持参金が用意できない貧乏士族令嬢は、幼馴染に婚約解消を申し込み、家族のために冒険者になる。

克全

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第一章冒険者偏

パーティー結成

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「ラナ!
 そこに猪の痕跡が残っているよ。
 よく覚えておきない」

「はい、ドウラさん」

「イヴァン!
 ダニエル!
 無理矢理ついて来たんだから、もっと真剣に覚えな!」

「はい」
「分かっているよ、ドウラ」

「はい、ドウラさんだ、ダニエル!
 石は後ろからでも飛んでくるんだよ!」

「……はい、ドウラさん」

 え~と、何をどこから話せばいいか困るくらい、一度に多くの事が起こりました。
 順番に話すなら、私のパーティーが決まったところからですね。
 私のパーティーは、魔都ですでに活動している既存のパーティーではなく、王都で新たに結成されるパーティーとなりました。

 ですが全くの新人ばかりというわけではありません。
 初代道場主で冒険者でもあったディミタール先生が、冒険者であった時代にパーティー仲間だった、ドウラという女斥候がリーダーをするのです。
 しかも千人に一人しかいない魔法使いが二人も加わるのです。
 もっとも、このパーティー自体が、ドウラさんが可愛い孫に、安全に実戦経験を積ませるために結成されたのです。

 ドウラさんは他のメンバーを魔都で集めようと考えていました。
 古豪といえるドウラさんに二人の女魔法使いが加わるのです。
 女であることで苦労している冒険者が直ぐに集まると、ドウラさんは考えていたそうですが、その話をディミタール先生が聞きつけ、私を推薦してくれたのです。
 ここまでなら、私も話すのを躊躇ったりはしませんでした。

 問題は男のパーティー参加希望者が現れた事です。
 しかもただの相手ではありません。
 道場主であるジョージ先生の次男イヴァン師範代と、三男のダニエル師範代が一緒に魔都に来ると言いだしたのです。

 話がとてつもなく大事になりました。
 イヴァン師範代は天才で、純粋な腕だけで言えば、兄であるマルティン師範代を超えると言われています。
 厄竜の災厄で混乱する王国では、騎士も徒士の強い当主が求められています。
 養子候補として引く手あまたなのですが、それが冒険者になるというのですから、先生の家がもめるのも当然です。

 しかもそれに三男のダニエル師範代まで加わるのです。
 ダニエル師範代は少々遊び癖があり、私は苦手なのですが、腕は確かです。
 天才のイヴァン師範代や、生真面目に鍛錬を続けられるマルティン師範代には及びませんが、それでもそこらの剣客に勝る腕をお持ちです。

 ですがそれはゲイツ騎士家の家内問題でしかありません。
 一番の問題は、女だけのパーティーを結成しようとしていたドウラ殿をどう説得するかです。
 これが一番大きな問題だったのです。
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