216 / 246
イスパニア本格開戦
愛ゆえに
しおりを挟む
1574年12月:ジャカルタ攻略艦隊:武田義近と側近衆:武田義近視点
「余には、将来を約束した姫がいるのだ」
「その姫を正室に迎えたいから、今回の縁談を断ると申されるのですか」
「そうだ」
「諸王太子殿下の御子でありながら、その責務を放棄すると申されるのですか」
「全てを放棄する訳ではない。武士として、死を覚悟で合戦に臨もう。統治も手を抜かずに行う」
「縁談も、統治の一環だと理解されておられるのですか」
「理解している。だから領地は、縁談を組まない程度の広さで構わん」
「影衆の努力を無にされるのですか」
「それは申し訳ないと思っている」
「そのような事では、王国を建国する事は出来ませんぞ」
「覚悟している」
「それほど、兵部卿の御息女を愛されておられるのですか」
「知っていたのか。いや、そうだな。影衆に隠れて出来る事など何もないな」
大叔父上の御息女とは、諏訪にいた時から惹かれ合っていた。
互いの立場もあって、大っぴらに会う事はなかったが、最初は文のやり取りを行ってきた。
海軍で訓練を行う事が決まって、自分の気持ちを告げた。
姫も、余の事を愛していると告げてくれた。
初陣を飾る事が決まって、将来の約束をした。
その全てを、影衆には知られていた。
なのに、影衆は縁談を持ち込んだ。
余達の恋など、影衆には何の価値もなかったのだ。
いや、大叔父上と縁を結ぶ事は、武田の為にならないと判断して、引き離そうとしたのか。
余が大叔父上の御息女と縁を結ぶと、大叔父上の家に家督問題を持ち込んでしまうのか。
大叔父上の嫡男が家督を継ぐのが順当だが、御父上様が、余に家督を継がそうとしていると思われると、内乱の危機を招くかもしれない。
大叔父上が、御爺様や御父上と敵対することになったら、武田家の根本を揺るがす内乱になるかもしれない。
それを未然に防ぐためにも、無理にでも余に正室を迎えさえたかったのか。
だがこの恋を、諦められない。
家を捨てればいいという話ではない。
いや、余も姫も、簡単に立場を捨てられるような、軽い家に生まれていない。
武田諸王家は、元に匹敵する国になるだろう。
大叔父上の家は、金や遼に肩を並べる国になるだろう。
それぞれに何の悪影響も与えず、姫を正室に迎えるには、現地の姫を正室に迎えなくていい土地を占領しなければならない。
そんな都合のいい国は、早々有るモノではない。
そこは矢張り、影衆に教えてもらわねばならない。
そして何より、諸王陛下と父上様の許可をもらわなければならん。
「爺。頼みがあるのだ」
「余には、将来を約束した姫がいるのだ」
「その姫を正室に迎えたいから、今回の縁談を断ると申されるのですか」
「そうだ」
「諸王太子殿下の御子でありながら、その責務を放棄すると申されるのですか」
「全てを放棄する訳ではない。武士として、死を覚悟で合戦に臨もう。統治も手を抜かずに行う」
「縁談も、統治の一環だと理解されておられるのですか」
「理解している。だから領地は、縁談を組まない程度の広さで構わん」
「影衆の努力を無にされるのですか」
「それは申し訳ないと思っている」
「そのような事では、王国を建国する事は出来ませんぞ」
「覚悟している」
「それほど、兵部卿の御息女を愛されておられるのですか」
「知っていたのか。いや、そうだな。影衆に隠れて出来る事など何もないな」
大叔父上の御息女とは、諏訪にいた時から惹かれ合っていた。
互いの立場もあって、大っぴらに会う事はなかったが、最初は文のやり取りを行ってきた。
海軍で訓練を行う事が決まって、自分の気持ちを告げた。
姫も、余の事を愛していると告げてくれた。
初陣を飾る事が決まって、将来の約束をした。
その全てを、影衆には知られていた。
なのに、影衆は縁談を持ち込んだ。
余達の恋など、影衆には何の価値もなかったのだ。
いや、大叔父上と縁を結ぶ事は、武田の為にならないと判断して、引き離そうとしたのか。
余が大叔父上の御息女と縁を結ぶと、大叔父上の家に家督問題を持ち込んでしまうのか。
大叔父上の嫡男が家督を継ぐのが順当だが、御父上様が、余に家督を継がそうとしていると思われると、内乱の危機を招くかもしれない。
大叔父上が、御爺様や御父上と敵対することになったら、武田家の根本を揺るがす内乱になるかもしれない。
それを未然に防ぐためにも、無理にでも余に正室を迎えさえたかったのか。
だがこの恋を、諦められない。
家を捨てればいいという話ではない。
いや、余も姫も、簡単に立場を捨てられるような、軽い家に生まれていない。
武田諸王家は、元に匹敵する国になるだろう。
大叔父上の家は、金や遼に肩を並べる国になるだろう。
それぞれに何の悪影響も与えず、姫を正室に迎えるには、現地の姫を正室に迎えなくていい土地を占領しなければならない。
そんな都合のいい国は、早々有るモノではない。
そこは矢張り、影衆に教えてもらわねばならない。
そして何より、諸王陛下と父上様の許可をもらわなければならん。
「爺。頼みがあるのだ」
0
お気に入りに追加
329
あなたにおすすめの小説
転生 上杉謙信の弟 兄に殺されたくないので全力を尽くします!
克全
ファンタジー
上杉謙信の弟に転生したウェブ仮想戦記作家は、四兄の上杉謙信や長兄の長尾晴景に殺されないように動く。特に黒滝城主の黒田秀忠の叛乱によって次兄や三兄と一緒に殺されないように知恵を絞る。一切の自重をせすに前世の知識を使って農業改革に産業改革、軍事改革を行って日本を統一にまい進する。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
神々に育てられた人の子は最強です
Solar
ファンタジー
突如現れた赤ん坊は多くの神様に育てられた。
その神様たちは自分たちの力を受け継ぐようその赤ん
坊に修行をつけ、世界の常識を教えた。
何故なら神様たちは人の闇を知っていたから、この子にはその闇で死んで欲しくないと思い、普通に生きてほしいと思い育てた。
その赤ん坊はすくすく育ち地上の学校に行った。
そして十八歳になった時、高校生の修学旅行に行く際異世界に召喚された。
その世界で主人公が楽しく冒険し、異種族達と仲良くし、無双するお話です
初めてですので余り期待しないでください。
小説家になろう、にも登録しています。そちらもよろしくお願いします。
「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!
七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ?
俺はいったい、どうなっているんだ。
真実の愛を取り戻したいだけなのに。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
旅行先で目を覚ましたら武田勝頼になっていた私。どうやら自分が当主らしい。そこまでわかって不安に覚える事が1つ。それは今私が居るのは天正何年?
俣彦
ファンタジー
旅行先で目を覚ましたら武田勝頼になった私。
武田家の当主として歴史を覆すべく、父信玄時代の同僚と共に生き残りを図る物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる