみを僕のものにしよう」
けれど、追放された先で隣国の王子に拾われて!?
【完結】従姉妹と婚約者と叔父さんがグルになり私を当主の座から追放し婚約破棄されましたが密かに嬉しいのは内緒です!
ジャン・幸田
恋愛
私マリーは伯爵当主の臨時代理をしていたけど、欲に駆られた叔父さんが、娘を使い婚約者を奪い婚約破棄と伯爵家からの追放を決行した!
でも私はそれでよかったのよ! なぜなら・・・家を守るよりも彼との愛を選んだから。
【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」
まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05
仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。
私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。
王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。
冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。
本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
【完結済み】「こんなことなら、婚約破棄させてもらう!」幼い頃からの婚約者に、浮気を疑われた私。しかし私の前に、事の真相を知る人物が現れて……
オコムラナオ
恋愛
(完結済みの作品を、複数話に分けて投稿します。最後まで書きあがっておりますので、安心してお読みください)
婚約者であるアルフレッド・アルバートン侯爵令息から、婚約破棄を言い渡されたローズ。
原因は、二人で一緒に行ったダンスパーティーで、ローズが他の男と踊っていたから。
アルフレッドはローズが以前から様子がおかしかったことを指摘し、自分以外の男に浮気心を持っているのだと責め立てる。
ローズが事情を説明しようとしても、彼は頑なに耳を貸さない。
「こんなことなら、婚約破棄させてもらう!」
彼がこう宣言したとき、意外なところからローズに救いの手が差し伸べられる。
明かされたのはローズの潔白だけではなく、思いもよらない事実だった……
婚約破棄の上に家を追放された直後に聖女としての力に目覚めました。
三葉 空
恋愛
ユリナはバラノン伯爵家の長女であり、公爵子息のブリックス・オメルダと婚約していた。しかし、ブリックスは身勝手な理由で彼女に婚約破棄を言い渡す。さらに、元から妹ばかり可愛がっていた両親にも愛想を尽かされ、家から追放されてしまう。ユリナは全てを失いショックを受けるが、直後に聖女としての力に目覚める。そして、神殿の神職たちだけでなく、王家からも丁重に扱われる。さらに、お祈りをするだけでたんまりと給料をもらえるチート職業、それが聖女。さらに、イケメン王子のレオルドに見初められて求愛を受ける。どん底から一転、一気に幸せを掴み取った。その事実を知った元婚約者と元家族は……
卒業記念パーティーに参加していた伯爵家の嫡男です。
剣伎 竜星
恋愛
「私、ルカス・アバロンはソフィア・アルビオン公爵令嬢との婚約を破棄するとともに、このカレン・バーバリアス男爵令嬢を新たな婚約者とすることをここに宣言する!」
本日はアバロン王立学園の卒業式で、式はつつがなく終了し、今は式後の記念パーティーが開催されていた。しかし、突然、学園で評判の悪いルカス第一王子とその取り巻き、そして男爵令嬢が乱入。第一王子が前述の婚約破棄宣言を行った。
※投稿リハビリ作品です。
※R15は保険です。
※本編は前編中編後編の3部構成予定で、後編は後日談です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる