9 / 10
8話王太子視点
しおりを挟む
嫌だった。
王太子である余が、鬼子と陰口を言われているブリジットと結婚しなければいけないなんて、屈辱だった。
だが、王家には金がなかった。
もっと遊びたいのに、金の持ち出しを厳しく制限された。
だから貴族どもから借りた。
いくらでも貸してくれた。
臣下や下民から借りた金など、返さなくていいと考えていた。
だがそうはいかなかった。
父である国王にこっぴどく怒られた。
相手が貴族であろうと下民であろうと、借りた金を返さなかったら、その借用書を隣国に売るのだと言われた。
最初は言っている意味が分からなかった。
隣国が借用書をもったとしても、踏み倒せばいいと考えていた。
父にもそう進言した。
こっぴどく怒られた。
あまりに声が大きくて、頭が痛くなるくらい怒られた。
借金の担保に土地を割譲させられると言うのだ。
無視すればいいと進言したら、また怒られた。
軍勢を整えて侵攻してでも土地を奪いに来ると言うのだ。
貴族どもを動員して迎え討てばいいと進言したら、また怒られた。
王太子の権威を利用して、無理矢理金を借りておいて返さないような王家には、誰も協力しないと言われた。
貴族どもとはなんと不忠な者たちなんだろう。
王家から受けた恩をどう思っているのだ。
そう口にしたら、父上に頭を殴られた。
眼から火が出るかと思うくらい痛かった。
とっととブリジットと結婚式をあげて、持参金と台所領を手に入れ、借金を返済しろと怒られてしまった。
だから仕方なくブリジットを抱いてやることにしたのだ。
嫌だったが仕方がない。
これも王太子という高貴な身分に生まれた者の務めだ。
それに一度抱いてやればいいのだ。
王太子の結婚などは全て政略結婚だ。
愛する者とは結ばれないのが、高貴な身分に生まれた者の宿命だ。
なのにだ!
あの鬼子は、余が抱いてやろうと訪れたにもかかわらず、事もあろうに余を殴りつけたのだ!
父にしか手をあげられたことのない、高貴な余に、公爵令嬢の分際で殴ったのだ!
余は怒りと屈辱で激怒した!
剣を使って成敗しようとしたが、人間でない鬼子が相手では、国一番の剣士である余でも勝つ事はできなかった。
いかに余であろうと人間の身、鬼人には敵わぬのだ。
鬼子に組み伏せられながら、軍を動員して責め殺してやるという怒りと憎しみを滾らせたが、それを超える不思議な感覚に襲われた!
今まで経験したことのない快感に全身が震えたのだ。
それを確認したくて、余は高貴なる身にもかかわらず、こんな辺境にまで訪れたのだ!
そして今確信した!
ブリジットに張り倒されて分かった!
余はブリジットに責められるのが大好きなんだと!
王太子である余が、鬼子と陰口を言われているブリジットと結婚しなければいけないなんて、屈辱だった。
だが、王家には金がなかった。
もっと遊びたいのに、金の持ち出しを厳しく制限された。
だから貴族どもから借りた。
いくらでも貸してくれた。
臣下や下民から借りた金など、返さなくていいと考えていた。
だがそうはいかなかった。
父である国王にこっぴどく怒られた。
相手が貴族であろうと下民であろうと、借りた金を返さなかったら、その借用書を隣国に売るのだと言われた。
最初は言っている意味が分からなかった。
隣国が借用書をもったとしても、踏み倒せばいいと考えていた。
父にもそう進言した。
こっぴどく怒られた。
あまりに声が大きくて、頭が痛くなるくらい怒られた。
借金の担保に土地を割譲させられると言うのだ。
無視すればいいと進言したら、また怒られた。
軍勢を整えて侵攻してでも土地を奪いに来ると言うのだ。
貴族どもを動員して迎え討てばいいと進言したら、また怒られた。
王太子の権威を利用して、無理矢理金を借りておいて返さないような王家には、誰も協力しないと言われた。
貴族どもとはなんと不忠な者たちなんだろう。
王家から受けた恩をどう思っているのだ。
そう口にしたら、父上に頭を殴られた。
眼から火が出るかと思うくらい痛かった。
とっととブリジットと結婚式をあげて、持参金と台所領を手に入れ、借金を返済しろと怒られてしまった。
だから仕方なくブリジットを抱いてやることにしたのだ。
嫌だったが仕方がない。
これも王太子という高貴な身分に生まれた者の務めだ。
それに一度抱いてやればいいのだ。
王太子の結婚などは全て政略結婚だ。
愛する者とは結ばれないのが、高貴な身分に生まれた者の宿命だ。
なのにだ!
あの鬼子は、余が抱いてやろうと訪れたにもかかわらず、事もあろうに余を殴りつけたのだ!
父にしか手をあげられたことのない、高貴な余に、公爵令嬢の分際で殴ったのだ!
余は怒りと屈辱で激怒した!
剣を使って成敗しようとしたが、人間でない鬼子が相手では、国一番の剣士である余でも勝つ事はできなかった。
いかに余であろうと人間の身、鬼人には敵わぬのだ。
鬼子に組み伏せられながら、軍を動員して責め殺してやるという怒りと憎しみを滾らせたが、それを超える不思議な感覚に襲われた!
今まで経験したことのない快感に全身が震えたのだ。
それを確認したくて、余は高貴なる身にもかかわらず、こんな辺境にまで訪れたのだ!
そして今確信した!
ブリジットに張り倒されて分かった!
余はブリジットに責められるのが大好きなんだと!
0
お気に入りに追加
274
あなたにおすすめの小説
リリィ=ブランシュはスローライフを満喫したい!~追放された悪役令嬢ですが、なぜか皇太子の胃袋をつかんでしまったようです~
汐埼ゆたか
恋愛
伯爵令嬢に転生したリリィ=ブランシュは第四王子の許嫁だったが、悪女の汚名を着せられて辺境へ追放された。
――というのは表向きの話。
婚約破棄大成功! 追放万歳!!
辺境の地で、前世からの夢だったスローライフに胸躍らせるリリィに、新たな出会いが待っていた。
▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃
リリィ=ブランシュ・ル・ベルナール(19)
第四王子の元許嫁で転生者。
悪女のうわさを流されて、王都から去る
×
アル(24)
街でリリィを助けてくれたなぞの剣士
三食おやつ付きで臨時護衛を引き受ける
▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃
「さすが稀代の悪女様だな」
「手玉に取ってもらおうか」
「お手並み拝見だな」
「あのうわさが本物だとしたら、アルはどうしますか?」
**********
※他サイトからの転載。
※表紙はイラストAC様からお借りした画像を加工しております。
婚約破棄の次は爵位剥奪ですか? 構いませんよ、金の力で取り戻しますから
ひじり
恋愛
「エナ、僕は真実の愛を見つけたんだ。その相手はもちろん、きみじゃない。だから僕が何を言いたいのか分かるよね?」
男爵令嬢のエナ・ローリアは、幼い頃にリック・ティーレンスからのプロポーズを受けた。
将来を誓い合った二人は両家公認の仲になったが、ティーレンス家が子爵に陞爵した日を境に、すれ違う日が増えていった。
そして結婚式を前日に控えたある日、エナはリックから婚約を一方的に破棄されてしまう。
リックの新しい相手――カルデ・リスタは伯爵令嬢だ。しかし注目すべきはそこじゃない。カルデは異世界転生者であった。地位や名誉はもちろんのこと、財産や魔力の差においても、男爵令嬢のエナとは格が違う。
エナはリックの気持ちを尊重するつもりだったが、追い打ちをかける出来事がローリア家を襲う。
カルデからリックを横取りしようとした背信行為で、ローリア家は爵位を剥奪されることになったのだ。
事実無根だと訴えるが、王国は聞く耳を持たず。異世界転生者と男爵家の人間では、言葉の重みが違う。貴族の地位を失った父――ロド・ローリアは投獄され、エナ自身は国外追放処分となった。
「悪いわね~、エナ? あんたが持ってたもの、ぜーんぶあたしが貰っちゃった♪」
荷物をまとめて王都を発つ日、リックとカルデが見送りにくる。リックに婚約破棄されたことも、爵位剥奪されたことも、全てはこいつのしわざか、と確信する。
だからエナは宣言することにした。
「婚約破棄の次は爵位剥奪ですか? 構いませんよ、金の力で取り戻しますから」
※異世界転生者有り、魔法有りの世界観になります。
【短編完結】記憶なしで婚約破棄、常識的にざまあです。だってそれまずいって
鏑木 うりこ
恋愛
お慕いしておりましたのにーーー
残った記憶は強烈な悲しみだけだったけれど、私が目を開けると婚約破棄の真っ最中?!
待って待って何にも分からない!目の前の人の顔も名前も、私の腕をつかみ上げている人のことも!
うわーーうわーーどうしたらいいんだ!
メンタルつよつよ女子がふわ~り、さっくりかる~い感じの婚約破棄でざまぁしてしまった。でもメンタルつよつよなので、ザクザク切り捨てて行きます!
悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。
二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。
けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。
ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。
だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。
グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。
そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。
平和的に婚約破棄したい悪役令嬢 vs 絶対に婚約破棄したくない攻略対象王子
深見アキ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢・シェリルに転生した主人公は平和的に婚約破棄しようと目論むものの、何故かお相手の王子はすんなり婚約破棄してくれそうになくて……?
タイトルそのままのお話。
(4/1おまけSS追加しました)
※小説家になろうにも掲載してます。
※表紙素材お借りしてます。
婚約破棄よりも私は婚約者の頭が気になります
荷居人(にいと)
恋愛
「君とは婚約破棄する」
私の婚約者アルアル・ナシナシは私にそう告げる。しかし、これは知っていた未来だから私は特に驚きはしなかった。
不思議なのは隣に何故かいないヒロインの存在と…………
荷居人婚約破棄シリーズ第九弾!今回もギャグめいた新しい展開を与えられたらと思います!
第八弾までは番外編を除いて完結済み!
話はそれぞれ違うためこれだけを読むも大丈夫!他の婚約破棄シリーズの作品をさっくり読みたい方は荷居人タグで検索!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる