6 / 12
5話
しおりを挟む
「やあ、よく来たね、聖女。
色々大変だったようだけど、もう何の心配もいらないよ。
ここには穢れたモノは来れないからね」
ええと、ここはどこで、彼は誰なのでしょうか?
私は死を覚悟して奈落に飛び降りたはずです。
奈落の魔獣に食べられるか、奈落の壁か底に叩きつけられて死ぬ覚悟でした。
幸運に恵まれて途中で何かに引っかかり、奇跡的に助かったとしても、無傷というわけにはいかないはずなのです。
「あの、私はなぜ助かったのですか?
貴方は何者ですか?
ここは奈落ではないのですか?」
「そうだよね、疑問で一杯だよね。
ちゃんと説明しないと不安で仕方ないよね。
さっきも言ったけれど、何の心配もいらないんだよ。
君が助かったのは、落ちてきた君を僕が抱きとめたからだよ。
僕はこの領域を護るヌシだよ。
ここは人間が奈落と呼んでいる所だけど、僕から見れば奈落ではなく、精霊が住む聖なる地域だよ」
驚愕です!
私の目の前にいるのは人間の男性にしか見えない方です。
いえ、私の知る人間とは形が似ているだけで、似て非なる者です。
身体の奥底から光り輝いておられます。
地の底にまで続くと言われている奈落の途中で抱きとめたと言われても、疑う気持ちにもならないほどの神々しさです。
しかもここは奈落ではなく精霊の聖域だと言われるのです。
だったら魔獣と言われていたモノは、禍々しい生き物ではなく、聖なる方だというのでしょうか?
ではなぜ人を襲うのでしょうか?
「神々しく光り輝くお姿を見れば、聖なる方だと言われても疑う余地はありません。
ですが、だったら、なぜ人を襲われたのですか?
それとも襲ったのは貴方様ではないのですか?」
「ふむ、誤解しないで欲しいのだけど、聖なる者だからこそ、襲ったのだよ。
そもそも人間は穢れた存在だからね。
聖なる者を冒し穢す悪しき存在なのだよ。
だが、だからといって、精霊は人を滅ぼそうとは思っていないよ。
住処を分けて、侵し侵されない関係でいたいと思っているのだよ。
なのに、なのにだ!
人は、穢れに満ちた存在、恨みに満ちた存在を、聖域に投げ入れるのだ!
精霊が穢れ恨みに満ちた存在に堕ちてしまう。
そうならないように、僕が穢れと恨みを一身に受けて、人間社会に返しているだけなのだよ」
衝撃的な事実です!
信じられない、いえ、信じたくない話です。
人間がそんなに穢れた存在だなんて……
でも、王や父の言動を考えれば、そうかもしれないと思ってしまいます。
五年前や十年前の事を考えれば、その通りだと思います。
人間は滅んだ方がいい存在なのでしょうか?
「まあそんな事はどうでもいいさ。
まずは聖女が何をしたいかだよ」
色々大変だったようだけど、もう何の心配もいらないよ。
ここには穢れたモノは来れないからね」
ええと、ここはどこで、彼は誰なのでしょうか?
私は死を覚悟して奈落に飛び降りたはずです。
奈落の魔獣に食べられるか、奈落の壁か底に叩きつけられて死ぬ覚悟でした。
幸運に恵まれて途中で何かに引っかかり、奇跡的に助かったとしても、無傷というわけにはいかないはずなのです。
「あの、私はなぜ助かったのですか?
貴方は何者ですか?
ここは奈落ではないのですか?」
「そうだよね、疑問で一杯だよね。
ちゃんと説明しないと不安で仕方ないよね。
さっきも言ったけれど、何の心配もいらないんだよ。
君が助かったのは、落ちてきた君を僕が抱きとめたからだよ。
僕はこの領域を護るヌシだよ。
ここは人間が奈落と呼んでいる所だけど、僕から見れば奈落ではなく、精霊が住む聖なる地域だよ」
驚愕です!
私の目の前にいるのは人間の男性にしか見えない方です。
いえ、私の知る人間とは形が似ているだけで、似て非なる者です。
身体の奥底から光り輝いておられます。
地の底にまで続くと言われている奈落の途中で抱きとめたと言われても、疑う気持ちにもならないほどの神々しさです。
しかもここは奈落ではなく精霊の聖域だと言われるのです。
だったら魔獣と言われていたモノは、禍々しい生き物ではなく、聖なる方だというのでしょうか?
ではなぜ人を襲うのでしょうか?
「神々しく光り輝くお姿を見れば、聖なる方だと言われても疑う余地はありません。
ですが、だったら、なぜ人を襲われたのですか?
それとも襲ったのは貴方様ではないのですか?」
「ふむ、誤解しないで欲しいのだけど、聖なる者だからこそ、襲ったのだよ。
そもそも人間は穢れた存在だからね。
聖なる者を冒し穢す悪しき存在なのだよ。
だが、だからといって、精霊は人を滅ぼそうとは思っていないよ。
住処を分けて、侵し侵されない関係でいたいと思っているのだよ。
なのに、なのにだ!
人は、穢れに満ちた存在、恨みに満ちた存在を、聖域に投げ入れるのだ!
精霊が穢れ恨みに満ちた存在に堕ちてしまう。
そうならないように、僕が穢れと恨みを一身に受けて、人間社会に返しているだけなのだよ」
衝撃的な事実です!
信じられない、いえ、信じたくない話です。
人間がそんなに穢れた存在だなんて……
でも、王や父の言動を考えれば、そうかもしれないと思ってしまいます。
五年前や十年前の事を考えれば、その通りだと思います。
人間は滅んだ方がいい存在なのでしょうか?
「まあそんな事はどうでもいいさ。
まずは聖女が何をしたいかだよ」
0
お気に入りに追加
286
あなたにおすすめの小説
【完結済】婚約破棄された元公爵令嬢は教会で歌う
curosu
恋愛
【書きたい場面だけシリーズ】
婚約破棄された元公爵令嬢は、静かな教会で好き勝手に歌う。
それを見ていた神は...
※書きたい部分だけ書いた4話だけの短編。
他の作品より人物も名前も設定も全て適当に書いてる為、誤字脱字ありましたらご報告ください。
国護りの聖女と呼ばれていた私は、婚約者である王子から婚約破棄を告げられ、追放されて……。
四季
恋愛
国護りの聖女と呼ばれていたクロロニアは王子ルイスと婚約していた。
しかしある日のこと、ルイスから婚約破棄を告げられてしまって……。
前世の記憶を持つ守護聖女は婚約破棄されました。
さざれ石みだれ
恋愛
「カテリーナ。お前との婚約を破棄する!」
王子殿下に婚約破棄を突きつけられたのは、伯爵家次女、薄幸のカテリーナ。
前世で伝説の聖女であった彼女は、王都に対する闇の軍団の攻撃を防いでいた。
侵入しようとする悪霊は、聖女の力によって浄化されているのだ。
王国にとってなくてはならない存在のカテリーナであったが、とある理由で正体を明かすことができない。
政略的に決められた結婚にも納得し、静かに守護の祈りを捧げる日々を送っていたのだ。
ところが、王子殿下は婚約破棄したその場で巷で聖女と噂される女性、シャイナを侍らせ婚約を宣言する。
カテリーナは婚約者にふさわしくなく、本物の聖女であるシャイナが正に王家の正室として適格だと口にしたのだ。
結婚式前日に婚約破棄された公爵令嬢は、聖女であることを隠し幸せ探しの旅に出る
青の雀
恋愛
婚約破棄から聖女にUPしようとしたところ、長くなってしまいましたので独立したコンテンツにします。
卒業記念パーティで、その日もいつもと同じように婚約者の王太子殿下から、エスコートしていただいたのに、突然、婚約破棄されてしまうスカーレット。
実は、王太子は愛の言葉を囁けないヘタレであったのだ。
婚約破棄すれば、スカーレットが泣いて縋るとおもっての芝居だったのだが、スカーレットは悲しみのあまり家出して、自殺しようとします。
寂れた隣国の教会で、「神様は乗り越えられる試練しかお与えにならない。」司祭様の言葉を信じ、水晶玉判定をすると、聖女であることがわかり隣国の王太子殿下との縁談が持ち上がるが、この王太子、大変なブサメンで、転移魔法を使って公爵家に戻ってしまう。
その後も聖女であるからと言って、伝染病患者が押しかけてきたり、世界各地の王族から縁談が舞い込む。
聖女であることを隠し、司祭様とともに旅に出る。という話にする予定です。
聖女の代役の私がなぜか追放宣言されました。今まで全部私に仕事を任せていたけど大丈夫なんですか?
水垣するめ
恋愛
伯爵家のオリヴィア・エバンスは『聖女』の代理をしてきた。
理由は本物の聖女であるセレナ・デブリーズ公爵令嬢が聖女の仕事を面倒臭がったためだ。
本物と言っても、家の権力をたてにして無理やり押し通した聖女だが。
無理やりセレナが押し込まれる前は、本来ならオリヴィアが聖女に選ばれるはずだった。
そういうこともあって、オリヴィアが聖女の代理として選ばれた。
セレナは最初は公務などにはきちんと出ていたが、次第に私に全て任せるようになった。
幸い、オリヴィアとセレナはそこそこ似ていたので、聖女のベールを被ってしまえば顔はあまり確認できず、バレる心配は無かった。
こうしてセレナは名誉と富だけを取り、オリヴィアには働かさせて自分は毎晩パーティーへ出席していた。
そして、ある日突然セレナからこう言われた。
「あー、あんた、もうクビにするから」
「え?」
「それと教会から追放するわ。理由はもう分かってるでしょ?」
「いえ、全くわかりませんけど……」
「私に成り代わって聖女になろうとしたでしょ?」
「いえ、してないんですけど……」
「馬鹿ねぇ。理由なんてどうでもいいのよ。私がそういう気分だからそうするのよ。私の偽物で伯爵家のあんたは大人しく聞いとけばいいの」
「……わかりました」
オリヴィアは一礼して部屋を出ようとする。
その時後ろから馬鹿にしたような笑い声が聞こえた。
「あはは! 本当に無様ね! ここまで頑張って成果も何もかも奪われるなんて! けど伯爵家のあんたは何の仕返しも出来ないのよ!」
セレナがオリヴィアを馬鹿にしている。
しかしオリヴィアは特に気にすることなく部屋出た。
(馬鹿ね、今まで聖女の仕事をしていたのは私なのよ? 後悔するのはどちらなんでしょうね?)
醜い傷ありと蔑まれてきた私の顔に刻まれていたのは、選ばれし者の証である聖痕でした。今更、態度を改められても許せません。
木山楽斗
恋愛
エルーナの顔には、生まれつき大きな痣がある。
その痣のせいで、彼女は醜い傷ありと蔑まれて生きてきた。父親や姉達から嫌われて、婚約者からは婚約破棄されて、彼女は、痣のせいで色々と辛い人生を送っていたのである。
ある時、彼女の痣に関してとある事実が判明した。
彼女の痣は、聖痕と呼ばれる選ばれし者の証だったのだ。
その事実が判明して、彼女の周囲の人々の態度は変わった。父親や姉達からは媚を売られて、元婚約者からは復縁を迫られて、今までの態度とは正反対の態度を取ってきたのだ。
流石に、エルーナもその態度は頭にきた。
今更、態度を改めても許せない。それが彼女の素直な気持ちだったのだ。
※5話目の投稿で、間違って別の作品の5話を投稿してしまいました。申し訳ありませんでした。既に修正済みです。
王太子から愛することはないと言われた侯爵令嬢は、そんなことないわと強気で答える
綾森れん
恋愛
「オリヴィア、君を愛することはない」
結婚初夜、聖女の力を持つオリヴィア・デュレー侯爵令嬢は、カミーユ王太子からそう告げられた。
だがオリヴィアは、
「そんなことないわ」
と強気で答え、カミーユが愛さないと言った原因を調べることにした。
その結果、オリヴィアは思いもかけない事実と、カミーユの深い愛を知るのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる