浮気夫に平手打ち

克全

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21話第三者視点

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「国王陛下の麗しき御尊顔を拝し奉り、わたくしめ恐悦至極に存じ奉りまする」

「うむ、病をおしてよく来てくれた。
 使者から話は聞いているだろう?
 急ぎの事だから単刀直入に命じる。
 新たに現れた邪竜を退治しろ」

「恐れながら申し上げます。
 前回の邪竜退治で大きな傷を受けてしまいました。
 残念ながら以前のような力は発揮できません。
 ここ数日はベットから起き上がるのも苦しい状態でございます。
 今も気力で立っておりますが、この場で倒れそうなのです」

 大嘘だった。
 身体はいたって健康だった。
 一晩中侍女と戯れるほど健康だった。
 だが、爵位を得てから怠惰だ淫靡な生活を続けてきたエイデンだ。
 全盛時の二割の力も発揮できないだろう。
 その事はエイデン自身も分かっていた。
 だから逃げようとしていた。

「それは残念だな。
 本当に残念だ。
 二度も邪竜を退治してくれた英雄には、侯爵位を与えようと思っていたのだが。
 そうか、戦えないのか」

「あ、いえ、その。
 まあ、その、配下しだいでございます。
 私自身は古傷で戦えませんが、優秀な若い戦士を指揮することができれば、隊長として邪竜を退治できるかもしれません。
 あ~、その時には侯爵にしていただけるのでしょうか?」

「ああ、侯爵にしてやろう。
 指揮官が、勝利の栄誉を受けるのは当然だからな。
 では直ぐに騎士団を率いて出陣してくれ」

「いえ、お待ちください。
 この国の騎士団などに邪竜を退治することなど不可能でございます。
 あいつらは家柄だけで選ばれたカカシ同然の役立たずです。
 前回の邪竜退治の時のメンバーを配下にしてくだされば、私が指揮して今度の邪竜も退治して御覧にいれます」

 エイデンはようやく落ち着いてきた。
 伯爵に叙爵されてから、ルーカスたちとは疎遠になっていたが、彼らも勅命なら従うだろうと考えていた。
 彼らだって、口ではきれいごとを言っても、内心では陞爵を望んでいると思っていたが、それは国王の言葉で粉々に砕かれた。
 希望と共に。

「それは不可能だ。
 彼らは馬鹿貴族のせいで王国と敵対している。
 いずれは関係を改善したいと思っているが、今は無理だ。
 それに、かれらは伯爵と離婚したカチュアと行動を共にしている。
 その意味は分かるか?」

「陛下、急に目の前が真っ暗になってしまいました。
 陛下の声も聞こえ難くなっております。
 見苦しい姿をお見せする前に、御前を辞したいと思います。
 やはりこのような状況では、邪竜退治は不可能かもしれません」

「そうか、それは残念だな。
 伯爵はカチュアと離婚して独身になったから、邪竜を退治して侯爵位を得れば、余の娘の婿候補にもなれたのだが、本当に残念だよ」
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