上 下
31 / 246
武田義信

善信軍団創設

しおりを挟む
  『躑躅ヶ崎館 善信郭 大広間』

 俺は、新たな近習衆として信玄や譜代重臣達から押し付けられた子供達を教育していた。主だった者は、小山田信成8歳、こいつ裏切り者で大嫌いだったけど次男だったんだな。穴山信嘉、裏切り者梅雪の弟か、しかし4歳は早すぎるだろ、保育園じゃないんだよ。曽根虎盛、長坂昌国、松尾信是、下条信俊、信盛、信康、友光、家長、信秀、、跡部昌忠、長坂勝繁、鮎川勝繁、漆戸虎光、市川昌房、跡部昌秀、楠浦虎常、跡部昌長・加津野昌世、於曾信安、甘利昌忠、甘利信康、米倉重継、駒井昌直、市川、楠浦氏などだ、元々の近習衆・元服した即戦力・人質同然の保育園児

 だぁ~~~~勘弁してくれ、やりたいことが山ほど有るんだよ。俺のやり方を知ってる、古株近習を教育係として新人近習を俺流に洗脳する。特に小山田と穴山は徹底的に洗脳だ!

 だがな~~、これも信玄の親心と言うか苦肉の策なのかもしれないな。俺への譜代衆に不満解消と忠誠心育成だけかと思っていたんだけど、保育園児の人選見ると信玄の苦悩苦心苦労がわかるわ! 

 信虎時代からの打ち続く合戦で、当主が討ち死にしたり不具廃疾ふぐはいしつになった家臣の子供が多いんだよね、微禄家臣で当主が戦えないわ、農耕できないわじゃ、召し放ちか極貧暮らしだよな、甲斐なら奴隷落ちも有り得るからな。

 わかったよ父ちゃん、セーフティーネットは任せろ!


 『躑躅ヶ崎館 善信郭 小軍議室』

 「黒影、説明せよ。」

 今日の議長は甘利信忠、元服済み近習全てに輪番制で議長をさせる事にした。そうすれば、考える力も調整能力も鍛錬されるかもしれない。元の身分に関係なく、能力での優劣に気づいてくれたらいいけど、これは無理だな。

 諜報部隊も改変した、対忍者の護衛役は武芸優先部隊、家臣の動向を探る内諜部隊、諸国の動向を探る外諜部隊、荷役などの商いの商諜部隊、実際は横の繋がり重視で縦割り弊害は無くしてる。

 飛影は秘中の秘、近習達の前で情報を説明する役の影を任命した。
 人数・性別・年齢は秘密です。

 「は、上野新田に逼塞していた太田資正が北条の隙を突いて松山城を急襲して奪回いたしました。」

 「関東はまだまだ戦いが続くな。」

 「は。」

 「皆は、どう思う。」

 「御屋形様の御考え次第でございますが、信濃の国衆を支援している関東管領の上杉憲政を牽制する意味でも、北条との誼は継続するべきかと考えます。」

 楠浦虎常が答えたか、父親が信虎爺ちゃんの側近だったから没落したんだよな?
 それとも、能力や政策方針の相違か? 
 だが、この意見なら真っ当な戦略眼だよな。

 「反対意見は有るか? 無いなら次だ。」

 「三河は、相変わらず今川と織田が争っております。」

 「事の起こりはなんですか?」

 鮎川勝繁か、最初の起こりから探るか、見所はあるが大局的な判断力は有るのかな?

 「小豆坂の合戦の後、織田信秀の尾張・三河国境地帯に対する影響力が強くなりました。三河国碧海郡の刈谷城を中心に国境地帯に勢力を持つ国衆の水野信元が、岡崎城主・松平広忠に妹の於大を嫁がしていましたが、絶縁して今川家から離反して織田家に従いました。」

 「その後づっと合戦をしているのですか?」
 鮎川勝繁は好く話を聞くことが出来るのかな?

 「いえ、一旦収まったのですが、松平広忠が織田家に対抗するため、義元殿に変わらぬ臣従の証として、嫡男竹千代(6)を人質として駿府の義元殿へ送ろうとしたのですが。駿府への護送の途中に立ち寄った田原城で義母の父・戸田康光に裏切られて、織田家へ1000貫文で売られてしまったのです。」

 『ひでぇ~~』

 皆一斉に声が出てしまった。

 「何故戸田は裏切ったのです? 義母の父と言う事は、水野の妹が離縁されてから輿入れしたのですよね? それとも離縁後も残っていたかですか? それ相応の覚悟で松平と縁を結び続けた筈ですが?」

 ほう、やるね鮎川! 君は軍師候補!!

 「それは昨年に、今川義元殿が戸田氏の一族である戸田宣成、戸田吉光の一族を滅ぼしたため、何れは自分達も誅されると織田家に寝返ったものと思われます。」

 「それで、戸田一族はどうなりました?」

 鮎川君冷静!

 「田原城の戸田康光は、義元殿の派遣した2万の大軍に攻められ籠城中であります。」

 「松平竹千代はどうしているのです?」

 「織田家で人質として暮らしているようです。」

 「松平広忠は今川家に忠誠を尽くす心算なのですね?」

 「織田信秀は、人質の竹千代を利用して広忠に対し今川家を離反して織田の傘下に入るよう説得したようですが、大叔父の松平信定が反乱した時に苦境を助けてくれた今川家に忠誠を尽くし、織田氏への徹底抗戦する心算の様です。」

 「武士として立派な心構えと言えますが、勝敗の行方はどちらが有利かを考慮した上の判断でしょうか?」

 ほう、松平広忠の武将としての力量判断力を推し量るか、武田に取り込むべき人材かを選別してるなら大したものだ。

 「申し訳ありません、その判断はつきかねます。」

 「それで良いのじゃ、諜報担当が自己の推測を加えて情報収集しては、客観的な情報ではなくなる、今まで通り事実だけを収集してくれ。土地の噂や民衆の推測は、噂推測として情報を上げてくれ。よくやってくれた。」

 俺は黒影を褒めた上で、皆に情報の客観性の大切さを説く。

 「では皆の者、我が武田の取るべき策を述べよ!」

 甘利信忠の発言の後、喧々諤々の論戦になったが、新規近習で禄も低い鮎川は発言の時期を計っているようだ、いいね~~~。

 「鮎川、御前はどう思う。」

 俺は発言を促して更に鮎川の判断力を試してみる。

 「あくまでも御屋形様の御考え次第では有りますが、武田家は信濃攻略を最優先としております。三河を巡る争いには、国境線を堅守するが一番と考えますが、万が一織田家が遠江まで攻め取るようなら、信虎様や定恵院様・今川氏真様とのつながりも有ります。三河に攻め入り切り取れるように準備しておくのが宜しいのではありませんか?」

 凄いね、信玄への配慮を最初にしておき、情勢判断を的確に説明した上で、現実路線と将来の可能性を考慮した最善策を提示する、

 軍師決定!

 でもまあもう1つ試験問題として具体策も出さすか。

 「具体策は?」

 「はい、天竜川を下ると今川殿の遠江の城を犯してしまうかもしれません、ですので別所街道を下り設楽城・別所城を攻略し長篠城に至るか設楽城から田峯城に向う策が1つ。2つ目は根羽砦を拠点に飯田街道を下り武節城を落とし美濃を窺う策。3つめは木曽に出て落合川を下り美濃に出る策です。」

 そうか! 

 俺地理に疎いけど、木曽を攻略すれば美濃を狙えるのか。いや、飛騨を攻略すれば、飛騨川や長良川を下って郡上郡の八幡城や木越城・犬地城まで攻略できるかもしれない。

 「鮎川、木曽を落とせと言いたいのだな?」

 「はい、後背の安全を確保しなければ、好機を逃してしまいます。」

 「御屋形様に伺いを立てなばならん、共に説明いたせ!」

 「はい、承りました、御任せ下さい。」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

すてられた令嬢は、傷心の魔法騎士に溺愛される

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,151pt お気に入り:69

魔法武士・種子島時堯

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:239

アウトサイダー

現代文学 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

笑うヘンデルと二重奏

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

こんにちは、女嫌いの旦那様!……あれ?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:2,823

私はあなたの婚約者ではないんです!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:78pt お気に入り:6,171

処理中です...