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第一章

第7話報復

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 私の手が王太子の腹部を貫き血みどろになっています。
 王宮の謁見の間は、死屍累々の状態です。
 そう、私の怒りに我を忘れて暴れ回った結果です。
 いえ、嘘です、我を忘れてなどいません、冷静に報復しました。
 だから、全員即死などさせていません、激痛に苛まれて生きています。
 全ては当然の報いです、ウォーレン卿を騙し討ちしようとしたのですから。

 王太子達は、私がウォーレン卿への好意を隠さない事に苛立っていました。
 王太子達はこの国一番の美貌と評判で、聖女の権威もある私を妻に迎えて、自分たちの獣欲を満たすとともに、地位を確固たちものにしようとしていました。
 なのに、孤児院生まれのウォーレン卿が私に惚れられている。
 それが許せず、謁見の間に呼び出して騙し討ちしようとしたのです。
 国王と重臣も知っていてそれを止めなかったのです。

 私はこうなる可能性を考えていて、ウォーレン卿に護衛の使魔をつけていました。
 王太子や国王の思惑を感じ取った私は、怒りと同時に計算もしました。
 そして王家を滅ぼしてこの国を支配する決断を下したのです。
 ウォーレン様を王にし、私が王妃となってささえる
 私にとって、これほど幸せな事はありません。

 私は精神力をふり絞り、王太子と王が愚行に走るのを待ちました。
 ウォーレン様が傷つく可能性がある事を見逃す事は、とても耐えが痛い苦痛です。
 ですが、今は耐えなければいけないのだと、心に言い聞かせました。
 そして、俺か者共は、私が思っていた通りの愚行に走りました。
 忠誠を慈愛でこの国のために働いていたウォーレン様に冤罪を着せて殺そうとしたのです!

 この国一番の戦士であるウォーレン様ですが、相手が王太子や国王では剣が向けられないようで、防戦一方になられました。
 もう、私には我慢ができませんでした。
 疾風怒濤の勢いで謁見の間に押し入り、王太子国王一味をズタボロにしました。
 ですが、ここからが一番大切な所です。

「ウォーレンに聖女として命令した。
 腐りきったリンスター王家を廃し、国王となり、この国の民を救いなさい。
 私が正妃となって支えてあげますから、何の心配もありません。
 さあ、グズグズせずに戴冠を宣言するのです。
 お前達は各騎士団に忠誠を使わせなさい!」

  最初は私の言葉に唖然としていた近衛騎士たちも、私の怒りと勢いに飲まれたのでしょう、直ぐに各騎士団に走っていきました。
 ウォーレン様に忠誠を使うもよし、リンスター王家に忠誠を尽くして剣を取るもよし、好きにすればいいのです、逆らう者は皆殺しにするだけです。
 それよりは、今夜どうやってウォーレン様を襲うか考える方が大切です。
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