上 下
17 / 99
第一章冒険者偏

殺人訓練

しおりを挟む
 私の生活はは、王都にいた頃の生活から激変しました。
 パーティー鍛錬訓練中も違っていましたが、魔都についてからの変化は想像以上で、戸惑う事ばかりです。

 食事に関しては、普通の貧乏徒士家、家族よりも遥かに恵まれていました。
 家族が月一度魚の干物が食べれればいいところを、三食魚が食べれていました。
 ですが、鍛錬訓練旅行中から、肉が主食になりました。
 冒険者の食糧は現地調達が基本です。
 水と非常食以外の米や麦は、余計な荷物になるのです。
 それでなくとも冒険者は一日四リットルの水が必要なのです。
 それ以外の荷物は極力減らしたいのが現実です。

 だから肉も、極力焼かずに水分が多い状態で食べます。
 味付けも薄くしないと、体内の塩分や糖分の濃度が高くなり、ホメオスタシスを一定にするために喉が渇きます。
 全てドウラさんの受け売りで、覚えたばかりの知識です。
 私もイヴァンもダニエルも、ドウラさんの知識と経験を貪欲に吸収しています。

 些細な事のようですが、どの獣や魔獣から食べるべきなのか。
 素材として売った方がいいモノと、自分達ように消費すべきもの。
 水場の確認と、毒などの確認と解毒方法。
 腹立たしい事ですが、同じ冒険者を狙う外道が多いのです。
 特に皆がどうしても必要な水場に細工する、腐れ外道がいるのです。

「殺せ!
 怯むな!
 ここで殺さないと他の人間が殺されるよ!
 父を、兄を、子供を殺される者がいるんだよ!
 容赦せずに殺しな!」

 初めて冒険者狩りの外道と出会った時、一瞬攻撃を躊躇ってしまいました。
 そんな私に、ドウラさんの檄が飛びました。
 口を動かしながら、同時に投擲も行い、外道共を確実に殺してきます。
 エマとニカは既に魔法攻撃で数人殺しています。
 イヴァンもダニエルは私よりも先に飛び出しています。

 私も負けられないと思った時には、外道共に向かって駆けていました。
 冒険者狩りをするような連中です。
 人数も多く集めています。
 あの時は三十七人だったはずです。
 私は、ここで殺人を経験する。
 そう決意して外道どもの中に突っ込みました。

 後で聞いた話では、あれはドウラさんの仕掛けた罠だったそうです。
 適当な外道共を誘い出して、私たちに殺人を経験させたかったのだそうです。
 同時に、許し難い外道共を潰していく始まりだったそうです。
 魅力的な女が三人。
 特にエマとニカは魔術師です。
 誘拐出来たら大金になります。

 冒険者として経験を積む前に、襲ってしまおうと外道共が考えるように噂を流し、誘いをかけたのだそうです。
 そしてドウラさんが外道狩りをしている事を気づかれないように、殺した外道共の身ぐるみを剥いで、遺体は魔獣の餌にしました。
 撒き餌です。
 外道共の遺体で誘い出した魔獣を狩るのです。
 楽に多くの魔獣を狩ることができました。
 ドウラさんだけは絶対に敵に回さない。
 私だけでなく、イヴァンもダニエルも改めて強く誓ったそうです。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

貴方に側室を決める権利はございません

章槻雅希
ファンタジー
婚約者がいきなり『側室を迎える』と言い出しました。まだ、結婚もしていないのに。そしてよくよく聞いてみると、婚約者は根本的な勘違いをしているようです。あなたに側室を決める権利はありませんし、迎える権利もございません。 思い付きによるショートショート。 国の背景やらの設定はふんわり。なんちゃって近世ヨーロッパ風な異世界。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿。

嘘つきと言われた聖女は自国に戻る

七辻ゆゆ
ファンタジー
必要とされなくなってしまったなら、仕方がありません。 民のために選ぶ道はもう、一つしかなかったのです。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

『絶対に許さないわ』 嵌められた公爵令嬢は自らの力を使って陰湿に復讐を遂げる

黒木  鳴
ファンタジー
タイトルそのまんまです。殿下の婚約者だった公爵令嬢がありがち展開で冤罪での断罪を受けたところからお話しスタート。将来王族の一員となる者として清く正しく生きてきたのに悪役令嬢呼ばわりされ、復讐を決意して行動した結果悲劇の令嬢扱いされるお話し。

辺境地で冷笑され蔑まれ続けた少女は、実は土地の守護者たる聖女でした。~彼女に冷遇を向けた街人たちは、彼女が追放された後破滅を辿る~

銀灰
ファンタジー
陸の孤島、辺境の地にて、人々から魔女と噂される、薄汚れた少女があった。 少女レイラに対する冷遇の様は酷く、街中などを歩けば陰口ばかりではなく、石を投げられることさえあった。理由無き冷遇である。 ボロ小屋に住み、いつも変らぬ質素な生活を営み続けるレイラだったが、ある日彼女は、住処であるそのボロ小屋までも、開発という名目の理不尽で奪われることになる。 陸の孤島――レイラがどこにも行けぬことを知っていた街人たちは彼女にただ冷笑を向けたが、レイラはその後、誰にも知られずその地を去ることになる。 その結果――?

処理中です...