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13話

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「お嬢様。
 準備は整いました。
 次の獲物を追い込んでくださって大丈夫です」

「分かりました」

 私たちはラスドネル伯爵領に遠征することになりました。
 ジョージが最初に話を聞き、私に確認したうえで、条件をつめたのです。
 貴族の情報網は侮れません!
 私が精霊を操り魔獣を狩れることを知っていたのです。
 いえ、これは私の失敗ですね。
 最初から、情報を隠蔽しなければいけないとは思ってもいなかったのです。

 騎士団だけでなく、仕官希望の牢人や冒険者を集めた時点で、情報が洩れるのは当然の事だったのです。
 まあ、いいです。
 どうせアカとアオの力を借りて領地を護るのなら、双方余計な被害を出さないためにも、強大な力はアピールしておくべきでしょう。
 父上やジョージもそう考えて止めなかったのでしょう。

 今日はジョージが側にいてくれません。
 ラスドネル伯爵家の城代家老と一緒にいます。
 城代家老を牽制してくれています。
 ラスドネル伯爵軍も狩りをしていますが、亜竜種を狩る力はないようです。
 だからこそ、破格の条件で我が家に魔獣狩りを依頼してきたのでしょう。

 我が家とすれば、別にラスドネル伯爵領が魔獣に蹂躙されてもいいのです。
 いえ、むしろ蹂躙されて統治に失敗すれば、我が家がラスドネル伯爵領を王家から委託される可能性があります。
 いずれは自領に組み入れることができるかもしれません。
 だからこそラスドネル伯爵は平身低頭交渉し、私たちが狩った魔獣は無税で持ち帰ることのできる、破格の条件となったのです。

 ザカリーが仕官希望の冒険者たちをテキパキと指揮しています。
 見た目は筋骨隆々の武闘派戦士ですが、結構な苦労人だと聞いています。
 微禄の徒士家の三男に生まれ、自活の道を探すため、自ら進んで冒険者となったと聞いています。
 
 ザカリーは冒険者時代の実力と成果が圧倒的で、三男であるにもかかわらず、新たに家を興すことが認められた努力家だそうです。
 だからこそ冒険者の気持ちが、特に仕官を希望する冒険者の気持ちが分かり、彼らの心をつかむ指揮ができるのでしょう。

 血抜きと解体の準備ができています。
 仕官希望の冒険者が、自分たちの装備や道具を持ち込んでくれているので、当初想定していた以上の獲物を持ち帰ることができます。
 私たちが弱ければ、ラスドネル伯爵軍は、私たちを皆殺しにして全ての成果を奪う可能性もあります。
 ですが楽々と亜竜種を狩る我々を敵に回すことはないでしょう。

「お嬢様。
 そろそろ魔法袋や樽が満杯になります。
 撤退の指示をお願いします」 

 ザカリーはいい笑顔を浮かべますね。
 決して美男子ではありませんが、狩りの途中の厳しく厳つい顔が、時々少年のような純真な笑みを浮かべるのです。
 それに、私に熱い視線を向けてこないのがいいです。
 ただ実直に任務に励む姿は好感が持てます。
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