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第一章冒険者偏
鉤竜
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「いいかい、腹を据えるんだよ。
私の指示は必ず守るんだ。
今日の目的は狩る事じゃない。
経験することだ。
狩るだけなら、エマとニカに魔法で狩らせればすむ。
だがそれではパーティーとしての成長はない。
パーティーとしての成長がなければ、この先属性竜を狩れるようにはならない。
死ぬ確立が高い獲物を偶然に頼って狩っても、それは本物の冒険者ではない。
冒険者なら、不意に他の属性竜の群れが襲いかかってきても、生きて撤退できるくらいの実力差で、魔獣や魔竜が狩れなければならないんだよ!」
「「「「「はい!」」」」」
私達はドウラさんの訓示に返事をするしかできません。
私達前衛三人だけでなく、私達とは桁外れの実力を持つエマとニカまで真剣に返事をしていますから、彼女達も初の亜竜狩りに緊張しているのかもしれません。
今日は久しぶりに破竜隊の正規メンバーだけで狩りをします。
しかも並の相手ではありません。
遂に亜竜種を狩るのです。
鉤竜は亜竜種のなかでも最弱ですが、それでも桁外れの強さです。
鉤竜の怖いところは群れを作るところです。
鉤竜は十数頭から百頭の群れを作る亜竜なのです。
今回は一頭の鉤竜を群れから斬り離し、狩ることを目的にしています。
これが成功すれば、鉤竜骨鎧、鉤竜鱗鎧、鉤竜革鎧、鉤竜牙剣、鉤竜骨剣、鉤竜爪剣を手に入れることができます。
鉤竜の体重は百キログラムしかありません。
私の鱗鎧の素材となった魔甲蛇が、千五百キログラムで六十万小銅貨の価値があるのに対して、鉤竜は百キログラムで二十万小銅貨の価値があります。
グラム単価でいえば五倍の価値があるのです。
「イヴァン、ダニエル。
助け合って釣りだしてきな。
無理だと思えば潔く諦めるんだよ」
「「はい」」
正直驚いています。
私達は格段に強くなっていました。
単純な体力と技はそれほど向上していません。
格段に向上しているのは、状況判断をする目配りと先読みです。
リーダーとしてパーティーメンバーの命を預かった事で、まだ多分に残っていた甘えが削ぎ落されたのです。
私とイヴァンとダニエルは、それなりの冒険者になったと思っていました。
口では謙遜していても、どこかで自信を持っていたのも確かです。
でもそれは、ドウラさんはもちろん、エマとニカの魔法に頼り守られたモノです。
三人に甘え寄りかかった戦い方だったのです。
一人の魔法使いもいないパーティーで、メンバーの命を預かって、口では感謝し謙遜していた言葉が、どれほど薄っぺらいものだったか、ようやく理解しました。
新人に甘え寄りかかられて、それでもそれが新人の普通の状態だと受け入れ、一人前の育て上げる負担の重さを知って、一歩前進後退する事さえ、先を読んでおこなうようになりました。
「釣りだしに成功した。
一瞬で狩るよ」
ドウラさんが魔竜や魔獣に気がつかれないように、独特の音階と音量でイヴァンとダニエルの成果を表しつつ、指示を下します。
私の指示は必ず守るんだ。
今日の目的は狩る事じゃない。
経験することだ。
狩るだけなら、エマとニカに魔法で狩らせればすむ。
だがそれではパーティーとしての成長はない。
パーティーとしての成長がなければ、この先属性竜を狩れるようにはならない。
死ぬ確立が高い獲物を偶然に頼って狩っても、それは本物の冒険者ではない。
冒険者なら、不意に他の属性竜の群れが襲いかかってきても、生きて撤退できるくらいの実力差で、魔獣や魔竜が狩れなければならないんだよ!」
「「「「「はい!」」」」」
私達はドウラさんの訓示に返事をするしかできません。
私達前衛三人だけでなく、私達とは桁外れの実力を持つエマとニカまで真剣に返事をしていますから、彼女達も初の亜竜狩りに緊張しているのかもしれません。
今日は久しぶりに破竜隊の正規メンバーだけで狩りをします。
しかも並の相手ではありません。
遂に亜竜種を狩るのです。
鉤竜は亜竜種のなかでも最弱ですが、それでも桁外れの強さです。
鉤竜の怖いところは群れを作るところです。
鉤竜は十数頭から百頭の群れを作る亜竜なのです。
今回は一頭の鉤竜を群れから斬り離し、狩ることを目的にしています。
これが成功すれば、鉤竜骨鎧、鉤竜鱗鎧、鉤竜革鎧、鉤竜牙剣、鉤竜骨剣、鉤竜爪剣を手に入れることができます。
鉤竜の体重は百キログラムしかありません。
私の鱗鎧の素材となった魔甲蛇が、千五百キログラムで六十万小銅貨の価値があるのに対して、鉤竜は百キログラムで二十万小銅貨の価値があります。
グラム単価でいえば五倍の価値があるのです。
「イヴァン、ダニエル。
助け合って釣りだしてきな。
無理だと思えば潔く諦めるんだよ」
「「はい」」
正直驚いています。
私達は格段に強くなっていました。
単純な体力と技はそれほど向上していません。
格段に向上しているのは、状況判断をする目配りと先読みです。
リーダーとしてパーティーメンバーの命を預かった事で、まだ多分に残っていた甘えが削ぎ落されたのです。
私とイヴァンとダニエルは、それなりの冒険者になったと思っていました。
口では謙遜していても、どこかで自信を持っていたのも確かです。
でもそれは、ドウラさんはもちろん、エマとニカの魔法に頼り守られたモノです。
三人に甘え寄りかかった戦い方だったのです。
一人の魔法使いもいないパーティーで、メンバーの命を預かって、口では感謝し謙遜していた言葉が、どれほど薄っぺらいものだったか、ようやく理解しました。
新人に甘え寄りかかられて、それでもそれが新人の普通の状態だと受け入れ、一人前の育て上げる負担の重さを知って、一歩前進後退する事さえ、先を読んでおこなうようになりました。
「釣りだしに成功した。
一瞬で狩るよ」
ドウラさんが魔竜や魔獣に気がつかれないように、独特の音階と音量でイヴァンとダニエルの成果を表しつつ、指示を下します。
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