引きこもり吸血姫に一目惚れ

克全

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第二章

第19話:持ち込み販売

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 俺が売ろうとしているのは日本産のトリュフだが、人気があるトリュフの産地は、黒トリュフはフランスで白トリュフはイタリアだ。
 そして黒トリュフの旬は年に二回あって、六月から十一月のサマートリュフ、十二月から三月のウインタートリュフがある。
 一方黒トリュフよりも高価な白トリュフの旬は九月から十二月だ。

 ダンボのお陰で、一日で二キロもの黒トリュフと五〇〇グラムの白トリュフを手に入れることができたのは、望外の幸運だった。
 屋敷に戻って直ぐにイタリアンレストランに直接連絡を入れて、日本産トリュフを買い取ってもらえるか確認した。
 買値は現物を見なければ約束できないと言われたが、数軒から買ってもいいと返事をもらえた。
 その中でもヒュウガが声色で信頼できると教えてくれた所に売りに行った。

 揮発性の香りに価値があるトリュフは、基本鮮度が一番大切だそうだ。
 国際きのこアカデミーと近畿大学農学部が、共同研究の末に世界で初めて菌床方式によるトリュフの人工栽培に成功している。
 だが栽培したのが日本や中国が原産の種であったため、ヨーロッパで産出する種よりも香りが薄く、買取価格は低く抑えられてしまう。
 だが、時間をかけてヨーロッパから空輸される外国産トリュフよりは、朝採れや前日収穫の日本産トリュフの方がよく香りが残っている。

 その事を正しく評価してくれる、オーナーシェフが経営しているイタリアンレストランで日本産トリュフを販売した。
 買取価格は最高級のイタリア・アルバ産の白トリュフの足元にも及ばないが、それは本当の香りではなく虚名の産地に金を支払う人間が多いから仕方がない。

 それでも日本産白トリュフ五〇〇グラムが二十万円で売れ、日本産黒トリュフ二キロが十四万円で売れた。
 オーナーシェフの話では、質の悪い輸入物よりもずっと香りがいいそうだ。
 外国産のトリュフは現地でいい香りでも、店に来るまでの間に香りが飛んでしまうそうだ。

 だが高値で買ってもらえる代わりに約束させられたことがある。
 それは日本産トリュフ定期的な納品だった。
 収穫に時間を取られるのも納品に時間が取られるのも嫌だったが、意外とラテン語勉強の邪魔にはならなかったので引き受けた。
 食費を抑えるために、自炊に時間を取られるよりは、美味しいモノを外食しながら勉強した方が効率がよかったのだ。

 何より大切だったカーミラの安全は、ヒュウガが眷族に加えられたことで、俺なんかが屋敷にいるよりも確保できているのだ。
 やっかんでいるわけではないが、意気消沈しているのは確かだった。
 俺が本当にカーミラの役に立てるようになるのは、真祖ヴァンパイアになってからだし、その為には人間のうちに金をためておく必要もある。
 俺はそう自分に言い訳して、金儲けに舵を傾けていた。
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