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イスパニア本格開戦

処分①

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1575年1月:薩摩一宇治城・本丸義信寝室:鷹司義信と正室・側室:義信視点

「若様。どうか、義近に国を与えてやって下さい」
「諸王太子殿下。わらわからも御願致します」
「まあ待て。先ずはジャカルタ攻略の功名を明らかにして、その恩賞を考えなければならん」

 気持ちは分かるが、緑も九条も焦り過ぎだ。
 義近が縁談を断ったからと言って、それが直ぐに処分につながる訳ではない。
 確かに国を興す順番は遅れるが、愛する人を正室に迎えたいと言う、純粋な気持ちも理解出来る。
 今の武田家なら、そう言う我儘も許される。
 もっとも、国や領地を失う覚悟が必要だが。

「諸王太子殿下。信基殿はもちろん、義近殿も義正殿も義剛殿も、命懸けで戦ってくれました」
「そうだな。だがそれは、武田本家の人間として、当たり前の事だ」
「諸王太子殿下」
「九条よ。御前らしくないぞ」
「それは・・・・・」
「義近の事が心配なのは分かるが、先ずは家臣の功名からだ」
「はい・・・・・」
「緑もそれでよいな」
「はい・・・・・」

 武家でも公家でも、正室の子と側室の子では、待遇が全く違う。
 武家ならば、圧倒的な武勇で、正嫡を超えることも可能だが、公卿では血統が絶対だ。
 だからこそ、九条は側室の子供達が不憫なのだろう。
 確かに俺も、露骨に待遇に差を付けている。
 恐ろしい位の権力を手に入れた以上、それを正統に引き継がせないと。また戦国の世に逆戻りしてしまう。
 俺の知る歴史では、戦乱を招く原因の大半は、後継者を巡る争いだ。
 
「諸王太子殿下。功名を上げた家臣達は、正当に評価されるでしょうが、主君を失った陪臣達の中にも、功名を上げた者がいるのではありませんか。そう言う者達は、どうなさる御心算ですか」
「九条が気にしているのは、戦死した信春、信茂、信定の家臣達の事か」
「はい。武田家から見れば陪臣ですから、直接褒美を与える立場でない事は、重々承知しておりますが、どうかよしなに取り計らってあげて下さい」
「分かっているよ」

 信春の事は信玄に許可を取り、信茂と信定は、小山田本家と勝沼本家に、暗殺する許可を取って殺した。
 小山田と勝沼は、今回の謀叛未遂でだいぶ追い詰められていたから、下手に突くと暴発する可能性もあった。
 内々に殺して、家としては一切処分しない事で、恩を売る形になった。
 愛する子供を殺された事で、親には恨まれてるだろうが、戦国の世を生き抜いてきた武将なら、親の愛より当主として家を守る責務を優先するだろう。
 それが出来ず、襤褸を出すようなら、影衆が報告してくれるだろう。

「心配しなくても、合戦で死んだ者には無条件で加増があるから、本家の者が功名に合わせて正統に評価する。不当に評価したら、家を去られるだけだ」
「そんな事になったら、陪臣は困るのではありませんか」
「本当の武勇の士なら、余を始め、誰も放っては置かん。合戦で見かけた武勇に応じて、扶持を示して召し抱えるさ」
「そうですか。それを御聞きして安心いたしました」
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