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武田義信
全面攻勢
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4月『甲斐・葛谷城・武田信玄』
「御屋形様、今川勢およそ8000が葛谷城の後詰に入った模様でございます。」
「兵力はほぼ互角だな、信友、一当て敵の戦意を図れ、虎光は後詰を致せ。」
『は!』
穴山信友・武田家重臣
室住虎光・武田家重臣
成瀬正一・室住虎光の与力
石黒五郎兵衛・室住虎光の与力
「正一、騎馬隊を率いて何時でも横槍を入れられるように致せ。」
「は!」
「五郎兵衛は大弩砲を準備し、今川勢に撃ち込めるようにせよ。」
「は!」
武田信玄は甲斐・信濃佐久の専業武士を8000兵を動員して富士川を攻め下った。北条や関東管領・上杉に備えの兵を残さねばならない為、信玄としては限界に近い動員だった。一方の今川義元も、三河から攻め寄せる義信に対抗しようと兵を集めていたが、信玄に背後を取られることを恐れ、岡部正綱に集まっていた兵の内8000を与えて、葛谷城の援軍に向かわせた。
4月『遠江・武田軍』
義信は護衛の近習・小姓・傷病兵・人質を率いて諏訪に戻った。一方諏訪からは、今年戦陣に加わることを認められた新兵(騎馬鉄砲隊・鉄砲足軽隊・弓足軽隊・黒鍬輜重隊)が、膨大な軍需物資とともに撤退してきた軍勢に加わった。今回の今川戦は強引な部分が多く、今上帝や朝廷に対する名分を立てるため、鷹司義信と三条公之は軍には加わらなかった。
総大将には武田信智が立てられたが、実質指揮を執るのは副将兼陣代に抜擢された飛影だった、同じく副将に抜擢された飯富源四郎(山県昌景)と共に、信智が養子先で誇れるくらいの軍歴・功名を得るための助けをすることとなった。
軍勢3万2000の先陣任されたのは、長年青崩城砦群を守ってきた楠浦虎常だった、虎常は調略していた国境の今川方国衆・地侍を味方に加えて、8000兵を指揮して一気に遠江に乱入した。三河国衆の裏切りと鷹司軍の三河進駐、公家衆の逃亡、武田信玄の駿河侵攻と度重なる事件に著しく動揺していた遠江国衆は、武田軍の伊那口からの侵攻と日名地・平賀・奥山の寝返りに衝撃を受けた。
「楠浦虎常が調略した国衆」
裏鹿城 日名地家
平賀屋敷 平賀助太夫
高根城 奥山民部少輔貞益
水巻城主 奥山美濃守定茂
大洞若子城主 奥山加賀守定吉
小川城主 奥山兵部丞定友
飛影は楠浦虎常と8000兵を小川城に入れ、降伏臣従した国境の元今川国衆を虎常の寄騎とした。その上で犬居城一帯に勢力を持つ天野一族は後回しにして、参陣を内諾している井伊直盛の井伊谷城まで一気に進行した。田上善親( 元井伊直親)と事前に話し合っていた井伊直盛は、武田軍の遠江侵攻を受けて即座に降伏の使者を送っていた。井伊谷城に入った武田軍は、二郎法師の鷹司義信側室輿入れを正式に受け入れた。そしてこの事を井伊・奥山・平賀・日名地を通して遠江国衆・地侍に知らせ降伏を促した。
井伊家の今川離反・二郎法師鷹司輿入れは動揺していた遠江国衆に止めを刺した。今川家に忠誠心厚い掛川城主・朝比奈泰能・泰朝親子、宇津山城・朝比奈氏泰、二俣城主・松井宗信などの他、駿河に近い天竜川左岸の国衆は表面上は今川方に残ったものの、天竜川右岸の大半国衆は武田家に降伏臣従してきた。
しかし血縁の関係で仕方なく今川方に残る国衆もいた。朝比奈泰能と婚姻関係にある佐久城主・浜名頼広と、頼広の妹を妻に迎えている日比沢城主・後藤佐渡守直正だった。そこで狗賓善狼が指揮下の僧兵8000と共に包囲した。そして使者を送り、降伏臣従すれば今川につき武田と敵対している縁戚の朝比奈一族を何があっても助命すると約束した。大軍の中で孤立し、援軍の見込みのない浜名頼広が降伏臣従を誓い、頼広の使者を受けた後藤直正が続いて降伏臣従した。その後、三河国境で浜名湖沿岸にある宇津山城の朝比奈泰長を包囲した。
何度も降伏の矢文をを射込むも反応がなかった。
「頼広殿、約束をした舌の根も乾かぬうちに悪いが、ここまで降伏を拒まれると攻め落とす他ない。」
「判っております善狼殿、ただ城攻め中に降伏して来たり、生け捕りになった場合は助けてやってもらえませんか?」
「それは承知しておる、何があっても助命すると約束している、それを反故にしたりはせんよ。」
善狼は大弩砲を用意して火攻めにした。肥松を先につけた十文字大竹矢を矢継ぎ早に撃ち込み、更に周囲から鬨の声をあげて城兵の心理を揺さぶった。味方の損害を出さないように、籠城兵の逃亡を催す助命の矢文を次々と射込んだ事で、夜陰に乗じて宇津山城を逃亡する兵が続出した。守り切れぬと判断した朝比奈泰長は手勢をまとめて討って出た、泰長は獅子奮迅の戦いをするも力尽き捕らえられた。
「泰長殿、我はこの軍勢の大将を任せられた狗賓善狼と申す者ですが、御貴殿は今川家の家臣として1人の武人として天晴の戦いをなされました、ここまで御働きに成られれば武士の面目は十分でしょう、降伏して武田に仕えられたらどうです?」
「お褒め頂いたのは嬉しきことなれど、我も今川家の武人、おめおめと生き恥を晒す訳には参らん、ここは死なせて頂きたい。」
「うむ、天晴な覚悟ではあるが、朝比奈一族全ての助命を条件に浜名殿・後藤殿に味方してもらっておる、彼らの心を汲み取って頂きたい。それと共に御貴殿がここで切腹されれば、他の朝比奈一門も切腹する道を選ばねばならなくなる、ここは一門衆の為にも死ぬ事を思い止まっては如何かな?」
「浜名・後藤の事は片腹痛し! 己が命惜しさの裏切りを我の助命にかこつけるなど、武人の風上にも置けぬ恥さらしである。されど我が一門の事を考えてくださる狗賓殿には心から感謝申す。しかしながら事ここに至っては、我が武名に傷がつくことを恐れる、我を思ってくれるなら切腹させて頂きたい。」
「重ね重ね天晴である、真に残念なことなれど、貴殿の武名を汚す事は我も望まん、浜名殿の後藤殿のそれで宜しいな?」
『は!』
朝比奈泰長は切腹して果てた。
「主な今川方・天竜川左岸」
掛川城 朝比奈泰能
朝比奈泰朝
光明城 朝比奈太郎泰方
二俣城主 松井宗信
匂坂城主 匂坂六郎五郎長能
天方城主 天方山城守通興
飯田城主 山内通泰
堀越城主 堀越貞基
久野城主 久野宗忠
加賀爪館 加賀爪政豊
高天神城主 小笠原長忠
外郭城砦群(獅子ヶ鼻砦・三井山砦・小笠山砦・中村城山砦・能ヶ坂砦・火ヶ峰砦)
馬伏塚城主 小笠原長忠
岡崎城主 四ノ宮右近
犬居城 天野氏宗家の天野景泰・元景親子
篠ヶ嶺城 天野宮内右衛門藤秀
向笠城主 向笠資易
「今川方・天竜川右岸」
宇津山城主・朝比奈泰長
「武田寝返り方・天竜川右岸」
曳馬城主 飯尾連竜
向笠城主 向笠資易
佐久城 浜名頼広
日比沢城 後藤佐渡守直正
『遠江・小川城・楠浦虎常』
「貞益殿、天野の返答はどうじゃ?」
「いまだ去就に迷っておるようでございますが、可成り此方に傾いているようでございます。」
「皆の衆、今川は三河を失い遠江の半分も失った。もはや今川に未来は無いであろう事はわかるな?」
「遠江は元々斯波家が守護であった、そこを今川が攻め取った、この間遠江国衆は敵味方に分かれて苦渋を耐え忍んできたであろう、ここは国衆同士争うことなく武田に味方してはどうか? 武田に味方するならば、鷹司卿に近衛府出仕を推挙しよう。その事、天野一門にも強く伝えて貰いたい。」
『は!』
楠浦虎常は配下に入った日名地家・平賀家・奥山家を使って調略を進めた。特に前線を接している天野一門の調略には力を入れ、山岳部から駿河に侵攻する道を確保しようとした。
『遠江・天竜川』
武田軍と今川軍は天竜川を挟んで対陣していた、武田軍1万6000兵に降伏臣従した国衆1500兵が加わっている。一方今川軍は駿河からの援軍が間に合わず、天野勢も楠浦虎常に備えているため、田仕事に忙しい農民を無理やり動員しても3000兵弱が限界であった。
「浮橋を掛けよ!」
武田信智が事前に打ち合わせた通りの下知を下す、大竹盾に守られた足軽が、多数の竹を束ねて作った浮橋を川に浮かべようとする。
一方今川勢が川岸に近づき矢を射かけ、武田の架橋を邪魔しようとする。
天竜川の中でも特に川幅の狭い所での攻防で、大竹盾に阻まれ今川の矢は効果を表すことができず、徐々に川に浮橋が浮かべられていく。
今川勢は、武田勢が橋を渡った直後に包囲殲滅すべく、半円形に厚く兵を配備して行く。
「放て!」
又も武田信智が事前に打ち合わせた通りの下知を下す、今川が渡河阻止の為に密集するだろう事は予測できていたので、大弩砲を準備していたのだ。今川勢の密集陣形に十文字大竹矢が矢継ぎ早に射込まれた。狼狽混乱する今川勢で裏切りが勃発した、堀越城主・堀越貞基が指揮を執っていた朝比奈泰朝に襲い掛かったのだ。
堀越家は今川貞世(了俊)の末裔であり、当初は遠江守護職であったが、駿河今川家の家督相続争いで義元と敵対して逼塞し、後に河東の乱で井伊家と共に北条と組んで義元を挟撃しようとするも、武田信虎の介入で成功せず、事後に大きく所領を減らされていた。その為、今川との決戦を決意した時点で調略を進めていたのだ。
朝比奈泰朝は堀越貞基の攻勢を防ぎ切ったものの、今川勢は裏崩れ・友崩れを起こして敗走、国衆はそれぞれの城に逃げ帰った。武田勢はその場に留まった堀越勢に迎えられて悠々と渡河を終え、匂坂城包囲に向かった。
このような状況は、尾張・三河に進駐していた今川勢にも伝わり混乱をきたした。特に遠江で敵味方に分かれた 岡崎城代は城内での戦闘を起こしかねないほどの緊張と反目をきたしていた。そこに滝川一益の使者が訪れ、鷹司義信が武田信玄に仲介し安全を保障するので、岡崎城は松平竹千代に返し、それそれ帰国してはどうかというものであった。
鷹司義信は、この度の合戦は鷹司家・近衛府・朝廷に関係のない、武田家と今川家の私戦であるという、言い訳にも成らない体裁を貫く心算だった。この為に、近衛府に出仕した三河国衆の遠江動員は行わず、滝川一益も国境を越えず陽動のみに徹した。
「尾張三河にいて孤立しかけている今川方」
三河岡崎城代 山田景隆・飯尾乗連・二俣持長
三河岡崎城在番 匂坂六郎五郎長能
三河田原城代 朝比奈元智
尾張鳴海城主 山口教継・教吉
「御屋形様、今川勢およそ8000が葛谷城の後詰に入った模様でございます。」
「兵力はほぼ互角だな、信友、一当て敵の戦意を図れ、虎光は後詰を致せ。」
『は!』
穴山信友・武田家重臣
室住虎光・武田家重臣
成瀬正一・室住虎光の与力
石黒五郎兵衛・室住虎光の与力
「正一、騎馬隊を率いて何時でも横槍を入れられるように致せ。」
「は!」
「五郎兵衛は大弩砲を準備し、今川勢に撃ち込めるようにせよ。」
「は!」
武田信玄は甲斐・信濃佐久の専業武士を8000兵を動員して富士川を攻め下った。北条や関東管領・上杉に備えの兵を残さねばならない為、信玄としては限界に近い動員だった。一方の今川義元も、三河から攻め寄せる義信に対抗しようと兵を集めていたが、信玄に背後を取られることを恐れ、岡部正綱に集まっていた兵の内8000を与えて、葛谷城の援軍に向かわせた。
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義信は護衛の近習・小姓・傷病兵・人質を率いて諏訪に戻った。一方諏訪からは、今年戦陣に加わることを認められた新兵(騎馬鉄砲隊・鉄砲足軽隊・弓足軽隊・黒鍬輜重隊)が、膨大な軍需物資とともに撤退してきた軍勢に加わった。今回の今川戦は強引な部分が多く、今上帝や朝廷に対する名分を立てるため、鷹司義信と三条公之は軍には加わらなかった。
総大将には武田信智が立てられたが、実質指揮を執るのは副将兼陣代に抜擢された飛影だった、同じく副将に抜擢された飯富源四郎(山県昌景)と共に、信智が養子先で誇れるくらいの軍歴・功名を得るための助けをすることとなった。
軍勢3万2000の先陣任されたのは、長年青崩城砦群を守ってきた楠浦虎常だった、虎常は調略していた国境の今川方国衆・地侍を味方に加えて、8000兵を指揮して一気に遠江に乱入した。三河国衆の裏切りと鷹司軍の三河進駐、公家衆の逃亡、武田信玄の駿河侵攻と度重なる事件に著しく動揺していた遠江国衆は、武田軍の伊那口からの侵攻と日名地・平賀・奥山の寝返りに衝撃を受けた。
「楠浦虎常が調略した国衆」
裏鹿城 日名地家
平賀屋敷 平賀助太夫
高根城 奥山民部少輔貞益
水巻城主 奥山美濃守定茂
大洞若子城主 奥山加賀守定吉
小川城主 奥山兵部丞定友
飛影は楠浦虎常と8000兵を小川城に入れ、降伏臣従した国境の元今川国衆を虎常の寄騎とした。その上で犬居城一帯に勢力を持つ天野一族は後回しにして、参陣を内諾している井伊直盛の井伊谷城まで一気に進行した。田上善親( 元井伊直親)と事前に話し合っていた井伊直盛は、武田軍の遠江侵攻を受けて即座に降伏の使者を送っていた。井伊谷城に入った武田軍は、二郎法師の鷹司義信側室輿入れを正式に受け入れた。そしてこの事を井伊・奥山・平賀・日名地を通して遠江国衆・地侍に知らせ降伏を促した。
井伊家の今川離反・二郎法師鷹司輿入れは動揺していた遠江国衆に止めを刺した。今川家に忠誠心厚い掛川城主・朝比奈泰能・泰朝親子、宇津山城・朝比奈氏泰、二俣城主・松井宗信などの他、駿河に近い天竜川左岸の国衆は表面上は今川方に残ったものの、天竜川右岸の大半国衆は武田家に降伏臣従してきた。
しかし血縁の関係で仕方なく今川方に残る国衆もいた。朝比奈泰能と婚姻関係にある佐久城主・浜名頼広と、頼広の妹を妻に迎えている日比沢城主・後藤佐渡守直正だった。そこで狗賓善狼が指揮下の僧兵8000と共に包囲した。そして使者を送り、降伏臣従すれば今川につき武田と敵対している縁戚の朝比奈一族を何があっても助命すると約束した。大軍の中で孤立し、援軍の見込みのない浜名頼広が降伏臣従を誓い、頼広の使者を受けた後藤直正が続いて降伏臣従した。その後、三河国境で浜名湖沿岸にある宇津山城の朝比奈泰長を包囲した。
何度も降伏の矢文をを射込むも反応がなかった。
「頼広殿、約束をした舌の根も乾かぬうちに悪いが、ここまで降伏を拒まれると攻め落とす他ない。」
「判っております善狼殿、ただ城攻め中に降伏して来たり、生け捕りになった場合は助けてやってもらえませんか?」
「それは承知しておる、何があっても助命すると約束している、それを反故にしたりはせんよ。」
善狼は大弩砲を用意して火攻めにした。肥松を先につけた十文字大竹矢を矢継ぎ早に撃ち込み、更に周囲から鬨の声をあげて城兵の心理を揺さぶった。味方の損害を出さないように、籠城兵の逃亡を催す助命の矢文を次々と射込んだ事で、夜陰に乗じて宇津山城を逃亡する兵が続出した。守り切れぬと判断した朝比奈泰長は手勢をまとめて討って出た、泰長は獅子奮迅の戦いをするも力尽き捕らえられた。
「泰長殿、我はこの軍勢の大将を任せられた狗賓善狼と申す者ですが、御貴殿は今川家の家臣として1人の武人として天晴の戦いをなされました、ここまで御働きに成られれば武士の面目は十分でしょう、降伏して武田に仕えられたらどうです?」
「お褒め頂いたのは嬉しきことなれど、我も今川家の武人、おめおめと生き恥を晒す訳には参らん、ここは死なせて頂きたい。」
「うむ、天晴な覚悟ではあるが、朝比奈一族全ての助命を条件に浜名殿・後藤殿に味方してもらっておる、彼らの心を汲み取って頂きたい。それと共に御貴殿がここで切腹されれば、他の朝比奈一門も切腹する道を選ばねばならなくなる、ここは一門衆の為にも死ぬ事を思い止まっては如何かな?」
「浜名・後藤の事は片腹痛し! 己が命惜しさの裏切りを我の助命にかこつけるなど、武人の風上にも置けぬ恥さらしである。されど我が一門の事を考えてくださる狗賓殿には心から感謝申す。しかしながら事ここに至っては、我が武名に傷がつくことを恐れる、我を思ってくれるなら切腹させて頂きたい。」
「重ね重ね天晴である、真に残念なことなれど、貴殿の武名を汚す事は我も望まん、浜名殿の後藤殿のそれで宜しいな?」
『は!』
朝比奈泰長は切腹して果てた。
「主な今川方・天竜川左岸」
掛川城 朝比奈泰能
朝比奈泰朝
光明城 朝比奈太郎泰方
二俣城主 松井宗信
匂坂城主 匂坂六郎五郎長能
天方城主 天方山城守通興
飯田城主 山内通泰
堀越城主 堀越貞基
久野城主 久野宗忠
加賀爪館 加賀爪政豊
高天神城主 小笠原長忠
外郭城砦群(獅子ヶ鼻砦・三井山砦・小笠山砦・中村城山砦・能ヶ坂砦・火ヶ峰砦)
馬伏塚城主 小笠原長忠
岡崎城主 四ノ宮右近
犬居城 天野氏宗家の天野景泰・元景親子
篠ヶ嶺城 天野宮内右衛門藤秀
向笠城主 向笠資易
「今川方・天竜川右岸」
宇津山城主・朝比奈泰長
「武田寝返り方・天竜川右岸」
曳馬城主 飯尾連竜
向笠城主 向笠資易
佐久城 浜名頼広
日比沢城 後藤佐渡守直正
『遠江・小川城・楠浦虎常』
「貞益殿、天野の返答はどうじゃ?」
「いまだ去就に迷っておるようでございますが、可成り此方に傾いているようでございます。」
「皆の衆、今川は三河を失い遠江の半分も失った。もはや今川に未来は無いであろう事はわかるな?」
「遠江は元々斯波家が守護であった、そこを今川が攻め取った、この間遠江国衆は敵味方に分かれて苦渋を耐え忍んできたであろう、ここは国衆同士争うことなく武田に味方してはどうか? 武田に味方するならば、鷹司卿に近衛府出仕を推挙しよう。その事、天野一門にも強く伝えて貰いたい。」
『は!』
楠浦虎常は配下に入った日名地家・平賀家・奥山家を使って調略を進めた。特に前線を接している天野一門の調略には力を入れ、山岳部から駿河に侵攻する道を確保しようとした。
『遠江・天竜川』
武田軍と今川軍は天竜川を挟んで対陣していた、武田軍1万6000兵に降伏臣従した国衆1500兵が加わっている。一方今川軍は駿河からの援軍が間に合わず、天野勢も楠浦虎常に備えているため、田仕事に忙しい農民を無理やり動員しても3000兵弱が限界であった。
「浮橋を掛けよ!」
武田信智が事前に打ち合わせた通りの下知を下す、大竹盾に守られた足軽が、多数の竹を束ねて作った浮橋を川に浮かべようとする。
一方今川勢が川岸に近づき矢を射かけ、武田の架橋を邪魔しようとする。
天竜川の中でも特に川幅の狭い所での攻防で、大竹盾に阻まれ今川の矢は効果を表すことができず、徐々に川に浮橋が浮かべられていく。
今川勢は、武田勢が橋を渡った直後に包囲殲滅すべく、半円形に厚く兵を配備して行く。
「放て!」
又も武田信智が事前に打ち合わせた通りの下知を下す、今川が渡河阻止の為に密集するだろう事は予測できていたので、大弩砲を準備していたのだ。今川勢の密集陣形に十文字大竹矢が矢継ぎ早に射込まれた。狼狽混乱する今川勢で裏切りが勃発した、堀越城主・堀越貞基が指揮を執っていた朝比奈泰朝に襲い掛かったのだ。
堀越家は今川貞世(了俊)の末裔であり、当初は遠江守護職であったが、駿河今川家の家督相続争いで義元と敵対して逼塞し、後に河東の乱で井伊家と共に北条と組んで義元を挟撃しようとするも、武田信虎の介入で成功せず、事後に大きく所領を減らされていた。その為、今川との決戦を決意した時点で調略を進めていたのだ。
朝比奈泰朝は堀越貞基の攻勢を防ぎ切ったものの、今川勢は裏崩れ・友崩れを起こして敗走、国衆はそれぞれの城に逃げ帰った。武田勢はその場に留まった堀越勢に迎えられて悠々と渡河を終え、匂坂城包囲に向かった。
このような状況は、尾張・三河に進駐していた今川勢にも伝わり混乱をきたした。特に遠江で敵味方に分かれた 岡崎城代は城内での戦闘を起こしかねないほどの緊張と反目をきたしていた。そこに滝川一益の使者が訪れ、鷹司義信が武田信玄に仲介し安全を保障するので、岡崎城は松平竹千代に返し、それそれ帰国してはどうかというものであった。
鷹司義信は、この度の合戦は鷹司家・近衛府・朝廷に関係のない、武田家と今川家の私戦であるという、言い訳にも成らない体裁を貫く心算だった。この為に、近衛府に出仕した三河国衆の遠江動員は行わず、滝川一益も国境を越えず陽動のみに徹した。
「尾張三河にいて孤立しかけている今川方」
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