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27話

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「王太子オリバーであるぞ!
 私を阻むとは何事か!
 この無礼者め!
 直ぐにオリビアを連れてこい!
 やめよ!
 やめぬか!
 殺せ!
 このような無礼者は殺してしまえ!」

「なにをしているのです?!
 私は王太子妃ですよ。
 未来の王妃ですよ!
 その私を阻むとは無礼千万です!
 将来の王妃たる私が、姉とは言え陪臣に会いに来てやったのです。
 それを邪魔するなど許されませんよ!」

 バカがやってきてしまいました。
 いったい何を考えているのか、想像するのが怖いです。
 会ってしまうと、取り返しのつかない事になりそうで、騎士団と徒士団に命じて領界で阻んでもらっていたのですが、毎日毎日諦めずににやってくるのです。
 最初は王太子たちの護衛についていた近衛兵も少数で、我が騎士団や徒士団に戦いを挑もうとはしませんでした。

 ですが、バカ王太子とアイラは、戦いを避けようとする近衛騎士に苛立ち、盗賊同然の乱暴者たちを集め、王太子の家臣に任命し、我が家の騎士や徒士に襲いかかってきたのです。
 幸いあまりにも実力差があるので、我が家臣が傷つくことも、乱暴者たちが傷つくこともなく、取り押さえる事に成功しました。
 ですがもう後には引けません。
 行きつくところまで行くしかありません。

「ようやく出てきたか、この不忠無礼な謀叛人が!
 私から奪ったこの領地を早々に返せ!
 返さんと謀叛人として討伐するぞ!
 それに早くこの縄をはずさんか!
 王太子である私に縄をかけるなど無礼にも、無礼にもほどがあるぞ!」

「その通りですわ、王太子殿下。
 オリビアは昔から愚かで無礼だったのです。
 オリビア!
 今では身分違いになりましたが、姉だったお前への最後の憐憫の情です。
 この地を返せば修道院送りで許してあげます。
 早々に領地を返して謹慎していなさい!」

 ああ、本当にもう後戻りできませんね。
 しかし王太子は元々バカでしたが、アイラはこんなにバカだったでしょうか?
 欲に目がくらんだと言っても、これほどバカになるモノでしょうか?
 王太子妃、王太子妃、と周りからチヤホヤされて、勘違いしてしまったのかな?
 ああ、アイラらしい理由が思い浮かびました。
 エリクサーですね!
 不老不死の薬効があるともいわれるエリクサーを独占して、自分だけが永遠の若さと美しさを手に入れたいと思ったのですね。

「お嬢様。
 もう殺してしまいましょう。
 これ以上我慢されることはありません。
 アオとアカも激高しております。
 これ以上我慢させて、人間そのものを憎むようになっては困ります。
 このまま放置すれば、王家を滅ぼしてしまうかもしれません。
 王家のためにも、マクリントック公爵家のためにも、王太子とアイラを殺してしまいましょう」

 ジョージの眼が据わっています。
 アオとアカは、あまりの怒りに唸ることも忘れています。
 しかたありません。
 ここは決断する時です。
 ですがその前に確認しておかなければなりません。
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