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イスパニア本格開戦

迎撃

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1575年4月:ゴア要塞都市・ドン・アントニオ・ダ・ガマと側近:ドン・アントニオ・ダ・ガマ視点

「ふん。貴様らが来ることなど先刻承知だ。叔父上の敵をうってやる」
「閣下。敵が西門前に集結しています」
「大砲の弾と石つぶてを、たっぷりと食らわせてやれ」
「はい」
 日本の兵が、ゴアを狙って来ることは予想出来た。
 此方の侵略が失敗した以上、力がある者なら反撃してきて当然だ。
 アタイデ叔父上には十分忠告していたのだが、黄色人蔑視の悪癖から抜け出せないでいた。
 まあ、無様に人質になる事なく、戦死してくれたから、ガマ家の名誉は最低限守られたが、マラッカを奪われたのは、恥と言うしかない。
 ここはゴアを護りきる事で、ガマ家の名誉回復としたい。
 だが、勇ましいとは言え、やはり蛮族だ。
 マカオ、マラッカ、ジャカルタを落としてから、ゴアに来るまでに時間をかけすぎだ。
 これだけ侵攻速度が遅ければ、万全の準備を整えることが出来た。
 陛下も日本兵の事を気にされ、十分な援軍を送って下さった。
 援軍の貴族や将兵を満足されるために、周辺への侵略を行ったが、御陰でゴアの周辺を広く支配下に置くことが出来た。
 以前から占領していたゴア、ダマン、サルセット島、ボンベイ、ディーウに数倍する地続きの領地を得ることが出来た。
 ゴアを中心にジウからチャウルまでの海岸線五百キロメートル以上、内陸に五十キロメートルの領地を占領している。
 他にも飛び地として、良港のマエ、カット、トリチュール、コーチンを支配下に置いている。
 日本兵がどれほど火力に優れていようと、港がなければ大砲を荷揚げする事など出来ない。
ドドドッドドーン
「何事か」
「日本兵の大砲です。凄まじい数の大砲です」
「馬鹿な事を言うな。港を奪われたと言う報告は聞いていないぞ」
「しかしながら閣下。実際に大砲を撃ってきています」
「狼狽えるな。日本兵の大砲など我らの猿真似だ。本物の大砲の威力を思い知らせてやれ」
「はい」
 おのれ日本兵。
 どこから大砲を持ち込みおった。
 だが、本国からの援軍を含めれば、バサイム要塞には一万もの貴族将兵が詰めておるのだ。
 日本兵が十万の兵で攻め込んできても、ビクともするモノではない。


『登場人物』

ポルトガル領インド総督・ポルトガル副王:ドン・バルトロメウ・ダ・ガマ

「ヴァスコ・ダ・ガマの子供」
長男:ドン・フランシスコ・ダ・ガマ:前インド総督
  :ヴィディゲイラ伯爵
 長孫:ドン・バルトロメウ・ダ・ガマ:現インド総督・バサイム要塞都市在住
  孫:クレメンテ・ダ・ガマ
  孫:デニウソン・ダ・ガマ
次男:ドン・エステヴァン・ダ・ガマ:前々インド総督
  :カルドナ子爵
  孫:ドン・アントニオ・ダ・ガマ:次期インド総督・ゴア要塞都市司令官
三男:パウロ・ダ・ガマ:1534年のマラッカ沖戦争で戦死
四男:クリストヴァン・ダ・ガマ:1542年戦死
五男:ペドロ・ダ・シルヴァ:前マラッカ長官
六男:アルヴァロ・デ・アタイデ:武田諸王家との戦争で戦死
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