22 / 34
21話第三者視点
しおりを挟む
「国王陛下の麗しき御尊顔を拝し奉り、わたくしめ恐悦至極に存じ奉りまする」
「うむ、病をおしてよく来てくれた。
使者から話は聞いているだろう?
急ぎの事だから単刀直入に命じる。
新たに現れた邪竜を退治しろ」
「恐れながら申し上げます。
前回の邪竜退治で大きな傷を受けてしまいました。
残念ながら以前のような力は発揮できません。
ここ数日はベットから起き上がるのも苦しい状態でございます。
今も気力で立っておりますが、この場で倒れそうなのです」
大嘘だった。
身体はいたって健康だった。
一晩中侍女と戯れるほど健康だった。
だが、爵位を得てから怠惰だ淫靡な生活を続けてきたエイデンだ。
全盛時の二割の力も発揮できないだろう。
その事はエイデン自身も分かっていた。
だから逃げようとしていた。
「それは残念だな。
本当に残念だ。
二度も邪竜を退治してくれた英雄には、侯爵位を与えようと思っていたのだが。
そうか、戦えないのか」
「あ、いえ、その。
まあ、その、配下しだいでございます。
私自身は古傷で戦えませんが、優秀な若い戦士を指揮することができれば、隊長として邪竜を退治できるかもしれません。
あ~、その時には侯爵にしていただけるのでしょうか?」
「ああ、侯爵にしてやろう。
指揮官が、勝利の栄誉を受けるのは当然だからな。
では直ぐに騎士団を率いて出陣してくれ」
「いえ、お待ちください。
この国の騎士団などに邪竜を退治することなど不可能でございます。
あいつらは家柄だけで選ばれたカカシ同然の役立たずです。
前回の邪竜退治の時のメンバーを配下にしてくだされば、私が指揮して今度の邪竜も退治して御覧にいれます」
エイデンはようやく落ち着いてきた。
伯爵に叙爵されてから、ルーカスたちとは疎遠になっていたが、彼らも勅命なら従うだろうと考えていた。
彼らだって、口ではきれいごとを言っても、内心では陞爵を望んでいると思っていたが、それは国王の言葉で粉々に砕かれた。
希望と共に。
「それは不可能だ。
彼らは馬鹿貴族のせいで王国と敵対している。
いずれは関係を改善したいと思っているが、今は無理だ。
それに、かれらは伯爵と離婚したカチュアと行動を共にしている。
その意味は分かるか?」
「陛下、急に目の前が真っ暗になってしまいました。
陛下の声も聞こえ難くなっております。
見苦しい姿をお見せする前に、御前を辞したいと思います。
やはりこのような状況では、邪竜退治は不可能かもしれません」
「そうか、それは残念だな。
伯爵はカチュアと離婚して独身になったから、邪竜を退治して侯爵位を得れば、余の娘の婿候補にもなれたのだが、本当に残念だよ」
「うむ、病をおしてよく来てくれた。
使者から話は聞いているだろう?
急ぎの事だから単刀直入に命じる。
新たに現れた邪竜を退治しろ」
「恐れながら申し上げます。
前回の邪竜退治で大きな傷を受けてしまいました。
残念ながら以前のような力は発揮できません。
ここ数日はベットから起き上がるのも苦しい状態でございます。
今も気力で立っておりますが、この場で倒れそうなのです」
大嘘だった。
身体はいたって健康だった。
一晩中侍女と戯れるほど健康だった。
だが、爵位を得てから怠惰だ淫靡な生活を続けてきたエイデンだ。
全盛時の二割の力も発揮できないだろう。
その事はエイデン自身も分かっていた。
だから逃げようとしていた。
「それは残念だな。
本当に残念だ。
二度も邪竜を退治してくれた英雄には、侯爵位を与えようと思っていたのだが。
そうか、戦えないのか」
「あ、いえ、その。
まあ、その、配下しだいでございます。
私自身は古傷で戦えませんが、優秀な若い戦士を指揮することができれば、隊長として邪竜を退治できるかもしれません。
あ~、その時には侯爵にしていただけるのでしょうか?」
「ああ、侯爵にしてやろう。
指揮官が、勝利の栄誉を受けるのは当然だからな。
では直ぐに騎士団を率いて出陣してくれ」
「いえ、お待ちください。
この国の騎士団などに邪竜を退治することなど不可能でございます。
あいつらは家柄だけで選ばれたカカシ同然の役立たずです。
前回の邪竜退治の時のメンバーを配下にしてくだされば、私が指揮して今度の邪竜も退治して御覧にいれます」
エイデンはようやく落ち着いてきた。
伯爵に叙爵されてから、ルーカスたちとは疎遠になっていたが、彼らも勅命なら従うだろうと考えていた。
彼らだって、口ではきれいごとを言っても、内心では陞爵を望んでいると思っていたが、それは国王の言葉で粉々に砕かれた。
希望と共に。
「それは不可能だ。
彼らは馬鹿貴族のせいで王国と敵対している。
いずれは関係を改善したいと思っているが、今は無理だ。
それに、かれらは伯爵と離婚したカチュアと行動を共にしている。
その意味は分かるか?」
「陛下、急に目の前が真っ暗になってしまいました。
陛下の声も聞こえ難くなっております。
見苦しい姿をお見せする前に、御前を辞したいと思います。
やはりこのような状況では、邪竜退治は不可能かもしれません」
「そうか、それは残念だな。
伯爵はカチュアと離婚して独身になったから、邪竜を退治して侯爵位を得れば、余の娘の婿候補にもなれたのだが、本当に残念だよ」
3
お気に入りに追加
1,242
あなたにおすすめの小説
忘れられた幼な妻は泣くことを止めました
帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。
そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。
もちろん返済する目処もない。
「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」
フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。
嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。
「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」
そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。
厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。
それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。
「お幸せですか?」
アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。
世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。
古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。
ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。
※小説家になろう様にも投稿させていただいております。
【完結】巻き戻りを望みましたが、それでもあなたは遠い人
白雨 音
恋愛
14歳のリリアーヌは、淡い恋をしていた。相手は家同士付き合いのある、幼馴染みのレーニエ。
だが、その年、彼はリリアーヌを庇い酷い傷を負ってしまった。その所為で、二人の運命は狂い始める。
罪悪感に苛まれるリリアーヌは、時が戻れば良いと切に願うのだった。
そして、それは現実になったのだが…短編、全6話。
切ないですが、最後はハッピーエンドです☆《完結しました》
私のことは気にせずどうぞ勝手にやっていてください
みゅー
恋愛
異世界へ転生したと気づいた主人公。だが、自分は登場人物でもなく、王太子殿下が見初めたのは自分の侍女だった。
自分には好きな人がいるので気にしていなかったが、その相手が実は王太子殿下だと気づく。
主人公は開きなおって、勝手にやって下さいと思いなおすが………
切ない話を書きたくて書きました。
ハッピーエンドです。
わたしにはもうこの子がいるので、いまさら愛してもらわなくても結構です。
ふまさ
恋愛
伯爵令嬢のリネットは、婚約者のハワードを、盲目的に愛していた。友人に、他の令嬢と親しげに歩いていたと言われても信じず、暴言を吐かれても、彼は子どものように純粋無垢だから仕方ないと自分を納得させていた。
けれど。
「──なんか、こうして改めて見ると猿みたいだし、不細工だなあ。本当に、ぼくときみの子?」
他でもない。二人の子ども──ルシアンへの暴言をきっかけに、ハワードへの絶対的な愛が、リネットの中で確かに崩れていく音がした。
忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない
鈴宮(すずみや)
恋愛
孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。
しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。
その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる