浮気夫に平手打ち

克全

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11話ラロドリゲス侯爵夫人ライリー視点

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「奥方様。
 ようやくカチュアの居場所が分かりました」

「場所などどこにいても構いません!
 分かったのならさっさと殺してしまいなさい!
 あの女狐のせいで大恥をかかされました!
 私的なサロン以外は招待状も来なくなってしまったのですよ!
 このような僻地の別荘に押し込められた恨み、絶対に晴らしてみせます!
 方法な問いません。
 いえ、できるだけ残虐な方法で殺すのです。
 そう、子供共々殺してしまいなさい。
 そうね、あれだけ貞操にうるさいく言ったのです。
 下賤な者どもに嬲り殺しにさせなさい。
 そうしなさい」

「しかしながら奥方様。
 子供は英雄様の実子でございますよ。
 殺してしまって恨まれたら面倒でございます」

「ふん!
 あんな失禁英雄など怖くなどありませんわ。
 それに、男は子供の事など本当は愛していないモノです。
 血と家を継いでくれるから愛している振りをしているだけ。
 私がちょっと囁いてしまえば、直ぐに見殺しにしますわ」

「なんと囁かれるのですか?」

「不義の子だと囁いてやればいのです。
 どこの誰とも分からない、下賤な浮気相手の子だと囁いてやるのです。
 自分が裏切っていた分、カチュアにも裏切られれていると思い込みますよ。
 それに失禁英雄は、伯爵に相応しい妻を迎えたがっていました。
 貴族たちのなかには、伯爵家を乗っ取りたいと思っている者もいます。
 自分の種を宿した令嬢を、伯爵家に送り込みたい貴族はたくさんいるのですよ」

 ふっふっふっふ。
 愚かな男です。
 自分が男娼同然に扱われている事が分かっていません。
 英雄様も今では男娼扱い。
 もっと悪い噂が広がれば、邪竜退治の他の英雄の評判も地に落ちるでしょう。

「奥方様。
 実は他にも報告しておかなければいけない事がございます」

「なんですか? 
 もう聞きたいことは聞き終えました。
 後は申し付けたとおりにやっておけばいいのです」

「しかしながら、少々問題がございます」

「しかたありませんね。
 いったいなんだと言うのです!」

「カチュアを助けたのが、邪竜退治のメンバーなのです。
 ならず者程度ではとても相手になりません。
 それに下手な方法を使ったら、奥方様に報復が行われます」

「なんですって?!
 それを最初に言いなさい!
 愚か者が!」

「申し訳ございません」

 苛立たしい事です!
 邪竜退治の英雄ですって?
 私たち名門貴族を蔑ろにする成り上がり者め!
 本当に忌々しい者たちです!

「どうにかしなさい。
 費用も渡した範囲でやるのです。
 これ以上の負担はできません。
 いえ、待ちなさい。
 準備だけして待っていなさい。
 他の夫人たちに情報を流しなさい。
 ただし邪竜退治の英雄たちのことは伏せておくのです。
 殺し合わせれば面白いことになるかもしれません」
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