上 下
7 / 8
第一章

6話

しおりを挟む
「認めぬぞ。
 下々の血を高貴な貴族社会にいれるなど、絶対に認めぬ!」

 私とマイケルを披露する大々的な婚約披露宴で、王女のバイオレットが私とマイケルの事を否定しました。

「しかし殿下。
 それを言ってしまうと、殿下も王女の資格がないのではありませんか。
 殿下は王家の直系が老齢な当代様だけになってしまったから、急遽養女に迎えられた傍流も傍流ではありませんか!」

「何だと、この無礼者が!」

 殿下が手を挙げて殴りかかってきましたが、女子供の細腕に殴られる私ではありません。
 最初はヒラリヒラリとかわすだけに留めていましたが、だんだん腹が立ってきて、最後には思いっきり平手打ちを喰らわしてやりました。

「何をする!
 この無礼者が!
 認めぬぞ。
 絶対に認めぬ、
 王女として命じる。
 その方とマイケルの婚約は認めぬ。
 婚約は破棄じゃ!」

「ほう。
 ならばハワード侯爵家は独立させてもらおう。
 ろくに王家の血も流れていないバイオレット王女に偉そうにされたり、ハワード侯爵家の結婚に口出しさせたりする気はない。
 既にアナンデール王家にはこの結婚を認めてもらっている」

 なんと、祖父はハワード侯爵家と領地を接するアナンデール王国と話を通してくれていました。
 流石百戦錬磨の団長殿です。
 長年の傭兵生活で、各国に繋がりがあるのです。

 これでようやくウィリアムの態度が激変した事が分かりました。
 ウィリアムは祖父に脅迫されたのでしょう。
 もし私の婚約を認めなければ、ウィリアムを殺して無理矢理にでも私を当主に就けると。

 今のこの世界で、祖父ほど強大な戦力を持っている者はいません。
 祖父が全戦力を率いて攻め込めば、この国もアナンデール王国も簡単に占領されてしまうでしょう。
 ましてハワード侯爵家の諸侯軍など一捻りです。

「おのれ!
 許さぬ。
 この者は謀叛を宣言したぞ。
 皆の者許すな。
 この場で討ち取るのじゃ!」

 馬鹿です。
 大馬鹿者です。
 混乱する世の中で、次々と王家の血縁が死に、甘やかされて育ったのでしょう。
 多少の知恵がある者なら、招待された家の状況は調べています。

 まあ、こんな世の中だから、どの貴族家も力を失っていて、諜報能力も激減していますから、調べ切れない家も多いかもしれません。
 でも、だからこそ、少しでも血の繋がる家と協力して、情報の共有をしている。
 私が養女に入る前のハワード侯爵家も同じだったでしょう。

 だから今迄世話になって来た貴族士族家には、祖父の傭兵団の情報を流していた。
 ハワード侯爵家の戦力見積もりを誤った貴族が、逼迫する財政を立て直すために、戦争を吹っ掛けてこないようにです。
 私も祖父も、弱い者虐めが嫌いなのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クズな義妹に婚約者を寝取られた悪役令嬢は、ショックのあまり前世の記憶を思い出し、死亡イベントを回避します。

無名 -ムメイ-
恋愛
クズな義妹に婚約者を寝取られ、自殺にまで追い込まれた悪役令嬢に転生したので、迫りくる死亡イベントを回避して、義妹にざまぁしてやります。 7話で完結。

【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、その愛に淑女の威厳を崩される

恋愛
 学園の卒業式で公爵令嬢のシンシアは婚約者である王太子から婚約破棄をされる。しかも、身に覚えがない罪を追求されることに。きっちりと反論して自分の無実を証明するが、ことごとく無視され、最後には処刑へと。  覚悟を決めたシンシアの窮地を救いに来たのは、幼い頃に遊んだ……

【完結】婚約破棄断罪を企んでおられるようなので、その前にわたくしが婚約破棄をして差し上げますわ。〜ざまぁ、ですわ!!〜

❄️冬は つとめて
恋愛
題名変えました。 【ざまぁ!!】から、長くしてみました。 王太子トニックは『真実の愛』で結ばれた愛するマルガリータを虐める婚約者バレンシアとの婚約破棄を狙って、卒業後の舞踏会でバレンシアが現れるのを待っていた。

悪役令嬢はざまぁされるその役を放棄したい

みゅー
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生していたルビーは、このままだとずっと好きだった王太子殿下に自分が捨てられ、乙女ゲームの主人公に“ざまぁ”されることに気づき、深い悲しみに襲われながらもなんとかそれを乗り越えようとするお話。 切ない話が書きたくて書きました。 転生したら推しに捨てられる婚約者でした、それでも推しの幸せを祈りますのスピンオフです。

婚約破棄させていただきますわ

佐崎咲
恋愛
巷では愚かな令息による婚約破棄が頻発しています。 その波が私のところにも押し寄せてきました。 ですが、婚約破棄したいのは私の方です。 学園の広場に呼び出されましたが、そうはいきませんことよ。 ※無断転載・複写はお断りいたします。

貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした

ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。 彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。 しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。 悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。 その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・

殿下は、幼馴染で許嫁の没落令嬢と婚約破棄したいようです。

和泉鷹央
恋愛
 ナーブリー王国の第三王位継承者である王子ラスティンは、幼馴染で親同士が決めた許嫁である、男爵令嬢フェイとの婚約を破棄したくて仕方がなかった。  フェイは王国が建国するより前からの家柄、たいして王家はたかだか四百年程度の家柄。  国王と臣下という立場の違いはあるけど、フェイのグラブル男爵家は王国内では名家として知られていたのだ。   ……例え、先祖が事業に失敗してしまい、元部下の子爵家の農家を改築した一軒家に住んでいるとしてもだ。  こんな見栄えも体裁も悪いフェイを王子ラスティンはなんとかして縁を切ろうと画策する。  理由は「貧乏くさいからっ!」  そんなある日、フェイは国王陛下のお招きにより、別件で王宮へと上がることになる。  たまたま見かけたラスティンを追いかけて彼の後を探すと、王子は別の淑女と甘いキスを交わしていて……。  他の投稿サイトでも掲載しています。

まったく心当たりのない理由で婚約破棄されるのはいいのですが、私は『精霊のいとし子』ですよ……?【カイン王子視点】

空月
恋愛
精霊信仰の盛んなクレセント王国。 身に覚えのない罪状をつらつらと挙げ連ねられて、第一王子に婚約破棄された『精霊のいとし子』アリシア・デ・メルシスは、第二王子であるカイン王子に求婚された。 そこに至るまでのカイン王子の話。 『まったく心当たりのない理由で婚約破棄されるのはいいのですが、私は『精霊のいとし子』ですよ……?』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/368147631/886540222)のカイン王子視点です。 + + + + + + この話の本編と続編(書き下ろし)を収録予定(この別視点は入れるか迷い中)の同人誌(短編集)発行予定です。 購入希望アンケートをとっているので、ご興味ある方は回答してやってください。 https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScCXESJ67aAygKASKjiLIz3aEvXb0eN9FzwHQuxXavT6uiuwg/viewform?usp=sf_link

処理中です...