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第二章
第35話:勝手向きと獣狩り
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「ならぬ、絶対に成らぬぞ!
どうしても必要だと申すのなら、家臣にやらせればよかろう。
偶然ではあるが、先の襲撃で実戦での働きを証明した者がいるであろう」
「わかりました、城下でやらなかればいけない事は、幕臣達に任せます。
ですが、多くの天領に幕臣を派遣しなければいけなくなります。
それを束ねる役目がとても大変だと思われます。
多くの大名や旗本の無能が露見しますが、宜しいですか?」
「無能な大名や旗本とはいえ、取り潰すとなれば大量の牢人を生んでしまう。
無能な者は隠居させ、代替わりさせればよかろう」
「上様がその心積もりでいてくださるのなら、安心して厳しい役目を大名旗本に課す事ができます」
「それで、何をさせようと言うのだ?」
「上様も獣による被害はお聞きになっておられるでしょう?」
「ああ、田畑の六割にも及ぶ米や麦が猪や鹿に喰われてしまい、年貢を減免しなければいけない事は、余も聞き及んでおる」
「私を襲撃した者達が手にしていた鉄砲や焙烙玉が、害獣を狩るために許可している、百姓の鉄砲や火薬だと言う事はご存じですか?」
「なに?!
おのれ、そのよう手段で鉄砲と玉薬を手に入れておったのか?!
百姓共の鉄砲を取り上げてしまえ!
……と言う訳にはいかないのだな、新之丞」
「はい、百姓の鉄砲を禁じてしまったら、年貢が激減してしまいます。
ですがこのままでは、百姓の方が武士以上の鉄砲名人に成りかねません」
「……幕府の番方に獣を狩らせるというのだな」
「はい、勝手向きが苦しいうえに、小普請金を払わなければいけない幕臣は、札差に前借しなければいけない状態です。
札差も貸さなくなった幕臣は、座頭金にまで手を出していました。
彼らにも鉄砲組や弓組、徒士組の御役を与え、天領の獣を狩らせるのです。
そうすれば山野を駆け巡る事に慣れた、精強な番方が育ちます。
それに、狩った獣を番方の余禄にすれば、日々の食事に困窮する事もありません」
「ふむ、幕臣を鍛え、勝手向きを楽にするという意味では好いかもしれぬ。
だが、小普請金が無くなるのは、幕府としては困るのだが?」
「上様、小普請金が減る分は、年貢の増収で補えます。
害獣の被害が少なくなれば、年貢を減免する必要がなくなります。
それに、我が家に仕える修験衆の話では、天領の収穫は五割以上増えています。
それを、力を持った大庄屋が隠しているのです」
「なに?!
それは真か?!」
「はい、村々での貧富の差が広がり、田畑を手放す百姓が増えております。
田畑を手放した百姓は、大庄屋の小作人となり、一揆の戦力となっております。
一度一揆を起こさせ、大庄屋を潰し、小作人に田畑を下げ渡すのです。
それと、東照神君が定められた法を、今一度強く守らせるのです」
「東照神君が定められた法だと?」
「はい、田畑を売り渡す事を禁じた法でございます」
「東照神君がそのような事を言われたのか?」
「東照神君が言われた事を、後の幕府が法として定め、代官に伝えたのです」
「……そのようにしろと言う事だな」
「はい、ですが、大庄屋から賂を受けたのか、質流れは禁止を逃れたのです」
「それを正せと言うのだな」
「はい、一度正確な検地を行えば、思い上がった大庄屋は小作人を使って一揆を起こす事でしょう。
その時に大庄屋や庄屋だけを罰して、小作人は命じられただけとして、大庄屋達から取り上げた田畑を払い下げるのです。
そうすれば恩に着て素直に年貢を払うようになる事でしょう」
「ふむ、上手くいけば思い上がった大庄屋達を叩き潰した上に、年貢を増やせるか」
「はい、一揆が相手とはいえ、番方には好い鍛錬になります。
才のない者や憶病者を見極めて放逐する事もできます」
「分かった、新之丞の申す通りにしよう。
新之丞は優しい治世の名君に成るかと思ったが、厳しい為政者にも乱世の英雄にもなれるな」
「幕府が揺らぎ、弱くなれば、また戦国乱世になってしまいます。
もう二度と百年もの長きに渡る乱世を起こさせるわけにはいきません!
天下布武を成し続けることが、幕府が天下を背負う意味でございます」
「分かった、急ぎ寄合や小普請を再編成して新たな番方を創設する。
御役に耐えられない家には、養子や陣代を立てるように命じよう」
「はっ、私も才ある者を選んでまいります」
吉宗将軍は新之丞の策を全面的に採用する事にした。
★★★★★★
吹上御殿から出て城下に降りられなくなった新之丞は苛立っていた。
檻に入れられた野生の猛獣のようになっていた。
その苛立ちを聖珊内親王にも家臣にも向けられず、精神がささくれ立っていた。
「伊之助、領地の方はどうなっている?」
「村中に縄入する本検地をおこない、隠田の摘発も行っております。
最初から多くの小作人を使う庄屋を潰す目的で行っていますので、上様よりお預かりしている天領20万石が、30万石以上に成ると思われます」
「庄屋共に扇動されている百姓には恨まれ、悪評が広がるだろうが、小作人を助け幕府の勝手向きをよくするには、どうしてもやらなければいけない事だ」
「はい、苦衷お察しいたします」
「分かってくれるなら、城下に降りるのを黙認してくれないか?」
「申し訳ありませんが、上様に斬られるのは嫌です。
せめて宗直と牢人共を皆殺しにした後でないと、とても無理です」
「紀州の悪行、証拠は集まっているのか?」
「はい、ある程度は集まっております。
ですがまだ確たる証拠は得られていません。
今手に入れている証拠だけでは、尾張の処罰に準じて、隠居させるのが精々です」
「紀州は上様や父上が生まれた地だ。
私や伊之助が修行を積んだ地でもある。
宗直の腐れ外道は勿論、その子孫にも渡すわけにはいかぬ」
「分かっております。
必ず確たる証拠をつかみ、宗直一派を滅ぼして御覧に入れます」
「任せたぞ。
それで、幕臣の勝手向きを立て直す方策はどうなっている?」
「はっ、寄合や小普請になっていた幕臣の多くを番方に登用いたしました。
幕領の山野に派遣して、獣を狩らせておりますが、今行っている本検地と併せてかなりの成果を上げると思われます」
「狩りの負担で勝手向きが苦しくなることはないか?」
「遠方に派遣される者達には、優先的に軍鶏を下賜しておりますので、その心配はないかと思われます」
「吹上御殿に配された下級幕臣から聞いたのだが、御役に付くと毎日褌を借りなければならず、登城の際には小者も雇わなければならず、その費用だけで小普請金を軽く超えてしまうと言っていた。
御役目貧乏に成る事もあると言っていたのだが、それはどうなのだ?」
「その辺が苦しくなりそうな下級幕臣は、新之丞様の考えられた策を優先的に行っておりますので、大丈夫でございます」
「ちゃんと魚を突けているか?」
「徒士も与力も同心も、一応槍一筋の家柄です。
隠居や部屋住みでも魚を突くくらいはできます。
売り物にはならなくても、よい肴になります。
月に一度、小魚が食べられればいいのが下級幕臣です。
毎日魚が食べられるのなら、大いに勝手向きがよくなります」
「それを条件に、中間や小物を召し抱えられないか?」
「中間部屋や下男部屋に住まわせるにしても、飯だけで年五俵が必要です。
三十俵の二人扶持の同心には、小者1人召し抱えるのも大変でしょう」
「吹上御殿や清水家だけなら、登下城の際に家臣を連れて来なくてもいいと言えるが、幕府としてはそうもいかないからな……
他の幕臣達はどうしているのだ?」
「領地持ちの旗本なら、領内の家を継げない次男三男を、江戸の相場よりも安い金額で召し抱えて使っています」
「だったら、私と清水家が預かっている領地の民で、衣食住さえ面倒見てもらえるなら、給金などいらないという者を集められないか?」
「清水家縁の民を、下級幕臣の中間や小者にされるのですか?」
「ああ、全ての幕臣子弟が槍や弓で魚を狩ったら、漁師や魚屋は困るだろうが、私が一番大切にしなければいけないのは幕臣で、次が年貢を納める百姓だ。
猟師や魚屋の事は本当に生活ができなくなってから考える」
「わかりました、新之丞様。
全ての幕臣と陪臣が槍で魚を突けるようにします。
武士が網で魚を獲る訳にはいきませんが、武芸の鍛錬で魚を突くのなら何も問題もありません。
新之丞様が申されたようにして召し抱えた小者に、値がつきそうな魚を下賜した、後に小者が売って主人にお礼を渡しても、何の問題もないでしょう」
「卵ほど確実に利が上がるわけではないが、魚を利用できれば勝手向きがよくなる。
卵は、全ての幕臣に下賜できるほどの軍鶏を育てるにはまだまだ時間がかかる。
それに、全ての幕臣が軍鶏を飼ったら、卵の値が大きく下がるかもしれない。
軍鶏の餌も、扶持米を与えていては何にもならぬ。
拝領屋敷で野菜や雑穀を育てて飼える軍鶏が幾羽に成る事か……」
「そう考えこまないでください。
新之丞様はやれる限りの事をなされています。
扶持を倍増するのは無理にしても、確実に今よりは勝手向きが楽になります。
それでも困窮する幕臣には、300万両から貸し与えればいいのです。
それでも困窮する者は、才もなく努力もしていないのです。
御家人株を買いたい者もいます。
無能な者が武士でなくなるのは仕方がない事です」
「……御家人株を買った者には、本当に幕臣に相応しいのかを試す。
相応しくない者が武士となっていたなら、潰してやる!」
「5万俵時代の清水家重臣団」持ち高勤めで幕府の支援もあった
家老 :2名 :3000石
用人 :6名 :400俵20人扶持
用詰 :3名 :150俵
大番頭 :2名 :5000石
大番組頭 :8名 :300石20人扶持
大番衆 :100名 :200石
与力 :20名 :200俵
同心 :40名 :30俵2人扶持
物頭兼目付:3名 :700俵40人扶持
旗奉行 :1名 :700俵40人扶持
長柄奉行 :2名 :700俵40人扶持
新番頭 :6名 :2000石
新番組頭 :6名 :600石
新番衆 :120名 :250石
小十人頭 :3名 :1000石
小十人組頭:3名 :300石
小十人衆 :60名 :100俵10人扶持
徒士頭 :3名 :1000石
徒士組頭 :6名 :150石
徒士衆 :84名 :70俵5人扶持
勘定奉行 :2名 :200俵
勘定組頭 :2名 :
勘定吟味役:2名 :
郡奉行 :8名 :300俵
代官 :8名 :
目付 :3名 :1000石
徒士目付 :7名 :100俵
その他幕府附属衆多数
どうしても必要だと申すのなら、家臣にやらせればよかろう。
偶然ではあるが、先の襲撃で実戦での働きを証明した者がいるであろう」
「わかりました、城下でやらなかればいけない事は、幕臣達に任せます。
ですが、多くの天領に幕臣を派遣しなければいけなくなります。
それを束ねる役目がとても大変だと思われます。
多くの大名や旗本の無能が露見しますが、宜しいですか?」
「無能な大名や旗本とはいえ、取り潰すとなれば大量の牢人を生んでしまう。
無能な者は隠居させ、代替わりさせればよかろう」
「上様がその心積もりでいてくださるのなら、安心して厳しい役目を大名旗本に課す事ができます」
「それで、何をさせようと言うのだ?」
「上様も獣による被害はお聞きになっておられるでしょう?」
「ああ、田畑の六割にも及ぶ米や麦が猪や鹿に喰われてしまい、年貢を減免しなければいけない事は、余も聞き及んでおる」
「私を襲撃した者達が手にしていた鉄砲や焙烙玉が、害獣を狩るために許可している、百姓の鉄砲や火薬だと言う事はご存じですか?」
「なに?!
おのれ、そのよう手段で鉄砲と玉薬を手に入れておったのか?!
百姓共の鉄砲を取り上げてしまえ!
……と言う訳にはいかないのだな、新之丞」
「はい、百姓の鉄砲を禁じてしまったら、年貢が激減してしまいます。
ですがこのままでは、百姓の方が武士以上の鉄砲名人に成りかねません」
「……幕府の番方に獣を狩らせるというのだな」
「はい、勝手向きが苦しいうえに、小普請金を払わなければいけない幕臣は、札差に前借しなければいけない状態です。
札差も貸さなくなった幕臣は、座頭金にまで手を出していました。
彼らにも鉄砲組や弓組、徒士組の御役を与え、天領の獣を狩らせるのです。
そうすれば山野を駆け巡る事に慣れた、精強な番方が育ちます。
それに、狩った獣を番方の余禄にすれば、日々の食事に困窮する事もありません」
「ふむ、幕臣を鍛え、勝手向きを楽にするという意味では好いかもしれぬ。
だが、小普請金が無くなるのは、幕府としては困るのだが?」
「上様、小普請金が減る分は、年貢の増収で補えます。
害獣の被害が少なくなれば、年貢を減免する必要がなくなります。
それに、我が家に仕える修験衆の話では、天領の収穫は五割以上増えています。
それを、力を持った大庄屋が隠しているのです」
「なに?!
それは真か?!」
「はい、村々での貧富の差が広がり、田畑を手放す百姓が増えております。
田畑を手放した百姓は、大庄屋の小作人となり、一揆の戦力となっております。
一度一揆を起こさせ、大庄屋を潰し、小作人に田畑を下げ渡すのです。
それと、東照神君が定められた法を、今一度強く守らせるのです」
「東照神君が定められた法だと?」
「はい、田畑を売り渡す事を禁じた法でございます」
「東照神君がそのような事を言われたのか?」
「東照神君が言われた事を、後の幕府が法として定め、代官に伝えたのです」
「……そのようにしろと言う事だな」
「はい、ですが、大庄屋から賂を受けたのか、質流れは禁止を逃れたのです」
「それを正せと言うのだな」
「はい、一度正確な検地を行えば、思い上がった大庄屋は小作人を使って一揆を起こす事でしょう。
その時に大庄屋や庄屋だけを罰して、小作人は命じられただけとして、大庄屋達から取り上げた田畑を払い下げるのです。
そうすれば恩に着て素直に年貢を払うようになる事でしょう」
「ふむ、上手くいけば思い上がった大庄屋達を叩き潰した上に、年貢を増やせるか」
「はい、一揆が相手とはいえ、番方には好い鍛錬になります。
才のない者や憶病者を見極めて放逐する事もできます」
「分かった、新之丞の申す通りにしよう。
新之丞は優しい治世の名君に成るかと思ったが、厳しい為政者にも乱世の英雄にもなれるな」
「幕府が揺らぎ、弱くなれば、また戦国乱世になってしまいます。
もう二度と百年もの長きに渡る乱世を起こさせるわけにはいきません!
天下布武を成し続けることが、幕府が天下を背負う意味でございます」
「分かった、急ぎ寄合や小普請を再編成して新たな番方を創設する。
御役に耐えられない家には、養子や陣代を立てるように命じよう」
「はっ、私も才ある者を選んでまいります」
吉宗将軍は新之丞の策を全面的に採用する事にした。
★★★★★★
吹上御殿から出て城下に降りられなくなった新之丞は苛立っていた。
檻に入れられた野生の猛獣のようになっていた。
その苛立ちを聖珊内親王にも家臣にも向けられず、精神がささくれ立っていた。
「伊之助、領地の方はどうなっている?」
「村中に縄入する本検地をおこない、隠田の摘発も行っております。
最初から多くの小作人を使う庄屋を潰す目的で行っていますので、上様よりお預かりしている天領20万石が、30万石以上に成ると思われます」
「庄屋共に扇動されている百姓には恨まれ、悪評が広がるだろうが、小作人を助け幕府の勝手向きをよくするには、どうしてもやらなければいけない事だ」
「はい、苦衷お察しいたします」
「分かってくれるなら、城下に降りるのを黙認してくれないか?」
「申し訳ありませんが、上様に斬られるのは嫌です。
せめて宗直と牢人共を皆殺しにした後でないと、とても無理です」
「紀州の悪行、証拠は集まっているのか?」
「はい、ある程度は集まっております。
ですがまだ確たる証拠は得られていません。
今手に入れている証拠だけでは、尾張の処罰に準じて、隠居させるのが精々です」
「紀州は上様や父上が生まれた地だ。
私や伊之助が修行を積んだ地でもある。
宗直の腐れ外道は勿論、その子孫にも渡すわけにはいかぬ」
「分かっております。
必ず確たる証拠をつかみ、宗直一派を滅ぼして御覧に入れます」
「任せたぞ。
それで、幕臣の勝手向きを立て直す方策はどうなっている?」
「はっ、寄合や小普請になっていた幕臣の多くを番方に登用いたしました。
幕領の山野に派遣して、獣を狩らせておりますが、今行っている本検地と併せてかなりの成果を上げると思われます」
「狩りの負担で勝手向きが苦しくなることはないか?」
「遠方に派遣される者達には、優先的に軍鶏を下賜しておりますので、その心配はないかと思われます」
「吹上御殿に配された下級幕臣から聞いたのだが、御役に付くと毎日褌を借りなければならず、登城の際には小者も雇わなければならず、その費用だけで小普請金を軽く超えてしまうと言っていた。
御役目貧乏に成る事もあると言っていたのだが、それはどうなのだ?」
「その辺が苦しくなりそうな下級幕臣は、新之丞様の考えられた策を優先的に行っておりますので、大丈夫でございます」
「ちゃんと魚を突けているか?」
「徒士も与力も同心も、一応槍一筋の家柄です。
隠居や部屋住みでも魚を突くくらいはできます。
売り物にはならなくても、よい肴になります。
月に一度、小魚が食べられればいいのが下級幕臣です。
毎日魚が食べられるのなら、大いに勝手向きがよくなります」
「それを条件に、中間や小物を召し抱えられないか?」
「中間部屋や下男部屋に住まわせるにしても、飯だけで年五俵が必要です。
三十俵の二人扶持の同心には、小者1人召し抱えるのも大変でしょう」
「吹上御殿や清水家だけなら、登下城の際に家臣を連れて来なくてもいいと言えるが、幕府としてはそうもいかないからな……
他の幕臣達はどうしているのだ?」
「領地持ちの旗本なら、領内の家を継げない次男三男を、江戸の相場よりも安い金額で召し抱えて使っています」
「だったら、私と清水家が預かっている領地の民で、衣食住さえ面倒見てもらえるなら、給金などいらないという者を集められないか?」
「清水家縁の民を、下級幕臣の中間や小者にされるのですか?」
「ああ、全ての幕臣子弟が槍や弓で魚を狩ったら、漁師や魚屋は困るだろうが、私が一番大切にしなければいけないのは幕臣で、次が年貢を納める百姓だ。
猟師や魚屋の事は本当に生活ができなくなってから考える」
「わかりました、新之丞様。
全ての幕臣と陪臣が槍で魚を突けるようにします。
武士が網で魚を獲る訳にはいきませんが、武芸の鍛錬で魚を突くのなら何も問題もありません。
新之丞様が申されたようにして召し抱えた小者に、値がつきそうな魚を下賜した、後に小者が売って主人にお礼を渡しても、何の問題もないでしょう」
「卵ほど確実に利が上がるわけではないが、魚を利用できれば勝手向きがよくなる。
卵は、全ての幕臣に下賜できるほどの軍鶏を育てるにはまだまだ時間がかかる。
それに、全ての幕臣が軍鶏を飼ったら、卵の値が大きく下がるかもしれない。
軍鶏の餌も、扶持米を与えていては何にもならぬ。
拝領屋敷で野菜や雑穀を育てて飼える軍鶏が幾羽に成る事か……」
「そう考えこまないでください。
新之丞様はやれる限りの事をなされています。
扶持を倍増するのは無理にしても、確実に今よりは勝手向きが楽になります。
それでも困窮する幕臣には、300万両から貸し与えればいいのです。
それでも困窮する者は、才もなく努力もしていないのです。
御家人株を買いたい者もいます。
無能な者が武士でなくなるのは仕方がない事です」
「……御家人株を買った者には、本当に幕臣に相応しいのかを試す。
相応しくない者が武士となっていたなら、潰してやる!」
「5万俵時代の清水家重臣団」持ち高勤めで幕府の支援もあった
家老 :2名 :3000石
用人 :6名 :400俵20人扶持
用詰 :3名 :150俵
大番頭 :2名 :5000石
大番組頭 :8名 :300石20人扶持
大番衆 :100名 :200石
与力 :20名 :200俵
同心 :40名 :30俵2人扶持
物頭兼目付:3名 :700俵40人扶持
旗奉行 :1名 :700俵40人扶持
長柄奉行 :2名 :700俵40人扶持
新番頭 :6名 :2000石
新番組頭 :6名 :600石
新番衆 :120名 :250石
小十人頭 :3名 :1000石
小十人組頭:3名 :300石
小十人衆 :60名 :100俵10人扶持
徒士頭 :3名 :1000石
徒士組頭 :6名 :150石
徒士衆 :84名 :70俵5人扶持
勘定奉行 :2名 :200俵
勘定組頭 :2名 :
勘定吟味役:2名 :
郡奉行 :8名 :300俵
代官 :8名 :
目付 :3名 :1000石
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