19 / 34
第二章
第19話:持ち込み販売
しおりを挟む
俺が売ろうとしているのは日本産のトリュフだが、人気があるトリュフの産地は、黒トリュフはフランスで白トリュフはイタリアだ。
そして黒トリュフの旬は年に二回あって、六月から十一月のサマートリュフ、十二月から三月のウインタートリュフがある。
一方黒トリュフよりも高価な白トリュフの旬は九月から十二月だ。
ダンボのお陰で、一日で二キロもの黒トリュフと五〇〇グラムの白トリュフを手に入れることができたのは、望外の幸運だった。
屋敷に戻って直ぐにイタリアンレストランに直接連絡を入れて、日本産トリュフを買い取ってもらえるか確認した。
買値は現物を見なければ約束できないと言われたが、数軒から買ってもいいと返事をもらえた。
その中でもヒュウガが声色で信頼できると教えてくれた所に売りに行った。
揮発性の香りに価値があるトリュフは、基本鮮度が一番大切だそうだ。
国際きのこアカデミーと近畿大学農学部が、共同研究の末に世界で初めて菌床方式によるトリュフの人工栽培に成功している。
だが栽培したのが日本や中国が原産の種であったため、ヨーロッパで産出する種よりも香りが薄く、買取価格は低く抑えられてしまう。
だが、時間をかけてヨーロッパから空輸される外国産トリュフよりは、朝採れや前日収穫の日本産トリュフの方がよく香りが残っている。
その事を正しく評価してくれる、オーナーシェフが経営しているイタリアンレストランで日本産トリュフを販売した。
買取価格は最高級のイタリア・アルバ産の白トリュフの足元にも及ばないが、それは本当の香りではなく虚名の産地に金を支払う人間が多いから仕方がない。
それでも日本産白トリュフ五〇〇グラムが二十万円で売れ、日本産黒トリュフ二キロが十四万円で売れた。
オーナーシェフの話では、質の悪い輸入物よりもずっと香りがいいそうだ。
外国産のトリュフは現地でいい香りでも、店に来るまでの間に香りが飛んでしまうそうだ。
だが高値で買ってもらえる代わりに約束させられたことがある。
それは日本産トリュフ定期的な納品だった。
収穫に時間を取られるのも納品に時間が取られるのも嫌だったが、意外とラテン語勉強の邪魔にはならなかったので引き受けた。
食費を抑えるために、自炊に時間を取られるよりは、美味しいモノを外食しながら勉強した方が効率がよかったのだ。
何より大切だったカーミラの安全は、ヒュウガが眷族に加えられたことで、俺なんかが屋敷にいるよりも確保できているのだ。
やっかんでいるわけではないが、意気消沈しているのは確かだった。
俺が本当にカーミラの役に立てるようになるのは、真祖ヴァンパイアになってからだし、その為には人間のうちに金をためておく必要もある。
俺はそう自分に言い訳して、金儲けに舵を傾けていた。
そして黒トリュフの旬は年に二回あって、六月から十一月のサマートリュフ、十二月から三月のウインタートリュフがある。
一方黒トリュフよりも高価な白トリュフの旬は九月から十二月だ。
ダンボのお陰で、一日で二キロもの黒トリュフと五〇〇グラムの白トリュフを手に入れることができたのは、望外の幸運だった。
屋敷に戻って直ぐにイタリアンレストランに直接連絡を入れて、日本産トリュフを買い取ってもらえるか確認した。
買値は現物を見なければ約束できないと言われたが、数軒から買ってもいいと返事をもらえた。
その中でもヒュウガが声色で信頼できると教えてくれた所に売りに行った。
揮発性の香りに価値があるトリュフは、基本鮮度が一番大切だそうだ。
国際きのこアカデミーと近畿大学農学部が、共同研究の末に世界で初めて菌床方式によるトリュフの人工栽培に成功している。
だが栽培したのが日本や中国が原産の種であったため、ヨーロッパで産出する種よりも香りが薄く、買取価格は低く抑えられてしまう。
だが、時間をかけてヨーロッパから空輸される外国産トリュフよりは、朝採れや前日収穫の日本産トリュフの方がよく香りが残っている。
その事を正しく評価してくれる、オーナーシェフが経営しているイタリアンレストランで日本産トリュフを販売した。
買取価格は最高級のイタリア・アルバ産の白トリュフの足元にも及ばないが、それは本当の香りではなく虚名の産地に金を支払う人間が多いから仕方がない。
それでも日本産白トリュフ五〇〇グラムが二十万円で売れ、日本産黒トリュフ二キロが十四万円で売れた。
オーナーシェフの話では、質の悪い輸入物よりもずっと香りがいいそうだ。
外国産のトリュフは現地でいい香りでも、店に来るまでの間に香りが飛んでしまうそうだ。
だが高値で買ってもらえる代わりに約束させられたことがある。
それは日本産トリュフ定期的な納品だった。
収穫に時間を取られるのも納品に時間が取られるのも嫌だったが、意外とラテン語勉強の邪魔にはならなかったので引き受けた。
食費を抑えるために、自炊に時間を取られるよりは、美味しいモノを外食しながら勉強した方が効率がよかったのだ。
何より大切だったカーミラの安全は、ヒュウガが眷族に加えられたことで、俺なんかが屋敷にいるよりも確保できているのだ。
やっかんでいるわけではないが、意気消沈しているのは確かだった。
俺が本当にカーミラの役に立てるようになるのは、真祖ヴァンパイアになってからだし、その為には人間のうちに金をためておく必要もある。
俺はそう自分に言い訳して、金儲けに舵を傾けていた。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
あやかし学園
盛平
キャラ文芸
十三歳になった亜子は親元を離れ、学園に通う事になった。その学園はあやかしと人間の子供が通うあやかし学園だった。亜子は天狗の父親と人間の母親との間に生まれた半妖だ。亜子の通うあやかし学園は、亜子と同じ半妖の子供たちがいた。猫またの半妖の美少女に人魚の半妖の美少女、狼になる獣人と、個性的なクラスメートばかり。学園に襲い来る陰陽師と戦ったりと、毎日忙しい。亜子は無事学園生活を送る事ができるだろうか。
売れないミュージシャンなんだけど、追っかけのロリが「昔の曲の方が好きだった」とか言ってプロデューサー気取ってくる
平山安芸
キャラ文芸
無名ミュージシャン篠崎佑磨(シノザキユーマ)の唯一の救いは、いつどんなライブにも必ず現れるたった一人の熱狂的な追っかけ、通称『すばるん』の存在であった。ところがこの人物、一度もユーマへ素顔を晒したことが無い。
いい加減に売れる曲を書かなければと一念発起し、今までのスタイルを捨て媚び媚びのラブバラードを作り上げたユーマ。これが意外にも動画投稿サイトで中々の好反応。しかしある日のライブ後……。
『こんな売れ線狙いの駄曲、ユーマさんに相応しくありません』
『あの頃のユーマさんの曲と生き様が好きでした』
『私ならもっとユーマさんを輝かせることが出来ます』
たった一人のファン『すばるん』の正体は、一回りも離れたロリっ子中学生。アーティストと一ファンに過ぎなかった二人の関係はやがて……。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
峽(はざま)
黒蝶
ライト文芸
私には、誰にも言えない秘密がある。
どうなるのかなんて分からない。
そんな私の日常の物語。
※病気に偏見をお持ちの方は読まないでください。
※症状はあくまで一例です。
※『*』の印がある話は若干の吸血表現があります。
※読んだあと体調が悪くなられても責任は負いかねます。
自己責任でお読みください。
あやかし花屋の花売り少女
あーもんど
キャラ文芸
町外れの寂れた商店街にはある一つの妖しい花屋がある。
客は何故か皆異形の姿をし、変な言葉遣いをする者が多い。
そんな花屋の女店主である少女は今日もまたあやかしに花を売る。
※一話1000~2000字程度
※本当はもっとたくさん話を書く筈だったのですが、アイディアが尽きたため一旦完結扱いとさせて頂きます。
陰陽師・恭仁京上総の憂鬱
藤極京子
キャラ文芸
人間と妖怪が入り乱れる世の中に、代々陰陽師を生業としている一族があった。
千年も昔、大陰陽師により『呪』を受けた一族は、それでも人々のため、妖と時に人間と戦い続ける。
そんな一族の現当主は、まだ一三歳の少年だった――。
完結しました。
続編『陰陽師・恭仁京上総の憂鬱 悲岸の鬼編』連載中
【完結】神様と縁結び~え、神様って女子高生?~
愛早さくら
キャラ文芸
「私はあなたの神様です」
突然訪ねてきた見覚えのない女子高生が、俺にそんなことを言い始めた。
それ以降、何を言っているのかさあっぱり意味が分からないまま、俺は自称神様に振り回されることになる。
普通のサラリーマン・咲真と自称神様な女子高生・幸凪のちょっと変わった日常と交流のお話。
「誰もがみんな誰かの神様なのです」
「それって意味違うくない?」
【短編】悪役令嬢と蔑まれた私は史上最高の遺書を書く
とによ
恋愛
婚約破棄され、悪役令嬢と呼ばれ、いじめを受け。
まさに不幸の役満を食らった私――ハンナ・オスカリウスは、自殺することを決意する。
しかし、このままただで死ぬのは嫌だ。なにか私が生きていたという爪痕を残したい。
なら、史上最高に素晴らしい出来の遺書を書いて、自殺してやろう!
そう思った私は全身全霊で遺書を書いて、私の通っている魔法学園へと自殺しに向かった。
しかし、そこで謎の美男子に見つかってしまい、しまいには遺書すら読まれてしまう。
すると彼に
「こんな遺書じゃダメだね」
「こんなものじゃ、誰の記憶にも残らないよ」
と思いっきりダメ出しをされてしまった。
それにショックを受けていると、彼はこう提案してくる。
「君の遺書を最高のものにしてみせる。その代わり、僕の研究を手伝ってほしいんだ」
これは頭のネジが飛んでいる彼について行った結果、彼と共に歴史に名を残してしまう。
そんなお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる