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武田義信

長島一向宗・年末棚卸

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 12月『美濃・河内・上流輪中』

 居住区の一部を奪われた長島一向宗の反撃は激烈を極めた。自治自営地域であったため、民といえども足軽並みの武具を皆装備していた。上級宗徒は最早武士と変わらぬいでたちだ。迎え打つ鷹司軍美濃衆の中には、僅かながらも鉄砲を持っている国衆もいた。普段は国衆単位で戦うのだが、今回は鉄砲・弓に関しては、近衛府としで集中運用を指示して迎撃戦を展開した。堤防兼用土塁の上に柵や木塀を設置し、射程距離に達した敵に面制圧弓射を喰らわせた。弓矢を掻い潜り近づく敵は、柵や木塀を挟んで長柄で叩いたり、槍衾で防いだ。更に急遽テストした投石に優れた者で投石隊を編成、数に限りがある矢を節約する為、投石による迎撃も戦術に加えた。

 
 12月『美濃・長良川左岸・織田信長』

 一向宗の離脱で逆撃は厳しくなった、だがまあこれで舅殿も一息ついただろう、義信も無理な渡河攻勢はかけてこない、春までに川沿いに柵と土塁を築けば少なくとも現状維持ができる。その為にも、一向宗の半数はこちらに戻ってもらわないとな。願証寺の証恵殿で話がつかなければ、大阪本願寺の証如殿に交渉せねばならん。舅殿が力を失えば、信勝などの家中の者が謀反に動くだろう、このまま美濃に手勢を取られるのも問題が多い、織田信安・織田信清・織田信友が大人しくしているとは思えん。

 「政秀!」
 
 「は!」

 「義信が打ち込みおった竹と同じ物を職人に作らせよ!」

 「あの大きな竹で出来た矢でございますな、あれは現物がございますから作れましょうが、飛ばすための仕掛けがわかりませんが?」

 「一向宗に奪わせよ!」

 「一向宗は河内を守るために戻っておりますが? それにそのような危険で益の無い話を聞きますでしょうか?」

 「あれを放置すれば河内を失う事になるから、奪い取り共に同じものを作り備えようと伝えよ、それと同時に弓師に大きな弓を作らせてみよ。」

 「承りました。」

 しかし何故義信は信勝や信安・信清・信友と手を組まない? 手を組めば勝てる見込みが高くなるのに? 組まなくとも勝てると思っているのか? まだ何か新しい武器や軍略を隠し持っているのか? 尾張の国衆と手を組まないのは、尾張を完全に直轄化するためだろう。尾張一国を蔵入り地に出来れば義信の力は更に増すだろう。美濃の国衆の中には城地を安堵された者もいるが、これは土岐家に叔父を嗣養子に送り込んだから、叔父に力を待たせ過ぎない意味もあるだろう。今から天下を統一してからの事を考えているのか? 馬鹿にしてやがる、そう易々と尾張美濃を取られてたまるか! 舅殿に美濃後継者に指名させて 尾張美濃を手に入れ天下に打って出るのは俺だ!

 「成経! 馬鹿どもに義信が織田家一門の根切りを狙っておると伝えてこい。」

 佐々成経・織田弾正忠家家老


 12月『美濃・稲葉山城・斎藤道三』

 「光安、細川と六角は動きそうか?」

 「確かな言質は与えませんでしたが、国境に兵を集める準備はしておるようでございます。」

 「美濃に入った後で居座る可能性はあるか?」

 「細川は義信からの銭が止まり、蔵入り地を欲しがっております。西美濃衆を追い出し居座る可能性が高いと思われます。六角は西美濃衆を城地安堵で味方に引き込もうとするでしょう。」

 「六角が入れば西美濃衆が離反する恐れがあるが、細川なら反発するというのだな。」

 「はい。」

 此方としては細川が来た方が有利だ、西美濃衆の離反も防げるし義信の圧力を減らせる。だが細川も強かだ、先の反鷹司包囲網も将軍家に御内書を出させて、自分は御教書を出さなかった。義信に言い訳できるようにしている、まあ義信が許すとは思えんが。細川は美濃に入って直接義信と争うのは嫌うだろう。六角はどうする? 西美濃衆を城地安堵を条件に調略するか? その上で義信に斉藤攻略の同盟を申し込むか? 義信はそれを受けるか? 

 六角も先代なら、美濃に攻め込み西美濃衆を配下に加えたうえで、儂と組んで義信を叩いただろうが当代は今一動きが遅い、奴なら観音寺に残ったまま西美濃衆を調略しようとするだろう、ならばまだ打つ手はある。頼芸の大桑城と揖斐城を一向宗の寺にくれてやろう、条件は自力で城を落とすことと、あの大竹矢を打ち出す仕掛けを奪って渡すことだな。交渉次第で苗木城と周辺城砦領地を暮れてやるか、あそこを一向宗に与えれば、再度義信が攻め込んできたときの盾になる。そうだな、それなら大桑城と揖斐城は惜しい、与える城は飛騨・木曽・信濃との国境の城にしよう、平野部の城を一向宗に渡すと後々困ることになるな。

 信長もよく来てくれたな、早く孫を儲けて欲しいものよ。そうなれば隙を見て殺して、弾正忠家を手に入れられる。信長が尾張を統一してから乗っ取る心算だったが、取りあえず今は精々働いて貰わねばならん、将来は美濃を譲り渡すと持ち上げておくに限る。
 

 12月『河内・願証寺』

 「下間殿、どう思われるか?」

 「証恵殿、御本山に相談せねばなりませんが、何時でも動けるように準備だけはしておきましょう。」

 「だがな下間殿、城を寺地に譲ると言っておるが、そもそも義信に奪われておる城ではないか、しかも我らが奪った城の大半を斉藤に譲らねばならん、あの大竹を打ち出す仕掛けも差し出せとは勝手すぎるではないか。」

 「まあまあ証恵殿、御本山におられる御門跡様の御判断次第ではありますが、美濃国内での布教を支援すると約束しておるし、我らも奪った城を約束通り易々と返すこともございますまい。その時の状況次第でございます。」

 「なるほど、独自で奪って居座り、更に良い条件を引き出すのですな。」

 「もっと強く伊勢・尾張・美濃の宗徒に参加を呼びかけましょう。特に六角家の影響下にある北伊勢からは地侍に参加してもらわないといけませんな。」

 「北勢四十八家(実際は全部で53の家系だそうです)に参加を呼びかけましょう。北勢衆が奪った城は彼らに守らせればいいでしょう、斉藤殿が返せと申してもそう易々とは返しますまい。」

 「そうですな、梅戸殿の様に六角と縁続きの家には、斉藤殿も強くは出れますまい。間を我ら一向宗が取り持てば、約束より多くの城を寺地に譲りましょう。北勢衆の多くは信心深い者も多い、彼らが美濃に根を張ってくれるのは好都合。」


 12月『美濃・河内・上流輪中』

 一向宗10万は損害を恐れず攻めかかって来た。奪われた河内の地を取り返すべく遮二無二攻めかかって来た。満潮に時間に合わせて小舟で木曽三川を遡ったり、揖斐川右岸から5万の宗徒を上流に進撃する動きを見せ、我が軍の退路を断つ動きすらした。それに対しては若殿は、騎馬鉄砲隊を素早く派遣し何時でも渡河時に迎撃できるようにした。また今までは直ぐに籠城に移れるように、守備的対応をしていた西美濃衆が、城を出て一向宗に合流して本陣を突くために渡河する姿勢を見せた。

 木曽三川の中州群での戦闘は熾烈を極め、双方に数多くの死傷者がでた。大量の重軽傷者は本陣に運ばれていった。

 「重継殿、我ら僧兵が殿を務めますから陣払いされよ。」

 「いやそうはいかん、先陣を賜ったにも拘らず、一寸の城地を得ることなく逃げ帰るなどできん!」

 「若殿の御言葉を忘れられたのか、敵の勢いが強ければ本陣に誘き寄せ、包囲殲滅する策であったではないか、それにこれ以上美濃衆だけに被害を出すことを、若殿が御許しになると思われるのか?」

 「う! それは・・・・・」

 「とにかく今は下がられよ、若殿の御名に傷がついてしまう!」

 「申し訳ない、後は頼む。」

 「任されよ!」


 12月『美濃・義信本陣』

 「水を持て!」
 俺は負傷した美濃衆の処置にとりかかった。
 
 「痛いが我慢せい!」
 この者の傷は既に化膿していた、煮沸消毒したはさみと藁たわし・糸瓜へちまたわしで、傷口の壊死部分をこそぎ落とした。藁たわしは馬用に大量に持ち込んでいたし、糸瓜たわしは俺も含めた上級武士がそれぞれ自分用に持ち込んでいた。

 今回の泥臭い叩き合いの戦闘で、この時代の医療の低さを改めて思い知った。今までは遠距離攻撃や銭で調略して圧勝してきた。今回の中州での戦闘は泥まみれになって組討ちすら行われた、その為身体中の傷に不潔な泥が入り込んでしまった。抗生物質など無いこの時代に、この状態は致命的だった、前世で子供の頃にだけ気を付けていた破傷風を思い出した。俺は急いで清潔な水を用意したかったが、煮沸洗浄した水を大量に用意する事は不可能だった。仕方なく川の水で丁寧に傷口の泥を洗い流し、既に傷口が化膿壊死している場合は、激痛を我慢させて感染・壊死組織を除去し傷口を清浄化するデブリードマンを行った。最後に高濃度麦焼酎で消毒して、出来る限りの処置をとることにした。そしてその全てを近習衆・近衛武士団に学ばせた。

 最早値崩れを恐れて生産調整している場合じゃない、品質が落ちてでも大量の医療用アルコールを生産しなくてはいけない。

 12月『年末棚卸』

 古くから俺の配下にあった、信濃衆などが近衛武士団と統合してほしいと言い出した、まあ確かに国衆武士団より近衛府の武士団のほうが名乗りがいい、錬度にも問題がないので統合することにした。元難民から続々と将兵が現れてきた、御蔭で安心信頼できる部隊を新設できる。

『義信直轄力』

甲斐水田  1100町(1万1000反)
甲斐畑    700町(7000反)
信濃伊那郡 11万石
信濃諏訪郡  3万石
信濃木曽郡  2万石
筑摩郡    4万石
水内郡    5万石
埴科郡    2万石
安曇郡    2万石
高井郡    2万石
飛騨     3万石
「影響下にある国」
美濃    27万石
加賀     5万石
佐渡    1万石(鉱山開発最優先)
越中    35万石
越後    35万石(反抗的・独立心旺盛な国衆多し)
陸奥    山之内一族・浪岡一族
出羽国   30万石(反抗的・独立心旺盛な国衆多し)

取れ高
玄米    32万5000石
雑穀    65万0000石

備蓄兵糧
玄米    70万石
麦    135万石

焼酎生産力
杜氏44人
杜氏1人当たり3石甕1000個前後
44×3×1000=13万2000石
13・2万石×(1合卸値18文)=237・6万貫文分

艦船
戦闘ジャンク船  108艦
交易ジャンク船  108船
小早船       80船
関船        16船

鉄砲   1万2315丁
三間槍  3万4000本
三間薙刀 1万4000本
弓    2万6000張
弩    3万9000器
打刀   5万2000振
太刀   1万9000振
足軽具足 6万1000個
大型弩砲   1100基
移動大型弩砲  600其

近衛足軽鉄砲隊   2000兵
近衛足軽弓隊    7000兵
近衛足軽槍隊  1万9000兵
近衛武士団   1万8000兵
近衛騎馬鉄砲隊 1万0000騎
近衛黒鍬輜重兵 1万1000兵

繁殖牝馬 1883頭
訓練育成中の軍馬
0歳馬  1802頭
1歳馬  1723頭
2歳馬  1473頭
3歳馬  1367頭
4歳馬  1209頭
5歳馬  1184頭

繁殖牝牛 1425頭
育成中の牛
0歳牛  1401頭
1歳牛  1331頭
2歳牛  1028頭
3歳牛   852頭
4歳牛   697頭
5歳牛   636頭

合戦・牛馬・武具・米麦・恩賞・裏工作費用など歳出
253万貫文

『軍資金』
使用不能な武田貨幣
金銀銅貨合計 1億1000万貫文(10文黄銅貨が特に使えない・半分は信玄保有)

使用可能な精銭・永楽銭
202万貫文
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