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イスパニア本格開戦

決断

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1574年11月:薩摩一宇治城・本丸義信寝室:鷹司義信と緑

「あいつらがまた裏切りそうだと言うのだな」

「はい。見張りに付けていた者達から、鳩が送られてきました」

 しかし、よくルソン島から飛んでこれたな。

 まあ、今回はマニラから直接ではなく、一度那覇で鳩を変えているから、それほど驚く事もないのかもしれない。

 いずれは直通の伝書鳩も育てると聞いているから、もっと早く連絡が届くかもしれないな。

「今しばらく見張っているように伝えてくれ」

「何故でございますか。今直ぐ処罰なされるべきです」

「決定的な証拠がない」

「ですが、勝虎殿の証言があります」

「俺が無理矢理勝虎に証言させたと言い張るかもしれない」

「そんな言葉を信じる者はおりません」

「親兄弟は、謀叛人の言葉であろうと、信じたいモノなのだよ」

「それは、その通りかもしれませんが、義近殿達に万が一の事があれば、取り返しがつきません。それとも殿下は、正室の御子以外は、どうなってもいいと御考えなのですか」

「そう母親の顔を剥き出しにするな」

「それは・・・・・」

「影達を信じろ」

「信じていますが、万が一と言う事がございます」

「あいつらはマニラにいて、義近達は艦上にいる。直接手をかけることは不可能だし、誰かに依頼するのも難しい。それは分かるな」

「はい・・・・・」

「刺客を送ることが出来たとしても、側近衆と影衆が護りを固めている。何の心配もない」

「ですが、あの子に悪意が向けられていると思うと、居ても立っても居られないのです」

「気持ちは分からないでもないが、悪意を向けられるのは、俺と同じではないか」

「殿下とは違います。殿下は幼い頃から特別でしたが、あの子達は普通の子なのです」

「俺が特別な訳ではないよ。それに警護の人数と質で言えば、義近達の方が昔の俺よりも恵まれているよ」

「それは・・・・・そうかもしれませんが、それでも、完璧ではありません」

「完璧な警護など無理だよ。俺の子供である以上、命を狙われるのは仕方ないし、下劣な人間に育たないように、厳しく育てる必要もある。この事は、俺の側室になる時に、何度も何度も言い聞かせたはずだよ」

「分かっています。分かっていますが、心が苦しいのです」

「仕方ないな。ルソン島もほぼ掌握できたし、義近達をルソン島から離れさせる。そうすれば、あいつらの悪意も届かない」

「本当でございますか。ありがとうございます」


「だが、戦闘の危険からは逃げる事は許されない」

「・・・・・はい」

「戦闘を前提に、上陸部隊を乗せて、ジャカルタに向かってもらう」

「・・・・・はい」
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