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イスパニア本格開戦

合流

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1575年10月:ゴア要塞都市・武田信廉と子息達:第三者視点

「平太郎。よくぞ参った」
「父上の御役に立ちたくて、馳せ参じました」
「日ノ本から長旅御苦労であった」
「異国に渡って戦っておられる父上に比べれば、いかほどの事もありません」
「そうか、そうか。先ずは館に入ってゆるりとしようぞ」
 ゴア要塞都市の攻略に苦しむ武田信廉の下に、日本の領地を預かっていた嫡男・武田平太郎信澄が、援軍1万兵を率いてやってきた。
 日本で元服を済ませて、これが初陣の武田平太郎信澄だけでなく、シベリア戦線やアラスカ戦線から移動させられた、土岐信龍の嫡男・土岐辰就、次男・土岐辰貞、三男・土岐辰元、今川信智の嫡男・今川智居、次男・今川智意も援軍1万を率いてやってきた。
 桜井家などからも、各家2千の援軍が送られて来た。
 元服した成人男子が根こそぎ動員された形である。
 普通ではありえない事だった。
 別家を立てるべく、他の戦線で戦っていた次男以下を、当主と嫡男がいる戦線に送り込むなど、下手をすれば元服をした男子全てが討ち死にする事も有り得るのだ。
 普通は血脈を残すために、別家を立てた次男以降は違う戦場で戦わせるのが、武田諸王国家のやり方だ。
 自分達が難攻不落のゴア要塞都市を攻めている間に、他の諸将が順調に侵攻しているのと併せて考えれば、棄兵にされているのが明確になっていた。
 信龍と信智は、国王陛下と王太子殿下をここまで激怒させているとは思っていなかった。
 最初に口火を切ったのが、陛下の同母弟である信廉なので、これくらいは許されると思っていた。
 国王陛下の弟なのだから、信繁公のように、五百万石を望んでも許されると思っていた。
 この状況となり、援軍に来た子息や家臣達に、日ノ本での自分達の評判と王国軍の配備を確認した上で、今後の方針を決めることにした。
 だが最初から覚悟していた信廉は、嫡男と合流出来たことに安堵していた。
 陛下や信繁兄とは、父も母も同じくする同母弟なのだ。
 陛下も信繁兄も素晴らしい功名をあげているが、自分の能力がそれほど劣っているとは思っていなかった。
 機会さえ与えられたら、信繁兄と同じだけの功名をあげられると思っていた。
 それが、与えられるのは、功名の上げる機会のない場所ばかりだった。
 しかも、何時も裏切りを警戒されていた。
 自分が裏切っても、義信が防げる場所にばかり置かれた。
 それに比べて信繁兄は、何時も大切な戦場に送られた。
 義信は、信繁兄が裏切るとは全く考えていなかった。
 何故ここまで差を付けられなければならないのだ。
 妾腹の甥達が五百万石の大領を与えられ、妾腹の弟達までが百万石の大領を与えられている。
 信綱、信龍、智居、信顕の息子達は、既に元服して初陣をすませ、赫々たる功名をあげている。
 妾腹の弟達の子供が、既に武名を上がているのに、俺の嫡男はようやく元服したところだ。
 このままでは、平太郎まで俺と同じ立場になってしまう。
 ここで立ち上がらなければ、俺も平太郎も一門衆のなかでも末席となってしまう。
 それくらいなら、一か八か、天竺の王を目指してくれる。
 信廉は心理的に追い込まれていたのだった。
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