上 下
225 / 246
イスパニア本格開戦

四郎

しおりを挟む
 まいったな。
 四郎まで南方に行きたいと言うとはな。
 だが、俺の考えをよく理解してくれているから、西伯利亜や阿拉斯加に行きたいとは言わないな。
 そう言えば、叔父達も西伯利亜や阿拉斯加に行きたいとは言わなかったな。
 四郎が先に警告してくれたのかな。
「四郎」
「はい」
「子供が小さすぎる」
「それは‥‥‥」
「四郎が敵に後れを取るとは思わない」
「はい。御任せ下さい」
「だが、疫病は別だ」
「それは‥‥‥」
「四郎に万が一の事があった場合、子供がどんなに小さくても、直領の相続に問題はない」
「ありがとうございます」
「だが、預けている与力地の支配権は奪わなければならん」
「はい。それは当然だと思います」
「四郎の家族や家臣にその事を命じる、俺の気持ちを考えろ」
「それは‥‥‥」
「子供達が元服して、西伯利亜や阿拉斯加で経験を積み、四国太宰師に相応しい部将になるまで待て」
「家族には私から話しますので、御許し願えませんか」
「なあ、四郎」
「はい」
「余が、平気で子供達を戦場に送っていると思うか」
「いいえ。御優しい殿下が、自分が後方に残られ、御子達だけを戦場に送られる心中いかに御辛いか、四郎にも推察出来ます」
「余が胸を掻きむしる思いで我慢しておるのだ。四郎も我慢せい」
「それは‥‥‥分かりました。殿下が天下泰平の為に、臆病者のそしりを恐れられず、御子達だけを戦場に送られておられるのですから、私も戦場に行くのを我慢いたします」
「そうか、理解してくれるか」
「はい」
「では、その間に子作りに励んでくれ」
「殿下」
「情け知らずなようだが、これからも合戦は続く」
「はい」
「一門衆からも多くの討ち死にが出るだろう」
「殿下‥‥‥」
「情け知らずな言い方だが、余の子供も四郎の子供も、数多く死んでいくことだろう」
「殿下‥‥‥」
「だが、死なさなければならないのだ」
「はい」
「余の子供や一門衆から討ち死にを出さなければ、武田一門の性根が腐るのだ」
「はい」
「驕る平家になってはならぬ。鎌倉源氏のように、北条に乗っ取られるわけにもいかぬ」
「はい」
「武田諸王国は、百年の太平を成し遂げなければならぬ」
「はい」
「多くの子供を討ち死にさせる心算で、多くの子供を作らねばならぬのだ」
「はい」
「すまんな。久し振りに四郎に会って、思いを語ってしまった」
「とんでもありません。殿下の本音を聞けてうれしいです」
「そうか。そう言ってくれるか」
「当たり前でございます。家臣共に白い目で見られる中、殿下の庇護がなければ、余も母も生きていけませんでした」
「四郎は弟なのだから、兄が護るのは当然だ」
「ありがとうございます」
「だから、無駄死には絶対させんぞ」
「はい」
「硬い話はこれまでだ。今日は互いの近況を語り明かそう」
「はい。兄上」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

転生 上杉謙信の弟 兄に殺されたくないので全力を尽くします!

克全
ファンタジー
上杉謙信の弟に転生したウェブ仮想戦記作家は、四兄の上杉謙信や長兄の長尾晴景に殺されないように動く。特に黒滝城主の黒田秀忠の叛乱によって次兄や三兄と一緒に殺されないように知恵を絞る。一切の自重をせすに前世の知識を使って農業改革に産業改革、軍事改革を行って日本を統一にまい進する。

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

神々に育てられた人の子は最強です

Solar
ファンタジー
突如現れた赤ん坊は多くの神様に育てられた。 その神様たちは自分たちの力を受け継ぐようその赤ん 坊に修行をつけ、世界の常識を教えた。 何故なら神様たちは人の闇を知っていたから、この子にはその闇で死んで欲しくないと思い、普通に生きてほしいと思い育てた。 その赤ん坊はすくすく育ち地上の学校に行った。 そして十八歳になった時、高校生の修学旅行に行く際異世界に召喚された。 その世界で主人公が楽しく冒険し、異種族達と仲良くし、無双するお話です 初めてですので余り期待しないでください。 小説家になろう、にも登録しています。そちらもよろしくお願いします。

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!

七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ? 俺はいったい、どうなっているんだ。 真実の愛を取り戻したいだけなのに。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

旅行先で目を覚ましたら武田勝頼になっていた私。どうやら自分が当主らしい。そこまでわかって不安に覚える事が1つ。それは今私が居るのは天正何年?

俣彦
ファンタジー
旅行先で目を覚ましたら武田勝頼になった私。 武田家の当主として歴史を覆すべく、父信玄時代の同僚と共に生き残りを図る物語。

処理中です...