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第一章
第30話:布教
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教会から解放した子供たちと村々には鶏と鴨を渡した。
肉にして食べる事は滅多になく、卵を食べ羽を利用する。
特に鶏はほぼ毎日卵を産むから、1人に1羽いれば毎日卵が食べられる。
餌も穀物を与える必要はない、子供が野草や虫を集めて来れば十分だ。
土を掘り返せば、ミミズや幼虫がいくらでも取れる。
畑を耕す時に鶏を放せば勝手に腹一杯餌を食べてくれる。
サラと僕が村人と孤児たちに配慮したのはここまでだ。
これ以上は自分たちのお金や家畜や渡す事になる。
そこまでする必要も余裕もない。
村を回ってから教会に戻ったが、その時期はとても気を使った。
孤児たちが恨みを晴らすのを待ちたかったのだ。
サラだけをヘルメース神の庭に帰らせて、僕1人で何度も教会に戻って確認した。
聖職者だけでなく売春婦たちも孤児に殺されていた。
子供に優しくしていた聖職者や売春婦は1人もいなかったのか、恨みを晴らす子供たちに皆殺しにされていた。
殺された連中の遺体は、僕が言い聞かせていた通り、家畜のいなくなった牧場に捨てられたが、骨しか残っていなかった。
予想していた通り、遺体は狼や野犬、カラスに喰われたのだろう。
教会の床や壁についた血糊や汚れも孤児たちが奇麗にしていた。
もしかしたら汚れたままにしているかもしれないと心配していたのだが、これからの教会は、子供たちだけの家になると言ったのが良かったのだろう。
その全てを確認してからサラを教会に入れた。
時間稼ぎをしなくてすんだのは、子供たちに時間をかけて恨みを晴らすだけの心の余裕がなく、直ぐに聖職者と売春婦を皆殺しにしたからだ。
「今から本当の神についてお話します。
この世界は唯一神しかいない訳ではなく、多くの神々がおられるのです」
ヘルメース神や他の神の事を村人や孤児に話して信用させるのはサラの役目だ。
僕はまだ完全にヘルメース神を信じきれない。
策略として信じるふりはできるし、どうしてもやらなければいけないのなら、笑顔で教えを広められるが、やらなくて良いのならやらない、やりたくない。
だからサラにお願いしてやってもらった。
「おねえちゃん、サラおねえちゃん、神さまのことをおしえて」
「ぼくも、ぼくもおしえてほしい」
「わたしもおしえてほしい、ヘルメース神のことをおしえて」
「「「「「わぁああああい」」」」」
あれだけ傷つき疑い深くなっていた子供たちが、サラには直ぐに懐いた。
中には相手が大人だと無条件に怯える子がいて、いまだに僕にも怯える子がいるのだが、そんな子もサラにだけは心を預けて甘えている。
サラの天真爛漫な所が子供たちの警戒心を無くすのだろうか?
牧夫スキルには、人間の子供まで操る能力あるのだろうか?
「ヘルメース神は、聖職者に傷つけられた人々を救ってくれるの。
腐り切った教会と下劣な聖職者を退治するために、ユウジを遣わしたの。
だからユウジも貴方たちを傷つけたりしないわ、安心して」
サラは子供たちに警戒されている僕の事を良い人だと言ってくれる。
大人を嫌う子供たちから慕われるよう、言葉を尽くしてくれる。
僕はまだ13歳なのだが、教会やイスタリア帝国と戦うために大きく強く成長したから、見た目が大人になっているからだ。
だが、その効果は全く表れていない、当然の事だ。
僕は子供たちの前で大暴れしているのだ。
子供たちに直接恨みを晴らさせようと思う前は、この手で聖職者や売春婦を殺していたし、考えを変えてからも、悪人を逃がさないように両手両足を潰していた。
その姿を見ていた子供たちから慕われるわけがない。
「サラ、男親は子供に恐れられ、乗り越える壁になるのが役目だ。
子供に慈愛を与え、安心できる逃げ場になるのが母親の役目だ。
サラがその子たちの母親になり、僕が父親になるのだから、無理をしなくていい」
1000年以上先になれば、男女同権となり、男だ女だと言わなくなるだろうが、この世界はまだ男女の役割が明確に分かれている。
教会の孤児たちを助けて親代わりになるのなら、サラが母親で僕が父親になるしかないのだ。
「「「「「コケコッコー!」」」」」
「「「「「ヒッヒィヒーン」」」」」
「「「「「メェエエエエー」」」」」
教会の牧場に放していた家畜ではなく、見張りのために自由にさせていた家畜が、南の方で鳴きだした!」
「ユウジ、誰かが来たわ!」
見張りに放していた家畜が、サラの命令に従って鳴いたのだ。
危険を感じたら大声で鳴いて知らせる重要な役目を与えられていたのだ。
「僕が見て来る、子供たちを教会の地下室に避難させておいてくれ」
「分かったわ、任せておいて」
僕は魔力を使ってたくさんの酸素とエネルギーを身体に流した。
筋肉を使う時にでる、二酸化炭素と老廃物も流して内臓で処理した。
普通の人間では使えないくらいの筋力を使って早く走った。
目にも魔力を送って、普通でも良く見える目を、更に遠くを見えるようにした。
眼筋たちが力を発揮できるようにして、水晶体を広く薄くして遠くを見る!
完全武装の聖堂騎士団が街道の遠くに見える!
まだ先頭の騎士しか見えないが、かなりの後続がいるようだ。
聖堂騎士団だけでなく、聖堂徒士団もいるかもしれない。
この街道だけでなく、他の街道を使う別動隊がいるかもしれない。
見つけやすい街道ではなく、獣道を使う奇襲部隊にも気をつけないといけない。
見敵必殺、見つけた敵はその場で殺し、別動隊がいても大丈夫な時間を作る!
肉にして食べる事は滅多になく、卵を食べ羽を利用する。
特に鶏はほぼ毎日卵を産むから、1人に1羽いれば毎日卵が食べられる。
餌も穀物を与える必要はない、子供が野草や虫を集めて来れば十分だ。
土を掘り返せば、ミミズや幼虫がいくらでも取れる。
畑を耕す時に鶏を放せば勝手に腹一杯餌を食べてくれる。
サラと僕が村人と孤児たちに配慮したのはここまでだ。
これ以上は自分たちのお金や家畜や渡す事になる。
そこまでする必要も余裕もない。
村を回ってから教会に戻ったが、その時期はとても気を使った。
孤児たちが恨みを晴らすのを待ちたかったのだ。
サラだけをヘルメース神の庭に帰らせて、僕1人で何度も教会に戻って確認した。
聖職者だけでなく売春婦たちも孤児に殺されていた。
子供に優しくしていた聖職者や売春婦は1人もいなかったのか、恨みを晴らす子供たちに皆殺しにされていた。
殺された連中の遺体は、僕が言い聞かせていた通り、家畜のいなくなった牧場に捨てられたが、骨しか残っていなかった。
予想していた通り、遺体は狼や野犬、カラスに喰われたのだろう。
教会の床や壁についた血糊や汚れも孤児たちが奇麗にしていた。
もしかしたら汚れたままにしているかもしれないと心配していたのだが、これからの教会は、子供たちだけの家になると言ったのが良かったのだろう。
その全てを確認してからサラを教会に入れた。
時間稼ぎをしなくてすんだのは、子供たちに時間をかけて恨みを晴らすだけの心の余裕がなく、直ぐに聖職者と売春婦を皆殺しにしたからだ。
「今から本当の神についてお話します。
この世界は唯一神しかいない訳ではなく、多くの神々がおられるのです」
ヘルメース神や他の神の事を村人や孤児に話して信用させるのはサラの役目だ。
僕はまだ完全にヘルメース神を信じきれない。
策略として信じるふりはできるし、どうしてもやらなければいけないのなら、笑顔で教えを広められるが、やらなくて良いのならやらない、やりたくない。
だからサラにお願いしてやってもらった。
「おねえちゃん、サラおねえちゃん、神さまのことをおしえて」
「ぼくも、ぼくもおしえてほしい」
「わたしもおしえてほしい、ヘルメース神のことをおしえて」
「「「「「わぁああああい」」」」」
あれだけ傷つき疑い深くなっていた子供たちが、サラには直ぐに懐いた。
中には相手が大人だと無条件に怯える子がいて、いまだに僕にも怯える子がいるのだが、そんな子もサラにだけは心を預けて甘えている。
サラの天真爛漫な所が子供たちの警戒心を無くすのだろうか?
牧夫スキルには、人間の子供まで操る能力あるのだろうか?
「ヘルメース神は、聖職者に傷つけられた人々を救ってくれるの。
腐り切った教会と下劣な聖職者を退治するために、ユウジを遣わしたの。
だからユウジも貴方たちを傷つけたりしないわ、安心して」
サラは子供たちに警戒されている僕の事を良い人だと言ってくれる。
大人を嫌う子供たちから慕われるよう、言葉を尽くしてくれる。
僕はまだ13歳なのだが、教会やイスタリア帝国と戦うために大きく強く成長したから、見た目が大人になっているからだ。
だが、その効果は全く表れていない、当然の事だ。
僕は子供たちの前で大暴れしているのだ。
子供たちに直接恨みを晴らさせようと思う前は、この手で聖職者や売春婦を殺していたし、考えを変えてからも、悪人を逃がさないように両手両足を潰していた。
その姿を見ていた子供たちから慕われるわけがない。
「サラ、男親は子供に恐れられ、乗り越える壁になるのが役目だ。
子供に慈愛を与え、安心できる逃げ場になるのが母親の役目だ。
サラがその子たちの母親になり、僕が父親になるのだから、無理をしなくていい」
1000年以上先になれば、男女同権となり、男だ女だと言わなくなるだろうが、この世界はまだ男女の役割が明確に分かれている。
教会の孤児たちを助けて親代わりになるのなら、サラが母親で僕が父親になるしかないのだ。
「「「「「コケコッコー!」」」」」
「「「「「ヒッヒィヒーン」」」」」
「「「「「メェエエエエー」」」」」
教会の牧場に放していた家畜ではなく、見張りのために自由にさせていた家畜が、南の方で鳴きだした!」
「ユウジ、誰かが来たわ!」
見張りに放していた家畜が、サラの命令に従って鳴いたのだ。
危険を感じたら大声で鳴いて知らせる重要な役目を与えられていたのだ。
「僕が見て来る、子供たちを教会の地下室に避難させておいてくれ」
「分かったわ、任せておいて」
僕は魔力を使ってたくさんの酸素とエネルギーを身体に流した。
筋肉を使う時にでる、二酸化炭素と老廃物も流して内臓で処理した。
普通の人間では使えないくらいの筋力を使って早く走った。
目にも魔力を送って、普通でも良く見える目を、更に遠くを見えるようにした。
眼筋たちが力を発揮できるようにして、水晶体を広く薄くして遠くを見る!
完全武装の聖堂騎士団が街道の遠くに見える!
まだ先頭の騎士しか見えないが、かなりの後続がいるようだ。
聖堂騎士団だけでなく、聖堂徒士団もいるかもしれない。
この街道だけでなく、他の街道を使う別動隊がいるかもしれない。
見つけやすい街道ではなく、獣道を使う奇襲部隊にも気をつけないといけない。
見敵必殺、見つけた敵はその場で殺し、別動隊がいても大丈夫な時間を作る!
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