上 下
11 / 12

10話

しおりを挟む
「いいねえ!
 どんどん階層を増やしていこうよ!
 獣たちも聖女とのふれあいで聖なる者になれるかもしれないよ」

 聖獣様に煽られて、聖域の階層が広がっていきます。
 下の小麦畑のように、地平線の果てまで広がっていきます。
 これだけ広ければ、全ての獣を住ませてあげるだけでなく、子供や孫まで安心して暮らせる広さになるでしょう。

「獣たちがお腹いっぱい食べたら、小麦を運んでもらおう。
 最初は近くの村や小都市に配って、だんだん広げていけばいい」

 聖獣様は簡単に言いますが、何の混乱もなく小麦を運べるはずもありません。
 獣たちの飼い主が、自分の獣を取り戻そうとしただけではありません。
 何の権利もない者が、獣たちと獣たちが運んでいる小麦を奪おうとしました。
 情けなく哀しいことです。

 ですが、神獣様が人間のそのような行為を見逃すはずがなかったのです。
 聖獣様は最初に言っておられました。
 人間の穢れに耐性のある自分が護衛すると。
 当然ですが、獣たちに手を出そうとした人間は、皆殺しにされてしまいました。

 農民や商人だけではなく、欲に目がくらんだ貴族士族が獣たちと小麦を奪おうとしたので、全員皆殺しにされることになりました。
 自業自得とも言えますが、少し可哀想に思ってしまうくらい、無残な殺され方で、多くの領地で領主一族が全滅してしまいました。

 普通なら盗賊が跳梁跋扈するのですが、聖獣様が魔獣と呼ばれて暴れまわっておられるのです。
 その噂が燎原の火のように国中に広まっているのです。
 盗賊団は先を争ってこの国から逃げ出しました。
 多くの民が、領主も盗賊団も恐れる必要がなくなったのです。

 中には邪な人間もいますが、そんな者は聖獣様が真っ先に殺してしまわれました。
 残った多くも者は、善良な者が多いのです。
 そんな人たちに、小麦を配って回りました。
 誰も飢えなくてすむように、多くの小麦を獣たちに配ってもらいました。

 地の果てまで続くかと思われる小麦畑ですが、それでもいつかは刈り終わってしまいます。
 ですが、私が願えば、直ぐに新たな小麦は黄金色の実りを見せてくれました。
 その実りを、精霊たちがまた刈り取ってくれます。
 刈り取って小麦俵にしてくれます。

 小麦俵は獣たちにが運んでくれます。
 私は夢がかなってうれしくなりましたが、この国全てに小麦を行き渡らせる事はできませんでした。
 王家が支配する王都と大貴族が支配する領都には、数多くの奴隷がいて、奴隷を使役し搾取する者がいるのです。
 王も大貴族も馬鹿ではありませんから、獣たちから小麦を奪うようなことはしませんが、自分たちの支配体制が壊れるようなことを嫌うのです。
 城門を閉じられると、小麦を城壁内に運び込むことができないのです。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結済】婚約破棄された元公爵令嬢は教会で歌う

curosu
恋愛
【書きたい場面だけシリーズ】 婚約破棄された元公爵令嬢は、静かな教会で好き勝手に歌う。 それを見ていた神は... ※書きたい部分だけ書いた4話だけの短編。 他の作品より人物も名前も設定も全て適当に書いてる為、誤字脱字ありましたらご報告ください。

国護りの聖女と呼ばれていた私は、婚約者である王子から婚約破棄を告げられ、追放されて……。

四季
恋愛
国護りの聖女と呼ばれていたクロロニアは王子ルイスと婚約していた。 しかしある日のこと、ルイスから婚約破棄を告げられてしまって……。

前世の記憶を持つ守護聖女は婚約破棄されました。

さざれ石みだれ
恋愛
「カテリーナ。お前との婚約を破棄する!」 王子殿下に婚約破棄を突きつけられたのは、伯爵家次女、薄幸のカテリーナ。 前世で伝説の聖女であった彼女は、王都に対する闇の軍団の攻撃を防いでいた。 侵入しようとする悪霊は、聖女の力によって浄化されているのだ。 王国にとってなくてはならない存在のカテリーナであったが、とある理由で正体を明かすことができない。 政略的に決められた結婚にも納得し、静かに守護の祈りを捧げる日々を送っていたのだ。 ところが、王子殿下は婚約破棄したその場で巷で聖女と噂される女性、シャイナを侍らせ婚約を宣言する。 カテリーナは婚約者にふさわしくなく、本物の聖女であるシャイナが正に王家の正室として適格だと口にしたのだ。

結婚式前日に婚約破棄された公爵令嬢は、聖女であることを隠し幸せ探しの旅に出る

青の雀
恋愛
婚約破棄から聖女にUPしようとしたところ、長くなってしまいましたので独立したコンテンツにします。 卒業記念パーティで、その日もいつもと同じように婚約者の王太子殿下から、エスコートしていただいたのに、突然、婚約破棄されてしまうスカーレット。 実は、王太子は愛の言葉を囁けないヘタレであったのだ。 婚約破棄すれば、スカーレットが泣いて縋るとおもっての芝居だったのだが、スカーレットは悲しみのあまり家出して、自殺しようとします。 寂れた隣国の教会で、「神様は乗り越えられる試練しかお与えにならない。」司祭様の言葉を信じ、水晶玉判定をすると、聖女であることがわかり隣国の王太子殿下との縁談が持ち上がるが、この王太子、大変なブサメンで、転移魔法を使って公爵家に戻ってしまう。 その後も聖女であるからと言って、伝染病患者が押しかけてきたり、世界各地の王族から縁談が舞い込む。 聖女であることを隠し、司祭様とともに旅に出る。という話にする予定です。

聖女の代役の私がなぜか追放宣言されました。今まで全部私に仕事を任せていたけど大丈夫なんですか?

水垣するめ
恋愛
伯爵家のオリヴィア・エバンスは『聖女』の代理をしてきた。 理由は本物の聖女であるセレナ・デブリーズ公爵令嬢が聖女の仕事を面倒臭がったためだ。 本物と言っても、家の権力をたてにして無理やり押し通した聖女だが。 無理やりセレナが押し込まれる前は、本来ならオリヴィアが聖女に選ばれるはずだった。 そういうこともあって、オリヴィアが聖女の代理として選ばれた。 セレナは最初は公務などにはきちんと出ていたが、次第に私に全て任せるようになった。 幸い、オリヴィアとセレナはそこそこ似ていたので、聖女のベールを被ってしまえば顔はあまり確認できず、バレる心配は無かった。 こうしてセレナは名誉と富だけを取り、オリヴィアには働かさせて自分は毎晩パーティーへ出席していた。 そして、ある日突然セレナからこう言われた。 「あー、あんた、もうクビにするから」 「え?」 「それと教会から追放するわ。理由はもう分かってるでしょ?」 「いえ、全くわかりませんけど……」 「私に成り代わって聖女になろうとしたでしょ?」 「いえ、してないんですけど……」 「馬鹿ねぇ。理由なんてどうでもいいのよ。私がそういう気分だからそうするのよ。私の偽物で伯爵家のあんたは大人しく聞いとけばいいの」 「……わかりました」 オリヴィアは一礼して部屋を出ようとする。 その時後ろから馬鹿にしたような笑い声が聞こえた。 「あはは! 本当に無様ね! ここまで頑張って成果も何もかも奪われるなんて! けど伯爵家のあんたは何の仕返しも出来ないのよ!」 セレナがオリヴィアを馬鹿にしている。 しかしオリヴィアは特に気にすることなく部屋出た。 (馬鹿ね、今まで聖女の仕事をしていたのは私なのよ? 後悔するのはどちらなんでしょうね?)

醜い傷ありと蔑まれてきた私の顔に刻まれていたのは、選ばれし者の証である聖痕でした。今更、態度を改められても許せません。

木山楽斗
恋愛
エルーナの顔には、生まれつき大きな痣がある。 その痣のせいで、彼女は醜い傷ありと蔑まれて生きてきた。父親や姉達から嫌われて、婚約者からは婚約破棄されて、彼女は、痣のせいで色々と辛い人生を送っていたのである。 ある時、彼女の痣に関してとある事実が判明した。 彼女の痣は、聖痕と呼ばれる選ばれし者の証だったのだ。 その事実が判明して、彼女の周囲の人々の態度は変わった。父親や姉達からは媚を売られて、元婚約者からは復縁を迫られて、今までの態度とは正反対の態度を取ってきたのだ。 流石に、エルーナもその態度は頭にきた。 今更、態度を改めても許せない。それが彼女の素直な気持ちだったのだ。 ※5話目の投稿で、間違って別の作品の5話を投稿してしまいました。申し訳ありませんでした。既に修正済みです。

婚約破棄を宣告された公爵令嬢は猶予をもらった。

見丘ユタ
恋愛
公爵令嬢ミリーナは王太子ケインから婚約破棄を言い渡された。 納得がいかない彼女は条件付きの婚約破棄を提案し、100日の猶予をもらった。

王太子から愛することはないと言われた侯爵令嬢は、そんなことないわと強気で答える

綾森れん
恋愛
「オリヴィア、君を愛することはない」 結婚初夜、聖女の力を持つオリヴィア・デュレー侯爵令嬢は、カミーユ王太子からそう告げられた。 だがオリヴィアは、 「そんなことないわ」 と強気で答え、カミーユが愛さないと言った原因を調べることにした。 その結果、オリヴィアは思いもかけない事実と、カミーユの深い愛を知るのだった。

処理中です...