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12話
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私達はシーモア公爵領に急いで戻ろうとした。
だがその歩みは遅々として進まなかった。
あまりにも多くの領民がついてきたからだ。
彼らは着の身着のままだった。
その日の食事にも事欠く有様だった。
私は正直焦り苛立っていたが、ディラン様の慈愛の心はビクともしない。
分かっていた事ですが、正直ため息が出てしまうと同時に、変わらぬ慈愛に心から安堵します。
「護衛の騎士達は民を護れ。
グレイスは私と一緒に狩りに行ってもらう。
心配するな。
私とグレイスが一緒で、危険な事などあるものか」
ヒロクス子爵領にいる間に、できるだけ多くの食料を確保しなければいけません。
他の領地では、麦ひとつ薪一つも領主のモノなのです。
領主から貸し与えられた土地の所有者のモノなのです。
私達が勝手に狩る事などできません。
私達が勝手にできるのは、私達が領主とその一族を皆殺しにした、ヒロクス子爵領だけなのです。
ディラン様と私には魔法袋があります。
二人の魔法袋一杯に魔獣や獣を狩れば、五千人の難民を、シーモア公爵領まで飢えさせることなく移動させることが可能です。
本来子爵家の領地には、最低でも一万人の領民がいます。
力のある子爵家なら、四万人の領民がいてもおかしくないのです。
ヒロクス子爵領の広さなら、三万人いてもおかしくないはずです。
それが領民の大半がついてきているのに、五千人しかいないのです。
いかに酷い統治が行われていたか分かるというものです。
「魔石や素材の値段は無視してくれ。
できるだけ多くの食料を確保することを優先してくれ」
「分かりました。
では手あたり次第狩りましょう。
義兄上も好き嫌いなされず、魔蟲も狩ってくださいね」
「魔蟲かぁ。
あんなモノ食べたい人がいるのか?
私には理解できないのだがなぁ。
いや、グレイスの好みをどうこう言っているわけではないよ。
グレイスの生い立ちを考えれば、好き嫌いができる状況ではなかったからね。
ただ王侯貴族の料理は、魔蟲がでる事がないのでね」
「分かっております義兄上。
でも本当に美味しいのですよ。
魔蟲の中には、海老や蟹より濃厚で美味しいモノもいるのです。
義兄上に無理に食べていただこうとは思いませんが、あれほど飢えている民です。
好き嫌いなどしないはずです」
「そうか、そうだね。
では手あたり次第、近くににいるモノは全て狩って、魔法袋に入れよう」
ディラン様も腹を括ってくださったので、初級下の範囲攻撃魔法で、弱い獣や魔獣を狩りまくりました。
素材として売る気など全くないので、毛皮や外骨格に大きな傷がつく事など考えないですむので、狙いを絞る必要がないのです。
あっという間に大量の魔蟲と魔獣と獣が狩れました。
難民達が獣よりも魔蟲を好んで食べたことは言うまでもありません。
だがその歩みは遅々として進まなかった。
あまりにも多くの領民がついてきたからだ。
彼らは着の身着のままだった。
その日の食事にも事欠く有様だった。
私は正直焦り苛立っていたが、ディラン様の慈愛の心はビクともしない。
分かっていた事ですが、正直ため息が出てしまうと同時に、変わらぬ慈愛に心から安堵します。
「護衛の騎士達は民を護れ。
グレイスは私と一緒に狩りに行ってもらう。
心配するな。
私とグレイスが一緒で、危険な事などあるものか」
ヒロクス子爵領にいる間に、できるだけ多くの食料を確保しなければいけません。
他の領地では、麦ひとつ薪一つも領主のモノなのです。
領主から貸し与えられた土地の所有者のモノなのです。
私達が勝手に狩る事などできません。
私達が勝手にできるのは、私達が領主とその一族を皆殺しにした、ヒロクス子爵領だけなのです。
ディラン様と私には魔法袋があります。
二人の魔法袋一杯に魔獣や獣を狩れば、五千人の難民を、シーモア公爵領まで飢えさせることなく移動させることが可能です。
本来子爵家の領地には、最低でも一万人の領民がいます。
力のある子爵家なら、四万人の領民がいてもおかしくないのです。
ヒロクス子爵領の広さなら、三万人いてもおかしくないはずです。
それが領民の大半がついてきているのに、五千人しかいないのです。
いかに酷い統治が行われていたか分かるというものです。
「魔石や素材の値段は無視してくれ。
できるだけ多くの食料を確保することを優先してくれ」
「分かりました。
では手あたり次第狩りましょう。
義兄上も好き嫌いなされず、魔蟲も狩ってくださいね」
「魔蟲かぁ。
あんなモノ食べたい人がいるのか?
私には理解できないのだがなぁ。
いや、グレイスの好みをどうこう言っているわけではないよ。
グレイスの生い立ちを考えれば、好き嫌いができる状況ではなかったからね。
ただ王侯貴族の料理は、魔蟲がでる事がないのでね」
「分かっております義兄上。
でも本当に美味しいのですよ。
魔蟲の中には、海老や蟹より濃厚で美味しいモノもいるのです。
義兄上に無理に食べていただこうとは思いませんが、あれほど飢えている民です。
好き嫌いなどしないはずです」
「そうか、そうだね。
では手あたり次第、近くににいるモノは全て狩って、魔法袋に入れよう」
ディラン様も腹を括ってくださったので、初級下の範囲攻撃魔法で、弱い獣や魔獣を狩りまくりました。
素材として売る気など全くないので、毛皮や外骨格に大きな傷がつく事など考えないですむので、狙いを絞る必要がないのです。
あっという間に大量の魔蟲と魔獣と獣が狩れました。
難民達が獣よりも魔蟲を好んで食べたことは言うまでもありません。
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